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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
17歳編

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閑話 前編 ニコラスのお祝い

ディーン視点

王宮騎士団には色々と世話になっている。坊ちゃんの成人のお祝いもかねて、騎士達の飲み会に連れて来た。


「あの小さい坊主がもう成人か。おめでとう」

「ありがとうございます」


乾杯をして酒を呑んでいる。坊ちゃんは本当はお嬢様といたかったんだろうけど連れ出した。ノエル様が帰ってるので、お嬢様の身に危険なことはないだろう。ノエル様は強いから。そしてレトラ侯爵邸の外には騎士も配置されている。


「まさかリリアと婚約するとはな。アレの相手は大変だろう?」

「なんでリリアと親しいんですか?」


お嬢様は王宮騎士団との話は内緒と笑うだけで教えてくれない。お嬢様をアレって。


「今更か。俺はノエルの友人だ。ノエルに騎士達がリリアに危害を加えないように見とけって頼まれた一人」

「よく来てたもんな。昔は怪我人を見つけると目を輝かせて駆けていったのが懐かしい」

「血まみれの騎士を見て、怖くて震えてると思ったら興奮してたもんな。魔法かけていいですか!?って、目を輝かせてさ。あれは引いた」

「大人だったら殴りかかったよな。医務室にいつもならすぐに連れて行くのに、リリアの雰囲気に負けてどうぞって言ったな」

「ノエルの妹だよな。あの変わってる感じが」


お嬢様、何してたんですか・・。これを笑い話にしてるこいつらは大丈夫だろうか。もう酔ってんのか…。


「リリアはなんで通ってたんですか?」


坊ちゃんはお嬢様の奇行に慣れてるのか流しているな。全く動揺しないとは。俺は呆れたのに。


「知らないのか。まぁリリアは言わないか。もういいか。俺から聞いたって言うなよ。お前のためだよ」


この騎士のお嬢様のことを理解してる感じが面白くないんだろうか。騎士同士の酒の席なら無礼も許される。坊ちゃんは不機嫌を隠さず酒をのんでいる。


「は?」

「ニコラスが無理するからこっそり治癒魔法をかけたいって。だから練習してるの内緒にしてって来たんだよな。」

「そうそう。普通に詠唱すれば治癒魔法を使えるのに、さりげなくにこだわってたよな」

「なんで、うちじゃなくてそっちに行ったの?」

「リリアも怪我人を心待ちにするのは間違ってるとは気づいてたよ。訓練するための場所に悩んでるリリアを見かねて、ノエルがここの騎士なら何があっても大丈夫って連れてきた。酷いやつだ。親しい騎士の治療より知らない騎士の治療の方が怖がらないだろうって。ノエルの想像以上にリリアの度胸が据わってたけど。」


坊ちゃんの機嫌は思ったよりよくならない。これは喜ぶ話のはずなんだけど。


「ここに通うくらいならうちで練習すれば良かったのに。リリアのためならいくらでも怪我人を提供したのに」

「坊ちゃん!?もう酔ってるんですか?お嬢様が坊ちゃんのために」

「俺は傍にいてくれるほうがよかった」


自分の側にいなかったことが気に入らないのか。酔ってるのかいつもより素直だな。


「ニコラス、お前もう少し気をつけろよ」

「なにを?」

「リリアは自分がニコラスのために頑張るのを止められるって思ってる。だから何かやりたい時はお前に頼まないんじゃないか?」


坊ちゃんが固まった。そういえばお嬢様って市に行きたい以外に自分から坊ちゃんにお願いしたことないような。魔法は反対されて悲しかったから坊ちゃんに話しにきたんだよな。泣いてるお嬢様を見て魔法の勉強に誘ったのは坊ちゃんのほうだよな。訓練見るのも、坊ちゃんが言い出したよな…。


「リリア様はやっぱりノエル様の妹だよな。時々物凄く大人びた考えされるよな」


大人びた?あの兄妹ってお互いが好きすぎる以外に共通点みえないんだけど。ノエル様は落ち着いていてレトラ侯爵に似ている。お嬢様は正反対でお転婆だ。


「ああ。浮気がバレて嫁に殴られた騎士を治療しようとした手を事情を聞いて止めたよな。この傷治したらきっと奥様が怒るからやめますって」


お嬢様の前でどんな会話をしてんの?お嬢様が訓練場に通いだしたのって、いくつだっけ。6、7歳くらいじゃなかったか・・。


「俺はお前らがリリアに余計なことを教えたからノエルに怒られたけどな」

「何を教えたんですか?」

「気持ちがなくても愛を囁けるから、騙されないように気をつけろとか」

「あと可愛げのある女もいいけど、豊満な女には敵わないとか」

「それはお前の好みだろうが」

「他に何を?」


これまずい気がする。坊ちゃんはお嬢様にわかってもらえず苦労している。


「リリアが静かに聞くから色々教えたよな。なにを教えたっけな」

「最近、騎士は成人祝いに何を贈れば喜ぶか聞かれたな。俺はリリアに頼まれて代わりに用意したんだよ」

「何を?」

「花街の紹介状。リリアは金はあるから言い値で買うって。さすが侯爵令嬢」

「花街とか女は嫌がるのに、花街の話を静かな顔で聞いてたよな。リリアも大人になったから多少は嫌がると思ったんだけど、全くそんな様子はなく笑顔でお礼を言われたよ。まだ子供なんだな」

