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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
エグザイル編
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第78話 『仕組まれた襲撃』

第78話


『仕組まれた襲撃』


「この辺りでいいでしょう。」

ローブを被り馬を走らせていた男は、前を走る2頭の馬に跨る男たちに呼び掛ける。


ヒヒーンと馬の嘶きと共に5人のその集団は一カ所へと寄り合う様にして集まる。


「どうしますか?」

最後尾を走っていた男が馬上でローブの男に向かって話し掛ける。


「そうですね、まずは村の様子を見に行くべきでしょうが…」

話し掛けられたその男は、頭に被ったフードを手で外して、そのまま手を顎にあてて考える様な表情を見せた。

男の顔は20代後半程で切れ長な目だが細目という訳でも無く、実に知性的な顔立ちをしていた

考える様子も絵になる様な男だ。

髪は茶色く、肩まで伸びる程のものだが決してボサボサという訳でなく、しっかりと櫛で梳かされたサラサラの髪を靡かせていた。


「じゃあ、俺っちが見てきましょうか?」

同じく馬に乗りながら横にいる盗賊風の男が、手綱を持ちながら親指で自らを指し示すようにしている。


「そうですね…それじゃあお願いします。それじゃキースさんが戻るまでここで一旦休憩にしましょう。」


5人は馬を降り、1人を除いて馬の背から荷物を下ろしている。

キースと呼ばれた男は馬を下りた後、他の者へと手綱を預けてから、村へと向かって走って行った。



「うわああああん‼」


「ほらほら、もう大丈夫だからいい加減泣き止みなさい。」

ショートは泣き喚くレフトを、よしよしという感じで頭を撫でながら宥めている。


「いててて、レフト男だろ!」

先程までショートに介抱されていたライトもどうやら無事らしく、腹を少しさすりながらも起き上がって近付いてくる。


そして周りを見ると先程の騒ぎを聞きつけてか、あるいは家の中から見ていたのか、村人が恐る恐るといった感じで家から出て来ていた。

中でも俺がぶっ飛ばして扉をぶち抜いた家の住人らしきおっさんは扉から出るのが怖いのか、通りづらいからか、窓から出て来ていた。


「それにしても兄ちゃんスゲーな!俺あんなの初めて見たよ‼」

ライトは近くまで来て憧れの眼差しの様なキラキラとした瞳で俺を見ている。


『こいつこんなキャラだったか?』

何かエルザといいライトといい、この世界の子供ってコロッと態度が変わったりするよな。

『子供だからねえ』

レンが俺の独り言にも似た感想にしみじみと答えた。

『いやまあお前もな』


「本当に有難うございます‼ほら、レフト、あなたもお礼を言いなさい‼」

ショートはレフトを胸に抱きながら俺の方を見て、レフトに俺を言わせようと語り掛けている。


「うん、お兄ちゃん、有難う‼」

腕で涙を拭うようにしながらレフトはショートの胸元から顔を上げた。

「本当に助かりました!一時はどうなる事かと思いましたが…その…疑ってしまって申し訳ありませんでした‼」

重ねて謝罪するショートだったが。


『まあ()()()普通信用出来ないよね』

『うるさい!()()()あったから助けられたんだぞ!』

俺流ネゴシエーターが功を奏したのだ。

断じて思いつきだけで言っていた訳じゃない‼

いやまあ、思いつきだけども…


「おい、お前さん!何者なんじゃ⁉」

遠巻きに見ていた村人の一人、先程窓から這い出て来たおっさんというか爺さんが声を掛けて来た。


その声に振り向いた俺だが、

「ああ、俺か…」

『ふーむエンリを呼んで来るべきかな…』


「この人は俺の師匠だ‼」


『なに⁉』

『えっ⁉』

俺が何と言おうか迷っていた所に不意打ち気味に横から声が上がる。


そこにはえっへんと胸を張って立っているライトがいた。


「あら、そうだったのね。それは知らなかったわ。」

いつの間にか家の中から外へと出て来ていたエンリがいかにもわざとらしい感じで口元に手をあてて、驚いている様な仕草をしながら歩いて来ていた。


それからエンリが村人たちにざっと事情を説明すると共に、冒険者たち、いや傭兵たちを1カ所に集め、縛り上げた。

今は先程の家の前、つまり俺たちがいた家の前、即ち俺に声を掛けて来た爺さんの家の一室に集まって話をしている。

気絶していたボナーロ達傭兵も縛り上げて、今はこの家の別の部屋で村人を見張りに付けて見張っている。


「いや、本当に助かりましたですじゃ。」

ふぉっふぉっふぉと続きそうな口調で話しているこの爺さんはこの村の村長らしい。


名前は『リー』、このエンタ村の村長でボナーロ達と例の契約を結んでしまっていた村長だ。


「この度はワシ等の為にご迷惑をお掛けしてしまって本当に申し訳ない。」

深々とそれはもう深々とお辞儀をして謝る村長さん。

結構口調から歳がいってそうに思えるが、その姿勢はピシッとしており、白髪交じりの髪型ながら腰も真っ直ぐに伸びてシャンとしている。

見た目よりもかなり若い印象すらある。


後で聞いた話だが、村長はこの村の名付け親でもあり、エンタ村の人たちはほぼ全員が村長に名前を付けてもらっているそうだ。勿論歴代村長が全て付けてきた訳では無いが、ライトたち兄弟は全員村長に名前を付けてもらったらしい…

