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おれの些末な不安はさておいて。
稜地は褒めちぎられたからか、ウキウキ気分がこちらに伝わって来るまで調子を良くした。
心からの本音でしか褒めてないけどもさ、ちょろいって思われてしまうよ…
弓矢も投石器も、霊力がない人間からしたら何の前触れもなく空中で霧散したり落下したりする様を見せられては、
『こいつはヤバイ』
と自分たちが狙った商隊との力量差に逃亡する他ないだろう。
さっさと蜘蛛の子散らすように逃げるが良いさ!
…と思いきや、余程オツムが残念なのか、無謀にもこちらに襲い掛かって来ようと剣を抜く。
そしてその結果、第二段階へ移行した茨姫が足元から突然出現し、それビビッて攻撃。
皆仲良く絡め取られてしまった。
さっさと逃亡していれば痛い思いせずに済んだのに……
阿呆の子だな。
茨の棘には軽度ながらも麻痺性の毒が仕込んである。
戦意喪失さえしてくれれば、このまま絞められ続け死ぬこともない。
まぁ、暫く動けない程度の痛い目を見るだけで済むだろう。
いくら暑い地域とは言え、もう冬になろうとしている時期だ。
熱中症で死ぬこともあるまい。
「んじゃ、最後尾の馬車通過するまで見守るし、適当な速度で先進んどいて」
「あいよ~」
──出でよ 飛鶸
前方から他の敵意を持つナニカがいない事を稜地にも重ねて確認して貰う。
そして、後続の荷馬車に問題がないかの確認をするため先頭馬車から飛び降りた。
笛の音は聞こえなかったから、何の問題もないと思われるが念のためね。
んで、更に念のため、小型の鳥を模した霊力の塊に低級の精霊を降しイシャンの馬車の守護に就かせる。
神威の練習も兼ねて、モノに精霊と言う精神体を融合させる術を編み出してみた。
まぁ、霊力の塊となると物質とは厳密に言えば違うので、練習の方向性は違うかもしれない。
失敗してでも神威自体の練習をしたい所だが、稜地に駄目だと釘をさされているのでそれは出来ない。
精・晶霊がいてこその神威だ。
その相手が駄目って言っているのだから、効率的な練習は出来ない。
神威が扱えるようになるまでまだまだかかるだろう。
しかし、霊力の塊に微精霊を降ろす、と言う事が全くの無駄だとは思わない。
霊力の細やかな加減が前よりも出来るようになったし。
お蔭で柳波のように、同じ術でも微妙な力加減で形状を変化させる術を編み出せた。
それに、飛鶸は使い勝手の良い術だ。
詠唱短縮と複数個同時生成も出来るようになった。
こんな真面目に精霊術と向き合った事が無かったので良い機会になって居ると思う。
神威も遠い道のりかもしれないが、そのうち出来るようになるだろう。
まぁ、ヴェルーキエでの神威化した奴らの力を思い出すと、早く使えるようになりたいと切望してしまうけどね。
魔族の力、また魔族そのものを封印していると言われている大晶霊たちを一度解放する、となると今以上に世界規模で魔獣が大量発生したり甚大な災害が起きる可能性が非常に高い。
それを考えると、力はつけておくに越したことは無い。
大晶霊達を解放しつつ、魔族による被災も避けられるのが一番だけど。
ってか、考えてみれば。
今は街を守ってくれる宝珠の力も、魔獣の力が強くなったら対応しきれなくなるかもしれないのか。
実際、旧ルセアなんかは大きく強大な宝珠があったにも関わらず、凶悪な魔族の介入を許し、結果滅んでしまったのだし。
ある一定以上の力を持つ悪しき者には効かないのだろう。
そうなると、主要国のギルドなり、国王なりに言っておいた方が良い案件な気がするな…
そうは言っても、おれにはそんな伝手……微塵もない訳ではないが、世界規模となると難しいな。
しかも、これはあくまでおれの憶測で不確定要素が多い状態だ。
そんな状態で、あんま頼りたくない。
現状、おれ一人の手には余る案件であることは確定しているけど。
……ん?
