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だいきゅうわ きせき

ぜんかいまでのあらすじ:

<ようかいブクマはがし>ブッくんのきょうりょくで……

 ついにTくんは、なげだしていた『だいひょうさく』を、かんせいさせた!

 でも、さいしゅうわのとうこうをまえに、Tくんのこころがおれてしまう。

 ブッくんは、Tくんをあるばしょにつれていった……


 Tくんは、ブッくんのあとをついて、うちをでました。

 やまのてせんにのって、ひとえき、ふたえき。

 あのこうえんのあるえきでおりると、おおきなとおりを、すこしあるきます。

 たどりついたのは、おおきなびょういん。

 Tくんも、いったことがあるところでした。


 そこでTくんは、ひとりのおにいさんとであいました。

 であった、といっても、そのおにいさんはねていました。


 いろじろで、きれいなくろかみ。めのいろはわかりません。

 せはそんなにたかくなさそうだけど、とてもやさしそうなかおをした、おにいさんです。


 おにいさんのびょうしつにかかっていたプレートには、なんとソラさんのなまえがかかれていました。

 そう、このひとこそ、ほんもののソラさん。

 しゅじゅつのために、にゅういんして、『しょうせつとうこうさいと』をおやすみしている、

   Tくんのおんじんの、ソラさんです!



 ソラさんは、てんてきをうでにさして、ねむっていました。

 なんでもここのところ、ずっとずっと、ねむりつづけているということです。


 ソラさんのおかあさんが、なみだぐみながらはなしてくれたことによると――



 ソラさんは、ちいさいころはとても、げんきなこだったそうです。

 でもあるひ、びょうきがみつかって、それからはにゅうたいいんのくりかえし。

 こころのささえになったのは、だいすきなしょうせつです。

『しょうせつとうこうサイト』にとうこうして、いろんなひとにおうえんしてもらったり、じぶんもおうえんしたりして……

 それがあったから、ソラさんは、えがおをなくさずにすんだのでした。


 せいちょうして、たいりょくのついたソラさんは、それまでできなかった、おおきなしゅじゅつをしました。

 これからはまた、ふつうにげんきにくらせる。

 そうおもっていたやさき。

 まさに、たいいんまぢかというところで、びょうきがさいはつします。

 ソラさんはひどくがっかりして、ふさぎこんでしまいます。

 そのせいでしょうか。いちにち、いちにちと、ねむっているじかんがふえ、ついにはめをさまさなくなってしまったということです。



 Tくんは、ソラさんのおかあさんにおねがいしていました。


「ぼくの、……ぼくのしょうせつをよみきかせてあげたいのですが、いいですかっ?

 そうすれば、その、めがさめるかもしれません!」


 おかあさんは、おねがいしますといってくれました。

 ソラとなかよくしてくれていたかたのさくひんなら、きせきがあるかもしれませんからと。


 Tくんはかばんから、プリントアウトをとりだします。

 ブッくんのしじでもってきていた、『ミッドないとクルセイダーズ!』の

   さいしゅうちぇっくげんこうです。


 しろじに、くろいもじがいんさつされて……

 そこに、あかのボールペンのきちょうめんなじで、かきこみのされたプリントアウト。

 Tくんとブッくん、ふたりのどりょくの、けっしょうです。


『とうこうさいと』のブクマはまだ、ソラさんがくれた、ひとつだけだけど――

 ――いまは、それだけあればじゅうぶんです!



「それでは、きいてください。……『ミッドないとクルセイダーズ!』」



 Tくんはひとついきをすって、しずかによみあげはじめます。

 すこしだけふるえるこえで、それでも、せいいっぱいおもいをこめて。

 ときにはみぶりてぶりまでまじえて、いっしょうけんめいに。


 Tくんは、はずかしがりやのおとこのこです。

 でもいまは、そんなことさえわすれています。

 ソラさんのためにひっしです。

 いっしょうけんめい、ものがたりをよみます。



 いつしか、たくさんのひとたちが、そこにあつまっていました。


『ねえ、あのひとだれ?』『ソラおにいちゃんのおともだちだって!』

『このおはなし、しってる?』『このひとのつくったおはなしなんだって!』


 みんなが、こえにださないこえで、がんばれ、がんばれとTくんをおうえんします。

 そんな、あたたかいわのなかで、ついにTくんは、さいごのページをめくります。



 そのシーンは、しゅじんこうのナーロウくんのひとりがたりではじまります。

 じこでおおけがをし、めをさまさなくなってしまったあいぼうに、しずかにかたりかけるところです。


『オレさ。やっとちゃんと、ライセンスをとったよ。

 ほら、みてくれよ。

 ……おまえのおかげだよ。

 いきおいだけのおれに、なんどもアドバイスをくれて。

 ときにはきびしいこともいってくれたっけな。

 もちろんおまえのことだから、やさしくあったかいことばで、ていねいにさ。

 だからおれ、がんばれたんだ。

 ライセンスしけんでは、なんといちばんだったんだぜ?

 こんなすごいやつはみたことないって、みんながいってくれたよ。

 でもさ、……

 きがつくと、ないてたんだよ。

 だって、おまえがいないんだ。

 だれより、よろこんでくれるはずの、おまえがいないんだよ。

 なあ、めをあけてくれよ。

 わがままばっかで、もうしわけないけどさ……

 これを、さいごのわがままにする。

 だから、たのむよ。

 もういちど、めをあけて……』



 そのとき、きせきがおこりました。

 ソラさんのめが、ふわりとあいたのです。

 きれいなそらいろのひとみが、ゆっくりとTくんをみます。

 そしてソラさんはTくんにむけ、にっこりとわらいかけました。


 びょうしつは、みんなのはくしゅとかんせい、わらいとなみだにつつまれました。


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