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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
番外編

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成長記録1 坊ちゃんとお嬢様

読んでいただきありがとうございます。

成長記録は記録係のディーン視点のお話です。

うちの坊ちゃんは負けず嫌いだ。まだ子供の坊ちゃんが大人の騎士に敵うのは無理だ。

きっとまた騎士に手合わせを頼みに行くんだろう・・。

捕まった騎士が手合わせしてる。イラ侯爵は坊ちゃんには徹底的に力の違いを見せろと俺達に命じている。容赦も甘さも不要と。そこまで厳しくしなくていいと思うんだけど。まだ5歳だ。5歳にしては十分強いんだが・・・。また坊ちゃんが負けたな。泣き言も言わずに礼をして去って行くところは凄いよな。騎士達は坊ちゃんを可愛がっている。将来のイラ侯爵の成長を見守るのはなかなか有意義だ。この後は素振りに行くんだろうな。明らかにオーバーワークだ・・・。止めても倒れるまでやめないのはうちの常識だ。

騎士達は坊ちゃんの限界が近づいたら手合わせを申し込まれないように身を隠すようにしている。がむしゃらにやるだけが訓練じゃない。だから大人が調整してやらないといけない。


坊ちゃんは素振りをはじめた。しばらくすると倒れた。また回収するか・・。


「ニコラス!!」


倒れた坊ちゃんにお嬢様がかけてきた。旦那様と奥様が溺愛しているレトラ侯爵家のリリアお嬢様だ。


「ニコラス、起きて、ニコラス!!」


お嬢様が泣きそうな顔で呼びかけてる。これは奥様が絶対に映像に残せと命じる光景だよな。


「お嬢様、寝てるだけだからご安心ください。頭いたそうだからお膝貸してさしあげてください」


お嬢様は坊ちゃんの頭を膝にのせて心配そうに見つめている。坊ちゃんにマントをかけて、傍を離れることにした。そのうち目を醒ますだろう。


「リリア、来てたのか」

「よかった。起きなかったらどうしようかと」


お嬢様がポロポロと泣き出した。


「え?おい、どうした、」


起き上がった坊ちゃんにお嬢様が抱きついて泣いている。これで坊ちゃんの無理が減るといいんだけど。



「ニコラス、倒れてて、呼んでも」

「ごめん。疲れてただけ。そんなに泣くなよ。俺、汚れてるからくっつくな」

「うっ。」

「昼寝してただけだよ。今日はどうした?」

「遊びにきた。お兄様、いない」

「そうか。着替えてくるから離れて。木登りするか」

「うん」


坊ちゃんの言葉に涙を拭いて満面の笑みで頷くお嬢様は大丈夫だろうか。楽しそうだからいいか。

結局坊ちゃんの無理する癖は治らなかった。倒れた坊ちゃんを見つけるとお嬢様は膝枕をして毛布をかけて起きるのを待つことが日課になった。坊ちゃんも慣れたのか、動じなくなった。


***


坊ちゃんが7歳になる頃には騎士相手に勝ち星をつけるようになった。他家門の騎士達が坊ちゃんを見て剣の天才児と呼んでいた。坊ちゃんはセンスはいい。ただあれが努力の結果とはイラ家門の秘密である。


最近お嬢様は元気がない。レトラ侯爵と兄のノエル様が長い外交に出たらしい。

レトラ侯爵夫人が部屋で落ち込んでるお嬢様を見て、ここに連れて来られた。レトラ侯爵夫人はお嬢様をイラ侯爵家に預けて、王宮に参内していった。坊ちゃんが遊びに誘ってもうわの空である。


「リリア、遊ぼう」


首を横にふっている。お嬢様はノエル様を慕っているらしい。ノエル様がいなくなり食事も細くなったとレトラ侯爵夫人が心配していた。


「出かけるか。」


坊ちゃん!?


「お前が護衛でついてくるんだろう?」


奥様俺に隠れて護衛を命じましたがバレてます。

使用人に馬車の手配を命じたけど、まさかお嬢様を連れていくんですか!?

坊ちゃんがお嬢様の手を引いて馬車に乗せローブを被せてるのにお嬢様はぼんやりと外を見てお兄様と呟く・・。坊ちゃんのローブの予備なので少し大きいか・・。


「ニコラス、どこに行くの?」

「さぁな。リリア、絶対に俺の手を離さないで。俺のことはラスって呼んで」

「うん」


馬車を降りた二人を追わないとな。坊ちゃん、お忍びで出かけるのが好きなんだよな。護衛を撒くのを楽しんでるとは思いたくない。


「わぁ!!すごい。人がいっぱい。お店がいっぱいある」

「行こう」


坊ちゃんが串焼きやの前で止まり、串焼きを買ってお嬢様に渡すときょとんとした顔でお嬢様は串焼きを見てる。

坊ちゃんの食べる様子を見て、お嬢様も真似して食べたけど・・。


「あつい」

「気をつけて食べろっていっただろ?」

「うん。はじめて、おいしいね」

「そうか。まだ色々あるよ。リリの好きな甘いものも。食べたい?」

「うん」

「それ食べたらな」


お嬢様がニコニコしながら串焼きを食べて、いつもの元気なお嬢様に戻ったな。

お嬢様が店主に礼をしようとするのを止めて、坊ちゃんが強引に手をひいていくな。

坊ちゃんの手を離してフラフラと歩き出すお嬢様の手を必死に握る坊ちゃんの必死さに笑える。

もう帰ろうと坊ちゃんが必死でお嬢様を宥めてる。まだ帰りたくないと言うお嬢様を坊ちゃんが必死で説得してる。あれ、大丈夫か・・。


「ニコラスの意地悪」

「また連れてくるから今日は帰ろう」

「本当?」

「ああ。」

「約束?」


お嬢様の差し出す小指に坊ちゃんも指を絡めて約束してるけどいいのか!?

お嬢様も坊ちゃんと一緒にお忍びすんの!?

奥様、護衛増やしてください。俺一人だと、この二人は手に終えません。



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