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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
17歳編

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第百一話 決断

鎖国中の東国出身の麗しの侍従に悪魔の話を聞いたのでお母様に相談しました。悪魔は召還しないと存在できないそうです。召喚者がいなければ存在できません。召喚者が亡くなると同時に悪魔は消えると言われています。数百年も悪魔が存在するのはおかしいそうです。悪魔を浄化させるための魔法もありますが詠唱が長く魔力の消費も激しいそうです。詠唱している間に殺されてしまうと笑ってました・・。お母様から魔導書を借りて読んでいます。私の魔封じ生活は続いています。


麗しの侍従が消えたことで、離反した令嬢達が戻ってきました。オリビアの顔も明るくなったので良かったです。侍従の話はお母様にしかしてません。悪魔の話は内緒と言われました。不用意に話して戦争の理由になりかねないそうです。


東国は広い国ではありませんが謎の国です。ただ防衛の力にずば抜けているそうです。小国のわりに軍事に力を入れてること以外はわからないそうです。これはセシル殿下に教えてもらいました。セシル殿下の国は西の大陸を統一しているので軍事に優れています。長年戦争のない我が国と違って、戦争は得意と笑えるところが怖いです。私は戦争がおこらないために必死に外交を行う家系なので、セシル殿下のことはわかりません。もしかして物理で解決することに慣れてるから王族として頼りがないんでしょうか・・。



侍従が消えて暫くすると、東国が鎖国を解除するとの情報が入りました。お父様に呼び出されました。


「リリア、東国とかかわりはあるかい?」

「はい。知り合う機会に恵まれました」

「東国からリリアへの招待状が来てるんだが」

「向かいます」

「ただ、突然の鎖国解除だ。思惑が絡んでいるかもしれない」

「外交なんて思惑だらけです。それにお兄様は次期当主。危険なら私をお連れください。」

「ノエルはリリアが行くなら自分が行くと言うと思うよ」

「駄目です。指名は私です。次期当主のお兄様ではなく私を。お父様とお兄様になにかあればレトラ侯爵家は成り立ちません。レトラ侯爵、私も来年には成人します。どうかお連れください」


お父様は心配そうな顔をしてます。私はお父様に大事にされてます。


「お父様、恐れながらレトラ侯爵として御判断をお願いします」


お父様が一瞬悲しそな顔をして、真剣な顔になりました。


「確かにノエルは行かせられない。わかったよ。覚悟はあるんだな」

「はい。ただお願いがあります」

「なんだ?」

「ニコラスを護衛から外してください。イラ侯爵嫡男を連れていくわけにはいけません。」

「リリア、何を警戒しているんだい?」

「数百年鎖国をつづけた国です。どんな危険があるかわかりません。そんな場所に跡取りを連れていくわけにはいきません」

「リリア、それは自分で説得しなさい。イラ侯爵はリリアの護衛はニコラスに任せている。不服があるなら自分で動きなさい。お父様は外交しに行くんだ。戦場に行くわけではないんだよ」


ニコラスが納得できる護衛をつけないといけません。仕方ありません。最低だと思いますが背に腹はかえられません。私はイラ侯爵家に預けられてる子供達のもとに行きました。まだ牢から出して貰えないんですね・・。


プリンを差し入れします。


「どうぞ。お話しませんか」


無視ですか。私は自分のプリンを食べながら勝手に話すことにしました。


「私はリリアと言います。取引しませんか?貴方たちが手を貸してくれるなら私は貴方たちに自由な生活を約束します。本当は取引なんてせずに解放したかったんですが状況が変わりました。貴方たちの主から私が貴方たちをもらい受けました」


「え?」

「あの方はやることがあると帰られました」

「捨てられた・・」

「僕達に価値は」


無表情でも呆然としている様子はわかります。

やはりこの子達は物ではなく人です。


「自分の価値は自分で見つけるものです。そのプリンは私が作ったんです。毒なんてありません。食べてみてください。いつか出してあげますから、よく食べてよく寝てください」


