第九十九話 暴走
今日はニコラスが予定があるようでディーンが護衛です。同派閥のお茶会なので気楽、気楽だといいな・・。社交に疲れました。最近、婚約者同士でお揃いのものを身に付けることがまた流行しました。私もニコラスも上皇様からいただいた腕輪がお揃いでつけてます。外れないので、つけざるおえないんです。オリビアがお茶会で大事なお相手とつけてと令嬢達にペアの装飾品を贈っていました。侍従に見惚れる令嬢に牽制でしょうか・・。
「リリア、おもしろいことをやってるわね」
お茶を楽しんでいたらライリー様の声に顔をあげます。
「おもしろいこと?」
「王宮の訓練場を手伝ってるんでしょう?」
「はい。でも中々うまくいきません。第二王子殿下派の差し入れにも愛嬌にも負けてしまいます。私に集客力が」
周りの令嬢達が笑い出しました。
「そんなことないわ。ブラッド様は認めていたわ。」
「人気の行儀見習いの真似をしても無駄だと止められました。私には愛嬌を振りまいても意味はないそうです。」
「ニコラス様に止められた?」
「はい。無駄だからもうやめなさいって」
「相変わらず仲が良いわね。皆様もちゃんと自分の婚約者の手綱を握ってくださいね。」
「手綱の握り方がわかりません」
「リリアは無意識に握ってるから心配いらないわ」
「そうですね。ニコラス様なら」
ニコラスの評判と信頼が厚すぎます・・。でもあからさまにオリビアが警告するのは始めてです。第二王子殿下の行儀見習いと侍従に夢中になる方々もいるそうですが、そんなに多いのかしら・・・。今回のお茶会は警告のためですか。いつもより参加者が少ないのは気になります。帰りにオリビアに残ってほしいと言われました。
「リリア、今日参加しなかった令嬢達の名前はわかる?」
「わかります」
「もし偶然会えば浄化魔法をかけてみてくれる?」
「わかりました」
「理由は聞かないの?」
「聞かなくていいことでしょう?オリビアの頼みなら任せて。張り切って強いのをかけますよ」
「気を付けてね」
「オリビア?」
なぜか心配そうに見られてます。行儀見習いの少女に負けたりしませんよ。
「ちゃんと人気取り頑張るから安心してください。私はオリビアのために頑張りますよ」
笑顔をオリビアが浮かべたことに安心します。ただいつもより元気がない気がします。明るく笑顔を作ります。
「オリビアが訓練場に来て笑いかければ、一気に人気取りになるかな。でも逆に敵が増えるかもしれません。こんな綺麗な婚約者を持つ王太子殿下への嫉妬で」
「オリビア様」
「オリビア、騎士達は私が頑張るから心配しないでね」
オリビアが侍女に呼ばれたので別れました。オリビアは忙しいので仕方ありません。もう少し話したかったんですが残念です。私は王宮の訓練場に行くことにしました。王宮にお茶会に参加しなかった令嬢もいればいいんですが。
「お嬢様、本当に行くんですか?」
「はい。大事な人気取りです」
「今日はやめませんか」
「顔を出して、邪魔って言われたら止めますよ。本当に邪魔な時は追い出されるので大丈夫ですよ」
諦めた顔をしたディーンに首を傾げます。まぁいいか。
私はオリビアのために頑張るのです。
「ディーン、ニコラスの弱点知ってます?」
じっと見つめられても・・。わかりました。言えませんよね。主家の弱点を教えるなんて。
「ごめんなさい。聞かなかったことにしてください。」
ディーンは気にせず、訓練場に行くと私は足を止めました。騎士の方々がボロボロなんですが・・・。
軽傷ばかりなので近くの方から魔法をかけていきましょう。顔見知りの騎士を見つけました。
「いささか、無理をしすぎではありません?」
「リリア、良いところに。ニコラス止めて、頼むから」
「ニコラス?」
指さす方向にはニコラスが騎士達と手合わせしてます。イラ家でも時々魔法で騎士を鍛えていますけど。もしかして、変なスイッチが入ったのでしょうか。イラ家ではないからニコラスが指導をつけなくてもいいと思いますが・・・。
