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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
16歳編

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第九十一話 前編 素材集め

武術大会の優勝はスペ公爵でした。イラ侯爵は準優勝でした。大きな怪我もなく終わって良かったです。

お母様も戻ってきたので、社交地獄がおわりました。参加した社交の報告を聞いたお母様が褒めてくれました。ご褒美に魔導書をいただきました。


今日はお母様からいただいた魔導書を読んでます。どれも高度な魔法ばかりです。うん、なんでも治せる魔法?

これって上級魔法よりも高度です。もしかして・・・。気のせいですよね。でもこの魔法は魔石にも移せるんですね。ニコラスの空蝉は封じる方法はまだ見つかりません。それなら、お守りかわりに持っていただけばいいんですね。満月の夜の葉の雫で作った聖水が必要ですが、これってどうやって取りに行けばいいんでしょうか。読み解くと当てはまる場所は神秘の森のことですかね。聖の女神と闇の女神が作った神秘の森。馬なら家から1時間で着きますね。深夜に抜け出せば朝には戻ってこれます。今日の社交はもう終わったので、仮眠をとりましょう。


たっぷり仮眠はとり荷物をまとめました。

布団に入って眠った振りをします。部屋の明かりをつけていると起きてることが知られてしまいます。

誰かが入ってきました。額に手が置かれます。誰かな。寝たふりです。


「起きてる?」


ニコラスでした。


「眠れないのか?」


寝た振りバレてます・・。なんででしょうか。続ける?

ゆっくりお腹をたたかれているのは寝かしつけられてます。まずいです。ニコラスの手がとんでもないとこにあたりました。布団をめくられました。荷物を隠してたのに。どうして荷物を叩いてしまうんでしょう。寝たふり続行です。今日は出かけるのは諦めましょう。鞄の中身を見ないでください。昼間に作ったお菓子が入ってるのを見られるのが一番まずいです。


「リリア、起きてるのはわかってる。説明して」


何も聞こえません。


「レトラ侯爵夫人に聞いてくる」


「おはようございます。もう朝ですか」

怖い。この据わった顔は一歩間違えると長いお説教がはじまります。


「この荷物は?」

「なんでしょう・・」

「そういえば昼寝してたな」

「暖かくてうたた寝してしまいました」

「窓と馬屋に鍵をつけてもらうよ」

「え?」

「夜だけだ。どこに行こうとしていた?」

「お散歩」

「へぇ」

「ニコラス、もう寝ましょう。」

「これは俺が預かるから休め。寝るまでついててやるよ」

「いりません。一人で眠れます。お休みなさい」


ニコラスの顔が怖いので布団を被って眠ることにしました。今日はもう無理です。後日にしましょう。

翌日、なんとかごまかしました。ありがたいことに午後からニコラスはイラ侯爵に呼ばれて代わりにディーンがついてます。


「ディーン、もしなんですけど」

「なんですか?」

「もしディーンに護衛がついていて、夜にどうしても行きたい場所があったらどうしますか?」

「護衛と一緒に行きますよ」

「反対されたら?護衛がディーンよりも強かったらどうします?」

「お嬢様、坊ちゃんに隠れて出かけたいんですか?」

「例えばです」

「俺がお嬢様の立場なら坊ちゃんにお願いします」

「絶対に反対されます」

「坊ちゃんに隠れて出かけるなんて無謀です。簡単ですよ。そうですね。月夜のデートがしたいとでも言えばきっと連れ出してくれますよ」

「え?」

「信じてませんね。どうしても夜中に出かけたいなら、言ってみてください。どこに行きたいんですか?」

「神秘の森。どうしても欲しい素材があるけど、自分で取らないと駄目なんです」

「なにがほしいんですか?」

「満月の夜の葉の雫」

「記念に欲しいって言えば坊ちゃんは集めるの手伝ってくれますよ」

「騙していいんでしょうか・・。」

「絶対に抜け出すことはできませんよ。そしてもし成功してもお説教が待っているのでお勧めしませんよ」


ディーンが言うんなら無理なんでしょう・・。ニコラスにお願い?でも今はきっと警戒されてるから抜け出せませんよね。鍵をつけられても嫌です。

卵を割りながら考えます。満月時期はすぐに終わってしまいます。うん。やるだけやってみよう。駄目ならまた考えましょう。


夕方にはニコラスが帰ってきました。


「お帰りなさい」

「ただいま。どうした?」


玄関で待ってただけでなんで怪しまれてるんですか。


「お願いがあるんです」

「なに?」

「で」

「で?」

「デートしたいです」

「は?」


ディーン駄目です。呆れた顔で見られてます。


「なんでもないです。忘れてください」


どうしてか恥ずかしい。部屋に帰りましょう。


「待って。リリア。」


後ろの声は聞こえません。ディーンのバカ。ベッドに飛び込みます。やっぱり抜け出すしかありません。


「入るよ」


勝手に入ってこないで。枕で顔を隠します。


「ごめん。驚いただけ。そんな言葉を知ってるとはな。しようか。」

「本当ですか?」

「ああ。」

「月夜のデ、デートがしたいです。駄目?」

「市じゃなくて?」

「うん。満月のおつき様の下がいい」


笑い声が聞こえます。


「場所は俺に任せてくれる?」

「神秘の森がいいです」


驚いた顔をしているニコラスに髪をくしゃくしゃにされてます。


「ちゃんと贈った小説読んだんだな。えらいえらい。頑張って情緒を育ててくれ」

「はい?」

「小説に出ていた夜露を集める?」


小説はわかりませんが欲しいものはあってます。


「え?うん。欲しいです」

「義母上には許可をとってやるよ。晴れた満月の夜に出かけようか」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」


ディーン、話の流れは全然わかりませんが成功です。これで手に入ります。荷物を用意しないといけません。私は乗馬服で行こうと思ったのに、喜々としてお母様に訪問着を着せられました。


「リリア、初デートですって。ここは可愛くしないとね」


お母様が物凄く楽しそうです。


「お母様、あのこの服だと馬に乗れません」

「相乗りすればいいわ。そっち方面の情緒は心配してたけど安心したわ。何があってもいいから楽しんで来なさい。ニコラスの言うことしっかり聞くのよ。笑顔でね」


お母様はどうしたんでしょうか。使用人たちからの視線も生暖かいです。

素材を取りに行きたいだけなのに。でも余計なことを言って中止にされても困るので笑って過ごすしかありません。


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