最後尾の馬の様子が、ちょっと変?
抱いた違和感は無視できない。
依頼を受けた際に注意された事だ。
飛鶸を更に三体生成しイシャン以降全ての馬車の護衛に就かせたる。
その後、最後尾の馬車に停まるように合図をする。
習った合図の通り、両手を大きく広げた後頭の上で交差させる、と言う動作を繰り返す。
従者は顔をしかめながらも停まってくれ、怪訝そうにこちらの様子を窺ってくる。
「なんだ?」
……イシャンの前では敬語使って来たくせに。
まぁ、依頼主の部下だし、立場的には同等か、おれの方が下ですし良いですけどねー!
あからさまに態度が違うとムッとしてしまう。
いかんな、怒りっぽいから子供扱いされるのだと昔誰だったかに言われたことがあるからな。
へーじょーしん、平常心。
「馬の様子が変。
骨、痛めているかも」
その言葉に即反応して下車をする部下の人。
仕事が迅速・精確で素晴らしいですね。
「……骨折、はしていないようだが…」
≪耳の動きに落ち着きがないし、何らか不安材料があるんじゃない?
さっきの野盗に以前も遭遇した事があるとか…ここで前も襲われた事があるとか≫
「外傷も…見る限りないね。
ただ、汗を異様にかいてるのもあるし、休憩してきちんと看た方良いかもね」
「隊列に遅れを出す訳には…」
「こう言うゴタゴタも、イシャンが取っているリスク指数って言うのに含まれるんじゃない?
ひとっ走り行ってくるから、ここで待ってて」
飛鶸の気配から察知するに、ゆっくり進んでいるようでさほど距離は離れていないようだし風精霊の力を借りて、この場を稜地に任せて即行走り出す。
今まで暴走しがちだった風精霊の力を借りた術も、飛鶸を難なく扱えるようになってから、結構微調整が出来るようになってきた。
今までは、同じように足に風の精霊をまとわせて走ろうもんなら、洩れなく地面と接吻をかます羽目にあって居た。
それが、今では飛んだり跳ねたりお手の物!
思うように術を扱えると言うのは結構気持ちが良いものだ。
ぐっと再度力を込めて地面を蹴り、弧を描くように上空に跳ぶ。
調子に乗って少々加減を間違えてしまい、着地予定地点よりも数メートル前まで跳んでしまった。
左後方に、イシャンの馬車が見える。
ゆっくりと降下しながら、上空へ向かって空気砲を放ち着地地点を微調整する。
馬車の進行方向の直線上に着地したら馬に踏まれるか、おれを踏まないように馬が気を使って怪我をしてしまう恐れがあるので、微妙に離れた所に降り立ち馬車へ駆け寄る。
空から降ってきたことに驚きの表情を浮かべたものの、すぐ何かあった事を察知してくれたイシャンが停車してくれた。
そして最後尾の馬の様子がおかしいこと、おれや従者ではその原因の判断が出来ない事を説明した。
一応、稜地が言っていた、同じ野盗に襲われた事があるか、この場所で以前にも襲われたことがあるのかも確認した。
しかし、おれらが立てた予想は全て外れたようで首を横に振る。
その間にラシャナが笛を吹き後続の馬車に停車の旨を伝えてくれている。
連携が取れていて、旅慣れしているのがよくわかる。
「あ~…、あの馬、便秘してるんだよね…
それが原因かな。」
べ、便秘って…
それだけであんな具合悪そうにするもんなの??
