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リザルト

7話です。

あれから。


しばらくの間私達の行動のせいで家のなかはざわついていた。ざわつきまくっていた。

どうやら熊が現れたのはあの蜂の巣が魔物を引き寄せるような匂いを醸し出しまくっていたかららしくてその調査をしていた人に二人まとめて連れ帰られたという話が聞かされたがそんなことよりも話の話題になっていたのは私のことだった。


魔法。私が魔法を十全に使えないことはこの数ヵ月で屋敷のなかでは周知の事実となっていた。


ミリアの証言からしても状況証拠からしても私がやったとしか思えない。だけど私は魔法はまともに使えない。


つまりはなにかがあったに違いないということでクライ先生が緊急召集されて再検査することになった。


結果は・・・当然だけど悪化してた。


「どうしてこんなことになってるのか。教えていただけますよねぇ。」


状況だけは伝えてたけどクライ先生はそれだけで許してくれるわけがなかった。


「あ、あはは。あはははは。」


「ねぇ!?」


誤魔化せる訳もなく極少数にだけ、具体的にいうなら先生と母上とミナだけにちっさい頃から魔力結晶を作ってましたと自供してしまいました。ええ、しましたとも。


むっちゃビックリされた。なんならクライ先生とミナは一瞬固まって再起動にそこそこ時間がかかった。それはもう壊れかけのおんぼろロボットみたいな動きになってた。

それに比べて母上はそんなに驚かないなぁと思っていると


「ああ、あの石。やっぱりフレイアが作ってたのね。」


とのこと。




え?



「母上知ってたんですか!?」


「あれを見せてくれた時やたら力のこもった石だなとは思ってたのよ。それでこの前クライ先生の話を聞いたときにもしかして、とは思ってたのよ。」


「え。力こもってるとか見ただけでわかるの?」


「わかるわよ?これでもそこそこ魔法使えるからね。最初見たときは妖精とかそういうたぐいのものがくれたものなのかと思ったのよね。だからお守りに持っててもらおうかと思ってペンダントに入れてもらったのよ。」


な、なるほど。妖精とかじゃなかったけど私の命を守るきっかけになったことは間違えない。母上には感謝しないとなぁ。あ、それで思い出した。


「クライ先生。具体的にどれくらい私の状態って悪くなってますか?」


「あ、ああ。フレイア様の状態ですが、簡単に言いますと歪な形で完成されてしまっています。つまりはこれ以上の治療は不可能になりました。また出力の問題もさらに少しだけ弱くなってしまっていて中級魔法もほぼほぼ使えないですね。」


「そう、ですか。せっかく色々調べてもらっていたのに申し訳ありません。」


「しかし、悪いことだけではありませんよ。ほんのわずかですがメリットもあります。先ほど私は完成されてしまった、と言いましたよね?成長が終わっているんです。つまり・・・」


「今からでも魔法が使える、ということですか?」


「ええ、その通りです。もっとも今は魔力が尽きたばかりなので絶対にやってはいけませんけどね。」


そもそも魔法の使い方を知らないのでやりたくてもどうしようもないというのが現状だからその点については問題ない。


「そういえば、私どうやって魔法使ったんでしょうか。」


「予測ではありますが魔法を使った、というよりも魔力がフレイア様の体を通して溢れ出ていたのではないかと。先程の話でしたらその石には大体1日分の魔力が込められているのでしょう?なならばそれを複数個取り込んだ時に許容量をオーバーする可能性が高いです。」


そうなのか。あのときは自分で使ってる気になってたんだけど、ほんとの魔法はもっと難しいってことかな。

・・・面倒くさいのは嫌だなぁ。


「では、そろそろ失礼します。まだ奥様もフレイア様もお仕事が残っているようですし。次に来るときはようやく勉強を教えることができますね。魔法を使うことを中心にした授業にしましょう。」


「ええ。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」


そんな感じでクライ先生は帰っていった。やっぱりいい先生だ。

ついでに屋敷のなかには妖精的な何かの石が守ってくれた、ということになった。嘘八百だけどこのいいわけが通じる辺りこの世界はファンタジーだ。


で。さっきクライ先生がいってた私の仕事。


まあ簡単にいうと部屋にお見舞いに来る人に大丈夫やで!って笑顔でいうことと、今回の件の若き原因をどうにか立ち直らせることの二つだろう。


前者の方はどうにでもなる。たいした量じゃないし格式を気にする必要もない。だけどミリアの方は正直何を言ったらいいのかわからない。


私はカウンセラーの職についていたことはないし、そもそもミリアはまだ5歳なんだから理論的な話をしても聞いてくれないかもだし・・・。




そっか。ミリアはまだ5歳なんだ。前世の感覚で考えると大人びて見えるけど5歳でしかないんだ。だとすれば私はどうしてあげればいいんだろうか。彼女のために私がかけてあげるべき言葉はなんなんだろう。


