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聖徒会 仲間との絆

作者: 麻生弘樹

その男は常に強さを求めていた。

今やその男に敵う者はいないと言ってもいい。

数々の魔物や人を相手にしてきたがいずれも男を満足させる事は出来なかった。

そんな男はある風の噂を耳にした。

聖徒会という魔物から世界を守る為に設立した組織があるという。

その聖徒会は数々の強敵から世界を守ってきたという。

特にそのメンバーの一人、神島 蓮はかなりの能力を持つと言われている。

この男なら俺を満足させてくれるかもしれない......。

男は神島 蓮を探して続けた。

そして男は人間界へとやってきたのであった。

「神島 蓮.....。

 お前は俺を満足させてくれるかな?」

男はニヤリと不気味に微笑んだ。


神島蓮と女神希は久々のデートの最中だった。

季節は冬。

二人は毎年多くの人が訪れる有名なイルミネーションを見に行っていた。

「凄い......!」

「ほんとです......!

 とても綺麗ですね!」

二人は壮大なイルミネーションを目の前にした感動していた。

「じゃあ撮るよー?」

二人は肩を寄せ合い、イルミネーションをバックにケータイのカメラで写真を撮る。

「はい、チーズ!」

カシャッとシャッター音が鳴る。

「それにしても本当に凄いね。

 見に来れて良かったよ。」

「はい!

 願いが叶いました!」

すると希は

「蓮君。

 ありがとうございます。

 私のわがまま聞いてくれて。」

と、頭を下げた。

「いいってこれぐらい。

 俺もこんなに凄いイルミネーション見に来れて嬉しかったしさ。」

と二人で笑い合う。

「もうすぐクリスマスですね。」

「そうだね。

 今年はどうしようか?」

「今年は私達だけでなく氷神さんや会長もお呼びして皆さんでパーティーをしませんか?」

「なるほど、それもいいかもね。

人数は多い方が楽しいし。」

「それから薫さんもお呼びしたいのですが?」

「もちろん。

 敬介も喜ぶと思うよ?」

などと、クリスマスについて楽しく話していた。

二人の仲は深まっていくばかりだった。


後日、二人は敬介、薫、仁にクリスマスパーティーのお誘いをした。

三人共喜んで参加するとの事だった。

皆んなが参加する事になり蓮と希はクリスマスパーティーの準備に備え食材などの買い出しをしていた。

蓮は一人買い物から帰る所だった。

今年のクリスマスは賑やかになりそうだ......。

そんな事を思いながら帰路に着いた。

その時、怪しい気配を蓮は感じ取った。

立ち止まり、辺りを見回す。

「お前が神島蓮か?」

蓮の背後から声がし、振り向く。

そこには一人の男がいた。

「何者だ?」

男は怪しげに笑う。

「俺は強さを求めて人間界にやって来た。

蓮よ、お前は俺を満足させてくれるかな?」

「何を言っている?」

次の瞬間、男は剣を持ちいきなり蓮に襲い掛かった。

最初の一撃を何とか回避する蓮。

「何が何だか分からないが、やってやる!」

蓮は赤い石を握り締め、一定のポーズを取る。

次の瞬間、蓮は炎の剣士へと変身した。

炎の剣を手に持ち、反撃する。

お互いの剣と剣がぶつかり合う。

激しい火花を散らす。

だが謎の男の方が力は上だった。

次々と蓮は押されていく。

そして蓮の剣は薙ぎ払われ、強烈な一撃を喰らった。

吹き飛ばされる蓮。

「どうした?

その程度なのか?」

男は笑う。

「くっ.....!

なんてパワーだ!」

何とか立ち上がり、反撃を仕掛ける蓮。

だが、蓮の攻撃はいとも簡単に防がれてしまう。

「ふん、つまらん!

お前もどうやら期待外れだったようだな。」

男は剣にパワーを溜める。

「これで終わりだ!!」

巨大な刃が蓮に目掛けて放たれる。

蓮は慌てて剣でガードするが、あまりのパワーに吹き飛ばされてしまった。

「ぐわあっ!!」

かなりのダメージを負った蓮はそのまま動かなくなった。

「所詮は噂だけの男だったか。」

溜息をつく男。

「しかしお前のその能力は興味深い!

