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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
17歳編

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第百九話 東国

私は東国の皇帝陛下に挨拶をして帰国することになりました。皇帝陛下が怯えられましたが気にしません。


「レトラ侯爵、リリア様このたびは申しわけありませんでした」


宰相に頭を下げられました。


「わが国の悪魔を退治していただいたことを心より感謝申し上げます」

「お力になれたなら光栄です。」

「なんと謝罪すればいいか」

「この討伐は冒険者様や私の護衛騎士の力のおかげです。私がしたことは微々たることです」

「寛大な心遣いに感謝致します。」

「冒険者様への謝礼と私達に非がないことを認めていただければ充分です」


本当は投獄されたことについて文句を言いたいですが立場上許されません。

お父様が宰相と言葉をいくつかかわし、礼をしたのでお父様の行動に合わせて立ち去りました。


「お父様、どうするんですか?」

「様子見かな。この国は荒れそうだから急いで出立だ」

「セノンとネス達も船に乗せていいですか?」

「セノンは隠しておきなさい。ネス達の亡命の手続きをとろうか。リリアは覚えているかい?」


ネス達は東国に帰る気持ちはないようなのでレトラ領に保護することになりました。国に帰ったら孤児院に送りましょう。その書類も船の中で作りましょう。今回の件でニコラスもネス達を受け入れてくれました。抜け出したネス達のイラ侯爵への弁明はニコラスがしてくれるそうです。


***


帰国してしばらくするとお父様の感が当たりました。

東国では反乱がおきました。悪魔の召還をしたのが皇女様であることが民衆に知られたようです。悪魔を討伐した者を処罰しようとしたことも。まさか反乱を手動したのは宰相とは思いませんでした。反乱の知らせと新しい皇帝陛下より即位式の招待状が来たときは固まってしまいました。即位式はお父様が参列される予定です。お父様は2月ほど滞在され東国との貿易を整えて帰ってきました。レトラ家の外交官を東国に派遣し、外交についてフォローをしていくようです。国王陛下はお父様の働きに満足しお褒めの言葉をいただきました。私はお父様のお土産を見て驚きました。私の書いた物語に似たお話の小説でした。詳細は違うんですが、根本的な流れは同じです。ニコラスは隣で笑ってました。お土産でお菓子をいただいたのは嬉しいです。レトラ侯爵家の名に恥じない外交の成果はさすがお父様です。私は外交官らしきことはなにもしてません。悪魔の討伐を手伝って皇子様に喧嘩を売ったくらいです。

私は外交官になれるんでしょうか・・。



***


私は久々のお休みなのでレトラ領の孤児院に来ています。

屋敷を抜け出したネス達のことはニコラスがイラ侯爵に申し開きをしてくれました。

私はネス達を利用したことに謝罪したんですが受け入れてもらえませんでした。むしろ命令を守らずごめんと謝罪されました。良い子達です。私はこれ以上この子達が利用されないように手を尽くそうと決めました。


ネス達は孤児院に馴染んではいませんが元気そうで安心しました。なんとオリが私の膝の上で大人しくしています。無表情なのは変わりませんが進歩です。


「リリア、帰りたい」


ネスの言葉に首を傾げます。


「東国に?」

「違う。リリアと一緒がいい」

「ここは落ち着きませんか?」

「リリアの近くが居心地がいい」


ネスの言葉が嬉しい。自分でほしいものを見つけて口に出せるようになれたことが。ネスの頭を優しく撫でます。気持ちよさそうに目を細めるネスの願いを叶えてあげたいけど今は駄目なんです。


「ネスのお願いは嬉しいんですけど今は駄目です。私の傍って不穏なんです。最近は矢の雨が降りました・・・」


ニコラスの風の結界のおかげで無事でした。


「護衛は私に任せて」

「サアーダは隠密が得意だろうが」

「ネス、いつもリリアと一緒。ずるい」


保護した私の傍が安心するということでしょうか。話す言葉が増えたサアーダの変化も嬉しい。ただ危険なことはさせたくありません。


「時々会いに来ますよ」

「嫌」


即答されました。悩みます。


「1年間、この孤児院で色んなことを覚えてください。しっかり学んで遊んでください。1年後私のもとで働きたいというなら受け入れます。護衛、外交官、使用人くらいの選択肢しかありませんが。せめて12歳くらいまでは孤児院で過ごしてほしいけど、うん、嫌なんですね。わかりました」

