予想外のこと
12話です。
バッチは胸元に止められるような小型のもので私の手の中にすっぽりと納まっていた。正方形の縁取りの中に凹凸が横にかみ合ったようなデザインが彫られている。
と、いうか。もう、完全に度肝抜かれちゃってなんか、なんか言葉が出てこない。
ミルナ先生は、魔法学の先生って言ってたよね。私が希望通りに進学していけたらこんなすごい魔法を使う人に教えてもらえるのか。これはやる気出るな。
もとよりそのつもりだったけど絶対に魔法学の方面に進学してやろう。あんなの見れるだけでも最高じゃない?
「感動してくれるのはうれしいことだけどそろそろ正気に戻ってくれるとありがたいかな。もうちょっとだけ説明することがあるんだ。」
そういったかと思うとすぐに生徒全員それぞれの顔の目の前にシャボン玉みたいなのがふわふわ現れて小気味いい音を立てて破裂していった。
夢現のような状態だった子たちはハッとしたような表情を浮かべて先生の方に向き直る。
「ほい、ありがとう。じゃあ話をするけど明日以降は本格的に学校が始まっていくでしょう?基本的には・・・」
学校初日の説明ということで話すことが山ほどあったのかそこそこの時間をミルナ先生は話し続けた。しかし、その話を聞いていない人や文句を言う人は誰一人としていなかった。重要な話であったことも事実なのだけれどそれ以上にさっきの魔法で一定以上の尊敬を獲得したからだと考えられる。
仮にそこまで考えてあのパフォーマンスを行ったんだとすれば人の行動や思考をコントロールする技術にも長けていることになる。単なる魔法の権威ってだけでなれる職業ではなさそうだ。クライ先生の言っていた言葉の意味が少しわかったような気がする。
・・・・・・
ミルナ先生の話が終わりだよの一言で締めくくられると後の時間は自由時間ということになった。アイルちゃんに話しかけに行きたい気持ちも山々なんだけどとりあえず先生と話をしてみたい。そう思ったので早速話しかけに行った。
「ミルナ先生。さっきの魔法って何級魔法に相当する魔法なんですか?」
「ん?ああ、君はフレイア・シルドレアちゃんじゃないか。魔法の規模の話だよね?そうだなぁ。さっきのやつはわりと色々な仕掛けがあったから一概には言えないんだけど、中級魔法より上の魔法は使ってないよ。基本的には下級か生活魔法で構成してる。」
「え?本当ですか?あんなすごいのが下級とか生活魔法でできちゃうんですか。」
「まあ大規模なものは大規模用の魔法を使うのが手っ取り早いんだけどね?今回は特別にいろいろ工夫をしてみたってわけ。」
「どうしてそんな工夫をしたんですか?」
「そりゃあねぇ?今年の入学生の、それも私が担当するクラスの生徒の中の一人が魔法使えちゃう悪い子だって話を友人から聞いちゃったからねぇ?」
あ、はい。もしかしなくても私のことですかね?
「え、あ、もしかしてその友人ってクライ先生のことですか?」
「ビンゴ!やっぱり彼が言っていた通り賢い子だね。子供特有の柔軟性に欠けるところがあるとも言っていたけど彼が入れ込むなんてなかなか無いことだから光栄に思うといいよ。」
私のことでしたね。ただまさかクライ先生とミルナ先生が友人だったなんて一切想像してなかったなぁ。それにクライ先生が認めてくれているっていうのが聞けたのはかなりうれしい。なんかいずれ転生者ってことがばれそうで怖いけど。
「ありがとうございます。ってことはさっきの魔法を色々工夫したっていうのは私のためにやってくれたってことですか?」
「まぁそうとも言えるね。それ以外に理由がないわけではないけど君が一番最初のきっかけだよ。属性は違うけどちゃんとやればあれくらいのことはできるようになるんじゃないかな?」
「本当ですか!?」
そっか。なんだかミルナ先生が魔法を使ってるとき自分が使う側になることなんて全く考えてなかったけど、工夫さえすればあれみたいなことが出来るようになるかもしれないのか。幸いにも私は魔力量は平均よりもちょっと上らしいからたくさん魔法を使うことは不可能じゃない。
「ふふ、その顔を見るとやって正解だったらしい。将来の生徒確保の瞬間でもあるけどね。」
「元々授業受ける気満々でしたよ!そのためにここに来たんですから!」
「ごめんごめん。さあそろそろ皆の方へ行った方がいいんじゃないかな?クラスの中で孤立してしまわないようにね。」
「あ、そうですね。ありがとうございました!」
「これから長い間付き合っていくわけだからね。仲良くしときなよ!」
予想外のつながりが知れたわけだけどこれはうれしかったな。正直自分じゃちゃんとした魔法は使えないと思ってたもんだからあんなにすごい例を見せてもらってそれができるって太鼓判を押してもらえたのは衝撃だった。クライ先生にもちゃんとお礼を言っておかないといけないね。
眠いですね。眠いです。
感想、評価等頂けましたら眠ります。
では、またお会いしましょう。骨董品でした。