その力、俺が頂いていこう!!」

男は倒れてる蓮に近付き、蓮の腹に手を突っ込んだ。

「うっ!?」

「安心しろ。

殺しはしない。

お前の能力を奪うだけだ。」

すると蓮の身体から男へと赤いエネルギーが流れて行った。

「うぅ.....!!」

苦しむ蓮。

やがて蓮の能力は全て男の手によって奪われてしまった。

「この力で俺は更に強くなれる!!」

高笑いをする男。

「さらばだ、神島蓮よ。

ま、所詮はその程度の事だったという訳だ。」

そして男は姿を消した。


誰かが自分を呼ぶ声がする。

うっすらと目を開ける。

ここは......?

「蓮君!?

大丈夫ですか!?」

目を開けると天井がありここが自分の家だと言う事に気付いた。

そして目に涙を浮かべている希。

更に

「蓮!!」

「大丈夫かい!?

神様君!!」

敬介と会長の姿もあった。

起き上がろうとするが身体に激痛が走り、起き上がれない。

「無茶しないでください!!」

「俺は......、一体......?」

すると希から買い物に行った蓮が帰って来ないため、携帯に連絡したが繋がらなかった。

更に敬介と会長から魔物の気配を感じたと言う連絡が入り、嫌な予感を感じた三人は蓮を探した。

そこで路上に倒れている蓮を発見して家まで運んだと言う。

「でも良かった......!!

本当に無事で!!」

涙を流す希。

そんな希の頭を蓮は優しく撫でてあげた。

「一体、何があったんだ?」

蓮はさっきの出来事を全て三人に話した。

「謎の男?」

「ああ。

物凄い力を持つ奴だった。

俺の力では全く歯が立たなかった.....。」

そして蓮はふと思い出し、あの赤い石を取り出す。

その石を握り締めたが......

「そんな!?」

石は何も反応を示さなかった。

「蓮君.....?」

希が心配そうに声をかける。

「奪われたんだ.....。

あの男に俺の能力を全て.....!!」

「!?」

「奪われた!?」

「なんて事だ.....!」

蓮は愕然としていた。

「能力を奪われた俺はもう、戦えない.....。

みんなとはもう一緒に.....戦えないんだ......。」

項垂れる蓮。

そんな蓮を希は抱きしめた。


その後敬介と仁は一先ず帰る事にした。

二人もどうしたらいいのか分からなかった。


蓮はその後もずーっとうなだれたままだった。

そんな蓮を見た希はある事を思い付いた。

しばらくして希は蓮を呼んだ。

「蓮君。」

ゆっくりと顔をあげる蓮。

だがその表情は暗いままだった。

「ご飯が出来ましたよ。

今日は蓮君の大好物の特製唐揚げです!」

見るとテーブルの上には見るからに美味しそうな唐揚げがお皿に載っていた。

「少しでも食べて元気出してください!」

希は蓮に元気を出してもらおうと料理をしていた。

蓮は少しだけ頷くとテーブルの席に座った。

「頂きます。」

「......頂きます。」

お箸で唐揚げを取り口に運ぶ。

「どうですか......?」

希が感想を聞く。

希の作る唐揚げはいつ食べても絶品だった。

しかし、蓮の表情は暗いままだった。

「うん......、美味しいよ。」

「そうですか.....。」

さすがの希もどうしたらいいのか分からなかった。

希の顔が曇る。

それを見た蓮は

「ごめん......。」

と一言だけ謝った。

「え?」

「俺のせいでみんなに迷惑かけて......、希もせっかく元気出してもらおうと思って俺の好物作ってくれたのに.....。」

「蓮君......。」

「ごめん.....。」

蓮はもう一度謝った。

それを聞いた希は

「蓮君。

例え蓮君が能力を失ってても私は蓮君が大好きです。」

と優しく微笑んだ。

「え?」

希は続ける。

「だからこれ以上自分を責めないで下さい。

そんな事されたら......、私だって悲しいですよ?」

「希......。」

「蓮君は私の事を何度も助けてくれました。

だから、約束します。

今度は私が蓮君を守ります。」

「......!!」

「だからもうそんな顔してちゃダメですよ?

