新しい家臣達
リリア視点
私はニコラスとセノンと一緒に別邸で生活してます。そこまで大きくないので使用人は雇っていません。夜会の時は本邸で支度してますが。ネス達との約束の期限が来ました。
「ニコラス、この屋敷に使用人を6人って多すぎますよね・・」
「増築?」
「必要ありません。4人共孤児院出て一緒に暮らしたいって。ネス達が来るならエルとエリもうちに来たいって」
悩みます・・。
「全員使用人希望なのか?」
「まだ子供なのに・・。一緒にいられればなんでもいいって」
「俺が預かるよ」
「本人たちの意思に反すること、危ないことさせないでください」
エルとエリは屋敷のことを任せることにしました。ネス達は二人を手伝ってもらいながら、勉強をさせてます。ネス達の修行はニコラスがつけています。危ないことさせないでと言ったのに本人が望んでると言われると見守るしかありません。
ここの主はニコラスなので、私は従うしかありませんが。
「ニコラス、お給金足りるかな」
「資産管理は俺がやるよ」
「なんでもできますね」
「俺は優秀だからな。それにいずれ引っ越しだろう」
「本当にいいんでしょうか・・・・」
「もう婿に入ったから任せればいい」
お兄様が来年、レトラ侯爵を引き継ぎます。レトラ領の領主は侯爵であるお兄様になります。ただレトラ侯爵は領にいないことが多いので領主代行が治めます。今はお父様の弟の叔父様が領主代行です。私がレトラに残るなら領主代行を任せたいと言われました。実際に任命されるのはニコラス・レトラですが・・。
「私の秘書官の任期は短かったですね」
「俺はリリアが引き受けるものと思ったんだけどな。」
「まさかイラ侯爵がレトラ領主代行なんて」
「人生、何があるかわからないだろう?」
「はい。イラ侯爵夫人候補、外交官、領主代行夫人、次は何になるんでしょうね?」
「さぁな。なにになろうと守ってやるから安心しろ。」
「はい。」
ニコラスが幸せそうに笑いました。結婚してから見せる笑顔に自分の心臓が早くなります。ニコラスは私を膝の上にのせるのを気に入っています。お姉様、結婚の実感はよくわかりません。でも大事にされてるのはわかります。
「レトラ領に引っ越すなら義母様も一緒に行きたいと言われたんですが・・」
「母上・・・。王都に来るたびに顔を見せると約束しておけば大丈夫だろう。でももし子供ができたら乗り込んでくるだろうな」
「カイロス様達に申しわけありませんね。妹がいれば違ったんでしょうか・・。」
「イラ侯爵家で生まれたら暴れ馬な娘に育ちそうだ・・。時々遊びに来たリリアでさえもお転婆娘に育ったからな。」
「失礼ですね。」
ネスとサアーダはエリ達の指導のもと、使用人の仕事を覚えています。サーファはニコラスが専属で欲しいと連れていかれてしまいました。オリはセノンのお世話係をお願いしました。
四人には護衛は任せてと言われましたが、私は子供に護衛はさせる気はありません。
レトラ領主代行を叔父様に教わりながらニコラスと一緒に執務をしているとサーファが音もなく現れました。ネス達はニコラスの直属の臣下という扱いなので屋敷の者は無礼を咎めたりしません。
「ニコラス様、シロが来るそうです」
「うん?」
「もうまもなく現れると。」
ニコラスが叔父様に退室をお願いしました。叔父様が出て行くと部屋に魔力の気配が現れました。目の前にはシロを抱いた隣国の王太子夫妻がいます。倒れそうになる体をニコラスが支えてくれました。倒れている場合ではありません。
「ごきげんよう。国境を超える手続きはされてますか?」
「咎められる前に戻る。久しぶりだな」
「今回は我慢します。転移魔法を教えてください」
「さすがに秘術は国外の者には教えられない」
「ではお帰りください。密入国です。」
「騎士を数人預かってくれないか?軍事の強化をしたくて」
「陛下を通してください。それにうちは武門貴族ではありません。ちゃんとした手続きをして出直してください」
「うちの大使にリリアを指名したのに断れたの」
「それが陛下と侯爵の判断なら従うしかありません」
「オリビア様とは週に1度お茶会してるなんてずるいわ」
「セノン、転移魔法で送り返せないか。ついでにうちに転移できないように。魔力ならいくらでもやるから」
「シロ邪魔。オリとならやる」
オリとセノンがいつの間にかいました。オリって魔法使えるの?いえ、私はオリは普通の子供でいてほしいから聞かなかったことにしましょう。オリがじっと見てきます。
「リリア、やる?」
密入国は許せません。ニコラスを見ると頷きます。オリの頭を撫でます。
「オリ、お願いします」
セノンを抱いたオリがクレア様達に手をかざすと姿がなくなりました。こんなに幼いのに転移魔法を使えるなんてすごいです。
「ありがとう。もう休んでください。疲れたでしょ?」
オリが片手を伸ばすので抱き上げます。
「ニコラス、休憩しましょう。」
ベルを鳴らすとエルがお茶を持ってきました。指示する前に用意しているのが凄いです。
嫌がるエルも座らせてお茶とお菓子をいただきましょう。
相変わらずクレア様達はなにをするかはわかりません。あの二人に仕える臣下は大変でしょう。
「ニコラスは人気者ですね」
隣でお茶を飲んでるニコラスが笑いました。
「俺はリリアだけの騎士だから。領主代行だから兵の訓練は引き受けるけど。ネスとディーンが鍛えてるから俺が出るまでもないけどな」
膝の上でプリンを食べてるオリを抱きしめます。
「うちの子たちは全然遊ばないから心配になります」
「遊びはリリアと一緒」
オリの言葉に嬉しくなりました。オリがやりたいことを言うなんて珍しいです。
「今度のお休みは皆でお出かけしましょうね。ニコラス、サーファを返してください。4人とエルを連れてピクニックに行ってきます」
「それは視察にならないか?」
「リリとして行ってきます」
「リリア、たまには俺と二人で過ごそうよ」
「子供を甘やかすのは大人の務めです」
拗ねた顔をするニコラスは放っておきましょう。サーファにはあまり会えないのでいつもお菓子を作ってニコラスに渡してもらってます。お菓子は最近はサアーダと一緒に作ります。サアーダは料理が気に入ったみたいです。
ネスはよくエルと喧嘩してます。仲良きことは素晴らしいことです。4人が少しずつ子供らしくなってきたことに安心します。お茶会はお開きでお仕事再開です。拗ねながらも手を進めるニコラスに背中に抱きつきます。当然のように頭に置かれる手に愉快になります。振り返ったニコラスに唇を重ねます。ニコラスは不意打ちに弱いんです。
「さっさと終わらせて二人でゆっくりするか」
「がんばってください」
照れた顔で笑うニコラスから離れて今度こそ仕事を再開です。先ほどよりスピードが上がってますね。
今日は手のかかる夫を甘やかしてあげます。ニコラスは実は寂しがりやです。結婚するまで知りませんでした。結婚してから、私はニコラスのことを全然知らなかったことに気付きました。自分しか知らないニコラスがいることに優越感を抱いているのは内緒です。




