第十三話前編 ピクニック
今日はピクニックです。
ライリー様とスペ様の仲を進展させるために頑張ります。
ライリー様は前日からうちにお泊まりされました。
朝から一緒にサンドイッチを作りました。意外なことにライリー様のお料理は豪快です。
多少お肉やパンが厚くても殿方なら平気ですよね・・。
挟んでもらっただけなので味は問題ないです。
バスケットに詰めて、準備ばっちりです。
ライリー様はワンピースですが私は乗馬服です。
ニコラス達とはうちで待ち合わせをしてます。
スペ様と一緒に来ましたわ。
ライリー様を二人に任せて私も馬を連れてきましょう。
「リリア、荷物かせ。持つよ」
「後ろに積みますよ」
「いいから」
バスケットをニコラスに預けます。
ライリー様がスペ様の馬に相乗りされましたね。絵になります。ライリー様綺麗・・。絵画として売れる気がします。
うっとりしてる場合ではありませんでした。
「ライリー様、怖かったり気分が悪かったらすぐに教えてくださいね」
「ええ」
「最初は怖いかもしれませんが絶対に落ちませんから大丈夫ですよ」
ニコラスの先導に私とスペ様でゆっくりついていきます。
ライリー様達が無言なんですが・・。
「ライリー様、気分はいかがですか?」
「大丈夫。視界が高くて慣れないわ」
「見える景色が違いますよね。いつもは届かない木も触れます。鳥の巣もありますよ」
「どこ?」
「リリア、手綱から手を離したら帰らせるよ」
「私、片手でも手綱を」
「昔、一度落ちたろうが」
「いつまで根に持つんですか」
「リリア、鳥の巣はまた今度でいいわ。気を付けて」
「大丈夫なのに。わかりました」
ニコラスの馬が止まりました。
ここ?馬をつないでますが、花が咲いてないけど。
私も馬から降りて馬をつなぎます。手まねきされ、ニコラスと一緒に少し歩きます。
え!?凄いです。
綺麗な湖の上に花が浮いてます。日の光がキラキラと照らして神秘的です。
「褒めてくれてもいいけど?」
あまりの美しさにドヤ顔のニコラスも気になりません。
「すごい。綺麗!!こんな場所初めて来ました。さすがです」
「リリアのために頑張ったよ」
「感動しました。ありがとうございます。お礼になんでも好きな物作ります」
「なんでお礼が全部食べ物なんだよ」
「嬉しいでしょ?」
「嬉しいけど、他にないの?」
お礼。そういえばお兄様が・・。
ニコラスの腕を引いて頬に口づけます。にっこり笑います。
「ありがとう。嬉しい」
ニコラスが座り込んで、顔を手で覆ってます。
具合悪いんでしょうか。
「ニコラス、具合悪いんですか?魔法かけます?」
「いらない。リリア、それって」
「お兄様に時々お願いされるんです」
「それ、頼むから他のやつにやらないで。頼むから」
無礼ということでしょうか。
「よくわかりませんがわかりました」
「リリア!!」
ライリー様とスペ様が来ました。
ライリー様達も湖に見惚れてましたのね。ニコラスが立ち上がりました。顔が赤いけど、やっぱり具合悪いんでしょうか・・。
「食事にしよう」
ニコラスの声に食事の用意を始めます。
「ライリー様せっかくですので手料理をスペ様にお渡しください」
「え?でも・・」
「俺、リリアの手料理を他の男に食べられたくないんで」
「は?」
「まぁ!?なら仕方ないわ」
「スペ様、朝からライリー様が一生懸命作りましたの。味わって食べてくださいね」
スペ様が頷くので大丈夫でしょう。
ニコラスは自分で好きなものを取っています。確かに私が作ったものばかりです。
「よくわかりますね」
「一目瞭然だろ?」
「初めてですから。せっかくだからライリー様の料理をいただけばいいのに。これが最後かもしれませんよ」
「俺はリリアの料理が一番だから。それにちゃんと俺好みに仕上げてくれてるだろ」
否定はしません。ちゃんとニコラスの好きなサンドイッチも用意してあります。
付き合ってもらっているお礼でもありますから。
ライリー様達も召し上がってますね。
「どうすればスペ様は会話が続くのかしら」
「ブラッド様はもともとそんなに話さない。俺も武術のことしか会話が続かない」
「お酒を用意しますか?」
「ないだろ。未成年だろう」
「やっぱり恋の詩集でも贈ろうかな」
「意味はないだろう。」
「同じ武門なのにこんなに違うんだね」
「リリアは俺が黙ってたら止まらないからな。危なっかしくて」
確かに、迷子になって迎えに来てくれたのはニコラスでした。昔の記憶では、よく止められました。
「お世話になりました」
「二人のペースでいいんじゃないか。会話はないけど隣にいるってことは居心地がいいんだろ」
「もう少しわかりやすく親しくなっていただきたい。スペ様がライリー様を特別に思っているのはわかるけど全然伝わってないもの」
「それお前が言うの?」
「どういう意味ですか?」
「今はいいや。どうすれば伝わるんだろうな」
「真摯に言葉と行動ですかね。でもスペ様には難しい。私の翻訳だと信じてもらえないですし」
「お前の翻訳を素直に信じる令嬢はまずいだろ。」
「私、来月から留守にするからそれまでにもう少し進展を」
「は?」
「贈り物作戦?」
「リリア、留守ってなに?」
「お父様と一緒に一月ほど隣国に行きます。料理とお友達作りを頑張ります。」
「本気?」
真剣な顔で見つめられます。
「リリア!!散歩に行きましょう」
ライリー様の声に立ち上がります。
「はい。スペ様も一緒に行きましょう。ライリー様の手をとってエスコートしてください。婚約者はどこに行くときもエスコートするものですよ。護衛はニコラスがいるから大丈夫ですよ。ニコラス、行きますよ」
「お前、勝手すぎる」
ニコラスの視線は気にせずにスペ様がライリー様に手を差し出したのを見守ります。そうですよ。どんなところでもエスコートが重要ですわ。
婚約者に手を差し出されて拒否する令嬢はいません。お二人が湖の周りを歩くので後ろをついて歩きます。
魚いるかな。たまには泳ぎたいな。今日は飛び込みませんよ。
やっぱり無言です。ライリー様の言葉に頷いてますね。ライリー様がリードするのがいいかもしれません。
「ニコラス、またプリンを作ってあげますからスペ様に女性をリードする方法を教えてください」
「公爵家で年上のブラッド様に無礼だよ」
「女性がきゅんとする仕草を」
「リリアはどうすればそうなるの?」
「こないだの王家のお茶会でケーキが出た時はときめきましたわ」
「食べ物につられて誘拐されるなよ」
「しません。失礼ですね」
「たぶん、あの二人は大丈夫だよ」
「全然大丈夫には見えません」
「リリア、ここを動くな」
ニコラスが剣を構えました。
少女が追われてます。犬ですか?ニコラスが追い払いました。
うん?これ、まずい。このままいけば落ちますよね。勢いよく走ってくる少女をとめようと腕をのばします。振り払うんですの!?まずいですわ。
「リリア!!」
パシャーン。
うん。落ちました。
「助けてくれてありがとう」
「どけ、邪魔だ」
なぜか力が抜けます。
泳がないといけません。でもこのまま目を閉じたくなってきました。
何かが聞こえる気がします。懐かしい・・。