蓮君が私に言ってくれたように、私は笑ってるいつもの蓮君がカッコいいし、そんな蓮君の方が大好きです。」

と、蓮に満面の笑みを見せた。

それを見た蓮は

「.....ありがとう。

希。」

と、少しだけ笑顔になった。


後日、元気を取り戻した蓮は敬介と仁に謝罪とお礼をした。

「何としてもその男から能力を取り戻さないとな。」

「僕達も全力で君を助けるよ。」

蓮は頷く。


蓮達はその後も謎の男について調べたが手かがりは出てこなかった。

それでも蓮は一人でもその男を探していた。

何としてもあの男から能力を取り戻す。

そう決めていた。

あまりにその男を探す事に夢中になっていたため、背後から魔物が襲いかかってくるのに気付かなかった。

吹き飛ばされる蓮。

見ると二体の狼魔物が蓮を睨みつけていた。

「く!

こんな時に!」

今の蓮には逃げる以外の選択肢は無かった。

しかし、そうはさせまいと再び狼魔物が襲いかかってくる。

殺される!

思わず目を瞑る。

「はあっ!!」

と、蓮の前に誰かが現れ風の波動を放った。

吹き飛ばされる二体の狼魔物。

「......希!?」

蓮を助けたのは希だった。

「大丈夫ですか!?

蓮君!」

「う、うん......。」

「蓮!」

と、更に敬介と仁が現れた。

「無事か!

蓮!」

「怪我はないかい?」

蓮は頷いたものの、自分が情けなかった。


「ごめん、また皆んなに迷惑かけて......。」

「蓮君......どうしてこんな無茶を?」

「後一歩遅かったらお前は死んでたかもしれないんだぞ?」

「神島君、能力を取り戻したい気持ちは分かるが一人でやるには無茶がある。

慌てずに僕らと一緒に......。」

「みんなに何が分かる!!」

思わず蓮はそう叫んでしまった。

「!?」

突然の言葉に驚く三人。

「能力を失って今の俺はロクに戦えない!

今の俺はただのお荷物だ!

希を守る事も!

敬介や会長と戦う事も出来ない!!

この辛さが分かるのかよ!?」

「蓮君.....!」

「......!」

「悪いけど、放っておいてくれ......」

それだけ言うと蓮は逃げるようにその場を去った。


逃げるように去った蓮は少し離れた公園のベンチに座っていた。

またもや皆んなに迷惑をかけた事、あんな暴言を吐いてしまった事。

蓮の心の中は後悔と申し訳なさで一杯だった。

「希達になんて謝れば......。」

蓮は希、敬介、仁の事を思い浮かべる。

いつも俺のそばに居てくれて辛い時も支えてくれた希は大事なパートナーだ。

最初は嫌な奴だったがクールで妹想いの敬介。

初めて名前で呼んでくれた時は嬉しかった。

みんなをまとめてくれる会長。

会長のリーダーシップやサポートには随分と助けられた。

「皆んな......。」

気がつくと雪が降り始めていた。

その時

蓮の視界に缶コーヒーが見えた。

顔をあげると目の前には......。

「希......。」

「飲んで温まってください。

風邪ひいちゃいますよ?」

優しく微笑む。

蓮は複雑な気持ちだったが缶コーヒーを受け取り、小さな声でお礼を言った。

希は蓮の隣に座る。

蓮は決意を決めて口を開いた。

「あの......」

しかし希は

「大丈夫ですよ。」

と答えた。

「......え?」

希は続けた。

「蓮君が本心であんな事言ったんじゃないって事知ってます。

だからまた自分を責めたらダメですよ?」

「希......。」

「氷神さんも会長も怒ってはいませんから。

蓮君の事、心配してます。」

「そっか......。」

「それよりも謝らなきゃいけないのは私達の方です。

蓮君の辛さも分からずに......本当にごめんなさい。」

頭を下げる希。

「ううん......、違うんだ!」

蓮は立ち上がると本心を話した。

「能力を失って俺、本当は怖かったんだ!

もうこのままみんなと一緒に戦えないんじゃないかって.....!

それに......!

希を守れなくなる......!!

