表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/119

第50話 『変わった武器屋』

出先で書いてます。

以前よりほんのちょっとですが長めにして二日に1回更新目指して頑張ります。

第50話


『変わった武器屋』



「…と言う訳で俺は明日リッケルの村に行って魔物を討伐してくるから二人はここで待っていてくれないか。」


俺はリッケルからの依頼と明日その村に向かう予定を二人に話した。


「グレン殿お一人で行かれるのですか?」


リルルは以前と比べれば大分砕けてきた印象があるが、やはりまだどこか固さが抜けきらない言葉遣いだ。

「ああ、そのつもりだ。最初は討伐してそのまま南に向かおうかとも思ったんだが、一旦ギルドに報告するためにまた戻って来なきゃならないしな。」


「でも一人で何かあったら困るでしょ…」

ミスティは少し赤みが残った顔で上目使いになっている。


『ちくしょう、相変わらずこの攻撃力は半端ないぜ!』


『ねぇグレン、一緒に行った方が安心じゃない?』


『いや、俺とレンなら、いざとなったら飛んで来れるし、村に行くより町にいた方が色々と安全だと思うぞ』


『えっ!?…僕が不安なんだけど…』


『レン…お前これから冒険者やってく気あるのか?』


「心配ならスーもこっちに置いていくつもりだから、連絡を取らせる様にしてくれ。」


スーは何か問題があった時に備えて、ミスティの傍にいさせるつもりだ。

無論不測の事態が起こる可能性はこちらの方が高いのだが、俺ならある程度の問題までなら自力で対処する自信がある。

前の世界の時と比べてかなり度胸がついた事は間違いない。


連絡方法に関しては、前にエーゲ村で力を感じたスーについて湖に行った時に聞いたのだが、ある程度の距離までならば、俺とミスティの魔力は追えるらしい。

特に俺の魔力は分かりやすいのだそうだ。

今度魔力の探り方とか鳥に教えさせてやろう。


一応明日中にはこの依頼を終わらせるつもりではある事と、何か問題があったとしても明後日の朝までには町に戻るつもりだと二人に告げた。


『ご主人あちしも一緒に行くだわさ!』

(スー)がどうやら起きてたみたいで突然キュイー!と喚き出した。


「いや、お前にはミスティたちの護衛と連絡役という立派な任務があるんだぞ」


『だってご主人に何かあったらあちしは…』

スーはキュイィィと嘆きしょんぼりしてらっしゃる。


「大丈夫だ、俺に何かあっても()()()()()()()何とかしてみせるから。」

俺は優しく微笑んでやった。


キュ!?となんか鳥が悲しい雰囲気を醸し出した。


「ちょっとグレン!!スーちゃんが可哀想でしょ!!」

ミスティはスーの頭を撫でて慰めている。


流石にミスティにそう言われてしまったら仕様がないな、

「いや、悪かったな、そんなつもりはなかったんだが、まぁきっと取り越し苦労に終わると思ってな…()()だけに」

ちょっとドヤ顔で言ってみた…


シーン…


暫く静寂の時が訪れた…


痛い痛い!!なんか場の空気がとっても痛かった。


『ちょっとグレンやめてよ!何か変な空気になっちゃったじゃないか!!』


『ああスマン、正直言いたかっただけなんだ許してくれ』


その後ミスティとリルルの視線がとても冷たかった気がするが仕方無い。


「ま、まぁ、グレン殿なら心配は無いとは思いますが気を付けて下さいね。」

リルルが何か気を遣ってくれた。


俺はいたたまれず口にしていた飲み物を飲み干し、

「ああ、分かってるよ。ありがとな。」


「そうだよ、油断しちゃダメだからね。」

ミスティはジト目を止めて心配してくれた。


俺は口元を緩めて、

「ああ、油断大敵だからな。それとスー悪かったな、お前を信頼してるからミスティたちを任せるんだぞ。」


その言葉を聞いたスーは、

『ご主人!その言葉を待ってただわさ!!』

と羽を大きくバタつかせて喜んだ。


ミスティの膝上にいたスーは正面にいた俺に向かうべく膝元を離れ、ピョコンとテーブルの上に乗った。

だが哀しいかなスーはその反動で側に置いてあったスープを倒してしまい、体へと浴びた。

『キュイー!!』

と言う悲鳴が店内にこだました。


『流石はスー、俺のミスを帳消しにする体を張ったナイスフォーローだな』


店員から布を借り、ミスティはスーを拭いている。

幸いスーは熱耐性があるので火傷はしていないみたいだが、少ししょんぼりとしていた。


「そう言えばリルルは武器はもう買ったのか?」

スープを台無しにしたスーは放っておいて俺はリルルに尋ねた。


「いえ、これから行こうと思っていたのですが…」


「そうか、なら丁度良かった。俺もちょっと行ってみたかったんだ。」


「そうですか、それじゃあ行きましょう。」

リルルは急に表情を明るくさせて答えた。


それから俺たちは店を出て、武器屋へと向かう事にした。

ミスティは『わたしはスーちゃんをお風呂に入れてくるから先に宿に戻ってるね』と小麦亭に戻って行った。

スーはお風呂と聞いて一瞬ビクッとしていたが…


武器屋の場所はリルルが宿屋で聞いていたらしく、この近くにあるらしい。


俺とリルルは二人で目的地へ向かうべく歩いていた。その最中何やら少し嬉しそうにしていたリルルに『武器を買うのがそんなに嬉しいのか?』と聞いてみたら、『いえ、そのミスティ様と武器屋に行くのは少し気が引けたので…』と言っていた。

