第八十八話 昔話
明日、クレア様は帰国されるので私の部屋に泊まりにきてます。
「ずっと聞きたかったんだけどリリアと上皇様の関係ってなに?」
クレア様が興味を持つなんて意外です。
「上皇様はお母様のおじい様です。あと私とお兄様の魔法のお師匠様です。」
「あんなに素敵なおじい様なんて!!上皇様とのお話を教えて」
「楽しくないですが、良いんですね。懐かしいな・・・。」
クレア様、上皇様のファンなんですね。
上皇様も容姿端麗なのでファンが多いんですよね・・。
目を輝かせたクレア様に負けて昔話をしましょう。
「上皇様はよくうちに遊びに来ていました。上皇様のお膝は私の特等席でした。
お母様のおじい様なのにお父様よりも若く見えるのは内緒にしていました。
「リリア、土産だ。」
魔法を教わる前はおじい様と呼んでいました。
おじい様から頂いた本を広げると魔法の本でした。あの時は嬉しかったです。でもお兄様は申しわけない顔をしておじい様に言いました。
「お師匠様、リリーは魔法と相性が悪いんです」
「ノエル、どういうことじゃ?」
「先生に匙を投げられました。ニコラスが必死に教えて初級魔法がやっとです。下級魔法も使えません」
私はお兄様に話を聞いたおじい様も魔法はやめなさいと言うと思ってました。
この頃、お兄様が私に魔法の練習をやめさせたかったことも知ってました。
「リリア、なんの魔法が使えるんじゃ?」
「風の舞。」
まだ風属性の初級魔法、小さな風をおこす魔法しか使えませんでした・・。
「私に預ければいいものを。あやつは・・。リリア、ここを読んでみなさい」
私はおじい様の指の文字をたどって読み上げました。
「われねがう、ひかりのめがみのしゅくふくを」
「そうじゃ、我願う、光の女神の祝福を。今度は神様にお祈りしながら唱えてみなさい」
手を組んで祈りを捧げました。お祈りは毎日しているので得意でしたから。
「我願う、光の女神の祝福を」
「リリア、目を開けてみなさい」
おじい様の声で目をあけると上からキラキラと光が落ちてきます。
「おじい様、これリリーの魔法?」
「そうじゃよ」
あまりに簡単に魔法が使えたので驚いたんです。
「リリー、こんなに簡単に魔法使えたのはじめて!!」
「リリア、魔法に属性があるのはわかるかい?」
「うん。」
「リリアは聖属性が強いんじゃ。だから他の魔法は使いずらい。」
「おじい様、リリーにも魔法を教えてくれる?」
「構わんよ」
この時、はじめて魔法を覚えるのを反対しない身内に嬉しかったんです。お母様はなにも言いません。ただお父様とお兄様は反対してましたから。
「お兄様、リリーはおじい様じゃなくてお師匠様について行ってもいいですか?」
「リリー、母上に相談しないと。それにお師匠様についていけば、一人で寝ないとだよ。当分、家に帰ってこれないよ」
上皇様ことお師匠様について魔法を覚えたかったけど、まだ一人で寝るのもお兄様たちと離れるのも怖かったんです。私が悩んでいると上皇様が優しく頭を撫でてくれました。
「リリア、うちで修行するのはもう少し大きくなったらじゃ。いくつか宿題をだしてやろう。またすぐ来てやろう」
「お師匠様、ありがとう!!。リリーは治癒魔法を使えるようになりたいの」
「リリアなら簡単じゃ。そうじゃな・・・」」
クレア様がきょとんとされてるのはどうしてでしょうか・・。
「それからお師匠様が時々来て魔法を教えてくれたんです。詠唱を覚えて、魔力の操作もお師匠様から及第点をいただいたんだけど、物足りなくなったんです」
「物足りない?」
「うん。治癒魔法を覚えても使う機会がなかったんです。だから私は王宮騎士団の訓練場に通うことにしたんです」
「え?」
「訓練場なら疲れた人や怪我人がたくさんいます。診療所は子供の私が行くと邪魔になりますから。」
「リリア、どうしてイラ侯爵家に行かなかったの?」
「ニコラスはこっそり訓練して倒れるのが趣味なんです。だから治癒魔法を使えるようになったらこっそり治してあげたかったんです。」
「趣味・・。治癒魔法を覚えたのってニコラス様のためなの?」
「はい。ニコラスには内緒です。絶対にニコラスのためって言ったら覚えなくていいって反対されるのわかってたんで。ニコラスは自分のために私が頑張るの嫌いなんです。優しいニコラスは私自身のためにやりたいって言えばお願いをきいてくれるんです。お母様ってニコラスのことを気に入ってるから、ニコラスが説得すれば聞いてくれるんですよ」
「王宮騎士団の訓練場に通ってたことはニコラス様は知ってるの?」
「1度偶然会っただけなので知らないと思います。騎士を練習台にしてたなんて武門名家の嫡男に言えません。怪我しないように願うのではなく、怪我人を見つけて喜んでいたなんて、ねぇ?」
「それは言えないね」
「王宮騎士団の騎士は大人だったので、私の魔法の練習に快く付き合ってくれたんです。今、思うとちょっとやりすぎたと反省してます。」
「しっかり者のリリアにもちゃんと子供時代があったのね」
「失礼ですよ。」
「リリアにとってニコラス様はなに?」
「うーん。意地っ張りで努力家でどうしようもない人です」
「あとは?」
「優しくて頼りになって、居心地がいい安心できた人です」
「過去形?」
「はい。いつまでも子供のままではいられません。クレア様、帰ったらセシル殿下からお説教ですか?」
「殿下はお説教なんてしないわ。おかえりって迎えてくれるわ」
「相変わらず溺愛されてますね」
「リリアだって大事にされてるじゃない」
「イラ侯爵家は婚約者を守れないのは沽券に関わるからです。いささか大げさですが武門貴族のことはわからないので仕方ありません。それにニコラスは誰にでも優しいから勘違いしてはいけません」
「勘違い?」
「はい。」
「どう見てもニコラス様はリリアが」
「それ、勘違いです。いずれわかりますわ。そろそろ休みましょう。明日、起きれないと困ります」
今日はセノンはニコラスに預けています。
クレア様とシロと一緒にベッドで寝ます。シロはすでにベッドで眠っていましたが・・。
クレア様が無事に帰れそうで良かったです。
シロと会えないのは寂しいですが、仕方ありません。いつまでも隣国王家に振り回されるのは勘弁してほしいです。
クレア様はまだ話したそうですが私は限界です。お休みなさい。