「お前、マジなの!?リリアにそんなこと教えたの!?ノエルに知られたらまずい」


お嬢様が静かな顔で聞く状況が想像できない。女が嫌がるってわかってたんならお嬢様に話さないでほしい。なによりもう一人聞かれたらまずい人物がいるって気付いてほしい。


「俺のリリアになにを教えてるんですか。その紹介状は破いて捨てましたよ」

「なんでそんな勿体ないことを」

「うちに泊まりにきた婚約者からお祝いです。自信作ですって可愛い笑顔で花街の紹介状を渡された時の衝撃わかりますか?手紙でも書いてくれたと期待したのに。ここが有名で人気です。気を付けて行ってきてください。イラ侯爵邸から出ないので護衛はいりませんって言われた俺は放心しましたよ。ノエルが帰ってるのに、わざわざうちに泊まるって奇跡がおこったのに」


そういえば珍しくお嬢様がイラ侯爵家の本邸に泊まったな。いつもは別邸なのに。

そんなことがあったとは俺も知らなかった。


「しかも、あいつは豊満な体じゃないからまだ自分を子供だと思ってるんですよ。俺が何を言っても本気にしない。全部冗談か戯言で片付ける。リリアのそっち方面の情緒が育たなかったんじゃなく、余計な情報を教える存在がこんなにいたとは・・・。ノエルに言ってやる」

「ニコラス、それはやめろ。血の雨が降るから」

「自業自得だ」


坊ちゃんは不機嫌を隠さない。この内容は仕方ないか。

騎士団とお嬢様のこと気にしてたから連れてきたの失敗だったな。


「お嬢様は坊ちゃんとノエル様が純粋無垢に育ててたのに」

「こんな横槍が入ってたなんて。他に何を教えたんですか」

「もう色々ありすぎて。」

「ディーン、明日護衛代われ。俺は騎士団に乗り込む」

「坊ちゃん、やめてください」

「俺の苦労がこいつらの所為だったかと思うと」

「ニコラス、リリアが鈍いのはノエルの所為だから勘違いすんな」

「は?」

「あいつは男の口説き文句は社交辞令と教え込んでる。家族以外の男の好きは社交辞令か戯れだと。そんなこと言う悪い男には近づくなって。だからどんなに、騎士に可愛いともてはやされても本気にしない。リリアに好きだと言った騎士にお戯れをって答えて二度目の告白には治癒魔法かけたよ」

「告白?」

「ああ。リリアは見た目だけなら可愛いからな。」


何気にお嬢様の扱いがひどい。ノエル様はシスコンだからな。お嬢様に男が近づかないように手を回してそうだよな。坊ちゃんが近づくのも嫌がってるし・・。


「ディーン。お前は俺のいない間、何をしていたんだ」

「坊ちゃん、濡れ衣です。それはきっと坊ちゃんが旅立つ前からです」


騎士団にイラ家の騎士を送り込んでおくべきだった。俺にはそんな権限はないけど。


「ニコラス、せっかくだから花街連れていってやろうか?」


楽しそうに騎士が坊ちゃんの肩をくむけど、今の坊ちゃん不機嫌だから危険だ。


「興味ない」

「行けばかわるよ」

「リリアなら許してくれるよ」


婚約者が花街に行くのを許す女がいるだろうか。お嬢様って他人の恋愛には聡いよな。隣国の時も的確なアドバイスしてたし。誠意のない男は嫌ってるよな。


「どうだろうな。お嬢様ってよめないんだよ」

「絶対に知られたら怒り狂ったレトラ侯爵家が婚約破棄を申し出る。」

「まさか。女遊びは男の嗜みだ。」

「その価値観を押し付けないで下さい。迷惑。」


坊ちゃんが騎士の手を振り落とした。


「ニコラス、いいの?せっかく容姿と家に恵まれたのに」


坊ちゃん、酔ってるんだろうか。目が据わってる。お嬢様が見たら怖がるだろうな。


「俺はリリアがいればいい。全く振り向いてもらえなくても」

「雰囲気で押し倒せば?」

「泣かれて拒まれたら耐えられない」

「リリアは度胸が据わってるから平気だよ。まず泣かないだろ?」

「いや、お嬢様はすぐ泣きますよ。」

「嘘だろ?」

「リリアを泣かせたら俺が首を落とすから覚えておいてください。失礼します」

「坊ちゃん?」

「帰る。酒盛りはノエルとやる。」

「ニコラス、待て」

「お前は残って色々聞いといて。俺のお祝いだろ?楽しみにしてるよ」

 

俺は坊ちゃんに命じられたままお嬢様の話を聞くことにした。多めのお代を置いて帰った坊ちゃんが映像魔石を置いていったのを知ってるの俺だけ。後日、死人が出ないといいんだけどな。お嬢様の誤解を解いて坊ちゃんの機嫌をとらないとまずいかな・・。お嬢様、坊ちゃんのお祝いなら俺に相談してくれればよかったのに。なんでそっちに聞いたかな。


でも奴らの言葉も一理ある。言葉で駄目なら押し倒すのも。お嬢様は坊ちゃんを拒絶しない。たぶん。お嬢様が坊ちゃんを拒絶してから七年か。坊ちゃんがお嬢様の心身ともに守るために重ねた時間を、見て見ぬ振りをできるお嬢様ではない。お嬢様が素直になるか、坊ちゃんが覚悟を決めるか、結局は収まるところに落ち着くんだろう。坊ちゃん、覚悟を決めてお嬢様に泣かれたら俺がヤケ酒に付き合いますよ。俺は酔っ払いから聞いたお嬢様の話をどう報告するかな。全然、酔える気がしない。坊ちゃんの置いていった魔石が故障すればいいのに。

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