第7話 『俺魔法』
第7話
『俺魔法』
俺は魔法という概念を今の今まで知らなかった。
知ったのはついさっき…
殲滅する為の攻撃方法を考えた時だった。
正確にハッキリと理解したというより、
『出来るのか』と感じた事。
何が出来て何が出来ないか。
どうすればソレが出来るのか。
知識としては元々あったレンとしての知識と
俺の中に突如閃いた考え方。
ソレが合っているのか間違っているのかは
実際に体現してみなきゃ分からないが
漠然とソレが出来ると思った。
いや、感じた。
湧き上がる力と共に湧き上がる感情、
この高揚とした気分はなんだろう。
今まで生きてきてこれほど気分が高まる事が
あったたろうか。
今ならどんな相手でもぶちのめせる。
どんな事でも出来てしまいそうな…
俺は自然とソレを行っていた。
誰から教えられた訳でもなく、さも当然のように
『俺魔法』
俺の中でのスイッチみたいなモノだろう。
意識の上でソレを意識する。
次に俺が今持つ力の概念
『重力』
何故それなのかは分からないがとにかく閃いた。
というより今はコレしかない、と強く確信していた。
ただ漠然と頭の中でコレが出来ると…
よって、
『重力制御魔法起動』
最後に、
行うための事象をイメージする。
実感としてコレをこうすればアー出来るとか、
こうするためにはこうすればいいとかのプロセスを
構築していく感じだ。
プロセスについてはうまく説明出来ないが
これはやれる、これはやれないという事だけは
なんとなくだが分かる気がする。
「我が前に……」
詠昌にも似た何か…
…ぶっちゃけコレはいらない…
無くても出来る気が…
なのに何故言っているのか…
しかも凄いドヤ顔で…
うん、考えなくていいか。
決して中学の時くらいから黒歴史があったとか、
必殺技って技名叫ぶのが鉄板じゃね。とか思ってない…
俺の中のイタイ…いや熱い魂が…
よし、この事は誰にも言わないんだから大丈夫。
きっと俺の中の別人格が無理矢理言わせているに違いない。
そうだそうしよう。
『ブラスト・ディメイション!!』
俺が叫ぶと右手を中心に何かが集まってくる感覚。
掲げた右手の上に磁場の様なモノが形成されていく。
俺は広げた掌を徐々に握っていく…
周りにいた魔物たちは動きを止めて
身体を締め上げられるようにしている。
そして…俺は右手の掌を中心にガッチリと
ソレを握り潰した。
瞬間、周りの魔物たちは一斉に消えていった。
まるで圧縮されて内側に吸い込まれるかの様に
潰れて消えた…
一拍置いて、
「ふぅー、まっ、こんなもんか」
俺は右手を下ろしながら呟いた。
「さてと…」
俺はミスティたちの方を見た。
村人たちは…
皆一様にポカーンとしてらっしゃる。
5人とも目が点状態だ。
今いる村人は男4人に女1人で
一応俺と面識はあった気がする。
一人は女と一緒に、
残りの二人はさっきのコケタ男の両脇にいる。
そしてミスティは…
なんかプルプル震えてる。
怖かったのか?
まぁ普通はそうだよな。
とりあえず行くか。
のんびりとはしてられないからな。
瞬時に駆け出し再びミスティの横に移動すると、
ウォオォーーーーー!!
きゃー!
と一斉に歓声が辺りに響き、
すげー!
マジか!
つえー!
ヤバイ!
くせー!
おぃ!最後のヤツ、そのノリで言うんじゃない。
しかもお前もちょと股間濡らしてるし!
まぁ多分、
あそこに倒れて自らで作った水溜りに
顔からダイビングしていた男が
一度意識を取り戻した直後に、
俺がついでに飛ばした魔物をぶつけた辺りから
おかしな臭いを発してるとは思ったが…
ダブル粗相とは…
ミスティはプルプルしていたかと思うと、
ピタッと止まって、顔を上げて
「今は聞きたい事がいーっぱいあるけど…
あとでちゃんと説明してよね!」
ちょっと涙目で上目使いに俺の目を見つめて言った。
なにコレ可愛すぎだろチクショウ…
『ハッ!俺はこんな子供相手に何を!?』
『違うんだ、これは娘を見る父親のような…』
俺は少し目を反らして額に自分の手をあてながら
「わかったよ、行ってくる」
そう言って、また彼女の頭をポンポンとして、
駆け出した。
広場へと走りながら
『どうやって説明すればいいんだ』
などと考えたが、
『まっ、そん時に考えるか』
とりあえず一旦棚上げした。