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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
16歳編

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第九十一話 後編 素材集め

満月なのでニコラスと一緒にお出かけすることになりました。私とニコラスの初デートを祝して夜の晩餐が豪華になったのは唖然としました。ニコラスは穏やかに笑うだけでした。私がおかしいんでしょうか。なんで屋敷の皆が知ってますの?


ご機嫌のお母様に支度を整えられました。お母様、夜会よりも気合が入ってませんか?この上からローブを着るんですよ。ローブはお母様が預かると取り上げられました。嘘でしょ?


ニコラスが迎えに来てくれました。なぜかニコラスも訪問着を来ています。訓練着じゃないんですか?

私の様子をみて嬉しそうに笑うのはどうしてでしょうか。


「二人共いってらっしゃい。朝まで戻らなくてもいいわ。明日はお休みにしてあげる」

「ありがとうございます。行ってきます」


私はご機嫌なお母様の様子についていきません。

ニコラスの馬に抱き上げて乗せられます。自分で乗れるのに。今さらですが、なんでニコラスの馬がうちにいますの!?

ニコラスに体を預けてぼんやりします。月が綺麗です。ただ月の輝きで星があまり見えません。夜のお出かけは新鮮です。


「夜でも昼間のように馬で駆けられるんですか?」

「訓練してるからな。リリアには、やらせないよ。危ないから」

「夜のお出かけはお母様が許してくれないので無理ですわ。今日は特別です」

「そうだな。特別だよな」


機嫌がいいです。なんででしょう。

神秘の森につきましたわ。ここ来るの久しぶりです。昔、上皇様と一緒に来ました。ここは空気が美味しいんです。ニコラスに下ろしてもらって、駆けだそうとする手を掴まれます。


「危ないから離れるなよ」

「もちろんです。リリーはお傍を離れません」


機嫌を損ねて帰ると言われるわけにはいきません。夜露を集めないといけません。ニコラスの手をひいて歩き出します。夜の森はちょっと怖いですね・・。ニコラスは穏やかな顔で歩いてます。怖くないんでしょうか。

草木が生い茂ってます。ここならたくさん集められそう。魔力で作った瓶に集めていきます。ニコラスは手伝ってくれると言いましたが断りました。これは私が集めないと意味はありません。もう少し欲しいな。小瓶一本分は集まったけど、もう一本分欲しい。集めていいかな・・。

