認めたくないものだな 前編
3話です。
どうも、ついに5歳になったフレイアです。
聞いてくださいよ!母上達に魔法を学ぶことを認めてもらったんだよ!魔法が魔法って名前で存在してることを確認してからずっと続けてきたラブコールがついに母上に届いたのさ!
でも、普通自分の子供が勉強したいって言いだしたら親は喜ぶものなんじゃないのかな?ましてやあんだけ私たちに甘々な母上がここまで渋ったってことは何か理由があるんだろう。何かな?魔法は危険だからこんなちっさな頃から学ぶのはダメ、とかかな?
まあなんにせよもう許可は勝ち取ったんだ。なんと今日から魔法の先生が来てくれる予定なのさ!そろそろ時間としては来てもいいころなのだけど。
「お嬢様、先生がいらっしゃいました。」
おや、噂をすれば影といいますかなんともタイミングの良いことでしょう。ノックされた扉からはミナの声が聞こえてきている。
「今向かうわ。勉強室でよかったかしら?」
「はい。既に他の者が案内しておりますので応接室に直接向かっていただいて問題ありません。」
短く感謝の言葉を投げかけると当然のことですのでと言って相変わらず部屋から出ようと思った完璧なタイミングで扉を開けてくれる。
自分の部屋からミナを連れて歩く状況は以前と同じだけれども、前よりも随分としっかりとした足取りで屋敷の中を歩いて行く。
そうして少し歩いた勉強室の扉の先にはどこか神経質そうな顔立ちに眼鏡をかけているやせ型の男性が少し落ち着かなさそうに椅子に座っていた。そうして音に気が付いたのか扉の、つまりこちらの方へ向き直ると立ち上がり
「どうも、私はフレイア様の教師となるクライというものです。どうぞよろしくお願い致します。」
と声をかけてきた。
「はい。お話は耳に挟んでいます。ご存知でしょうがフレイア・シルドレアです。これからよろしくお願いします。」
もちろん、私も返事をする。これから先生になるはずの人なのだ。どこか裏切りそうな腹黒感を醸し出してる見た目だけどこうやって来てるってことはちゃんとした人ってことだよね?
私がクライ先生が座っていた正面の椅子に腰かけるとそれを見た後クライ先生も席に座り
「早速ですが魔法に興味があるとお聞きしておりますが、一体どうしてなのか聞かせていただいてもよろしいでしょうか。」
そう、問いかけてきた。
どうして魔法を学びたいのか。その答えは単純に言えば使いたいからだ。でもこういう先生の前でそういったことは・・・。いや、やめておこう。下手に取り繕ってほんとのことを隠すよりもストレートに言ってしまった方がいいような気がする。
「魔法を、使いこなしたいから、です。」
「ふむ。魔法を使いこなしたい、ですか。」
そういったきり黙ってしまうクライ先生。どうしようか、やっぱりもっとそれっぽい理由にした方がよかったかしら。
「いえ、すいません。少々考え込んでしまいました。そうですね、魔法を使いこなしたいということであれば数多くある魔法学の中でも魔法を使用するものを学ぶ必要があります。その場合魔法適正や魔力量、センスなど様々な数値を測定してから行った方が良いかと思われます。機材は持ってきておりますので許可を頂けるのであれば測定させていただきたいのですがよろしいでしょうか。」
チラッとミナを見ると
「奥様からの許可は出ています。後はお嬢様のお気持ちのみですが。」
とのこと。そりゃあもちろん測ってもらうに決まってるでしょう!今までの努力の積み重ねを見せつけてやんぜ!
「よろしくお願いします。」
その言葉を聞いたクライ先生は少しほっとしたような表情を浮かべてから何やらメカメカしい機械のような物と不気味に光っている石のようなものを取り出しながら
「いやぁよかったです。こう見えて様々なご令嬢の教師役として呼び出されることが何度かあったのですがどこも誰かしら許可がいただけずに追い出されていたのでね。怪しい!儀式の生贄にしようとしているのではあるまいな!と追いかけ回されたこともあって・・・。あ、もちろんその後誤解は解けましたよ?国の偉い人が動くは目にはなりましたけど。」
と話してくれる。どうやらこの先生思ったよりもやらかしているらしい。いや、この場合問題のある行動をしたのは相手側なんだけどね。
そんな話をしながら和やかなムードで測定は進んでいく。測定といっても病院のように注射で血を抜かれたりするようなものではなく怪しく光る石を機械のようなものにセットしてそこに手をのせるだけという簡潔なものであった。
機械のようなものは石の力を受けて魔法陣のようなものを描き輝いている。
「それでは準備が完了いたしましたのでお手を乗せていただいても構いませんか?」
そう言われておずおずと手を乗せる。いざこの測るとなるとやはり緊張するものだ。
手が完全に乗りきった瞬間突然輝きが増し部屋中に広がり・・・。
「ほう。フレイア様見てください。なかなか良い光景ですよ。」
クライ先生のその言葉を聞いて慎重に目を開けるとそこには銀色と青色と黄緑色の帯のような物が私の手の甲から湧き出し渦を巻くように立ち昇る姿があった。
「綺麗・・・。これが私の魔法ですの?」
「ええ、この色ですと身体強化に水に風の三種類の適性をお持ちのようですね。そしてこの渦の大きさと帯の太さが魔力量を表すのですがなかなかの結果ですね。これならば充分に魔法を使えると・・・うん?いや、これは・・・。」
え!?何!何かあったんですか?そりゃチートだぜヒャッハー!ってほどの結果じゃなかったけど満足してたんだけど。
「何か、問題がありましたか?」
そういうとクライ先生は先ほどよりももっと深刻そうな顔をして
「すみません。ミナさん、でしたっけ。奥様にお取次ぎしていただくことは可能でしょうか。」
「それは緊急のことでしょうか。」
「緊急も緊急ですね。フレイア様の今後に関わる内容です。」
「承知いたしました。フレイア様の今後に関わる緊急事態だとお伝えします。口止めは必要でしょうか?」
「いえ、そういった類のものではないので妙な噂話をされる心配がないのであれば別の人間を通していただいても構いません。」
「では、そのようにさせていただきます。」
そう答えるとミナは屋敷の至る所にあるあの使用人呼び出しスイッチを押して伝言を頼んでいる。
「一体何が・・・?」
私の言葉に思考を巡らせていたであろうクライ先生はこちらを向き直り
「これはこの後おそらく奥様にもお話しするであろう事ですがフレイア様は他のものよりも魔法を一気に使うための力がかなり弱い可能性が高いです。つまり、大魔法はもちろんのこと中級魔法ですら発動できない体質である可能性があります。」
へ・・・?
なんだかんだ二日に一回更新してますね。まあいつかは力尽きると思いますので。
ブクマ、感想、その他諸々していただけますと普通に嬉しいです。
では、またお会いしましょう。骨董品でした。