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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
10歳編

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第一話 後編 夢

お父様達の部屋で眠った私は目を醒まし、支度を整え朝食をすませました。

まだ病み上がりなのでお父様の命で自室療養です。

一月も寝込んでいたとは・・・。

私は元気ですが、心配そうなお父様達の顔をみたら逆らえません。

侍女に書庫から本を持ってきてもらい読み進めます。

お父様達の外出許可が出たら会いにいきたい友人を思い浮かべます。

どうやったらあの子が王太子の婚約者に選ばれないかしら。

一緒に外交官をめざすのは公爵令嬢の彼女には難しいでしょう・・。


「リリア!!」


ノックもなくニコラスが飛び込んできました。


「理由を説明してくれないか」

「ごきげんよう。ニコラス」


真顔の幼馴染に社交用の顔を作り、挨拶をして本の続きを読むことにしました。


「ごきげんようじゃないだろ!?俺と婚約しないってなんで、」


なにをそんなに声を荒げているんでしょうか。

お父様が婚約の話を白紙にしてくれたからですね。

さすがお父様です。


「私、お父様達のそばにいたいんです。」

「結婚しても好きな時に帰ればいいだろ!?領地も隣だ」


そこではないんです。

どうしてニコラスはこんなに興奮してるんでしょうか…。

さっきから、うるさくて読書に集中できません。

頭に入らないので本を閉じました。

真顔のニコラスの顔をじっと見つめます。


「私、確信しています。貴方は私と婚約したら後悔します。」

「しない」

「今はわからなくても、いずれわかります。その時に感謝の言葉はいりません。」

「リリア、どうした?」


心配そうな顔で見られてます。


「何がですか?」

「熱で寝込んで、頭がおかしくなった?」


人が真剣に話してるのに。睨みつけます。


「失礼ね。もう帰ってください。」

「せめて理由を聞かせて」

「だから、お父様達の側にいたいの」

「俺が婿に入ればいいってこと?」


優秀で頭の回転も良いはずなのに、今日はおかしいです。いつもなら一言言えばすぐに伝わるのに。


「うちの跡取りはお兄様です。嫡男の貴方が婿なんてありえません。」

「レトラ侯爵令嬢が婚約者なしとかありえないだろう!?。」

「お父様が了承してます。私は外交官になります。」

「リリア、なんで、将来は俺と結婚しようって」

「婚約しなくても私達はかわりません。」

「おかしいよ。なんでだよ。お前、侯爵の判断に従うって」


私の肩に手をおいて詰め寄るニコラスの様子に、私、同じことされた気がします…。

あれは…、


「リリア、お前、自分のしたことわかってるのか!?」

「私は知らない」

「俺はお前のことを」

「彼女たちのように、謂れのない罪で裁くんですか」

「捕らえろ。」

「私が愚かだったみたいです。貴方なんて、信じなければよかった。幼い頃の記憶など捨ててしまえばよかった」


思い出しました!!

知らない男に襲われて殺されかけて、なんとか逃げました。

逃げた先にニコラスを見つけて気が抜けたんです。でも私は彼に捕らえられました。

幼い頃から優しかったニコラスが突然冷たくなったけど、なにか事情があると信じていました。

ニコラスが少女の取り巻きになっても、見捨てられませんでした。

やっぱり私、裏切られてました。

裏切られる気がするではありませんでした。

ニコラスは私を切り捨てた。あんなに一緒に過ごした幼馴染に裏切られるとは…。泣きたくなってきました。


「リリア?おい、大丈夫か?」

「リリー!!」


この穏やかな声は・・。


「お兄様」


「リリー、怖かったな。もう大丈夫だ」


顔をあげると、ニコラスではなくお兄様がいます。

お兄様に手を伸ばすと抱きあげてくれます。


「ノエル、何するんだよ!?リリア」


いや。ニコラスはもういい。

いらない。捨てられるならもう関わらないほうがいい。

伸ばされるニコラスの手を振り払いお兄様にぎゅっと抱きつきます。

ニコラスの茫然とする顔なんて見たくありません。


「嫌、」


「ニコラス、出てけ。リリーが怖がっている」

「でも、」

「リリーは病み上がりだ。」


ニコラスが部屋を出ていきました。

さよなら、ニコラス。

私はもうあなたに心をあげません。


「リリー?」


心配そうにお兄様に見られてます。

お兄様、お仕事はどうしたのでしょう…。


「ありがとうございます。大丈夫です。お兄様、お帰りなさい」

「ただいま。リリーが無事で良かった。本当に」


お兄様は心配して帰ってきてくれたのかな。

お兄様ならありえます。お兄様は私を大事にしてくださってますもの。

私、家族が大好きです。うちを取り潰しになんてさせません。


「リリー、ニコラスに意地悪された?」


どうしましょう。今のニコラスにはまだなにもされてません。

お兄様はニコラスには厳しいのです。さすがにニコラスがお兄様に意地悪されるのは良心が痛みます。


「お兄様、リリーは婚約したくありません。外交官になってお父様とお兄様とずっと一緒にいたいんです。でも…」


「わかったよ。お兄様に任せなさい。可愛い妹の願いは叶えるよ。ニコラスもリリーに近づけないから」


「お兄様?」


「お兄様に任せなさい」

「ありがとうございます。お兄様大好きです」


「久しぶりのリリーが更に可愛くなっている。リリーのために頑張るよ」

「私もお兄様のために頑張ります」

「まだ病み上がりだろう?また、来るからゆっくり休みなさい」


お兄様にベッドにおろされました。大きな手で頭を撫で、やる気に満ちたお顔で部屋を出ていきました。

忙しいのに無理をして沢山のお仕事を抱えて帰ってきてくれたんでしょうか。

お兄様は理由も話さずにどうして私の願いがわかったんでしょうか。

でも優秀なお兄様にわからないことなどありませんよね。

私のお兄様であるノエル・レトラです。

普段はお父様の跡を継ぐお勉強のために諸外国を飛び回ってます。

なんでもできる優しい自慢の兄です。

お兄様のおかげで今後もレトラ侯爵家は安泰です。

安泰でなければなりません。絶対に取り潰しになんてさせません。


先程もう関わらないと決めたニコラスはイラ侯爵家の嫡男です。

私の幼馴染です。

ニコラスは時々危なっかしいですが、文武両道です。

特に剣の腕は天才と言われてます。

細くて、口うるさいところがあるのが傷です。

次の婚約者は幸せにしてさしあげてください。私は捨てられましたのでもう関わりません。

私はやりたいことがあるので、早く外出許可が出ることを願うばかりです。

お父様、リリーはいつまで自室療養なんでしょうか。

もう元気なんですけど…。

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