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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
10歳編
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第一話 前編 夢

誰かに呼ばれた気がして目を開けるとお父様とお母様が手を握っていました。


「リリア!!」

「奇跡だわ。神に感謝を」


突然、祈りをささげるお母様。

ゆっくりと起き上がるとお父様に抱きしめられました。


「熱が下がらなくて。もう駄目かとリリー」


泣いてるお父様も祈りをささげているお母様もげっそりとされています。周りの使用人たちも泣き崩れています。

確かに体が少し重たくて、だるいです。


「お父様、心配おかけしてごめんなさい。リリーは大丈夫です」


「リリアよかったよ。」


両親以外の聞こえる声に視線を向けると彼は・・。

なぜか悪寒が走り、私は再び意識を手放すことになりました。


もう一度目が覚めた時は夜でした。

体のだるさもありません。スッキリしてます。

ご紹介が遅れました。レトラ侯爵家長女のリリアと申します。10歳です。

家族は父と母と兄の四人ですわ。お兄様は成人し外交官として働いています。寂しいことに、お兄様は海外で過ごしているため家を留守にしております。時々しか帰ってきません。


私は長い夢を見ていた気がします。

夢の中の私は16歳。その当時ある小説が流行しておりましたの。

平民の少女が王妃になるお話です。

私は芸術は自由とわかっていたのですが、内容が非常識すぎて途中で読むのをやめてしまいました。

ですが、私のお友達の話ですとそのお話とそっくりなことが現実におきていました。

平民の少女は王太子殿下をはじめたくさんの殿方を魅了します。

少女に魅了された殿方達は少女の言いなり。物語の中なら許せました。

ただ現実ではありえません。

そんな無礼な少女を許せないのは私達貴族の令嬢です。

私は少女に嫌がらせはしませんでした。ただ殿下への不敬は注意しました。

ほとんど私がいさめたのは、少女ではなく殿方たちのほうでしたが・・。立場をわきまえてくださいと。

ただ正しいことをしていた私たちはなぜか不幸な目にあいますの。

特に少女と仲の良い殿方の婚約者は・・。

国外追放、家の取りつぶし、斬首、暗殺・・・・。

私も殺されかけました。恐ろしいです。

そしてきっと家は取り潰されたんでしょう。逃げずに我慢して最後まで小説を読めば良かったです。

ただ夢なのか、断片的にしか覚えてませんの。

でも私の友人が斬首されたのは覚えております。友人を見て笑う少女に怒りを抑えきれなかったのは仕方ありません。

これはきっと予知夢です。

確かなことは髙位の貴族と婚約しなければいいんです。

もしくは他国に嫁げばいいのです。婚約せずに、成人したら婚姻して他国に旅立ちましょう。


ただ問題があります。

私、幼なじみのニコラス・イラ侯爵子息との縁談の話があります。

イラ侯爵とお父様はご友人。お父様は私を可愛がってくださっているので、親しいイラ侯爵家に嫁がせれば苦労はないと思っていたんでしょうか…。

ニコラスも将来王太子殿下の側近候補。

これは絶対に婚約はしてはいけません。

私は高位な殿方と関わらずに生きていきます。

もちろん友人も斬首になんてさせません。

小説にでてきた運命の恋・・。運命なんて知りません。人を不幸にする運命なんて壊れてしまえばいいんです。

今の私にできることは・・・。


お父様に会いに行かないといけません。

お父様とお母様のお部屋をノックするとお母様が出てきました。


「リリー、起きたの?」

「お母様、遅くにごめんなさい。」

「いいのよ。せっかくだからここで寝る?」

「いいんですか?」

「ええ。いらっしゃい」


お母様に手をひかれてベッドに行きます。

本を読んでいたお父様が優しく微笑まれます。

優しい両親は大好きです。


「リリー、おいで」


お父様が抱き上げてくれます。


「元気になってよかったよ。」

「ご心配おかけしました。お父様、リリーはずっとお家にいたいです」

「どうしたんだい?」

「リリーはお父様かお兄様みたいな方と結婚したいです。」

「リリー、もしかして知ってるの?」


お母様の声に首をかしげます。


「侍女たちの話を聞いたのかしらね。そろそろ婚約者を選ばないと」


まずいです。私の婚約者はきっとニコラスです。

だって昔から将来結婚するってニコラスが言ってました。


「リリーはお父様かお兄様じゃないと嫌です」

「今日は子供みたいね。ニコラスとは仲が良いじゃない」

「嫌です。ニコラスは怖いです」

「リリー。意地悪されたのかい?お父様に話しなさい」

「リリーは婚約者はいりません。リリーはずっとお父様達のおそばにいたいです。大人になったら、ちゃんと結婚して外交官になります。だからそれまでは」

「そうか。リリーはまだ子供だから、婚約者なんていらないだろう?」


お父様が優しく笑って頭を撫でてくれました。


「旦那様」

「こんな可愛いリリーのお願いを無碍にはできない。きっと息子も構わないというだろう?」

「あの子はリリーに甘いですから。旦那様、イラ侯爵との約束はいいんですか?」

「昔の約束より可愛い愛娘だ。うちには優秀な跡取りもいる。リリーがうちで外交官になりたいとは思わなかったよ」

「リリーはお父様達のお傍でお役に立つように頑張ります。お勉強ももっと頑張ります」

「リリー、そんなに頑張らなくていいのよ。」


これなら大丈夫です。きっと婚約回避できます。


「まだ病み上がりだから、ゆっくり休みなさい」


頭を撫でる優しい手に安心してお父様とお母様の間で目を閉じました。


「リリーはどうしたのかしら。あの子が外交官になりたいなんて知らなかったわ」

「いいじゃないか。女性外交官もいる。リリーが望むならうちにずっといてもいいんだ」

「旦那様…。この子はしっかりしているけどまだ子供なのね」

「今日のリリーは格別に可愛かった」

「そうね。うちの天使は可愛いわ。まだ病み上がりなので無理しないように気をつけないと」

「そうだな。明日はリリーの婚約の話をしてくるよ」

「お断りの?」

「ああ。うちのかわいいリリーは嫁にやらないと」

「もう。仕方ない人ね。あの子が聞けば喜ぶわ」

「きっとそのうち帰ってくるだろう。」

「そうね。もう薬は探さなくていいと手紙に書かないと。」

「リリーが目覚めたとは送ってあるから大丈夫だろう。いつ帰ってくると思う?」

「明後日。きっと仕事を片付けて最短ルートで帰ってくるわ」

「今日はうちの天使をみながら休むか」

「旦那様、ちゃんと眠ってください。もしリリーの寝顔をずっと見ているなら部屋に連れていくわ」

「ちゃんと休むよ。リリーが心配するから」


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