訳のわからないという子達に勝手に絵本の読み聞かせをはじめました。私は東国へ旅立つ準備を進めながらイラ侯爵別邸にお世話になってます。時間があれば子供達のもとで過ごしました。毎日お菓子を作って、相変わらず、無感情な目を向けられるだけです。ニコラスは訳がわからないという顔をして同行してくれます。子供達の差し入れと一緒にニコラスの分も用意しています。セノンを連れていっても駄目でした。


今日はニコラスの代わりにディーンが護衛についています。時々、ニコラスはいなくなります。ディーンには扉の外で待っていてとお願いします。護衛がいなければ警戒心が解けるといいんですが。今日はありがたいことに後ろで威圧するニコラスがいません。


お菓子を差し入れます。今日も食べてくれないんでしょうか・・。


「貴方たちは護衛はできますか?」


首を縦に振りました。反応があることに感動しました。


「今度、私は東国に行くんです。その時だけでいいので護衛をしてもらえませんか?」


視線を向けられました。興味はあるみたいです。


「漆黒の泉に行きたいんです。でも私は魔法は使えても弱いんです。そんな危険な場所に同行をお願いするのはひどいことだと思います。でも、私は死ぬかもしれない危険な場所にニコラスを連れていきたくないんです。送っていただけば逃げてもらって構いません」

「死にに行くの?」


初めて声をかけられました。


「まさか。死ぬ気はありません。貴方の元主は妹を助けるために頑張ってます。だから私も力になろうと思いました。なんとかできる可能性があるなら掴むだけです。それに悪魔がわが国に気まぐれで訪問されても困ります。なので、行くまでは力を貸してください。この国でいいなら貴方たちが人を傷つけずに生きれるように手を尽くします。私がいなくなってもお父様にお願いしておきます。力を貸していただけませんか」

「捨てない?」


じっと見られてます。


「捨てませんよ。私の領民は宝物ですもの。東国には伝手がないので帰るまでしかお手伝いできません」

「私は刺した」

「そんな記憶はありません。」


服を上げて背中を見せます。

「ほら?傷なんてないでしょ?」


「僕達は道具だ」

「違います。人ですよ。お名前を教えてくれますか?」

「2号」


番号ですか…。侍従様、臣下なら名前くらい与えてください。


「名乗りたい名前はありますか?」

「わからない。ずっと命令に忠実に」


命令ですか。昔のエル達を思い出します。


「では自分が道具というのは禁止します。貴方たちは私の大事な臣下です。自害も禁止。自分たちの命に危険がない限りは人を殺すことも傷つけることも禁止します。困ったりいじめられたり嫌な思いをした時は私に伝えてください。これは命令です。逆らったら許しません」

「仕えるなんて言ってない」

「平民は貴族の命令は聞くものですよ。理不尽な命令を言われたらレトラ侯爵令嬢を通してくださいって言ってください。命令です」

「・・・・」


静かに見られてます。まだ視線を向けられるなら、言葉を聞いてくれるということでしょう。


「名前がないと不便ですね。ネス、サーファ、サアーダ、オリはどう?名前の意味は興味があるなら、いつか自分で見つけてください」


最年長らしき8歳位の少年にネス、少女はサアーダ、6歳位の少年にサーファ、4歳位の少女にオリと名付けました。瞬きをしてきょとんとしたネスや、茫然としているサアーダ、無感情のオリとサーファの様子に悩みます。


「名前は気に入りませんか」

「ネス、俺が?」

「ええ。貴方が一番上のお兄様ですよ。弟妹をしっかり守らないといけません。私に危害を加えず逃げないならここから出せるんですがどうします?」

「本当に俺達の主になるの?」

「貴方たちが望むならなりますよ。」

「たくさん殺した殺人集団」


殺しはいけないことはわかってるんでしょうか。


「自分の意思で殺したんですか?」

「命じられるまま」

「子供の貴方たちに背負うべでないものを背負わせた貴方の主への怒りは抑えます。その命を背負うべきは貴方達に命じた人間です。私の命令を聞くならここから出られるように交渉します。せっかく作ったのでそろそろ食べませんか?」