俺の大事なパートナーを失うのが凄く怖いんだ......!」

「蓮君......。」

すると希も立ち上がり、蓮を抱きしめた。

「私達は蓮君を信じています。

また一緒に戦えるって。

だから、希望を捨てないでください。」

「希......!」

希は続ける。

「それに、蓮君は何度も私を守ってくれました。

だから今度は私が蓮君を守ります!!」

蓮は希の顔を見た。

力強い目の中に希の優しさが蓮には感じられた。

蓮は微笑み頷いた。

希も優しく微笑んだ。

蓮は思い出した。

自分は一人じゃないと。

大切なパートナーに仲間がいる事を。

二人はその場を去ろうとした......その時。

強烈な衝撃波が二人を襲った。

その場に倒れる二人。

「ふ、また会えたな。

今度は女も一緒か。」

「お前!!」

見ると例の男が立っていた。

「お前だけの能力だけじゃ物足りなくてな、今度は聖徒会共の能力を奪いに来た訳だ。」

「何だと!?」

「蓮君!!」

希は立ち上がると蓮に下がっているようにと手で伝えた。

「蓮君には手出しさせません!!」

「ほう!

ならば次はお前の能力を奪ってやる!!」

そう言うと男は希目掛けて襲いかかる。

希は風の波動を放った。

「効かん!!」

男は剣で斬りかかる。

何とかその攻撃をかわすが希は押されていく。

「希!!」

「ふん!!」

希は男の強烈な一撃を喰らった。

「お前も大したことないようだな。」

「希!!」

希は苦しそうだった。

口からは血が流れていた。

蓮は怒りに身を任せ男に向かっていった。

拳で殴りかかるが逆に男の攻撃を喰らった。

「能力を持たないお前など虫ケラ以下だな。」

すると男は剣を振り上げ、

「これで終わりだ!!」

勢いよく振り落とす。

が、その攻撃は現れた敬介と仁がガードした。

「敬介!

会長!!」

「俺達を忘れてもらっては困るな!」

「油断するなよ!

氷神君!!」

2人は氷の剣と光の剣を出現させ男に向かって行く。

「二人になった所で何も変わらん!!」

男は怯む事なく向かって行く。

二対一になったものの男は苦戦していなかった。

逆に二人はあまりのパワーに押されていく。

「お前達もこれで終わりだ!」

男は剣から衝撃波を放った。

二人はガードするがあまりの威力に吹き飛ばされた。

更に吹き飛ばされてる最中にもう一発攻撃を喰らった。

二人は地面に打ちつけられそのまま動かなくなった。

「敬介!!

会長!!」

「やれやれ、お前の仲間とやらは所詮はこの程度か?

くだらんな!!」

「てめえ!!」

男は蓮に近づいて行くと再び剣を振り上げた。

「今度こそ終わりだ!!」

蓮は思わず目を瞑る。

それを庇ったのは希だった。

重傷を負っている希にもう力は残されていないはずだった。

「希!?

もういい!

やめてくれ!!」

「まだ抗うのか?

女!!」

「言ったはずです......!

蓮君は私が守ると!!」

更に希は

「蓮君!!

希望を!

自分を諦めないでください!!

私達は蓮君を信じています!!」

「戯言を!!」

男は剣に更に力を入れ希に振り下ろした。

膝まづき倒れる希。

「希!!!」

「やれやれ、手こずらせてくれたな。

安心しろ。

お前も仲間達の元へ送ってやる。」

蓮は絶望していた。

俺はどうすれば......!?

涙を流す蓮は。

その時、蓮は希の言葉を思い出す。

希望を自分を諦めないでと。

「希......!!」

希は命をかけて俺を守ってくれた。

敬介や会長も。

その想いを踏みにじってはいけない。

蓮は覚悟を決めた。

「終わりだああああ!!」

剣が振り落とされる。

その時蓮の持つ赤い石が強く輝いた。

「何!?」

男は思わず目を背ける。

その輝きは蓮に力を与えた。

蓮の身体に力が漲ってくる。

「希、敬介、会長!

皆んなの想いがある限り、俺は絶対に諦めない!!」

蓮はその石を強く握り締めた。

蓮の全身が紅蓮の炎ならぬ、マグマに包まれて行く。

諦めない蓮の想いが灼熱のパワーを目覚めさせたのだ。

「何だ......?

