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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
番外編

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成長記録10 お嬢様の被害者

お嬢様が珍しく坊ちゃんの手合わせを見ている。


「やっぱり見えない」

「リリア様、どうしたの?」

「やっぱりニコラスの訓練は見えません。」

「坊ちゃん、魔法を使うから」

「どうして、剣の天才なんですか?」

「坊ちゃんが強いから」

「魔法を使わなければ、見えますか?」

「坊ちゃん、素早いからなぁ。お嬢様には見えませんよ。」


坊ちゃんは残念ながら負けそうだ。最近勝ち星がつくけど、まだ上級者には勝てない。吹き飛ばされた坊ちゃんが立ち上がったのを見て、お嬢様がパチパチと拍手をしている。お嬢様、どこに拍手の要素があったんですか。


「ニコラスせっかく見えたのにまた見えなくなりました」


これは一本取られたな。坊ちゃんの剣が飛ばされた。

剣を取りにいく坊ちゃんがお嬢様に気づいた。


「お疲れ様です」

「来てたのか」


お嬢様が横に置いていたバスケットを持ちあげてにっこりと笑った。


「はい。差し入れ持ってきました。休憩しますか?」

「いや、負けたままは情けないからな」

「行ってらっしゃい」

「見てんの?」

「駄目ですか?」

「まさか。」


じっと見るお嬢様に坊ちゃんが照れた笑いを返し、騎士のもとに戻って行った。

これは坊ちゃん負けられない。お嬢様の前では情けない姿を見せたくないよな。


「リリア様、坊ちゃん応援しないの?」

「集中してるのを邪魔したくありません。あのお顔の時は声をかけたらいけません。それに私の応援なんてなくても勝ちますよ」


お嬢様がすごい自信満々に笑っている。これは映像に撮ったら坊ちゃんは喜んだかな。

確かに、坊ちゃん調子が良さそうだ。おぉ。勝てそうだな。坊ちゃんも強くなったよな。坊ちゃんは気分にムラがあるんだよな。気合いが入っているときはだいたい勝つけど。


坊ちゃんを見てお嬢様が満足そうに微笑んだ。


「迷いがなくなりました」

「リリア様?」

「意地悪な人がいるんです。ニコラスの剣は野蛮って言うんです。私はじっくり見たわけではないのでうまく言い返せなかったんです。次は負けません」

「リリア様、あんまり喧嘩してはいけませんよ」

「正しいことをお話するだけです。」


なんか不穏な会話してないか。お嬢様に近づく男はノエル様が排除しているはずである。


「リリア、野蛮以外になにか言われた?」


いつの間にか坊ちゃんが会話に混ざっていた。お嬢様が人差し指を口元にあてて、無邪気に笑っている。


「内緒です」

「俺のことじゃなくて、リリアに関すること」


お嬢様がきょとんとした。


「お断りしました」

「何を?」

「騎士になって守ってくれるって。リリーはニコラスがいるからいりませんって。ならお友達になって遊びに連れてってくれるって言われたけど、お断りしました。お外に行くのはニコラスと一緒だもの。」


坊ちゃんがお嬢様の頭を撫でる手は優しいのに、嫌な予感がする。


「よくできたな。誰に?」

「お名前は聞いてないから知りません。でも王宮でよく会うんです。ちゃんとニコラスの剣は野蛮じゃないよって教えるので安心して任せてください。社交はリリーのお役目です」

「リリア、今度名前をしっかり聞いておいて。俺も挨拶したいから」

「いりません」

「イラ侯爵家の務めがあるから」


後日、坊ちゃんはやっぱりお嬢様に付きまとっていた男の家に乗り込んで行った。坊ちゃんがよその騎士を倒すから、どんどん坊ちゃんの名前が有名になっていく。剣の天才が相手にしているのはお嬢様に近付いた男ばかりと気づいてる人間はどれだけいるんだろうか…。


***

今日は伯爵家の兄弟騎士がうちの訓練に参加するらしい。坊ちゃんは旦那様にもてなしを命じられている。うちと関係のない伯爵家の参加はめずらしい。兄は成人しているが弟は坊ちゃんの2歳年上らしい。

もてなしと言っても挨拶して案内するだけだ。


「ニコラス!!」


お嬢様がバスケットを抱えて遊びに来た。

さすがに今日は坊ちゃんは遊んであげられませんよ。


「どうした?」

「新作ができました!!力作です」


ニコニコしているお嬢様に坊ちゃんも嬉しそうだ。

会うのは久しぶりだからか。最近、お嬢様は忙しいらしい。


「ありがとう。今日はどうしたんだ?」

「イラ侯爵夫人にお呼ばれしました。お母様の予定が合わないので代りです」


旦那様達は時々お嬢様を呼んで、お茶会を楽しんでいる。坊ちゃんにもてなしを命じたのはお嬢様が来る予定があったからか・・。旦那様がお嬢様に会える機会は少ないからな。


「母上か、」

「お母様がしっかりお勉強してきなさいって。ニコラスのお母様をお借りしてごめんね」

「それはいいよ。今日は邸内で過ごしてくれないか?」

「え?」

「後で、迎えに行くよ」


坊ちゃんは今日来る兄弟にお嬢様を会わせたくないんだろう。


「馬屋も駄目ですか?」


「リリア様!?」


坊ちゃんっていつもタイミングが悪いよな。伯爵兄弟が来た。兄の方は王宮騎士団で見たことあるけど、なんでうちに来たんだろう。弟に声をかけられたお嬢様が礼をしている。


「リリア様、まさか俺に会いに来てくれたの?」


嬉しそうな弟にお嬢様がきょとんとしている。坊ちゃんがお嬢様の肩を抱き寄せた。


「リリア、母上が待ってるからそろそろ行かないと。今日は護衛騎士をつけるから離すなよ。」


俺は坊ちゃんの視線を受けて、お嬢様と仲の良い騎士を呼んだ。坊ちゃんの様子を見た同僚は苦笑して頷いた。


「終わったら遊んでやる。新作の話もその時に聞かせて。」


お嬢様が嬉しそうに笑った。お嬢様は料理の新作ができると坊ちゃんに自慢しに持ってくる。お嬢様の長い新作の話に付き合うのは坊ちゃんくらいだ。令嬢が料理をするのは珍しいので、サン公爵令嬢には話せないらしい。ノエル様とは、お嬢様が話を聞く側らしい。坊ちゃんも聞き上手だから余計に楽しんだろう。