「作った?」

「はい。差し入れは私が作ってます。材料は分けてもらってますが」

「自ら?」

「はい。美味しいですよ。でも気に入らなかったら残してください。今回は自信作ですよ」


今回はふわふわケーキです。自分の分を食べます。子供達がおそるおそる食べ始めました。サーファが目を見開いています。オリは無表情で食べてます。ネスとサアーダは表情が柔らかくなりました。気に入ったようで良かったです。


「ここから出るように交渉します。私の先ほどの命令は聞いてくれますか?」

「嘘つかない?」

「はい。つきません。」


ネスとサアーダが頷きました。サーファは首を傾げてます。オリは無表情です。


「ネス、二人には説明してください。逃げたり危害を加えられると殺さないといけなくなります。ここの騎士は優しいからあなた達にひどいことはしません。お願いね」


「わかりました」


護衛を引き受けてくれるかはわかりません。でも今はこの子達を牢から出すのが先決です。今度エルを連れてきて一緒に遊ばせようかな・・。あの子も仕事ばかりで全然遊びません。お茶も一緒に飲んでくれません・・。


扉の外で待ってるディーンに声をかけます。


「ディーン、イラ侯爵と話したいんですが」

「旦那様ならご在宅です。案内します」


ディーンの後についていきます。先触れしてないけど平気かしら…。


「イラ侯爵、このたびはありがとうございます。」

「構わないよ。どうした?」

「まだ当分、別邸でお世話になってもいいですか」

「ああ。ゆっくりしなさい。リリアのためのものだ」


イラ侯爵は見た目は怖いですがすごく優しいんです。ニコラスはお父様に似たのでしょうか。


「お願いがあるんですが・・」

「なんだい?」

「別邸には結界をはり外に出さないようにします。子供達を別邸に移しても構いませんか?」

「リリア、危険だ」

「ニコラスは本邸に移ってもらいます。あの子達が普通の子供に戻れるように説得します。いつまでも牢にいるのは可哀想です」

「危険だ。一人で会わせるわけにはいかない。」

「でしたら手練れの騎士をお貸しください。中で監視してください」

「そこまでするのかい?」

「将来的にはレトラ侯爵領の孤児院に預けます。ただ本当に安全かは自分の目で確認したいんです」

「決めたのか。わかったよ。ただニコラスはうつらないと思うが、」

「イラ侯爵の命令に逆らうことはないと思いますが」

「リリア、騎士にはどうしても譲れないものがあるんだ」

「わかりました。侯爵の判断にお任せします。極秘ですがいずれ東国へ滞在します。危険という噂もあるのでその際はニコラスを私の護衛から外してください」

「リリア?」

「あくまでも噂です。安全のために、お兄様は外れていただきました。同じ立場のイラ侯爵家嫡男を巻き込むわけにはいきません」

「リリア、騎士は常に危険と隣り合わせだ。その判断は私がするよ。危険な場所に行くなら尚更連れていきなさい。私の息子は強い。それに危険な場所に行く婚約者を守れないような男はイラ家を守ることができないよ。」

「イラ侯爵」

「ニコラスを危険な目に合わせたくないという気持ちは親としてはありがたい。ただリリアも私にとっては娘のように思っている。二人で帰ってきなさい。どうしてもニコラスが行きたくないというなら外しても構わないが」

「わかりました。余計なことを口に出して申しわけありません」

「リリア、もう少し自分のことも大事にしなさい。子供達は騎士が見張りにつくなら出して構わない。ただ危害を加えるなら命はない」

「承知しております。ありがとうございます」


イラ侯爵の説得はできました。ネス達を連れて別邸に行きましょう。

私は洗浄魔法をかけて別邸にネス達を連れて行きました。足りない物資はイラ侯爵が用意してくれました。頭があがりません。まずは湯あみの仕方から教えましょう。想像以上にネス達がなにもできなくて驚きました。これから色々教えないといけません。一月でどこまで教えられるかな・・・。


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