なるほどな、確かにミスティにとってはあまり楽しい場所でも無いだろうしな。


「それに…あの…」

少し照れながら俺をチラチラと見ながら口ごもっていたリルルに『どうした?』と聞いたが、『いえ、何でもないです』と言われた。

良く分からんがまあ嬉しそうで何よりだ。


「あっ、あの路地の右手にあるはずです。」

リルルは指で指し示し、俺たちはその路地へ向かった。


「この通りに…」

路地を曲がり、お目当ての武器屋らしき店が見つかった…


『吉兆』という大きな看板が掲げられた入り口の大きな店だったが、

『改装中』というプレートが扉に掛かっており、

『近日新装開店予定です。新しい吉兆にくご期待下さいませ。』と書かれた紙が貼ってあった。


「参ったな。」


「参りましたね。」


俺とリルルは顔を見合わせてため息をついた。


「武器屋は他にもあるのか?」


「いえ、すみません。宿で聞いたのはココだけでしたから他のお店はどこにあるのか分かりませんので…」

リルルは申し訳なさそうにした。


「いや、別にリルルのせいじゃないし、多分他にもあるだろうから気にするなよ。」


「すみません。こんな事なら他にもしっかりと聞いておくべきでした…」


リルルは真面目だなぁと思いつつ、

「まぁ、その辺で聞いてみれば分かるんじゃないか。」


このままここにいても仕方が無いので、とりあえず俺たちは周りを見渡して知ってそうな人に声を掛けることにした。

見ると、丁度近くを斧を肩に担いで歩いて行く冒険者風の男がいた。


しかしやたらと斧率たけぇな…斧=大男ってイメージがあるけど強そうに見えるとかで人気あるのか?などと思いつつ、声をかけてみる事にした。


「すまん、ちょっと聞きたいんだが…」


斧を担いだ男はそれほど大男ではなく、体はがっしりとしているがいかにも戦士風な革の鎧を身に纏っていた。


「何だ?」

男は振り返り答えた。


顔はそれほど厳つい感じでもないが、俺の顔を見ていかにも面倒臭そうな表情をしていた。


「いや、ちょっと武器屋に行きたいんだが場所が分からなくてな。出来れば教えて欲しいんだが。」


「あぁ!?武器屋だぁ!?」

男は片方の眉を吊り上げる様にしている。


「ここ以外にも武器屋ってあるんだろ?」

俺は『吉兆』と書かれた看板を指し示す。


「何で俺がお前に教えにゃならんのだ。」

男は、フンと言った感じで立ち去ろうとする。


「すみません、教えては頂けませんか?」

すかさず横からリルルが声を掛けた。


「んっ!?」

男は立ち止まり、リルルを見た。


「うぉ!!」

男はリルルの顔を見て驚き、一度咳払いしてから、

「…あーまあ、その何だ。仕方がないな。本当は忙しいのだが、特別に案内しよう。」


右手の親指で自分を示して、

「俺の名はモブ!!あなたのモブです。お見知りおきを」

と言ってウィンクした。


『180度態度変えやがった…まぁ名前共々分かりやすくていいが』


「それで、どこにあるのか教えてくれるのか?」

俺は名乗りを無視して話を進めるべく促したのだが…


「あなたのお名前は何と仰るのでしょうか。」

モブは俺をさらっとスルーし、ずいっとリルルの前へと出た。


「あ、はい、わたしはリルルと申しますが…」

リルルは急に乗り出してきたモブに一歩下がって答えた。


「リルルさんですか!素敵なお名前ですね。」

うんうん、と大きく頷いている。


「まさにこれは運命の出会い。勿論武器屋以外にも様々な場所にご案内させて戴きますよ。」

モブはニッコリと親指を立ててサムズアップした。


「い、いえ…武器屋以外は必要無いのですが…」

リルルは困った顔をしながら両手を胸の前で左右に振って答える。


「何を仰いますか、むしろ武器屋の方がついでですよ。」

アッハッハッと繋いでモブは笑っている。


『面倒臭いな』


「おい、場所だけ教えてくれ。あとは俺たちで行くからモブは必要ないんだ。」

俺はモブはモブなりにすんなり道を教えてくれと願った。


そして振り返ったモブは、

「お前には話してないんだ。どっかに行っててくれないか。坊主。」


よし、殴るか…

と思ったが、


「モブさん、すみませんが彼と一緒に行くので場所だけ教えて頂ければ結構ですので…」

リルルが間に入るようにして止めた。


「いや、リルルさん、こんな()()と一緒より俺と一緒にいた方がいいに決まってますよ。」