「なんで1年?」

「1年すれば私は成人します。成人して仕事をすればお給金をもらえます。そうすれば4人をしっかり養ってあげられます。」

「リリア、東国で俺達の力を使う時に謝ったけど、これからも力が必要なら教えて」

「え?」

「俺達はリリアに出会わなけれな人殺しの道具だった。命令に従うだけだった。でも今度は俺達の意思で動くよ」

「僕、隠密はネスより得意」

「子供としてみないで。ちゃんと俺達の能力を使って。」


頼もしいことを言うネスとサーフアの頭を撫でます。

この二人はきっと将来格好良くなります。


「ありがとう。気持ちは嬉しいけどまだまだ子供です。私はいつも手伝ってくれる頼もしいネスも皆の面倒をみてくれる優しいサアーダも元気なサーファも賢いオリも大好きです。いつかあなた達が背伸びをしないで幸せになれる日がくればいい。もし大人になって私に仕えてくれるなら喜んで受け入れます。やりたいことがあれば応援します。今は子供の時間を楽しんで。落ち着いたら一緒に市に行こうね。きっと王位争いが落ち着けばもっと自由になるから」

「王位争い?」

「そう。王子様達が兄弟喧嘩してるの。私は兄のギルバート殿下を応援しています。彼は私が出会った王子様の中で一番立派な人だから」

「どんな人?」


ネス達の言葉が増えて嬉しいです。知りたいことが増えるのは大きな進歩です。何もわからず戸惑っていた頃と比べたら断然。


「優しいくて頼りになる人です。誰よりも民のことを思ってくれる。私は殿下の作る優しい国のために頑張ります。なにより私の大好きな未来の王妃様のためにね。この戦いに生き抜いて絶対に幸せになってもらうの」

「オリ、手伝う」


オリが話すのは珍しいです。オリをぎゅっと抱きしめます。


「ありがとう。じゃあいつかオリの心に響いたことを教えて。」

「心に響く?」

「うん。楽しいや嬉しいはまだ難しいかな。ただ思い出すと心が温かくなることにいずれ出会えるわ。出会えたら聞かせてほしい。そしたら私は物凄く力が湧きます」

「リリアは?」

「たくさんあるわ。オリ達が元気なこと。セノンが可愛いこと。おやつのお菓子が美味しかったこと。話し出したら止まらない。」

「そんなことが」


不思議そうな顔をするサーファの頬をなでます。

最近はサーファが一番表情豊かな気がします。

「サーファ、幸せは人それぞれよ。東国の皇族は嫌いだけど貴方たちに出会えたことは良かったわ。どうしても寂しくなったらお手紙書いてね」

「寂しくない」

「残念。そろそろ食事の準備の時間ね。戻ろうか。私もそろそろ帰らないと」


オリと手を繋いで孤児院に戻りました。早く四人が馴染めるといいんですけど。ネス達といると孤児院の他の子が寄って来ないんですよね…。


「ニコラスは何が不満なの?」

「休みのたびに孤児院かよ」

「心配だもの。それに出かけられる場所も限られてますし」

「リリアの幸せに俺のことはないの?」

「ニコラスと何気ない時間を過ごせることも幸せですよ。暗くなる前に帰らないとですね。どうして最近は矢が降ってくるのかしら・・。人がいない場所だからいいですが」


ニコラスと一緒にレトラ侯爵邸に帰りました。

今日は矢が降ってきませんでした。さて、明日も社交です。外交官のお勉強より社交の多さにため息がこぼれます。国内のことしか力になれないので私は自分のできることを頑張るだけです。最近ニコラスが時々思い悩んだ顔をしています。心配ですが話してくれません。無理な訓練をしてないならいいかな。セノンを貸そうとしたら断られました。明日は早起きしてニコラスの好きなおやつでも作ろうかな・・。


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