確かに健康状態把握するのに便の状態の確認は冒険者にも必須事項と言えるけれども。
「仕方ない。
焦って寝込まれても困るし、一回休憩入れよう。
できればもう少しB現場から離れたかったけど…」
「びーげんば?」
「トラブルが起きた場所をBって呼んでるんだよ。」
言って馬車から下りて様々な書き込みがされている地図を広げて見せてくれる。
“B”と赤文字で書かれたり、青い文字で“S”と書かれたり、なんか暗号なのか記号なのか判断の付かない文字がちりばめられている。
ラシャナはイシャンに代わり馬を操り、街道から離れた所へ移動する。
馬を括り付ける為のちょうど良い木があれば良かったのだが、残念ながら見渡しても見つかるのは少々大きい岩程度。
イシャンの話が終わったら、休憩しやすい場所を作るついでに馬とどめも用意しよう。
作るだけ作ったら、その後は片付けずに放っておいて良いだろうし。
街道沿いにあれば、誰かしら使うだろうからね。
「俺たちは襲われたことが今までなかったけど、さっき襲われた場所は比較的野盗が出やすいと言う事で有名な場所なんだ。
ガラル方面から来る奴等からはあの丘の上は死角になるから奇襲が仕掛けやすい。
だけど各町から離れているから国も取り締まりをしてくれない。
せっかく“金”の冒険者雇ったんだし、噂が本当なのか、そう言う場所洗ってみようと思ったんだけど、マジで襲われちゃったな…」
おい、他の街道があったにも関わらずわざとこの道利用したのかよ。
思わずジト目になってしまうが、おれの実力を疑うことなく利用しようと思ったのなら冒険者冥利に尽きる、と言う物なのかな。
≪あるじ~、後方からさっきの馬鹿達来たよ~≫
……地神様、いくら愚か者どもって言っても仮にも神様が馬鹿とか口汚い言葉言っちゃ駄目でしょ。
いやいや、でもでも。
教えてくれてありがとうね。
「最後尾の馬車の所にさっきの野盗追いつきそうだし、行ってくるわ」
「え、なんでわかるの…」
イシャンの疑問には答えず、稜地の霊力を察知し目標地点を設定。
──烏兎統べし 時雨れる移色よ
我を彼の元へ導きたまへ
“渡呉須橋”
結びの言葉を唱え終えると、稜地のいる地点の上空へと放り出される。
移動の術はまだまだ改良が必要だな~
瞬時に移動できるのはとても良いけど、想定している場所からどうしてもズレた所に出てしまう。
ま、今回はちょうど良いけどね。
術師が仲間にいたのか、全身傷だらけ、軽度ながらも火傷をあちこちに負った野盗が小型の馬のような大型の犬のような生き物に乗って、ものすごい勢いで稜地達に接近してくるのが見て取れた。
茨姫は蔓と茨で出来ている。
火傷覚悟で燃やされちゃったらどうにもならない。
その前に絞め殺してくれれば楽だったのに…
茨姫の設定、ちょっと甘くし過ぎちゃったのかな。
まさかあれだけの怪我を負いながらも追いかけて来るとは思わなかったのもあるけどね。
あれだけ戦意むき出しだったら、始末してしまった方が他の人たちの為にもなりそうだ。
稜地、馬車一式と従者の人の保護お願いね。
≪りょうかい~≫
──深緋の業火 愚かなる罪人を喰らい尽くせ
“廻炎陣”!
さすが火の大晶霊がいるであろう場所に比較的近いだけあって、詠唱をしている最中の炎の精霊の集まり方が尋常じゃなく多い。
罪人として括られた対象を焼き尽くす術で、対象が罪深き者であればある程よく燃える。
…はずなのだが、想定以上に火の精霊が集まりすぎている。
稜地にお願いしているとは言え、術が暴走して馬車に危害が及んではいけないと思い、咄嗟に氷属性の輝石がはめ込まれた投手剣を地面に投げ討つ。
火と氷の属性は相性が悪いので、投手剣によって氷属性の簡易的な壁を作り、術が展開する場所を限定させ、その範囲内でのみ術が発動するように指定するためだ。
今回は囲うようには指示せず、あくまでもこちら側に術が展開しないようにするだけに留める。
そうすれば、その境界線よりも外側には被害が出ないようになる。
集まった精霊の数が半端なかった為、遥か上空まで炎が巻き上がり大きな火柱が上がった。
それと同時に、旅をするのにちょうど良い気温だった周囲の温度が一気に上がり、肺が焼けるんじゃないかと錯覚するくらいに熱くなる。
これだけの規模になると、いくら乾燥している地域とは言え、雨を呼んでしまうかもしれないな…
イシャンの所に戻ったら、馬の様子如何によっては先を急がせた方が良いかもしれないと進言し判断を仰ごう。
「あ、あんた…強いんだな……」
風精霊を操り、上空からふわりと着地。
その横にへたり込み呆然としていた従者が口を開いた。
まずは礼を言えよ。
仕事の範疇内とは言え、助けて貰ったのならお礼は言うべきだと思いますー!
