第十二話 お茶会
私、今日は王家のお茶会に来ております。王太子殿下の婚約者のお見合い第二段ですね。
参加したくありませんが、婚約者のいない私に拒否をする選択肢はありません。オリビアを第二王子殿下が守られるなら大丈夫でしょう。
王妃様達のお話に相づちをうちながら王家のお茶を楽しみます。
今日のお菓子、見た事ありません。いつもは砂糖菓子なのに。
異国のお菓子のけーきみたいですね。
口に入れると甘くてふわふわします。これ美味しい。憂鬱だったけど王家のお茶会に来てよかった。
「レトラ嬢はお気に召したようね」
王妃様の声に顔をあげます。あれ、けーき食べてるの私だけ?
食べてはいけないルールなんてありませんよね?なんで?
どうしましょう。
「責めてないわ。異国のお菓子に一人だけ手をつけて美味しそうに食べる姿がね。さすがレトラ侯爵家ね。このお菓子はご存知?」
「本で読んだことはありますが本物は初めて見ました。作ることも材料を手に入れるのも大変だと諦めておりました。」
「最近、うちの息子は異国の文化に興味があるみたいで。」
「さすが聡明な王太子殿下ですね」
「このお菓子も息子が作らせたのよ」
他の令嬢達が王妃様の話に答えてくれます。私はこのケーキを楽しみたいのでありがたいです。
令嬢達は王妃様と王太子殿下のお目にとまるように必死です。
令嬢達が恐る恐るケーキを食べて驚いてますね。これおいしいですよ。王太子殿下は嫌いですが初めて感謝したくなりました。幸せ。私も自分で作れないかな・・。
恒例の庭園の散策の時間になりました。
お茶をして、庭園を散策してご挨拶して閉会です。王太子殿下は令嬢に囲まれています。
オリビアは王妃様と話してます。一人で散策しようかな。目立たないように庭園の隅に行きましょう。
殿下が婚約者を作らないことが一番でも、難しいですよね。殿下が断罪できないほど権力の強い婚約者なら不幸にならないのでは?。隣国の王女様?どうやって出会うんですか。
「レトラ嬢」
どうして私はいつも王太子殿下に見つかるのかな。一番背が小さいからでしょうか。礼をします。
「顔をあげて。お菓子、気に入ったか?」
「大変美味しかったです。ありがとうございました」
「さすがレトラ侯爵令嬢。あの菓子を知っていたとは」
「まさか食べられるとは思いませんでした。さすが王宮の料理人は腕が違いますね。あんな複雑なものを作り上げるなんてすばらしいですわ」
王太子殿下が笑いだしました。いつもの柔らかな笑みとは違います。
「随分様子が違うんだな」
「失礼いたしました」
「責めてるわけではない。不敬罪にしない。レトラ嬢にとってオリビアはどんな人物だ?」
無礼講だから好きに話していいってことですか。
「聡明で優しくて大好きなお友達です。友達思いすぎていささか暴走してしまうこともありますが、そんなところも大好きです」
「オリビアが公爵令嬢じゃなくても?」
「はい。ありえませんがオリビアが公爵令嬢ではなくても大好きなお友達です。誰よりも幸せになってほしい人ですわ」
「オリビアを王妃に」
「オリビアを想ってくださる方と幸せに。」
「王妃じゃなくてもいいと?」
「はい。恐れながら王太子殿下は相思相愛で一緒に国を背負ってくださる方をお選びいただければいいと存じます」
「レトラ嬢は王妃に興味はないのか?」
「私はできれば外国に嫁いで外交官をしながらお父様達のお役にたてればと。」
「変わっているな」
「よく言われます。」
「レトラ嬢、私と会ったことはないか?」
「前回のお茶会のことですか?」
「それ以外で」
「申しわけありませんが記憶にありません」
「そうか」
「王太子殿下、無礼を承知で一つだけお聞かせ願いますか」
「構わない」
「最近オリビア様をよく見つめているのはどうしてですか?」
「ある人にオリビアが悪い人には思えないって言われて見ていただけだ。」
ちゃんと私の言葉を聞いてくれたんだ。ちょっとだけ見直しました。
「王太子殿下、見つめ方に気をつけなさいませ。殿方に一心不乱に見つめられるのは怖いです」
「あのオリビアが?」
「はい。オリビア様もか弱いご令嬢です。それに見つめるよりも正直にお話ししたほうが早いと思いますよ」
「オリビアは怖い」
「年下のご令嬢になにを弱気な。王太子殿下の方が年も力も権力も上ですわ」
「あいつの論破は怖い。じっと見られると寒気がする」
まずい。オリビアにお説教される王太子殿下って笑えます。笑いがこらえられない。
「殿下、ごめんなさい。」
「笑っていい」
殿下の言葉に甘えて思いっきり笑いました。
「そんなに笑うか・・」
「だって殿下がオリビアを怖がってるって。ごめんなさい。確かにオリビアは暴走すると怖いですよ。王太子殿下、オリビアのモットーは三倍返しですから、きっとなにかしたんではありませんか」
「三倍?」
「はい」
「もしかしてこのまま見るのもまずいか?」
「否定はしません。オリビアの怒りに触れればどうなるか」
「お前、本当にそんなオリビアが好きなのか?」
「はい。完璧な人間なんていませんもの。駄目なところも可愛いですよ」
「完璧か。似たようなことをいわれたな。リリアと呼んでも?」
「命令でなければご勘弁を。他の令嬢達に目をつけられたくありません」
「皆、私の籠を欲しがるのに」
「欲しがる方に与えてください。どうぞ他のご令嬢のところに行かれてください。私はここでぼんやりしますわ」
「自分はさぼるのか」
「すばらしい庭園の花を愛でていますわ。殿下、いってらっしゃいませ」
「つれないな」
立ち去って行く王太子殿下を見送りました。
勘弁してください。私は王太子殿下と親交を深める気はありません。
庭園の一番隅のこの場所で王太子殿下と話していたことを誰にも見られてないことを祈りましょう。
その後は散策時間の終わりまでぼんやりして終わりました。
今回もお茶会が終わって良かったですわ。
今日も変わらず、外交官のお勉強です。
私が断罪されるのは15歳の時。15歳だと未成年のため外交官にはなれません。
亡命する先の用意だけは必要です。
久々に屋敷に帰ってきたお父様に相談しましょう。
「お父様、外国のお客様が来る夜会に私も参加したいです」
「リリー、どうしたんだい?」
「外国のお友達がほしいです」
「お友達か。来月から一月ほど隣国に行くからついてくるかい?」
「お父様大好きです。私、ちゃんと良い子にします」
「船旅だよ」
「大丈夫です」
楽しみです。異国の料理とお友達を探します。
オリビア、ちゃんと亡命先を作ってくるから安心してね




