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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
16歳編

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第八十九話 夜会

クレア様はお姉様とシロと一緒に帰国されました。

私は夜会に来てます。まだお母様は帰ってきません。


「あら、これはレトラ様」

「ごきげんよう」


伯爵令嬢に声をかけられました。この家は商家から成り上がった新興貴族です。自らを生粋の外交官の家系と謳っています。

うちを敵視している家です。


「私は常々、疑問に思ってましたの。幼いレトラ様が気付いてないかもしれませんが」

「疑問ですか?」

「外交官を目指すのにどうしてイラ様を選びましたの?」

「外交においては騎士の皆様の力を借りることもあります。両侯爵が決めたことです」

「やはり外交官同士のほうがいいのではなくって。」

「考えはそれぞれですわ。うちのお父様はイラ侯爵家とのご縁を最善と望まれました。」

「それが浅はかなのよ。」


失礼な方です。侯爵家のことに口出しするとは身の程をわきまえてほしいです。ただこの方に敵意を向けられる理由はもう一つあります。

 

「お兄様があなたのお姉様を選ばず申しわけありません。ミリア義姉様は外交官の家系ではありませんが、お父様も頼りにしている優れた外交官ですわ。」

「あなた」

「うちは外交官を育てる家系ですから。もしお望みでしたら受け入れますよ」

「誰が古い貴方の家に頼むものですか」

「由緒正しく歴史あるの間違いです。新しくできたお家には難しいですか・・?」

「あなたは」

「レトラ侯爵家に勝負を挑むなら喜んでお相手しますわ」

「隣国の王太子のお気に入りだからって」

「外交がうまくいってよかったです」

「いつも大口は貴方の家が持って行って」

「申しわけありません。陛下からの命や御指名のお仕事も多く。うちで勉強されたいなら受け入れますよ。」

「バカにして」


立ち去っていく令嬢を見送ります。その言葉遣いは品位を疑われますよ。


「容赦ないな」

「レトラ侯爵家として負けるわけにはいけません。」


特に外交官の家に負けたらお母様が恐ろしいです・・。

どうして私ばっかり厄介な夜会に招待されますの。


「あら、レトラ様」

「ごきげんよう」

「今日もイラ様が一緒なんですか」

「夜会のエスコートは婚約者がするものでは?」


お父様とお兄様もいないので、エスコートしてくれるのはニコラスしかいません。まずご令嬢がどなたかわかりません。ドレスを見た感じは私よりも上位ではありませんね。

侯爵家以上ならドレスに紋章があるはずです。


「イラ様、お可哀想に。苦手な社交に連れまわされるなんて」


ん?苦手?


「お気遣いありがとうございます。ただニコラスは社交は不得手ではありません」

「騎士は訓練に身を捧げるものでしょう。それなのに・・」


同情する目を作り扇で口元を隠してますが、きっと口元は歪んでるんでしょうね。


「婚約者が優秀で頼もしいです。もちろん騎士としての腕も一流ですもの。私はニコラスが本気で戦って負けたところは見たことありません」


嘘です。そういえばスペ様に負けてました。でも魔法を使ってなかったから数えません。


「あら?イラ家門はそんなに弱いの?」


イラッとしました。失礼すぎます。イラ侯爵家は名門侯爵家です。

そして武術の名門でもあります。

挑発とはわかってますよ。笑顔を作ります。


「イラ侯爵家のことを知らないなんて、お勉強不足ではありませんか?」

「まぁ!?」

「失礼しますわ」

「お待ちなさい。」

「なにか?」

「貴方はうちよりもイラ侯爵家が強いと言いますの?」

「はい。」

「そんなのわからないわ」

「イラ侯爵家は強いです。それに、どんな強い方が相手でも私はニコラスの勝利を信じます。自分の婚約者を信じるのは当然です。貴方も同じではありませんか?」

「私のお兄様が相手でも同じこと言えるの?」


お兄様が誰だか知りません。婚約者の話をしてたのになんで?。

やっぱりこの令嬢が誰かわかりません。この感じだと武門貴族ですかね。武門貴族はあまり社交に出てきませんし私はそんなに詳しくないんです。


「もちろん。私のニコラスは負けません。」


この問答いつまで続きますの。


「勝負よ!!」

「私と貴方がですか?」

「お兄様とイラ様よ」

「え?」


これってどうすればいいんですか。夜会で勝負を申し込まれるのは予想外です。


「いいですよ。受けましょう。」

「ニコラス?」

「ここまで、言われたら受けない訳にはいかないよ。場所と日時はどうしますか?」

「お兄様はお忙しいのよ」

「では、武術大会でお会いしましょう。」

「ニコラス?」

「リリアは母上の隣で観戦な」


私、武術大会の日は市のお祭りに行きたかったのに。

でも、今回は私にも非があります。


「わかりました。」

「俺達はこれで。当日剣を合わせるのを楽しみにしています。失礼します」


ニコラスにエスコートされてバルコニーに移動しました。


「武術大会に出るんですか?」

「あぁ。力を示せば静かになるだろう。訓練するから付き合ってよ」

「私は弱いですよ」

「差し入れ作って、側で見ててくれればいいよ」

「そんなことでいいんですか?」

「それが一番やる気がでるんだよ」

「わかりました。」


今回は私がうまく相手をできませんでした。フォローしてもらった結果なので、ニコラスに従いましょう。

お母様、早く帰って来てください。うちには厄介な招待状ばかりきます。いつもお母様はこんなに大変な社交をこなしていたんですね。私、同派閥のお茶会が気楽なものだとよくわかりました。

ただなぜか武術大会に出ることになったニコラスの機嫌がよいです。本当は参加したかったんでしょうか。不機嫌よりはいいんですが。

時間があるときは、庭でのニコラスとディーンの訓練を見守ります。ディーンに速度向上の魔法をかけても、ニコラスのほうが強いとは思いませんでした。私には二人の動きは見えません。倒れるまでニコラスが訓練をしなくなったのは大人になったということですね。

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