その姿は!?」

蓮はマグマの様に燃える甲冑を見に纏い、灼熱の剣、グレンセイバーを手にした。

「参る!!」

蓮は目にも止まらぬスピードで男に向かって行く。

さすがの男もこのスピードには付いていけなかった。

グレンセイバーの強烈な一撃を喰らう。

「くっ!!

この俺が、馬鹿な!!」

「よそ見をしている場合か?」

「!?」

更に男は蓮の攻撃を喰らって行く。

遂には男は吹き飛ばされた。

「小癪なあ!!」

男は剣に最大級のパワーを溜める。

そして

「喰らえええっ!!」

剣から巨大な衝撃波が繰り出された。

蓮もグレンセイバーにパワーを溜める。

そして

「紅蓮斬!!」

と巨大な炎の刃を放った。

お互いの技がぶつかり合った。

しかし紅蓮斬が衝撃波を破り男に直撃した。

「これがお前の真の力なのか!?

ふふふ、見事だ!!」

そして男は叫び声と共に爆発した。


その後、希達三人はすぐ様救急車で病院に運ばれた。

今の蓮には三人の無事を祈る事しか出来なかった。


最初に目を覚ましたのは敬介と仁だった。

「敬介、会長!!」

「蓮......、ここは?」

「病院だよ。

良かった......、無事で......。」

すると仁は

「それはそうと神島君、あの男は?

それに君の能力も.....。」

「大丈夫だよ。

あの男は倒した。

俺の能力も、もう大丈夫だ。」

そして蓮は自分の新たな能力について話した。

二人は驚きを隠せなかった。

「そんな事が......!」

「まさに奇跡だな。」

すると蓮は

「敬介、会長。

本当にありがとう。

それから、ごめん......。」

「え?」

「二人は俺を助けてくれたのにあんな酷い事言って......、本当にごめん。」

蓮は二人に向けて頭を下げた。

それを見た敬介は

「気にするな。

俺もお前が能力を失った気持ちも考えずに、軽率だった。

すまない。」

すると仁も

「僕も気にしてないよ?

何より君の能力が戻って本当に良かった......。」

と、三人はそれぞれ微笑んだ。

しかし蓮はすぐに表情を曇らせた。

「でも......、希がまだ、目を覚まさないんだ......。」

「!!」

三人の間にしばしの沈黙が流れる。

すると敬介が

「蓮、お前は女神のパートナーなんだろう?

そのお前が希を信じてやれなくてらどうする?」

蓮がその言葉に反応して顔を上げる。

それに続いて仁も

「神島君、僕達はもう大丈夫だから。

今は女神君のそばにいてあげてくれ。」

その言葉に蓮は頷いた。

「ありがとう。」

そう言うと蓮は病室を出て希の病室へと向かった。


希はベッドの上で眠っていた。

蓮はそんな希の手を優しく握った。

「希.......。」

蓮は眠ったままの希に静かに語りかける。

「希、君のおかげで俺はまたみんなと、希を守る力を手に入れる事が出来たよ。

希の言葉で俺は諦めずに済んだんだ。

ちゃんとお礼を言いたい......。

それにみんなと、クリスマスパーティーもやるんだろ?

だから......、目を覚ましてくれ......!

希!!」

その時、

「蓮君......?」

希がゆっくりと目を開けた。

「希......?」

希は蓮に優しく微笑んだ。

「蓮君の手.....、暖かいです......。」

「希......!!」

蓮は目から涙を流した。

「良かった......!

