第二十六話 辺境の村2
病人を受け入れる準備は整いました。
村長が拡張機で病人を集めることを説明してくれました。
村長からお預かりした村人達に病人を迎えに行ってもらいます。
そのときにご家族には、家を掃除をして体を綺麗にして休んでもらえるようにお願いしてもらいます。
引き渡したくないと言われた時は無理はして連れて来なくていいと話してあります。病が流行ってるわりに村人が疲弊していないことが救いです。そういえば村長の御家族もお元気そうでした。この村の方はある意味頑丈なんでしょうか・・。
集まった病人は半分くらいだそうです。
20人か…。老人とやせ細った子供ばかりです。
エルとエリと護衛騎士に体を拭いて着替えさせるようにお願いしています。
「リリ、これでいいのか?」
「殿下?」
「全然集まらないだろう」
難しい顔をした第二王子殿下はやはり頼りになりません。
「仕方ありません。突然きた私達に大事な家族を託すことは勇気がいります。説得する時間がもったいないので、できることをやりましょう」
「俺は何をすればいい?」
「声をかけてあげてください。優しくお願いします。私は医務官たちと治療に加わります。」
薬師が村人と一緒に村を調べてくれています。薬ができればいいんですが。
私は治癒魔法で重傷者の解熱と体力を回復させます。
村長の奥様が手伝いを申し出てくださったので村長の家の台所で消化に良い物を作っていただいてます。
軽傷者は医務官が見てくれています。
ただ魔法を使い解熱してもしばらくすると熱が上がります。
熱が下がってる間に、食事と水分を取っていただき、休んでいただきます。もう少し余裕があれば村の方々の家も周りたいけど今は余裕がありません。
「リリ様、家の用意ができました」
家のことを忘れてました。
「リリ、今日はもういい。医務官も交代で休ませる。」
「殿下?大丈夫です」
「まだ先が長い。倒れられたら困る」
「お嬢様、今日は休みましょう。もう回復薬は飲ませませんよ。」
この二人の様子だと帰った方がよさそうですね。
確かに休む場所は必要です。
家の準備を整えないといけません。
「わかりました。殿下、家を用意していただいたので、そちらでお待ちします。食事は家で用意しておきます」
「休めというのに」
「休む場所だけ整えます。殿下と護衛騎士の皆様も無理はせずにお願いします。失礼します」
案内された家を見て固まります。ここ誰かの家では・・?
「あの、どういうことですか?」
「家の家族は親父、いえ村長の家を使います。うちを自由に使ってください」
「すみません。助かります」
「気にしないでください。お代もいりません。ではまた明日。」
「御家族の皆様と村長にお礼をお伝えください」
去って行く村人を見送り家と自分達に洗浄魔法をかけます。
中に入ってディーンに玄関に壺を運ばせ、浄化の水の魔石を入れて壺に綺麗な水をためます。
玄関で体を綺麗に洗って着替えてから室内に入るためにタオルや着替えの準備を整えます。
張り紙に書いて貼っておけば大丈夫でしょうか。
次は室内を結界で覆います。
「お嬢様」
ディーン、魔法を使うたびに止めるのやめてほしい・・。
「眠れば魔力は回復します。結界内なら安全でしょ?」
「結界は魔力の消費が激しいから解除してください」
「大丈夫です。」
「お嬢様の大丈夫は信用できません。魔法陣と魔石にしてください」
「魔石は貴重です。」
「これ、使ってください」
ディーンに差しだされたのは純度の高い風の魔石・・。
「こんなに高価なものは受け取れません。」
「お嬢様のために使えとお預かりしています」
「お父様ったら私に渡してくれればいいのに。ありがとう。助ります」
紙に魔法陣を書いて魔石を上におくと結界が発動されます。
魔石は純度が高いほど貴重で高価。私はこんなに純度の高い風の魔石は作れない。いつのまにお父様が取り寄せたのかわかりませんが、ありがたく使わせてもらいましょう。お父様、リリーは頑張ります。
エリに食事の準備を頼んで家の中を見回ります。
部屋がたくさんあるのは、ありがたいです。二番目に広い広間を借りましょう。
たぶんディーン達も同じ部屋を使う気がします。
食事ができたので4人で食べ、休みました。さすがに疲れました。
朝、起きると食事はなくなっていたので、第二王子殿下達はちゃんと帰ってきたんですね。
ただ休んでいるのか怪しいので確認しなければいけません。
ディーンと一緒に集会所に行きます。エリ達には家の中の用事を頼んでいます。
第二王子殿下がいました。
「殿下、話があります」
「リリ、どうした?」
「休みましたか?」
「ああ」
「その目の下の隈がとれるまで休んできてください。護衛騎士の皆様も殿下をちゃんと休ませてくださいませ。食事はエリに用意させてます。昨日と同じように玄関で体を綺麗にして着替えて中に入ってください。家の中には結界をはってあります。汚い衣服は玄関の隅に置いておいてください。あんまり言うこときかないと魔法で眠らせますよ。私の貴重な魔力をこんなことに使いたくありませんが。」
「殿下、行きますよ。ここではリリ様に従いましょう。」
「俺は」
ここに残ると言いたげな第二王子殿下にため息を我慢します。民を案じる気持ちはわかります。でも一番大事なのは御身ということをわからないんでしょうか。王家の命は安くない。殿下に何かあれば村は焼き討ちされても仕方ありません。言いたいことを我慢します。想像以上に第二王子殿下に手がかかります。ため息が出ました。
「殿下、昨日の言葉をそのままお返しします。病人が増えたら迷惑なので休んでください。これ以上駄々をこねるなら魔法で眠らせます。わかりました」
「お嬢様、落ち着いてください。貴重な魔力をこんなことに使わないでください。きっと護衛騎士の方々が眠らせてくれますよ」
「リリ様、うちの殿下がすみません。あとは私達が引き受けます。いきますよ、殿下。護衛騎士を一人残していくのでお好きにお使いください。俺達は殿下と違って自己管理できるのでご心配なく」
「ありがとうございます。医務官の二人も一緒に休ませてください」
「はい。なにかあれば声をかけてください。では失礼します」
殿下が護衛騎士の方に強引に連れていかれましたがいいんでしょうか・・。
主従関係なんてそれぞれですよね。
「ディーン、薬師様が見当たらないんだけど、探した方がいいですか?」
「リリ様、薬師は気にせず。彼は自分のペースを乱されるのは嫌うので」
「護衛もつけずに大丈夫でしょうか?」
「あいつは強いんで心配いりません」
「わかりました。」
薬師様とお知り合いなんでしょうね。この国の方々は不思議な方が多いです。深く考えてはいけない気がします。他国のことは気にしてはいけませんね。