ミリアは家ではどうやって暮らしているのだろうか。明るくおてんばな様子ではあったが外に出る前の所作の一つ一つは優雅さを感じるものだった。だとすればちゃんと令嬢としての教育は受けているのだろう。もっとも伯爵家の長女が教育から逃げることなんて許されないだろうけど。


この屋敷に帰ってきた時。私は意識を失っていたけどミリアはちゃんと自分の足で歩いていたらしいけど。

その時みんなはミリアにどんな言葉をかけたのだろうか。その場で余裕があった人なんて誰もいなかっただろう。


多分。伯爵家という制約の多い生活は活発少女のミリアにとって窮屈なことも多いのだろう。そんな生活の中、父上は外に出るのを二つ返事で了承するほど甘々な態度だった。上の兄は二人とも個性的で優秀。母親も厳しく当たるような人には見えなかった。


だとしたら、私がやってあげるべきことは・・・。


・・・・・・


なんだかんだ私はベットの上からまだ動けないのでミリアに部屋まで来てもらう。恐る恐る近づいてくる様は一度部屋から出たら自分のせいで危険な目に合わせてしまった人に泣きすがっていたことに気まずくなっているような感情が透けて見える。


「ミリア」


と声を掛けるとビクッと体を震わせてゆっくりと私の方を向く。顔をそらさないのは偉いと思う。私だったら絶対に目なんて合わせられない。


「まずね。私は自分がけがしたことに怒ってるわけじゃないのよ。もちろん、とっても怖かったよ?でも

それは私にも責任があることだし、熊がいたことも結果論でしかないから。問題は人の話をちゃんと聞かなかった事とそのまま夢中で走り続けちゃった事。そうでなきゃミリアも怖い思いをしなくて済んだんだから。ここまではわかる?」


「うん・・・。」


今のミリアに足りないのは叱られなれてない人からのお説教だと私は思った。令嬢としての教育途中で怒られるようなことはたくさんあるだろう。でもそれは普段から怒られる人に怒られてるだけで新鮮味のようなものがない。


多分だけど、屋敷に帰ってきてからちゃんとミリアのことを叱った人はいないだろう。皆そんな余裕はなかったから。こうやって私に役割が回ってくるくらいには彼女の心に刺さるであろう人は彼女にとって少ないのだ。


きっと、ミリアの今の本質はかまってほしい子供だ。普段皆まともに取り合ってくれないと感じているミリアにとって同年代の私は自分と同レベルの存在としていわゆる初めての友達なのだろう。


「もしかしてだけど私が自分よりも上の人間だって考えてない?」


「え・・・?」


「最初に感じた通り私はあくまであなたと同年齢の子供。なんなら様々な教育をちゃんと受けているあなたの方がよっぽどえらい存在なのよ。だから私の言葉を聞き流さないで欲しい。聞いてるつもりにならないでほしい。上位者の言葉だって耳をふさがないでほしい。ただただ、あなたとおんなじレベルの一人が感じたこと。」


ミリアは黙って私の話を聞いている。


「世界はあなたが思っているほど冷たくないよ?ちょっと耳を傾けるだけでいいの。それだけで今まで見えなかったことがいくらでも見えるようになるから。」


そういった後うつむき始めた額を指先でつんっと押してやる。


それだけで、ミリアの目には再び生気のようなものが戻った。私の言葉でなんとなくやらなきゃいけないことが見えてきたらしい。


「私は・・・どうしたらいいかな。」


「それについてはわかんないなぁ。私も失敗ばっかだし。でも、わりとうまいこと行くことも多いからとりあえずいろいろ頑張ってみたら?あ、人の話は聞くようにね。」


「それについてはわかりました!うん、ありがとう。ごめんね、って言いに来るつもりだったのに色々励まされちゃった。」


「ふふ、どういたしまして。」


それから。元気を取り戻したミリアと父上一行は事件の後処理か、はたまた私のお見舞いか。もう少しの間だけ滞在して帰っていった。


思い返してみれば来る前までは引きこもっていたとは思えないような心境の中また静かにベットで眠りにつくのだった。

大分遅れてしまい申しわけありませんでした。お詫びといってはなんですがちょっとだけいつもより長いです。

ブクマ、感想等もらえると嬉しいです。

では、またお会いしましょう。骨董品でした。

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