本当に良かった......!!」

希はそんな蓮の頭を優しく撫でてあげた。


後日、希達三人は怪我も完治し無事に退院した。

そして今日は待ちに待ったクリスマスパーティーである。

蓮と希のアパートのインターホンが鳴る。

出ると、敬介、妹の薫、仁がいた。

「いらっしゃい。」

「神島さん、ご無沙汰しています。」

薫が頭を下げた。

「久し振りだね、薫ちゃん。

さあ上がって。」

「お邪魔します。」

三人は家に上がった。

「皆さん、ようこそ。

薫さんもお久しぶりです。」

微笑む希。

薫も久し振りに希と会えて嬉しそうだった。


テーブルには豪華な希の手料理がたくさん並べられていた。

すると薫が

「良かったらこれ、皆さんで召し上がってください!」

と持ってきた箱を開ける。

中にはカラフルなマカロンが何個も入っていた。

「凄い!」

「しかもこよマカロンは薫の手作りだからな?」

「お上手ですね、薫さん!」

その言葉に薫は照れる。

そして蓮はそれぞれのグラスにジュースを注いであげる。

「じゃあみんな、グラスは持ったかな?」

全員がグラスを持ったのを確認した蓮は

「それじゃあ、乾杯!!」

「乾杯!!」

と声を揃えて言った。


パーティーは大盛り上がりだった。

「女神さんのお料理、とても美味しいです!」

「良かったです。

たくさん食べてくださいね?」

「薫。

食べ過ぎて太るなよ?」

「氷神君、そう言うのは言ってはいけないよ?」

「あくまで注意しただけだ。」

「ほら、お兄ちゃん。

口に付いてるよ?」

「よ、よせ。

こんぐらい自分で取る!」

相変わらず仲の良い兄妹のやりとりを見て笑う。

その後はプレゼント交換となる予定だったが、

「薫ちゃんはマカロンを持って来てくれたし、それがプレゼントで良いんじゃないかな?」

と仁が言った。

「確かにそうだな。」

『え、でも......。」

「いいから気にするな。」

「そ、そう?」

「はい。

マカロン、とても美味しかったですよ。」

希の言葉に薫は嬉しそうだった。

「それと神島君は誰にプレゼントを渡すかは決まってるよね?」

「え?」

と蓮の方を見る。

蓮はどうやら図星のようだった。

「ま、まあ......。」

「神島君、僕達の事はいいから。

遠慮なく渡してあげてくれ。」

「分かった。」

そして蓮は

「希。」

と希に小さな箱を手渡した。

「蓮君?」

「俺からのクリスマスプレゼント。

受け取ってもらえるかな?」

その言葉に希は頷き、プレゼントを受け取った。

箱を開けると中には......。

「これって......!」

中には金と銀のペアリングが入っていた。

見ると金のリングにはアルファベットでNOZOMIと彫られていた。

銀のリングにはRENと彫られている。

「その、これからも一緒に居られるようにって意味を込めてこのペアリングを贈ったんだ。」

希はその銀のリングをじーっと見つめていた。

「あ......、もしかして気に入らなかった......?」

すると希は

「蓮君が私の指にはめてくれませんか?」

「え?」

希は微笑んでいた。

「とても素敵なプレゼントです。

私、とても嬉しいです......!!」

「希......。」

蓮は頷き、その銀のリングを希の指にはめてあげた。

そのリングを見つめ希は目を輝かせた。

「ありがとうございます。

それじゃあ、私も。」

と、今度は希が金のリングを取り、蓮の指にはめてあげた。

その瞬間、敬介、薫、仁から何故か拍手が起こった。

蓮と希は照れながらもお互いに微笑んでいた。


その後もパーティーは大いに盛り上がった。

そしてパーティーはお開きとなり、敬介達三人は二人にお礼を言い、帰っていった。


二人はパーティーの片付けを終えていた。

「パーティーとても楽しかったですね。」

「うん。

みんな喜んでくれてたしね。」

更に蓮は

「あのさ、希。」

「?」

そして蓮は

「ありがとう。」

とお礼を言った。

「え?」

「俺が能力を失った時、それでも希は俺を支えてくれた。

俺に希望を自分を諦めないでって言ってくれた。

そのおかげで俺はまた戦う力を手に入れる事が出来た。

本当にありがとう。」

「蓮君......。」

そして蓮は意を決して言った。

「俺はもうどんな事があっても諦めない。

俺は一人じゃない。

敬介や会長。

それに希、君が居てくれるから。

俺はこの力で希を守る。

だから......ずーっと側にいてほしいんだ。」

その言葉に希は

「はい。」と頷いた。

「私も蓮君とずーっと一緒に居たいです。

蓮君の大事なパートナーとして。

私からもよろしくお願いします。」

と、笑顔になった。

それに対し蓮も笑顔になる。

そして二人はそーっと唇を近づけキスを交わし、抱き合った。

蓮と希はこれからもお互いを大切なパートナーとして共に支え合い、お互いを守りながら戦っていく。












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