第百十三話 悪あがき4
神官に用意していただいたので出立します。
服だけでなく食料まで分けてもらえるとは。帰国したら寄付金を持ってお礼に伺いましょう。
馬を預かってくださると言うのでご厚意に甘えます。
ニコラスならここに辿り着くでしょう。これ以上は足取りを見つからないようにしないといけません。
歩いて街を目指します。
「リリ、平気か?」
「船まで頑張ります。荷物すみません」
「構わない」
偶然商人の馬車が通ったので乗せていただいたおかげで明るくなる頃には港につきました。港を歩きます。
どの船にしようかな。
「巫女様、どうされました?」
「巡礼の旅の途中なんですが、」
「それは目出度い。うちの船に乗りますかい」
「よろしいんでしょうか」
「どうぞ。どうぞ。」
商人に案内されて船に乗り込みます。
「感謝申し上げます。この旅に神のご加護がありますことを」
巡礼の旅を助けると神の加護があると言われています。
波が穏やかになるように祈りを捧げながら魔法を使います。巡礼は常に祈りを捧げてばかりです。
無事に出航しました。祈る振りをしながら風と波を魔法で操ります。風が気持ち良い。
「リリ様、リリ様、そろそろ起きてください」
「でん」
口を押えられて気付きました。失言でした。
「すみません」
気付いたら眠ってしまいました。王太子殿下の手を借りて立ち上がります。
安全な船旅に感謝の祈りを捧げて上陸します。
着いたのは隣国ですか…。まずは教会か神殿に行かないといけません。追手が来るならまた船に乗せてもらいましょう。
「リリア、あれって」
耳元で囁く王太子殿下の視線の先を追うとおかしいです。
いるはずもない人がいます。
「どうしましょう。気づかないふりをしますか?」
「たぶんもう遅い」
どうして隣国のセシル第二王子殿下と妃殿下のクレア様がいらっしゃるんでしょうか。
目立ちたくないんです。
なんでわかりますの!?。王太子殿下の後ろに隠れましょう。
「これは、驚いた」
空気を読んで近づかないでほしかったです。なんでヴェールを被ってるのにわかりますの!?
セシル第二王子殿下・・。
「お初にお目にかかります。巫女のリリと申します。巡礼の旅をしております」
「神殿まで馬車で送ろう。その後是非お話を聞かせていただきたい」
「神のご加護がありますように」
馬車に乗ったので防音の結界をはりました。
「リリア、会いたかった!!」
「お久しぶりです。クレア様、私達がここにいることは極秘でお願いします。リリア・レトラは療養中です」
たぶん・・。ディーンがお父様に報告してくれるはずです。
ディーン、生きてますよね!?ニコラスなんかに負けて死んだら許しません。
負けてもいいけどちゃんと生き残ってください。
「どうして、港に?」
「クレアの趣味だ。外交官としてリリアが乗ってるかもしれないってよく見にくるんだ」
「止めてください」
「別にいいだろう。どうしたんだ?」
「巡礼の旅です。物騒なので護衛をつけました」
「リリ」
「せっかくなので上位巫女を目指そうかと思いまして」
「リリア、諦めよう。バレてるよ」
王太子殿下に肩を叩かれます。
「命を狙われいるので逃げてきました。ほとぼりがさめたら帰ります」
「ニコラスはどうした」
「ニコラスは敵です。居所教えたら絶交します。顔も見たくありません。」
「ニコラスは弟の方についたかもしれない。さすがのリリアも剣をむけられたのはショックだったらしい」
「別にショックではありません。敵に情報をやすやすと渡した自分に悔いてるだけです。あれは敵です」
「事情が」
宥めようとする第二王子殿下を睨みます。
「第二王子殿下、それ以上言えば怒りますわ」
「あいつがリリアの敵に回るとは思わないんだけど」
「馬車止めてください。おります。ニコラスの味方は信用できません」
「リリア、それなら殿下を降ろすわ。ニコラス様に居場所を教えたりしないわ。私、隠れ家作ったから使って」
「隠れ家?」
「リリアが亡命したときに使えるように、エクリ公爵領に作ってもらったの」
「うん?亡命の話しました?」
「リリアを養ってあげるって言ったでしょ?そこを使って。リリア達がうちにいることは極秘にするわ」
「俺はリリアの味方と言っただろうが。護衛騎士も貸してやるよ」
「いりません。どこから、情報が漏れるかわからないので。」
「二人だと危ないだろ」
「危なくなったら逃げます。」
「情報集めてやるよ。うちからは第二王子との交易は拒否するよ。」
この人は何を言ってるんでしょうか。
「本気だよ。捨てられたら報復してやるって言っただろう?うちの国は戦争は強いよ」
「やめてください。そんなこと望んでいません」
「お祈りすませたら、送るよ」
「神殿までで結構です。目立ちます」
「クレアが例の家によく行くのは有名な話だ。お前、全然寝てないだろ?」
「仮眠は取りました。」
「いつもの勢いがない。」
どういう意味でしょうか・・。
神殿についたので、お祈りをすませました。
なぜか神殿長にお茶を誘われましたが辞退しました。
第二王子殿下がうるさいので、ご好意に甘えて宿をお借りすることにしました。
小さい邸宅なので、使用人はいりません。
疲れていたのかベッドに入ったらすぐに意識がなくなりました。
「リリア、おきて、」
セノンに起こされ目覚めました。
なぜか机の上には材料がたくさん置いてあります。
使えってことでしょうか・・。
セノンのミルクを用意して、ご飯の用意をはじめましょう。
「リリア、起きたか」
「おはようございます、ギル様、それは」
「周りを散策していたらもらった。」
どうしてパンやフルーツなど食べ物を渡されているんでしょうか。うちの王太子殿下も、端正な顔立ちをしていますものね。
「あんまり出歩くと危険ですので一人で出歩くのはお控えください。せっかくなのでいただきましょうか」
食事の用意をして王太子殿下と食事をしました。
いつまでここにいようかな。
情報を手に入れる手段を探さないといけません。