「はい。行ってきます。ニコラスもお務め頑張ってください」

「リリア様、行きましょう。荷物預かりますよ」

「これは、ニコラスであとは騎士の皆様で。」

「ありがとうございます。」


お嬢様は時々俺達にも差し入れをくださる。侯爵令嬢の手作りを食べられるのは俺達だけだと思う。

お嬢様は礼をして騎士と共に立ち去った。


お嬢様に話しかけた弟は茫然とお嬢様を見ていた。兄はおかしそうに笑っている。嫌な予感がするんだけど俺は坊ちゃんを止めないといけないだろうか・・。

坊ちゃん達が挨拶を交わしている。今日はお嬢様は絶対に訓練場には近づかないだろうな。あいつはお嬢様と仲が良いから、うまく誘導するだろう。


「ここの御曹司は強いな」

「弟君も中々かと思いますよ」

「うちの弟は御曹司に勝てるかな」

「さぁ。まぁうちの坊ちゃんは負けず嫌いなので。うちのお嬢様は知りませんが心身共に折るの得意なんですよ」

「うちの弟も中々打たれ強いよ」


坊ちゃんは弟君との手合わせにはあっさり勝った。彼も筋は悪くない。でも坊ちゃんは自分の才能に驕らず、努力を重ねている。早朝の訓練もかかさずやっている。あの二人はいつまで続けるんだろうか。坊ちゃんに負けても挑む弟君の根性は認める。もう夕方なんだけど。兄は止める気はないようだ。二人共、負けず嫌いだから自分達で終える気はないんだろうか…。


お嬢様が一戦おえても再戦をくりかえす二人にため息をついた。


「そこまでです。イラ侯爵夫人より言付かってます。双方剣をおさめてください」


奥様、おもしろがってお嬢様を送りこんだな。お嬢様の声に二人が剣をおさめた。坊ちゃんが一瞬嫌な顔をした。お嬢様は坊ちゃんをじっと見た後、膝をついた弟君の隣に座って手をとって笑った。


「無理をするなとは言いませんが、ほどほどにしてください」


お嬢様を見つめる男に坊ちゃんが不機嫌な顔をした。座り込んでるお嬢様に手を差し出すと、お嬢様は坊ちゃんの手を取って立ち上がった。


「ニコラス」

「悪い。夢中になった。」


お嬢様が坊ちゃんを睨んだ。


「お友達と仲が良いのはいいことですが、私のことも忘れないでください」

「お前だってオリビア嬢といると俺のこと忘れるだろうが」

「そんなことありませんよ。早くお役目を果たして、残りの時間はリリーにください」


お嬢様は坊ちゃんの機嫌を取るのがうまいよな。拗ねるお嬢様を宥める坊ちゃんの様子を見て兄が笑っている。


「リリア様は御曹司の手はとるんだな」

「はい?」

「転んだ時に手を差し出しても、大丈夫って一人で立ち上がるんだ。うちの弟が何度手を差し伸べても手を重ねなかった。さすがに衝撃を受けてるな。御曹司は無意識に俺の弟の心を砕いたな。」


訓練はお開きになった。坊ちゃんは挨拶をした後の見送りは俺に押し付けた。


「兄上、リリア様はうちにも誘ったら来るかな?」

「お前、まだ諦めないの?」

「初めて声をかけてもらった。それに俺の心配してくれた」

「お前はバカなのか」

「ニコラスと仲が良いのは幼馴染だからだろう?とりあえず俺はここに通わせてもらおうかな」


坊ちゃんの至福の時間を減らすのはやめてほしい。お嬢様と二人っきりのお茶会の時間を邪魔されるのは可哀想だ。


「お嬢様は最近忙しいのであんまりうちに来ませんよ」

「王宮騎士団にまた通おうかな・・。」

「お前さ伯爵家が侯爵家の令嬢を迎えるなんて無謀だろうが」

「レトラ侯爵はリリア様を溺愛しているからリリア様が望めば可能性はあるって教わった。まだ婚約者はいないようだし。」

「いや、たぶんもう候補は決まってるよ。諦めないなら止めないけど。ディーン、うちの弟を頼むよ」

「すみません。俺は坊ちゃんだけで手一杯です」


弟君は時々家に来るようになった。

お嬢様のお転婆ぶりに夢が崩れたようだ。まさか侯爵令嬢が木登りをできるとは思わないよな。教えたのは坊ちゃんだけど・・。風魔法の練習に木の上から飛び降りたお嬢様を坊ちゃんが慌てて受け止めた。拗ねるお嬢様に説教する坊ちゃんの様子を見て、自分の知るお嬢様との違いに茫然としたらしい。だんだんお嬢様を見る目がかわっていった。恋敵がいなくなって良かったですね。坊ちゃん、お嬢様の周りの男の排除をしなくても、このお嬢様を引き取れるのは坊ちゃんだけかもしれませんよ。


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