ブチッ


何かがキレた音が聞こえた気がする…

俺では無い…


「モブさん、失礼ですが今何と仰いましたか?」

リルルは俯きながら低い声でモブに尋ねた。


「だからこんな坊主なんかほっといて俺と一緒に行きましょうって…」


それを聞いたリルルは顔を上げ…

「わたくしの命の恩人に向かって何を抜かしてくれちゃってるんですかあなたは…」


「へっ!?」

モブは間の抜けた声を出した。


それからのリルルはちょっと凄かった。


なんかゴゴゴゴゴとかドギギギャンとか効果音が付きそうな雰囲気で、

「あなたごときがグレン殿を罵倒しようなど言語道断!!恥を知りなさい!!」

キッ!!と睨む様は俺でもかなり恐かった。


「なっ、何で怒ってるんだよ!?俺の方があんなガキより男として魅力あるだろ…」

モブは気圧されて少し後退りながら口にした。


「黙りなさい!!」

リルルは一喝した後素早く左に移動し、即座にモブの後ろに回り込み短剣を喉元に当てた。

かなりの早さだ。

特に短剣を抜く速度は中々だった。


「それ以上余計な事を言うなら…分かってますね。」

モブの耳元でリルルは囁いた。


その後モブは余計な事は言わずに、武器屋の場所をすんなりと教えてくれた。

去り際に「ちくしょー」とモブっぽい台詞(せりふ)を口にして走って行った…


「それじゃ行きましょうか。」

リルルは何事も無かった様に歩き出した。


俺とレンはその様子を見ながら、

『リルルはなるべく怒らせない方がいいな。』

『う、うん、そうだね。』

アハハハハと乾いた笑いをしながらついていった。


それから10分後、俺たちはモブに聞いたはずの店の前にいた。

「ここだと思うんですが…」

リルルは自信なさげな雰囲気で店を見ている。


さっきの場所から細い路地を中へ中へと入った先に薄暗い雰囲気漂う一画があり、こんなトコに店があるのか?と思いながら更に先へ進むと住宅街の様な場所にその店はあった。


リルルが自信無さげなのは、『ここホントに武器屋か!?』と言った怪しさだったからだ。


何が怪しいって、まず第一に壁の色からドアの色までピンクだった。別に壁がピンクなのは目立っていいかもしれないがそれにしても武器屋のイメージがしない。通り側に窓は無く、中の様子もうかがうことは出来ない。

極めつけは店の入口らしき横に置いてある看板に『ロンデル』と書かれた文字と共に周りを赤い花で囲んであった。

手作り感満載で運動会とかで見かけそうな看板だ…


『あのモブひょっとして悔し紛れで俺たちに変な店を教えたんじゃないだろうな』と思ったが、


「とりあえず入ってみるか…」


「そ、そうですね…」


俺は恐る恐るピンクの扉を開き中へと入った。


ギィと開いた先に見えた光景は、それほど広くは無いが、少し殺伐とした感じで外の雰囲気とは違って武器屋っぽくてホッとした。


左手側には剣や槍が乱雑に立て掛けられており、床に直に斧や短剣が転がっていた。中には見たことも無い形状の物もあった。

それほど武具に詳しく無い俺だが、見た所中古の武器類の様だった。

右側には棚があり、その中に兜や籠手、盾等が置かれていた。

こちらもかなり乱雑に置いてある様で防具一式揃って無いというかごちゃごちゃに置いてある為、統一性が無かった。

奥にはカウンターがあったが誰の姿も見えない。

因みに客らしき人影も無かった。


「なあリルル、武器屋って大体こんな感じなのか?」

この世界の武器屋がどんなモノか分からなかったので聞いてみた。


「いえ、わたしの知ってる武器屋はもう少しちゃんとしていると言いますか、しっかりと片付いているんですが…」


「ああ、まあそうだよな…」


果たしてこれが売り物なのかは分からないが、適当に立て掛けてあった剣を手にしてみる。

ズシリと重いそれは鞘にも入っておらず抜き身の状態だ。

無骨な作りだが妙にしっくり来る握りで思わずふってみたくなったが、流石に試し切りとかここでは出来ないだろうしな。

そう言えば買う前に試し切りとかさせてくれたりするんだろうか?などと思いながら見ていると…


ギィと扉が開き、


「誰だ!!」

少し声の低い男の声がした。














































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