第ニ話 オリビア
私、リリア・レトラは一週間ほど自宅療養してました。
お医者様に完治のお墨付きをいただいても、すぐには外出を許してもらえませんでした。
ニコラスの面会は拒否してます。
周りの使用人がもの言いたげに見てきますが気にしません。
もう顔も見たくありません。
詳しくはわかりませんが将来裏切る幼馴染など不要です。幼い頃の記憶は封印です。
それに私はニコラスに時間を作るほど私も暇ではありません。
外出の許可がおりたので友人のオリビア・サン公爵令嬢を訪ねています。
オリビアに面会依頼をしたらすぐに了承のお手紙がきました。
いつでもいいから早く会いに来てと公爵令嬢らしからぬ返事をいただきました。
案内された部屋に行くとオリビアが人払いをしました。
「リリア」
抱きついてくるオリビアを抱きしめます。
オリビアは私の1歳年上です。下位の私に、礼儀も求めずありのままを許してくれる大好きなお友達です。
「オリビア」
「よかった。お見舞いに行きたかったのに許してもらえなかった。心配でたまらなかった」
「サン公爵のお抱え医師を派遣してくれたって聞きました。ありがとう」
「私にはそれしかできなかったわ。リリアに会わせてくれないお父様達をどうしてやろうかと思ってたわ」
原因不明の熱でした。普通なら家族さえも部屋に入るべきではありません。
「オリビアにうつったら大変です。公爵の判断は当然です。心配してくれてありがと。」
公爵令嬢なのに眉間に皺をよせて怒るオリビアに涙が溢れてきました。公爵令嬢のする顔ではありません。
オリビアは夢の中で斬首されました。
王太子の愛しい少女を傷つけたと。
オリビアは礼儀知らずの少女に注意はしてもいじめたり人に襲わせたりしません。
オリビアの話も聞かずに斬りかかった王太子殿下は許しません。
絶対にオリビアは渡しません。オリビアは絶対に幸せにします。
どうにもならなかったら外交官になっていざとなったら国外に一緒に逃げます。
そうです。亡命です。亡命しましょう!!
名案です!!
「リリア、どうしたの?」
オリビアがハンカチで涙を拭ってくれています。
「オリビア、私が絶対に幸せにします。」
「リリア?」
「王太子殿下になんかに渡しません。もっと素敵な旦那様を見つけるから、絶対に」
「リリア?どうしたの?」
オリビアの不安そうな瞳に微笑みかけます。
安心してね。私、がんばります。
立派な外交官になります。同時に、オリビアの婚約を邪魔します。
オリビアのお父様であるサン公爵は宰相です。
サン公爵令嬢のオリビアは王太子殿下の婚約者候補のはずです。
美人で聡明なオリビアが選ばれない方法は・・・。
王太子殿下はオリビアを捨てるなら婚約しなければいいのです。
もしくは第二王子殿下の婚約者になれば安全ですか?。両殿下は仲が悪いと噂されてます。
第二王子殿下は少女に魅了されていなかったはずです。オリビアを見たら一目で恋におちます。
名案です!!。
「オリビア、また来ますわ」
「リリア!?」
オリビアの止める声は聞かずに後にします。
オリビア・サン公爵令嬢。私の親友です。
お茶会で知り合ってからずっと仲良くしてもらってます。
夢の世界ではこの美貌と聡明さ、サン公爵家の後ろ盾で王太子殿下の婚約者に選ばれました。
王太子殿下の愛しい少女の無礼を咎めていましたがそれだけです。たぶん。
だって私のオリビアは、愚かなことはしません。
それなのに、私の記憶の中のオリビアは王太子殿下に斬られ、斬首されました。
瀕死のオリビアを斬首台に連れて行き斬首。裁判もせずに、刑の施行をされました。
オリビアが斬られたのは覚えているのに、罪状も日時も場所もわかりません。そのあとサン公爵家がどうなったのかもわかりません。
そんな運命は絶対に許しません。
オリビアを不幸にする王家に忠誠なんて誓いません。侯爵令嬢の務めは果たしますよ。
ちゃんと王家に敬意を払う振りはしますよ。侯爵令嬢なので、取り繕うことは身についてます。
私の大事なオリビアを奪うなんて絶対に許しません。




