第百十四話 悪あがき5
私は襲われていた王太子殿下を保護して隣国に逃げてきました。
呼び鈴が鳴ったのでドアを開けるとクレア様がいました。
中にお通しします。
「リリア、服はこれを着て!!ギルバート様の分も用意したわ」
「ありがとうございます」
「着替えて、」
クレア様の勢いに負けて着替えました。この服って・・。
「お揃いにしたかったの!!」
クレア様のお揃いの服・・。複雑です。
「ケーキ持って来たの。食べよう」
クレア様が用意してくれたケーキをいただきます。美味しい。生きてて良かった・・。
「クレア様、追っ手が来ないか調べたいんですが」
「リリア、絶対に来ないから大丈夫よ」
「え?」
「任せて。私は王太子妃よ。しかもここはお父様の領地。不穏な輩は近づけないわ。だから安心して過ごして。ずっといてもいいわ」
「ありがとうございます。でも巻き込むわけには」
「大丈夫だから。ここが一番安全よ。情報操作も覚えたの。結婚式のお礼よ。どこか行くなら追いかけるからね」
「リリア、甘えさせてもらおう。最近忙しかったから私も休みたい。」
「ギル様…。わかりました。クレア様、お気遣いはありがたいんですが、ちゃんとご公務が終わってきたんですよね」
「うっぅ」
「ご公務が終わってから遊びにきてください。そうしないと夜逃げします」
「帰るからちゃんとここにいて。お勉強大変で」
「私にできることならお手伝いしますよ。家の中でできることなら」
「本当!?お手紙の書き方と外国語教えてくれる?」
「わかりました。ただし第二王子殿下の許可をとってくださいね」
「うん。そうすると殿下もお仕事持ってきそう」
「ギル様は手伝わせないですよ」
「リリア、私は構わないよ」
「ギル様、甘やかしてはいけません。いつ危険が迫るかわかりません。しっかり休んでください。クレア様お気をつけてお帰りください」
「うん。また明日くるわ」
帰っていくクレア様を見送ります。
「自由だな。」
「この国は大丈夫なんでしょうか」
「優秀な臣下がいれば問題ないだろう。リリア、散歩に行かないか?」
「そうですね。近くを調べないといけません。セノン、行く?」
「セノン、お留守番。プリン」
「材料を探してきますわ。殿下、ローブが一着しかありません」
「リリア、ローブは逆に目立つかもしれない。このまま出かけよう」
王太子殿下と家を出て少し歩くと市があります。
この国の料理は美味しくないんですよね・・。
卵が欲しいんですが。
「こんにちは。卵は置いてませんか」
「奥さん、この村にきたばかりかい?」
奥さん?王太子殿下に腰を抱かれるのはなんでですか・・。
「ああ。来たばかりで勝手がわからなくて困ってるんだ」
「卵ならここを行った先の牧場でもらえるよ。かわいい嫁さんだから旦那も大変だな」
「ありがとう。また」
「幸せにな」
「ギル様、慣れましたね」
「良い教師がいたからね。久しぶりだな。」
王太子殿下に差し出される手に手を重ねます。
「ギル様は何か食べたい物はありますか?」
「いや、とくには」
「いつもそればっかりですね。牧場はあそこでしょうか。牛がいっぱいいますわ。すごいです。飼い方を教えてもらいたいです」
「どうしたんだい?」
牛の世話をしていた男性が声をかけてくれました。
「こんにちは。卵を売っていただきたく」
「こっちに来たんか。卵は裏だ。嬢ちゃん、牛が好きなんかい?」
「ミルクがどうやってできるか知りたくて」
「時間はあるんかい?」
「ギル様・・」
「リリ、いいよ。教えてもらいな」
「ありがとうございます!!お願いします」
「嬢ちゃん、その恰好だと汚れるよ」
「洗うので構いません」
「そうかい。おいで」
男性の後について行きます。
「お嬢ちゃん、牛を驚かせないようにな。牛の見えるところからゆっくり近づきな。触ってみるかい」
「いいんですか?」
「ああ。ゆっくりな」
「牛様、失礼しますね」
そっと手を振れると暖かい。気持ちが良いですわ。
「上手だ。せっかくだからミルクを絞るかい?」
「ええ!!是非」
男性に習ってそっと掴むとミルクがでました。すごい!!
「でん、ギル様、すごいですわ。ミルクです」
「嬢ちゃん、飲んでみな」
コップに入れてもらったミルクを口に含みます。
「暖かくて美味しいです。牛様貴重な恵みをありがとうございます」
「牛様って嬢ちゃん面白いな。旦那もこんな可愛い嫁さんもらって幸せ者だな」
「あの、また来てもいいですか?」
「いつでもおいで、卵も渡してやろう。」
男性についていくと鶏がたくさんいます。
「ギル様、私、こんなにいっぱいの鶏はじめてみました」
「ほれ嬢ちゃん持ってきな」
籠にいっぱいの卵をいただきましたが、こんなに・・。
「お代を」
「いらないよ。可愛い女の子にはサービスだ。また遊びにおいで。旦那はこっちな」
「ありがとうございます」
王太子殿下がミルクを貰ってます。これでプリンを作ってお礼に持ってきましょう。
「また来ます」
「またな。転ばないように気をつけてな」
礼をして家を目指します。
「ギル様が色々もらってきた理由がわかりました。これでプリンが作れます。後は何を作りましょうか」
「リリは一人で出歩かないで。危ない気がする」
「ギル様にそのままお返ししますわ。」
家に帰るとセノンはお昼寝してました。
「ギル様、氷の魔石をまたいくつかいただけますか?」
「いいよ」
王太子殿下に魔石をいただきました。これで簡易の蔵を作りましょう。
私はプリン作りをはじめましょう。
「リリア、手伝おうか?」
「大丈夫です」
作業をすすめましょう。器が足りなかったので鍋とボールに大きいプリンを作りました。
土と火属性の魔法が使えればいいんですが私には使えません。
セノンが起きてきました。
「リリア」
「どうぞ」
セノンにはコップに作ったプリンを出しましょう。
「セノン、大きいのがいい」
鍋のプリンを見ています。
「あれは大きいから食べきれないでしょう」
「セノン、食べる」
「お皿に出すから待ってて」
「セノン、そのまま。中入る」
「え?」
セノンが鍋の中に入っていきました。出たら洗浄魔法をかけましょう。
最近、プリンはお預けだったしいいかな。
セノンを見ながら私は王太子殿下とプリンを食べることにしました。自分よりも大きいプリンを、食べるセノンのお腹はどうなってるのかしら…。