「止めていいものなのですか?訓練では」
「止めて。あれは訓練にはならない」
騎士の必死な形相に立ち上がりニコラス達に近づきます。声をかけても聞こえません。
「お嬢様、これ以上近づくのは駄目ですよ。俺の剣は貸しません」
ディーンが剣を握ってます。さすがにあそこに入ってはいきませんよ。頭を冷やしてもらいたいんですが。
「ディーン、ニコラスが見えません。水でもかけたいんですが・・」
「俺が教えてあげます」
ディーンの言葉に合わせて水球を落とします。動きが止まりました。ニコラスはびしょ濡れです。さすがディーンです。驚いているニコラスに近づきます。
「え?なんで」
「何してるんですか?」
「リリア、予定は?」
「終わりました。イラ家ならともかくここで迷惑かけてはいけません。鍛えるならイラ家の騎士にしてください。王宮騎士団の皆様を困らせてはいけません。」
「坊ちゃん、帰りましょう。お嬢様の護衛は坊ちゃんでしょ?おかげでご機嫌ななめですよ。寂しがってるから、お嬢様についていてあげてください」
「ディーン?」
「お嬢様」
ディーンに縋るような視線を向けられますが、私になにを求めてるのかわかりません。
「ニコラス、これ以上怪我人を増やすことは許しませんよ。今日の訓練は終わりです。わかりましたか」
「リリア、時にはやらなくてはいけない時があるんだよ」
「それは今ではありません。文句言うなら落としますよ。相殺されないように本気でお相手します。」
強制的に眠らせて、ディーンに運ばせましょう。
言ってもだめなら仕方ありません。
「リリア、やめろ。ここまでにする。」
「せっかく一番強い魔法をかけようと思ったのに・・。」
「帰るか?」
「いえ、治療しますよ。」
「レトラ様、今日はお帰りください」
「え?」
「軽傷の治療はいりません。」
「わかりました。失礼します」
私の頷く声に騎士達が安堵するのはなんで?ディーンが苦笑してニコラスは物足りない顔をしてます。
「ニコラス、騎士を鍛えたいならイラ侯爵家に帰りましょう」
「もちろんお嬢様も一緒ですよ。坊ちゃんを見張ってください」
「わかった。久々にディーンとも本気でやりたい」
「坊ちゃん!?」
私はレトラ侯爵邸に帰ってお兄様のお帰りを待ちたいんだけど、今日はニコラスについてることにしましょう。これはきっと倒れます。成人したのに無茶はやめてほしいです。自己管理くらいしっかりできるようになってください。この人は優秀なのに手がかかります。馬車に乗ってニコラスの頬に手をあてて治癒魔法をかけます。
「リリア、魔法はいらない」
「え?」
手を重ねられる状況がわかりません。照れて笑うのも意味がわかりません。精神異常?
「全然気づかなかった。こっそりやらなくていい」
気付かれてます。こっそり治癒魔法をかけてた時に見つかったことなんてなかったのに。ニコラスの魔法の腕があがったんですか?
「なんで、」
「バカだな。そんな練習しなくていいのに。俺はお前がいるだけで力が沸くから。」
「はい?」
ニコラスがやっぱりおかしい。なにかに取りつかれてます?浄化魔法をかけてみようかな。
「いらない。正常だから。」
魔法かけてみましょう。
「ほら?かわらないだろ?」
「意味がわかりません。」
「俺以外の男の言葉を信じることはやめて」
「はい?」
「騎士だってそれぞれ考え方が違う。別に・・・」
馬車がつきましたので手を離して降りましょう。赤面させて言いよどんでるニコラスはどうしていいかわかりません。ディーン、私の所為じゃありません。ニコラスの様子が変なんです、どうすればいいか教えてほしいのは私です。その後はニコラスとディーンの訓練を静かに見守りました。ボロボロになった二人に治癒魔法をかけました。付いてきてよかったです。訓練で血まみれとかバカなんでしょうか。今日はレトラ侯爵邸に帰ります。だってお兄様が帰国してますもの。お兄様と過ごせる時間は貴重なのです。




