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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
10歳編

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第十九話後編 エクリ公爵家

私、お父様のお友達のエクリ公爵家のパーティーに参加してました。

なぜかエクリ公爵令嬢に腕を引かれて連れて行かれています。


「さて、もうここまで来れば追ってこないわね。あのエセ王子。」


私が連れて来られたのはエクリ公爵令嬢のお部屋でしょうか・・。


「どうぞ。そこに座って」

「失礼します」


言われた通りにするしかありません。どうすればいいんでしょうか。

私、貴族の名前は憶えてますがお人柄まではしりませんよ。でもこの公爵令嬢と仲良くなればいずれ亡命するときに助けてくれますかね・・?でも私は彼女に提示できる利がありません。


「貴方、殿下のことどう思う?」

「殿下とはセシル第二王子殿下のことでしょうか?」

「そうよ。他に誰がいるのよ」


この国の第一王子殿下もいらっしゃいますし、むしろ彼だけと思っている貴方に驚きです。余計なことは言うのはやめましょう。社交用の笑顔を作ります。


「申しわけありません。私、勉強不足で。詳しく存じません」

「そう。」


そんな不服そうな顔をされましても。

公爵令嬢がそんな顔に出して大丈夫なんですか?


「貴方、私が羨ましい?」


はい?


「そうですね。優秀な料理人をお持ちで羨ましいです。」

「え?それだけ?」

「はい」


怖い。なんで睨まれてますの!?だって私には優しい家族に家臣、お友達、今の現実に不服はありません。ただ未来への不安があるくらいで。


「すみません。どう答えればよかったんでしょうか」

「本当に羨ましくないの?私と立場交換できるとしたら?」

「恐れながらお断り致します。」

「名門公爵家で王子の婚約者よ?」

「ごめんなさい。言いたいことがわかりません」

「私を羨ましいとは?」

「全く思いません」

「どうして?」


首をかしげられても・・。

この方って人の言葉を聞かないタイプの人間でしょうか・・?


「どう答えてほしいんですか?羨ましいと言えば満足いただけますか」

「クレア、いい加減にしなさい。リリア嬢が困っているよ」

「だってお兄様、」


いつの間にいましたの!?

どうせなら連れて行かれるのを止めてほしかったです。


「リリア嬢、すまない。うちの妹は甘やかされた育ったから」

「私が甘やかされて育ったのは第二王子殿下に献上されるためだもの。私は婚約なんて一言も望んでないのに」


なんの話をされてるんでしょうか・・。


「望んでないのに周りには羨ましいって言われ、お勉強も大変で」


オリビアと同じ立場・・。でも産まれによってもたらされる責任は違います。そのかわり行使できる権力も違う。私だって、我儘に生きてるけど、ちゃんとレトラ侯爵令嬢としての務めは果たしています。


「当然です」


「え?当然」


まずい。口に出てましたわ。凄い形相で睨まれてます。もう遅いですね。お父様、ごめんなさい。


「名家に生まれた者のさだめです。誇りある血を受け継いだなら務めを果たさなければいけません。どうしても抗いたいなら、努力するしかありません。」

「子供の貴方にはわからないわ」

「はい。では子供の私は失礼してもよろしいでしょうか」

「リリア嬢、送ろう」


シリル様に手をさしだされたので手を重ね、エクリ公爵令嬢に礼をして退室します。


「すまなかった」

「いえ、私こそ公爵令嬢に申し訳ありませんでした。」

「甘やかしてきたからな。まさかそのまま育つとは思わなかったよ。」


そんなことを言われても。

今の彼女に不満があるなら教育すればいいのに。苦笑しているシリル様の顔には気づかないふりをしましょう。他家のことに関わってはいけません。


「公爵への謝罪は必要ですか?」

「いらない。父上も慣れている。よければまた話し相手になってやってよ」


できればもう関わりたくありません。曖昧に微笑みながら返事を考えているとお父様の声が聞こえました。


「リリア、大丈夫だったかい」


シリル様に礼をしてお父様の手をとります。さすがお父様です。私が困っているのを見かねて来てくださいました。


「お父様、私には難しいことだらけでした」

「これから頑張ればいい。今日はもう帰ろう。」


お父様の頭をなでくれる優しい手のおかげで、嫌な気持ちが吹き飛びました。

お父様と屋敷に帰りました。

この国の公爵令嬢も第二王子殿下もまともな感じがしません。

全然亡命計画が上手くいきません。むしろ、この国は亡命先として考えないほうがいいかもしれません。

今日はゆっくり休んで明日考えましょう。


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