まあ納得だ。ただ出来ればキッチリ付けてもらいたかったが…


「それで村長さん、お話を聞かせてもらいたいのだけどいいかしら?」


「ワシ等に聞きたい事があれば何にでも答えますぞい!」


それから机に座って話を聞く事になった。

部屋には俺とエンリの他に、ライト兄弟とショート、そして村長の6人だ。

村の者たちには改めて話をする形にしてもらい、まずは代表して村長と話をしている。

入口にいるミスティやリルルたちを呼んで来るかエンリと相談したが、先に村長から話だけでも聞いておく事にしたのだ。


一応他の村人に入口にいる仲間に無事終わったと伝えてもらえる様言付けはしてある。

それにここにいるボナーロ達がまだ何かしでかさないとも限らないので念の為だ。

因みにボナーロ達が持っていた金と契約書は現在この部屋に置いてある。

他にもいくつか武器や食料なども置かれていたがそれはそのままにしてあるので、後で村人に回収してもらう予定だ。無論それをどうこうするつもりは俺には無いのだが、出来れば金を少しでももらえればラッキー程度だ。


村長に話を聞いた限りでは…


『この村を襲った魔物について』

これは大まかにはライトの言っていた内容と同じではあったが、より詳しく聞けた事もあった。

一応ライトの話も含め、その信憑性は増した形だ。

村長の話では20匹程度の群れであったらしい。

正確な数は分からないが、ボナーロ達がそう言っていたのを聞いたそうだ。

そして魔物について一つ分かった事は、小さい方は恐らくゴブリンではないかという事。

エンリによる予測ではあるが何匹か大きい種類もいた点からホブゴブリンもいたのではないか。

そしてその2種とも違う、髪を生やした緑色の魔物はオーガではないかという事だ。

何故オーガだと予測できたかについては…


「村人を何人か連れ去られたんですか?」

エンリは死者は出たにしても連れ去られているとは思っていなかったのか驚いていた。


「うむ、襲われて直ぐにあの冒険者たちが追い払ってはくれたんじゃが、何人かは既に攫われてしまっておって…」

村長は口ごもる様にして俯いている。

「そ、それと、逃げ去る時に儂は見たんですが…」


「何をですか?」

エンリは口に出す事を躊躇している村長に先を促す。


「あ、あいつら、ファーの腕を食ってやがったんですじゃ‼」

目を見開く様にして村長は机を怒りを露わにして叩きながら訴えた。

「奪い合う様にしてファーを…ファーを…」

村長は思わず涙を堪えきれず嗚咽を漏らした。


『オーガ』

別名『人食い鬼』とも呼ばれ、人肉や獣の肉を好んで食す。

正確は凶暴で、知性は無いが力も強く簡単な武器なら扱う事も可能。

肌はくすんだ緑色でオークにも近いがオークよりかは見た目的にも人に近い生き物とされている。

ゴブリンやホブゴブリンよりも強さ的には上だが、あまり群れる魔物では無く、ゴブリン等よりも繁殖率は低いらしい。


次に、『ボナーロ達はいつ村に来たのか?』

ボナーロ達は魔物が現れる数刻程前に突然この村に現れて、「村長に話がある」と言ってこの家に押しかけて来たそうだ。

そして村長に、「魔物が近付いてきている、このままじゃ村が襲われちまうから俺たちを雇う気はないか」と。

当然村長はいきなりの話に面をくらってしまい、急にそんな事を言われてもまずは村の皆に話をしてみないとと断ったのだが、

「もたもたしてると村人が殺されちまう事になるぜ」と脅されていたそうだ。

それで一応金額を聞いてみたのだが、あまりに法外な金額にビックリして断ったのだが、

「村人の命と金、どっちが大事なんだ?もうすぐここに20匹ほどの魔物が現れて村を蹂躙された後にも、あんた同じ事が言えるのかい?」とボナーロに言われたらしい。

そして思い悩んでいる所に魔物の襲撃を受け、目の前で村人が殺され、連れ去られる様を見せつけられ、ボナーロ達とその契約を結んでしまったそうだ。


『なるほどな…』

『何か分かったの?』

『お前も分かってるだろ?』

『うん、やっぱり酷い冒険者だよね』

『まあそれはそうなんだが…正しくは傭兵だが、ってそこじゃなくて』

『えっ?どこ?』

『お前本当に分かってないのか?』

『えっ⁉も、もちろん分かってるよ、アレでしょアレ…』

こいつ分かってないな…

『まあ別に分かってなくてもいいんだが、一応言っておくが仕組まれてたって事だ』

