第十五話 イラ兄弟
私はイラ侯爵邸でニコラスと一緒にシロを愛でています。
ニコラスは私の隣に座ってシロを見てるだけです。たまにしか会えない私に譲ってくれてるんでしょうか。可愛いシロのおかげでニコラスの機嫌がいいです。
「兄上!!」
男の子がかけてきます。
「お休みなら僕と訓練してください!!」
よく見ると小さいニコラスですね。可愛いです。もしかして弟君でしょうか。お会いしたことありません。
シロを抱いたままですが挨拶しましょう。
「はじめまして。リリアと申します。」
「リリア?」
首を傾げる姿も可愛い。
「会わせたくなかったんだけど仕方ないか。カイロス挨拶しろ」
ニコラスが嫌そうになにか呟いてます。
急に機嫌が悪くなりましたが、情緒不安定ですか。やっぱり疲れてるんでしょうか。
「カイロス・イラです。宜しくお願いします」
「カイロス様、お上手です。将来が楽しみです。」
さすがニコラスの弟君。挨拶もバッチリです。
「カイロス様、好きなお菓子はありますか?ご褒美に今度ご用意します。」
「ご褒美?」
「ええ。私、嗜み程度にお料理できますのよ。」
「本当!?」
目を輝かせて可愛い。
この子なら私と5歳も歳が離れているので安心?いえ、こんな小さい子を誑かすのは犯罪です。
それに私に必要なのは外国との関係。
結局はイラ侯爵家は駄目です。私はやっぱりお父様の願いを叶えられません。ごめんなさい。お婿に貰えなくても、
「カイロス様は可愛いです」
「だから会わせたくなかったんだよ」
「カイロス様、シロを抱っこしますか?」
「シロ?」
「この子です。可愛いです。暖かくて気持ちがいいですよ。怖くないですよ」
「僕は怖がってません」
カイロス様が手を伸ばしません。
うーん、シロに近づかないところを見ると怖いのかしら?
シロを横に降ろして座ります。
「カイロス様、ここにいらっしゃい」
「え?」
膝を叩きますが、首を横に振って拒否されます。そこまで拒否されると傷つきます。
いいです。シロを抱きしめます。
「ニコラス、私はここにいるので、カイロス様と過ごしてください。訓練にいってらっしゃいませ。」
私はシロに慰めてもらいます。
シロ、私、カイロス様に嫌われてます。子供にはいつも好かれてますのに…。
「リリア、」
心配そうなニコラスに首を横に振ります。
「いいんです。私、落ち込んでません。シロといますので、お二人はどうぞ仲良く訓練してください。」
もうここでシロとふて寝しようかな…。
「仕方ない。カイロス。一戦やるか。ここでな。リリア、自衛しろよ」
ここでやるんですか?お昼寝している場合ではありません。気合をいれます。
「シロは絶対に守ります」
「シロはいいから自分を守れ」
シロに厳しくありませんか!?。
わかりました。きっと私がいない所で、ニヤニヤしながら可愛いがってるんですね。ニコラスはすぐに隠したがりますもの。
なら、私はシロをお膝に乗せて満喫します。私は隠しごとなどしません。可愛いものは堂々と愛でます。
二人が体術で手合わせをはじめましたね。
危ない!!カイロス様をニコラスが投げてます。
よかった。上手に着地されますね。
ちょっとだけ邪魔しょうかな。
風に祈りを込めて、強い風をニコラスの体に押し当てます。
もちろんカイロス様には手出ししません。
視線を向けるニコラスに笑いかけます。
こんなハンデ余裕でしょ?なぜか固まりました。そんなに負荷はかけてませんよ。カイロス様がまた挑んでいきました。負けず嫌いな所は兄弟同じですのね。
転んでも立ち上がる姿は素敵です。将来が楽しみです。
将来?
うん?なにか引っかかります。うーん。
!?
ニコラスが王太子殿下の愛しい少女の言いなりになれば、イラ侯爵家はどうなるんでしょう。
個人的にはニコラスを応援したい。でもイラ侯爵家のことを考えるならカイロス様が跡を継いだ方が安泰?
どうしましょう。
「シロ、私はどっちを応援すればいいんですか?」
シロのつぶらな瞳を見つめます。
「え!?二人を応援すればいいのですね。名案です。さすがシロ。賢いです」
とりあえず、私はカイロス様がニコラスと同じくらいになるまでお手伝いしましょう。シロにまた見つめられます。わかりました。
「シロも訓練したいですか」
シロを腕から離します。
風に祈りを込めて足元の葉を浮かせます。
「シロ、あの葉をとれますか?」
飛びつきませんの?
静かにして座ってるだけですか。
食べ物のほうがいいのかな。
何を食べるかわかりません。シロはやる気はないんですね。
「リリア?」
シロがニコラスの方を見ました。
「お疲れ様です。どうぞ。シロは私よりもニコラスがいいそうです」
ニコラスにシロを渡すとすぐに手から離しています。それでもシロはニコラスの前に座ってます。私がいるから可愛いがれないのかしら。
「カイロス様、私とお茶しましょう」
カイロス様に手を当てて治癒魔法をかけます。うんこれで大丈夫。
「え、なんで?」
「内緒ですわ。私、カイロス様を応援しますわ。訓練も協力します」
なんで私が笑いかけると困った顔をしますの?
やっぱりニコラスが一番ですか。仕方ありません。私もお兄様が大好きだもの。
「兄上、どうすれば」
「リリアに手を出したら覚悟しろよ。」
「ニコラス、シロもカイロス様も独り占めはずるいです」
「は?ならリリアが俺を独り占めすればいいだろ」
「そんなひどいことできません。お兄様や主人が一番好きな気持ちは仕方ありません。邪魔しないように帰ります」
「待って。まだ来たばかりだろ。リリアの差し入れ食べようか。お茶にしよう。カイロスも食べたいって」
「兄上?」
「お菓子好きだろ。リリアのことは義姉上と呼べ。」
「義姉上ですか?」
「ああ。リリアの顔を曇らせるなよ」
「義姉上、僕もご一緒してもいいんですか?」
姉上って初めて呼ばれました。可愛い。
「もちろんです。今度はカイロス様の分も差し入れをご用意します」
三人でお茶をしました。シロは訓練の時間と連れていかれました。
カイロス様がふわふわスポンジケーキを喜んでくれました。ニコラスはそんなカイロス様を見て優しく目を細めてました。実はカイロス様のこと大好きなのね。この可愛さは仕方ありません。
午後は久々にニコラスに訓練をしてもらいました。カイロス様との手合わせはまだ禁止だそうです。
私もお役に立ちたかったのに残念です。でもせっかくなのでたまにシロとカイロス様に会いにきましょう。頻繁にくるとお邪魔をしてしまいますので。




