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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第一章 【異世界での旅立ち】
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第5話 『活路』

第5話

『活路』



【広場にて】



ドランクは焦っていた。戦い始めて5分程度だが

魔物の数があまり減っていない。

もう30体近く切っているはずなのに、

まだ当初とそれほど変わらぬ数の魔物が残っていた。


それもそのはず、一度に出てはこないが

魔物は倒す度に新たな魔物が影の中から

出てきているのだ。


「馬鹿な、これじゃキリがない…」

右から襲いかかってくる魔物に袈裟切りをかまして、

正面から左にかけて剣を横なぎに振る。


ほぼ同時に3匹を切り伏せるが、

いかんせん波状攻撃で休む暇はない。


ガルシアは1匹ずつなんとか倒そうと

死角になるドランクの背後から回り込もうとする

魔物向けて斧を振り回している。

更にその背後からミーシャが弓で狙い撃とうとするが、

ミスってドランクやガルシアに当たるのが怖くて

弓を構えながらオロオロしている。

実際何度かドランクに当たりそうになったのだが、

ドランクが上手く回避している。


「狙い撃つ…」

とブツブツ言いながら

ミーシャは既に涙目になっている。



「このままでは…フリージア…」

腕の動きが次第に鈍くなってきたドランクが

広場の反対側へと意識を向けながら呟いた。




「クックック、よく粘るねぇ、でももう限界かねぇ。

まぁ、あんたは頑張ったご褒美に、

他の奴らよりも入念になぶってやるよ。

特別にあっさり殺さずに

女である事を後悔するくらい入念にねぇ。」


女の魔物は下半身の蛇と同様に

先の分かれた先端の長い舌をチロチロと出して

下卑た口調でフリージアを見下しながら言った。


「生憎、蛇女にいたぶられる趣味は無いのよ」

フリージアは額に大量の汗を滲ませながら返した。


アクアウォールは消されたが、後ろにいた村人たちは

大方は広場を抜けているはずだ。

未だに数人逃げ遅れて後ろに残っているが、

大きく張られていたアクアウォールは、

今は収縮された形で張られている。


アクアウォールよりも一段上の『アクアシールド』

先ほどは村人たちが襲われず、

逃げられる為にも魔物との間に壁の様に展開していたが、

今はそれが自分を含めた円形の形に展開されている。


障壁としての効果は上がるが

現在のフリージアでは広範囲には出来ないのと、

他に魔力を割く事が出来なくなった。

『この程度で…』

あともって数分、襲いかかるゴブリンもどきたちが

攻撃を加える度にフリージアの顔色が悪くなっている。


障壁自体はある一定のダメージを受けない限り

簡単に消えないが、継続的に効果を発揮し続けるには

その分魔力を逐一消費し続ける必要がある。

そしてゴブリンもどきだけであれば

充分持ちこたえられたであろうが、

時折、ニヤつきながら後ろから爪を

軽く振るっている女の魔物がいるのだ。


女の魔物が爪を軽く振るう度、障壁にひびが入る。

それを張り直しては消耗するの繰り返し…


今もまた女の魔物が手加減したような軽い感じで

面白がりながら爪を振るう。

「そろそろ終わりにするかぇ…」

いよいよと言った感じで女の魔物はニタリと笑う。


ピシッ!


その音と共に顔が歪んだ…


そう、フリージアでは無く、女の魔物の顔が。

「なんじゃと!なぜわたしの影が減っているのだ!!」


女の魔物が顔を抑えながら喚いている。

よく見ると頭の角の部分に少し亀裂が入っていた。


「ふざけおって、もう容赦はせん!」

フリージアから目を反らし、広場の向こう側、

北の方角を睨みつけてから、


「お前を今すぐ片づけて、後ろの奴もすぐさまぶっ殺して

待っておれ!!」

女の魔物は少し焦ったように言い放った。


フリージアには何があったのかは分からなかったが

その言葉を聞いて、


『させない!これはチャンスよ!!』

心の中でそう念じて、


「みんな、合図をしたら一斉に後ろに逃げてちょうだい。」


後ろに残った村人たちは

その言葉を聞いて即座に頷いた。

自分たちを守っていたうしろ姿を見て村人たちは、

自分たちがフリージアの枷になっている事を

強く感じていた。


守りながら戦うのと、そうでないのとでは大きく違う。

しかも援護も出来ずにただ見ているだけの

自分たちを守りながら…

このまま守られ続けてフリージアが負けるより、

少しでも自分たちが枷にならない様この場を逃げ出そうと。

今は一刻も早くこの場を離れないといけない。


そして…


「今よ!!!」

フリージアは障壁を自ら解いた。


その瞬間、村人たちはフリージアに背を向けて走り出した。


障壁が急に消えた事でゴブリンもどきたちが

振りかぶった棍棒が空を切り、

女の魔物も一瞬虚を突かれたのと若干動揺していたからか

動きをほんのわずかだが止められた形だ。


その直後、

「ライトニングオール!」


巨大な光の玉が目の前に現れ、

フリージングの頭上に光り輝いた。


それはただの光ではあったが強烈な光でもあった。


『ライティング』…

本来一般的な基準でのライティングは

指先程度の大きさで光を保つ魔法である。

ただ明るさを持つだけで聖光や太陽光とは違い、

当然、それ自体は力や熱を持つものではない。

別に『光』の属性といった面での適正は関係なく、

魔法を扱える人族であれば大抵の者は使える。


これは本来『光』の属性はその種族および人族の者しか

使えないからだとされている。

逆に『闇』は魔族由来の属性だ。

ただし魔族に関しては大抵が魔法を使える事と、

そのほとんどが適正ではなく種族的に

闇の属性魔法を扱えるとされている。


『ライトニングオール』…これは光属性を持つ者が

魔力を大幅に注ぎ込み、圧縮された光を

一斉に解き放つ魔法である。


ライティングとの違いは大きく分けて三つ。


一つはライティングの数倍ほどの魔力量が必要。

一つは光を保つのでは無く、解き放つという点。

一つは『光』の属性の適性・・が必要な事。


他の属性の魔法が決して使えないわけではないが、

本来適性の無い魔法を使おうとすると魔力消費が

半端なく、また効果も発揮しづらくなる。

おそらく『光』属性の適性が無い者が

この魔法を使えば魔力を大量に持っていかれるが

大した光量も得られず終わってしまうだろう。



フリージアはある種、賭けに出た。

このままジリ貧で障壁を張り続けるより、

今すぐこの場を何とかするべきだと。

このまま誰かが何とかしてくれるなんて思わないし、

この女の魔物だけは絶対行かせない。

ドランクは私が助けると…


しかし今まで踏み切れなかったのは

隙が見つけられなかった点と

もう一つあった。

それはこの魔物を倒しても

周りの魔物が倒せなかったら…と。


それが先ほど、

おそらくは皆が逃げている北側に行かせた魔物に

何かあったのか。

あるいは別の理由なのかは分からないが、

確実に分かった事があった。

あの女の魔物の角に亀裂が入った時、

明らかに周りの魔物の動きが鈍くなったのと

魔物が出てきていた影が薄くなったのだ。


これは推測だがあの女の魔物を倒せば

周りの魔物たちは消えるだろう。

またあの影が薄くなれば女の力も削げるのではないか。


だからあの魔法を使い、この魔法で決めるつもりだった。


「シャイニングスピア!!」


光の中でフリージアの詠昌が響いた。

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