第十七話 二人の王子
今日は王家のお茶会です。
ただ今日のお茶会の参加者はいつもの半分くらいしかいません。
いつもの散策の時間にオリビアに聞きましょう。
「オリビア、今日は皆様どうしたんですか?」
「リリアはまだ知らないのね。第二王子殿下が王位争いに名乗りをあげたのよ」
「え!?王太子は第一王子殿下って表明されてましたよ!?」
「色々あるのよ。今の所は第一王子殿下のままだけど、」
「オリビア」
オリビアが、王妃様に呼ばれて離れていきました。
前にお会いした王太子殿下がおかしかったのは…。
令嬢と談笑している王太子殿下を見ながら首を傾げる。
夢と違います。
第二王子殿下と会わないといけません。
どうしましょう。
結局どうすることもできずにお茶会は終わりを迎えました。
まだオリビアは王妃様と話しています。
王太子殿下が一人で歩いています。どこに行くんでしょうか。
「誰だ」
振り返った王太子殿下の声に自分が後をつけていたことに気づきました。
慌てて礼をします。
「申し訳ありません」
「レトラ嬢か、何か用か?」
「いえ」
「レトラ嬢は弟の味方だろう」
穏やかな笑みを向けられますが警戒されてるのはわかります。
「違います。オリビアの味方です」
「オリビアか。まさかオリビアもレトラ嬢もうちのお茶会に参加するとは思わなかったよ」
「王太子殿下?」
「まさかな」
どんな事情があろうとも弟に裏切られたようなもの。
顔は笑いながらも心は悲鳴をあげているかもしれません。
「王太子殿下、私、将来立派な外交官になります」
「は?ああ、そうか」
「もし、全てを捨てたくなれば力を貸します。」
「レトラ嬢?」
「私は中立です。でも私の言葉にも耳を傾けてくださるならリリアとして贔屓はします。」
「私が弟に譲れば穏便にすむのだろうか」
人の言葉を聞かない夢の中の殿下より、第二王子殿下のことで思い悩む今の殿下は好感が持てます。
「わかりません。でも前の殿下より今の殿下のほうが好きですわ」
「私の婚約者にしないよ」
「私には王妃など務まりません。殿下が後悔されぬご決断をされるようにお祈りしてますわ。私はこれで。」
きっと落ち込んでますが私にできることはありません。
どんな言葉も心には響きません。裏切りは時間が傷を癒やすのを待つしかありません。
私は王太子殿下の元をあとにして、もう一つの庭園に向かいます。
いました。第二王子殿下もお茶会をされてますね。王太子殿下と日時を合わせて開催するのに悪意を感じます。
目が合いました。あっちにいけですかね…。
庭園の外れで待っていると第二王子殿下が来ました。
「リリアから会いにくるとはどういう心境の変化だ?」
「殿下の心境の変化の理由を伺いたく」
「簡単だ。公爵はオリビアは王太子に与えると」
「オリビアのために国を荒らすと?」
「欲しいもののためには手段を選ばない。それに兄上も下賤な女に心が惹かれている。それなら王家から解き放ったほうが幸せだろ?」
その当然だろって顔はなんなんですか・・。
「貴方の考えは同意しかねます。ただオリビアが悲しみます。」
「リリアは私の味方だろ?」
「私個人は中立です。レトラ家の者としてはお父様のお考えに従います。」
「後で泣きついても助けないよ?」
「私は穏便な方法なら応援しました。ただこの方法は身勝手過ぎます。失礼します」
第二王子殿下はまともじゃなかった…。
絶対に泣きついたりしません。
オリビアを任せられません。やっぱり亡命先を探しましょう。
信用した過去の自分を呪いたいです。
公爵、オリビアの意思なんてお構いなしですか!?
王太子に娶らせるって…。
なんとかして、他国の貴族と仲良くならなければいけません。
「リリア、大丈夫?」
顔をあげると、ニコラスがいました。
授業、終わったんですね。全く頭に入りませんでした。
「はい、大丈夫」
心配そうに見られてます。
「どうかした?」
「いえ、ぼんやりしてただけです」
「落ち込んでるだろ?」
ニコラスにはいつも隠しても見つかってしまいます。
「どうしたらオリビアは幸せになれるのかと」
「は?」
「ごめんなさい。忘れて。頭冷やしてきます」
「待って。ちゃんと話して。そしたら一緒に考えてやるよ。」
「ニコラス、オリビアが。王太子殿下が、それで・・・」
「泣くほどなのかよ!?落ち着いて。」
ニコラスが優しい。オリビアがどうしたら幸せになれるんでしよう。
「オリビア嬢に冷たい王太子殿下より第二王子殿下の方がふさわしいと協力しようとした!?オリビア嬢は王太子に嫁ぐと公爵に言われ第二王子殿下が王位争いに名乗りを上げた。殿下達がオリビア嬢を巡って仲たがい。それは全部リリアの所為じゃないだろ!?冷静になれよ」
「ニコラス、私が協力するって言わなければこんなことには」
「リリアが協力しなくても同じことはおこっていたよ。両殿下は母親が違う。正妃様と側妃様の対立は元々だ。水面下では王位争いの話はもともとあった。第二王子殿下がオリビア嬢を手に入れるために動いたのは殿下の意思だ。もともと両殿下は仲が良くなかったから尚更だ。」
「でも」
「バカだな。リリアは利用されただけなんだよ。むしろ第二王子殿下側に取り込まれなくてよかったよ。王位争いの表明には準備が必要だ。その準備が整ったんだ。リリアがそそのかしたからじゃない。第二王子殿下はリリアを手に入れてレトラ侯爵家とオリビア嬢を味方につけたかったんだ。あの人は聡明な方だ。恋に狂って愚かなことをする方ではない」
ニコラスの言葉は正論に聞こえます。
涙を拭います。泣いてる場合ではありません。
「私、ちゃんと亡命先を見つけてきます」
「亡命先?」
「なにかあった時にオリビアを連れて逃げられるように。本当は外国の方と結婚したかったけど、成人するまで待てません。オリビア達が困ったら逃がしてあげられる亡命先を」
「婚姻?」
「それが簡単だもの。他国籍を得ればいつでも迎え入れてあげられます」
「亡命先、受け入れてくれる貴族…。オリビア嬢の亡命の受け入れ先ねぇ。その条件をのむなら結婚するの?」
ニコラスの雰囲気が変わりました。優しい顔から真剣な顔っというか、怖いです。嘘は許さないって瞳で語ってます。こんなニコラスは知りません・・。
「私の、婚姻でオリビア達が救われるなら構いません。どれだけの方々が亡命されるかわかりませんが」
「その言葉忘れるなよ。」
「ニコラス?」
「しばらく会いにこれない。でも俺にはリリアだけだから信じて」
「ニコラス?」
「またいずれ会いに来る。またな」
ニコラスに向けられる笑顔が怖かったです。突然、どうしたんでしょうか・・。
翌日の授業にニコラスは現れませんでした。
きっとニコラスは外交官を目指すのを辞めたのですね。
うん。これが正しい流れです。
いつも隣にいたニコラスがいなくなって寂しいのは気の迷いです。だってニコラスは未来で愛しい少女に出会うもの。
このまま傍にいて情が移るよりいいです。
私は外交官の勉強頑張らないといけません。
王位争いのことは気にしても仕方がありません。
やることがいっぱいあるから立ち止まってる暇はありません。




