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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
10歳編

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第二十話 前編 お騒がせ貴族

私、昨日のパーティで力尽きたので今日は気分転換に遊びに行こうと思っていました。

でも人生はそんなに甘くありません。

どうして先触れもなくクレア・エクリ公爵令嬢が訪ねてきたんでしょう。

報告を受けて急いで支度を整えました。さすがにお忍び姿でお会いするわけにはいけません。


「ごきげんよう。エクリ公爵令嬢、今日はどのような用件で」

「お父様がリリアと過ごすなら今日のお勉強をお休みしても構わないって」


堂々とした物言いの言葉に私は唖然としました。

エクリ公爵、どうゆうことですか!?親睦を深めなさいってことですか・・。

でも、言葉の通じない方は無理です。お父様の命もありませんし、お勉強をサボりたいなら好きにしていただきましょう。付き合う義理もありません。私が招いたわけではありませんもの。


「わかりました。私は書庫におります。ご用は使用人に命じてください。失礼します」


侍女にご令嬢の命令を聞くように命じたのでもういいでしょう。

お父様に屋敷の中は自由に過ごしていいと言われてます。この屋敷の書庫に行きましょう。さすがに、出かけるわけにはいきません。

書庫で勉強しましょう。きっと色んな資料があるはずです。


「待って、それだけ?」

「はい。」

「私と仲良くなりたいとか」

「お父様の命がありませんので」

「貴方も友達がいないの?」

「お友達はいますのでお気遣いありがとうございます。」


第二王子殿下の婚約者なら取り巻きがいるはずですが。

黙っているので去りましょう。この方は苦手です。それに隣国の貴族の、交友関係に興味はありません。オリビアにあいたい。


「待って。私が来たのよ」

「ですから、侍女にもてなしを命じてあります。私にも予定がありますので」

「私よりも大事な用事なの?」

「はい。先触れももらってませんし、勝手に訪ねてもてなせというのはさすがに無礼ではありませんか。」

「それは」

「では」


黙り込んだエクリ公爵令嬢を置いて書庫に行きましょう。


「お嬢様、いいんですか?」

「お勉強から逃げたくて、訪問した令嬢をもてなす必要がありますか?」

「お嬢様にしては冷たくありませんか」

「私、言葉が通じない方は苦手なんです。外交問題になるならシリル様の方に話をつけますわ。」


言いたいことがありそうなディーンの視線は無視します。関わらないですむものは関わらないのが一番です。

ここの書庫は初めてきます。やはりこの国の貿易の資料ばかりですかね。

貴族名鑑。どこの国にもありますのね。私はまだ成人していないので名前は載っていません。

この国の情勢は、これですね。この国が将来亡命するのに本当に安全か調べなければいけません。内乱がおこりそうな国は近づいてはいけません。


「ちょっと」


女性の声が聞こえますが、まさか・・。

恐る恐る振り向くと、エクリ公爵令嬢でした。驚かせないでください。


「どうされました?」

「お茶に付き合いなさい」


お断りするのは失礼にあたります。充分失礼な態度をとってますがお互い様です。


「かしこまりました」


客室に移動しましょう。私もこの屋敷は詳しくありません。

ただ問題なのはエクリ公爵令嬢のお口に合うお菓子がありません。きっと侍女長がなんとかしてくれるでしょう。


さすがです。目の前にパイが用意されました。フルーツが挟んであって美味しいんです。

この国に来て知った食べ物です。なんとか本国で食べられないかしら。さすがに厨房にお邪魔するわけにはいきません。他国ではお行儀よくしなければなりません。

おいしい。荒んだ心が癒やされます。


「何か話してよ」

「公爵家より下位の私が話しかけるのは無礼ですので」

「今更、無礼って」


面倒だけど仕方ありません。社交用の笑顔を纏います。これでも侯爵令嬢なので仮面を被るのは簡単です。


「大変失礼致しました。今日の御召し物も素敵ですわ。さすが公爵令嬢」

「全く心にこもってないこと言わないで」


この方我儘すぎませんか・・。心にこもってないとは。無理矢理来て、お茶に付き合わされて、私の貴重な時間を。正直に話せば喧嘩になりますよ。


「失礼しました。文化の違いなのか何をおっしゃりたいのかさっぱりわかりません。もしかして私の言葉がおかしいですか?」

「貴方の国の言葉は違うのね。全く問題ないわ。昨日言ってた抗うってどういう意味?」


言葉が通じません。会話する気あるんでしょうか。合わせましょう。


「抗いたいものがあるんですか?」

「貴方にはないの?」

「ありますよ。でも教える気はありません。ただそのためにしっかり準備をして備えるだけですわ」


全然準備が整わないことは置いておきましょう。


「それは、家の務めに反しないの?」

「家の利になるように動きますので」


お茶が美味しい。さっさと帰ってくれませんかね。

私の貴重な時間がどんどん減っていきます。


「私、婚約破棄したい」


うん?気のせいですよね。とんでもない言葉が聞こえました。


「殿下と婚約破棄したいの。私は第二王子妃なんてなりたくないの」


それは思っても言葉にしてはまずいですよ。私はどうでもいいから利用したりはしませんが。


「それは私に言われてどうしようもなりません」

「少しは興味を持ってよ」

「いえ、お家騒動には関わりたくありません」

「どうすればいい?」

「ご家族に相談されればよろしいかと」

「だめだったの。」

「婚約破棄してどうするんですか?」

「え?それは、破棄したあとに考えるわ」

「きっと違う婚約者が選ばれて嫁ぐだけですよ。もしくは修道院ですかね」

「そんな」


この人大丈夫なんでしようか?貴族にとって婚約破棄は立派な醜聞です。令嬢は傷物扱いですよ。

しかも王家と婚約破棄なんて次の縁談相手は中々見つかりませんよ。


「どうして破棄したいんですか?」

「私、たえられない。好きでもない男に嫁いで、しかも第二王子よ!!。常に第一王子夫妻の下の立場。私はどうせなら一番がいいのに」


それも人には言ってはいけない言葉です。誤解されますよ。王太子妃狙っていると思われますよ。

この人、公爵令嬢なのにおかしい。ニコラスにおかしい人には関わるなって言われてるんですが…。


「一番って、なにになりたいんですか?」

「それは」


黙りこむということは…。子供のようですね。


「具体的に考えられないならやめたほうがいいですよ。」

「私は」

「自分で決められないなら、殿下や公爵に守られながら生きるほうが幸せです。」

「貴方ならわかってくれると思ったのに」


なにをわかり合えると思われたんでしょう。

立ち去っていくエクリ公爵令嬢を見送ります。あれが公爵令嬢ってこの国は大丈夫ですか?

着替えをして出かけましょう。この国の博物館に行こうかな。

追いかけなくていいのか?だって利のない相手に関わっても仕方ありません。お父様の命があれば謝罪の手紙を書きますけど。

その日博物館を見学して、1日をおえました。

お父様はお忙しいので朝しかお会いできません。

とりあえず公爵家から苦情が来ないので大丈夫でしょう。

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