荷物や馬から離れず、自分一人で逃亡しなかった根性はとても素晴らしい。
けれど、最後尾の馬車担当と言う事は精霊術を多少なら使えるはずである。
少なくとも、笛の合図に対して空砲を放って了解の意思表示をしていた。
微塵も使えないと言う事はあるまい。
お馬さんと仲良く八つ裂きになんてされたくないだろうし、野盗が接近してきた時点で応戦するなり時間稼ぎをするなりの根性を見せて欲しかったものだ。
それにしても、さすが稜地だ。
おれが咄嗟に放った投手剣だけでは熱が相殺されずこちらも下手したら熱風により軽度でも火傷を負っていたかもしれない。
しかし、上手く霊力を霧散させ被害が及ばないように調節してくれていた。
地属性の大晶霊だし、その系統の術しか扱えないのかと思っていたのだがそうではないようだ。
弟が火の大晶霊だからとか?
人間のように血の繋がりがある訳ではないだろうが、何かしらの繋がりから火の精霊術も扱えるのだろうか。
もしくは、術を発動させるための根本となる霊力の扱いに長けているから、それの調節が出来ると他の属性の術でも解除が出来る、という事なのだろうか。
後者ならば、今度どうやっているのか聞いてみよう。
もし場の霊力を調節するだけで精霊術の解除を強制的に出来るのなら戦闘においてとても有利に事が運べるようになるかもしれない。
場にある霊力と同等の魔力をぶつけて相殺する方法しか今は身に着けてないからね。
魔力はなるべく使わない方が良いと言われているから、その代替案があるなら是非とも習得したいものだ。
「なりたてでも“金”だからね。
これくらいは出来るさ」
握手恐怖症とでも言えば良いのか、おれは手を人に差し伸べる事が出来ないので、火を見て興奮している馬を、精霊術を使ってなんとか落ち着けながら従者の復活を待った。
腰を抜かすまではしていなかったようで、恐怖による硬直状態から抜け出したら、震える足を、生まれたての小鹿のように震わせながらも、何とか動かしながら馬車の状態の確認をし出した。
ちらっちらっと、こちらと野盗たちが居た場所を時折視線を泳がせながら見ている当たり、野盗たちに対して以上に、おれ自身に恐怖を感じちゃったかな。
さすがに、骨も残さなかったのはいけなかっただろうか。
溶けてキラキラ光っている地面を見ながら少々やりすぎてしまった事を反省する。
って言ったって、火の精霊達が張り切ってくれたんだもの。
仕方ないじゃん?
おれもあれだけの火力が出るとは思わなかったんだよ。
……と言うか、失念していたけど。
この国って冒険者が罪人の処刑をする事って許されているんだろうか。
今まで行った国は全て冒険者なら罪人を結果として殺してしまったとしても罪に問われたことは無かった。
しかし、とある国では、罪人だとしても人権があるから殺すのはダメ!って法律があって、私刑に処したら逆にこっちの首が飛ぶことがある、と聞いたことがある。
それを考えると、証拠隠滅の意味も込めて骨まで灰にしたのは良かったのかもしれない。
≪こらこら、危険思考~!≫
いやでもさ。
やりすぎちゃったと思いはするけど、奴等、手馴れている感じだったし、これ以上被害増やさないためにも処理しておくのは良い事じゃない?