『えっ⁉何が?』

『いやもういいや』

『教えてよ、気になるじゃないか!』

正直レンはきっと馬鹿じゃないんだろうが、素で何を言ってるのか分かってくれない事がある。

その癖意外と勘が鋭かったりもするから何かと油断ならなかったりもするのだが…


「それでその後、ファーの家に居座って…他の仲間たちも入れ替わりでやってきたりもしていたんじゃ…」

語り終えた後、村長は大きく肩を落とし、俯いていた。


『他の仲間たち?』

「おい、他の仲間たちって誰の…」

俺がそれを言い終える前に、


ガッシャーン‼


『ごしゅじーん‼』

キュイーという声と共に部屋の窓を叩き割って中に入って来たのは、赤い鳥だった。



時は少しだけ前に戻る。


【キースside】


俺の名はキース。

職業はしがない傭兵集団『尖刃の斧』のメンバーの一人だ。

リーダーの名はボナーロ、だが影の参謀と呼ばれる男がそう、この俺キースだ。

キザなちょとだけ、そうほんのちょっとだけ顔がいいだけのロンドは新参者の癖に、ちいとばかし頭が良くて、有益な働きをしたからと既にNo2を気取っていやがるが、実際の所は俺がこの尖刃の斧のNo2だ。

今もこうしてアジトのある村へと潜入し、この見事な身のこなしで団の生命線でもある情報という目に見えないお宝を探っている。

この俺でなければ成功する事は難しいミッションの最中だ。


「おい、おい、マジかよ‼お頭たちやべぇ事になってんじゃねえかよ‼」

村の柵を乗り越え侵入したキースは今目茶目茶焦っていた。


軽い気持ちで自分たちがアジトとしていた家へと向かう途中、いつもの妄想を頭の中で繰り広げながら来てみると…

そこには家から気絶した状態で運び出される仲間の姿があった。

木の陰に隠れながら、縛り上げられるボナーロ達を見て、どうするべきか考えに考えたが何も浮かばず、そのまま踵を返して一目散に走り出したのだった。



【村の入口の門にて】


「レンたち大丈夫かな…」

ミスティは少し不安そうにしながら馬に餌をあげていた。


「そうですね、先程空に何かが打ち上げられた様な音も気になりますね…」

リルルは同じくもう1頭の馬の頭を撫でながら頷いている。


「お兄ちゃん…」

御者台の上でエルザは見送った時とは一変して少し泣きそうな表情で、心細げに鳥を抱き締める。


「キュイー!」

『ご主人なら心配ないだわさ!』

「キュ!キュイー‼」

『ちょ!ちょっと苦しいだわさあ‼』

スーはエルザの抱き締め攻撃に身を捩らせて逃れ様と頑張っている。


「そうよね、グレンもいるんだし、きっと大丈夫よね。」

ミスティはその光景を見て少し和んだのか、微笑みながらそう言った。


「そうですね、グレン殿ならば何があっても大丈夫です!」

うんうんとそれに大きく頷いて見せるリルル。


「うん!お兄ちゃんはエルザのお願い聞く為に絶対戻ってくるから大丈夫!」

エルザは顔を上げて村の方を見てから一際腕に力を込めて力強く頷く。


その下で『きゅい~』と力無くぐたっりと項垂れている鳥が1匹…


そんなやりトリがされている中、暫く時が過ぎて…


「何だあれは‼」

門の上の方から辺りを見ていたフォアが、大きな声を上げた。


その声音にリルルは、ただならぬ雰囲気を感じ取って、

「どうしたんですか!」

と門の上を見上げて叫ぶ。


門横の壁の上に作られた台座の様な場所で立ち上がり、背伸びをする様にしてその横に立つポール状の棒を掴みながら、手を額に敬礼の様にかざして目を凝らし遠くを見ているフォア。


「向こうから何かやって来ている‼…あっ!あれは、いや、まさか…でもあの緑は…この間の魔物だ‼」


「「魔物⁉」」

リルルとミスティは叫ぶと同時に互いの顔を向き合わせた。























盗賊と言えばキースって名前が連想されてしまう作者はキャラ名がテンプレです。

あと全然関係ないですが、F1ドライバーの名前って何であんなにカッコいいんでしょうか…

アイルトンセナ時代はパナイくらいレーサー名カッコよかったです。

ジャンアレジとかナイジェルマンセル…そしてゲルハルトベルガー…カッコ良すぎます!

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