いつの間にかニコラスが隣にいました。真剣な顔をしてます。

「静かに。誰かいる」


私にはわかりません。しばらくすると声が聞こえました。


「守備はどうだ?」

「民の間には殿下の支持者が増えてます。貴族はまだ時間をください」

「助かるよ。私の味方はお前だけだ」


ニコラスにマントを被せられて強く抱きしめられます。

「黙って、顔をあげないで」


「今度はいつ会えますか?」

「もうすぐ傍に呼ぶ」

「楽しみにしてます」


「騒ぐなよ。すぐ終わる。目を瞑って、俺に身を任せてて」


首、ヌメッとしました!!手、どこに入れてますの。

触り方がいやしらしい。


「好きだ」


ん?声がいつもと違う。


「誰かいるのか」

「きゃっ」

「お楽しみ中で気付いてないな。無粋なことはよくないな」


声が遠くなっていきました。体が解放されました。びっくりしました。


「リリア」


いつもの声に目を開けると、とろけそうな顔が目の前にあり、思わず心臓の鼓動が早くなります。

顔が近づいてきて、恥ずかしくて目を閉じると唇が重ねられました。なぜか力が抜けて、腰を支えてもらいました。


「大丈夫か?」

「何をしますの!?」

「あんまり、リリアが可愛くて。我慢できなかった。これ以上はしないよ。顔、真っ赤。そういう顔すると誘ってると思われるから気をつけて」


笑っているニコラスの頬を引っ張ります。ふざけすぎです。

私も鈍くありません。声の主に見つからないための行為だとわかってます。

あそこまでするなら見つかってはいけない方ですよね。


「誰がいたんですか?」

「え?そっち?・・・俺達みたいな逢引相手」


落胆した声を出す理由がわかりません。


「聞き覚えのある声だったような」

「俺は知らない。そろそろ帰る?」

「もう少し集めたいんですが」


なぜか悲しい顔をされてます。


「リリアに期待してはいけないよな。」


私はニコラスを無視してまた夜露を集めました。充分集められたので帰ることにしました。

なぜか、もの言いたげに見ています。私は家に帰って眠ることにしました。様子のおかしかったニコラスのことが脳裏に浮かびそうになったのを慌てて打ち消します。暗かったから勘違いしただけです。あんな顔で見られる理由がありません。


私の様子を見たお母様はがっかりされました。でも欲しい物は手に入ったのでいいでしょう。今日はお休みなので部屋に籠って、魔導書に従い夜露に高濃度の魔力を混ぜていきます。体の魔力が空に近いので回復薬を飲みます。今日はここまでです。続きはまた明日です。これを繰り返すと輝く魔石ができるそうです。確かにこんなに魔力を大量に注ぎ込めばどんな怪我も治せそうです。使わないにこしたことはありません。

まさかこの作業が修行の一環になるとは思いませんでした。久しぶりにお会いした上皇様に魔力が増えたと言われるのはまだ先のお話です。

そして、私は新しい強い回復薬を作ることにも成功しました。これなら1本飲めば体に力が溢れます。ニコラスには内緒です。



「リリア、大丈夫か?」


魔石に魔力を注ぎ込みすぎて力が抜けベッドに倒れ込みました。

魔石は魔封じの袋にいれて隠してあります。

いつの間にニコラスは部屋にいたんでしょうか。


「修行中です。大丈夫です」

「魔力やろうか?」

「回復薬を飲むからいりません」


机の上の回復薬を渡されたので一気に飲みます。これ美味しくないんです。力が戻ってきました。ベッドから起き上がると、真剣な顔で見られてます。

机の上の回復薬をニコラスが手に取りました。嫌な予感がします。


「駄目です」



手を伸ばして取り返そうとしたのに、すでに飲まれてしまいました。非常にまずいです。


「リリア?」

「私の回復薬を勝手に飲まないでください!!」

「こんな強いものを飲むな。」

「魔導書に書いてありまして。飲んでもおかしくなりませんよ。」

「魔力酔いするだろ?待てよ」


伸ばされる手から逃げようとしたけど無駄でした。

抱きしめられて、体の魔力を探られてます。ニコラスがどうして、私の魔力量を調べられるかわかりません。私にはできません。必要ないので覚える気もありません。


「お前、魔力を使いすぎだ!!修行にしてもだ。いつも半分は残せって言ってるだろう」

「魔力、いらない。今は送らないでください。今は自分の魔力以外は受け付けてはいけないんです」

「何してんの?」

「聖属性魔法の修行です。今は体の魔力を聖属性にかえて体に巡らす練習してるんです。これは自己回復魔法の練習になるんです」


自己回復魔法の使い方の応用です。ニコラスは私に自己回復魔法を覚えてほしいので、きっと止めないはずです。


「ならいいけど・・。無理はすんなよ」

「はい。どうしましたの?」

「いや、部屋に籠もってるからどうしたのかと」

「暇な時間は修行にあてます」

「なんで?」

「使える魔法が増えたらできることが増えます。私はニコラスと違って役に立つ魔法はあまり使えないので。」

「治癒魔法が使えれば充分だよ。膝かして」

「構いませんがまた小説を音読したら落としますよ」

「なんでそんなに苦手なんだよ。いいや。あの薬は一日半分までな。それ以上は過剰だ」

「修行中だけセノンを預けてもいいですか?」

「回復薬は半分までだ」

「善処します。お休みなさい。ゆっくり休んでくださいな」


話をそらしましょう。膝をたたいて、どうぞとにっこり笑います。余計なことには気づかずに眠ってください。私はお母様からもらった魔導書を読みましょう。


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