そう言い訳はすれども、奴らが死を覚悟していたか否か、と言ったら否だろうな。
普段と違い獲物に牙をむかれて逆上してしまっただけだろうし。
依頼人に危害が及ぶ可能性がある、と言い訳をつけて早計な事をしてしまったな。
反省。
うまく、輪廻に還って次は真面目に生を全うしてください。
なむなむ。
合掌し念じると、場に残っていた精霊達が呼応してくれその場に漂っていた野盗たちの魂魄を輪廻へ導く手伝いをしてくれた。
おれみたいな無神論者の祈りでも、祝福として精霊達は応えてくれるんだ。
びっくり。
火に焼かれて死んだ者たちが火の精霊によって輪廻に還ると言うのも、なかなかにシュールだな。
危険思考だと釘を刺されたが、流石に誰彼かまわず自分に仇成す者は全て死んで当然、だなんて思っていないからね。
彼らにも、家族が居て仲間が居て、この地に住まう生物だ。
命の価値としては皆、同等だろう。
だけど、罪を犯していない、輪廻へ還るその時のために徳を積み慈愛で以って世を愛し精霊や日々の恵みに感謝している善良な人たちの日常を壊す人たちと比べた時、どうしても優先順位はつけてしまう。
どちらを生かすか。
どちらがより世のためになるのか。
神ではない以上、人智を超越した存在である精霊達ではない以上、おれがそれを勝手に天秤にかける権利も、罪の程度を決め裁く権利も、ない。
しかし、今、この時。
おれにはイシャン一行と自分自身を守る義務がある。
その義務を全うした時に、他者の命を奪う結果になった。
それだけの話ではあるが……
命の重さか。
深く考えた事なかったけど、人は繋がりを持たなければ生きていけない生物である。
だから、彼らのような罪人とて、殺されたことによって、繋がっていた人たちの生活に影響を及ぼすことの意味を考えて行動をした方が良いのかもしれない。
もしかしたら、爪はじきになって町に居れなくなった連中で徒党を組んで、道行く人を襲って生計を立てていたのかもしれない。
当然、それ自体は犯罪であるが、自分たちの帰りを待っている家族、子供たちのために致し方なくしていたのかも。
今頃、
『ぱぱ早く帰ってこないかな~』
なんてうきうきしながら父親の帰りを幼子が待っているのかもしれない。
あぁ!おれは何と言う事を!!
……と言う妄想はほどほどにしておいて。
おれとしては、降りかかる火の粉を払っただけではある。
しかし、殺される訳にはいかないけど、だからって易々と殺して良いものでもないもんな。
改めて反省。
そう言う意味でも、精霊術の鍛錬はもっときちんとした方が良いな。
確実に術の制御がイメージ通り出来るようになれば、命を奪わずに相手を無効化出来るようになるかもしれない。
よし、また一個旅における目標が出来たぞ。
稜地を巻き込んで頑張るとしよう。
他力本願と文句を言われそうな気がするね!
回復の精霊術が精神的な安定にも効果がある、と言う事を馬と従者と言う被験者によって学んでからイシャンさんと無事合流。
急速に雨雲が発達している事を考慮して、早めに野宿の準備をすることになった。
もともと冬は他の季節に比べ雨が比較的降りやすい時期だし、おれの術が全ての原因では無いようだが、イシャンさん達にもバッチリ火柱を目撃されていたらしく、従者たちには
『人間離れしている…』
と青い顔をされた。
イシャンさんは何度も旅業に出ている為冒険者慣れしており、“銀”の冒険者の中でも“金”に近い部類の人間と会った事が幾度かあったため、さほどは驚かれなかった。
ただ、何かしらの属性に特化して強力な精霊術を扱える人は見たことがあっても、おーるまいてぃーに何でも使える人は初めて見たそうで、
『流石“金”だな!』
と背中を叩かれた。
そうか。
依頼者として沢山の冒険者を見てきているイシャンさんなら、冒険における仲間の基準や、一般的な冒険者の強さと言うのを把握しているかもしれない。
おすすめのパーティとか、冒険者とか。
ここら近辺の依頼料の目安とかもね。
お金の勉強と併せて教えて貰おう。