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第44話 『理由』

文章の区切りってやっぱり難しいですね。

表現は拙いですが、せめて読みやすくしていきたいです(ノ∀`)

第44話


『理由』



各自部屋へと戻り、支度をしてから再度1階に集まった。

何故一度集まったのかと言うと、全員が温泉に入った事が無かったのだ。


レンとミスティはともかく、てっきりリルルはあるのだろうと思っていたが

『温泉には入った事がないんです』との事で一応宿屋の人に話を聞いてから入ろうという事になったのである。

勿論俺は入った事はあるのだが、この世界も一緒のものだとは限らないし、何より知識として培っておきたかった。

因みにスーはお風呂があんまり好きではないらしく、

『あちしは今度入るからいいんだわさ』と飯を食ってから、

今は部屋で一匹で寝ている。


宿屋の人に声を掛け、案内してもらい俺たちは浴場へと向かった。

尚、入浴料は無料だが、入れる時間と時間帯が決まっているらしい。

今の時間は3か所ある内の1カ所が入浴時間外との事で使えないとの事。


宿屋の女性が案内した先は1階の奥の部屋で3つ扉が並ぶ前だった。

3つの扉の上にはデカデカと『小麦大麦ふっさふさ温泉』というプレートが掲げられていた。

うん、スゲーネーミングだな。

扉には記号の様なモノが書かれている。

左から順に『矢』『的に矢が当たった絵』『的』といった感じだ。

右の扉にはプレートの下辺りに『清掃中』の札がかかっている。


「こちらが、我が宿自慢の『小麦大麦ふっさふさ温泉』となります。

別名『豊穣の温泉』とも言い、その効能にも期待出来ますよ。」

うふふと言ってその非常に恰幅のいい女将さんみたいな女性は、

交互にミスティとリルルを見ていたが、


「お客様たちならきっともっと大き、いえ、女性の方々にはとても好評なんですよ。」

オホホホホとおば様口調で告げた。


そして話を続けようとしたおばちゃんに、

「あ、あの…すみません」

レンが声を掛けようとし、


「あら!気が付きませんで、お客様もご一緒に入られるんですか?」

今気付いたの如く、近所のおばちゃんバリのわざとらしさで話し掛けてきた。


俺はまさか男子禁制とかあるのかと思ったが、

「トイレどこですか?」

というレンの言葉で、そう言えばさっきから少し尿意を催していたが…

最悪風呂ででも等という不埒な思いがあった訳では無い…

イヤ、ナイヨホントウニ。


ミスティたちには先に入っててもらい俺たちはトイレへと向かった、

その後用を済ませ、再びさっきのおばちゃんに案内してもらった。


場所は分かっていたがどうやって入ればいいのか聞いていなかったからだ。


「どっちに入ればいいんですか?」

とレンが尋ねると、


「ただ今のお時間でしたらお客様方以外は入っておりませんので、

どちらでも構いませんが…」

少し、言い淀んでから、

「お連れ様方とはどのようなご関係で…あっ!決して詮索している訳ではないのですが、

お客様にとってどうゆう人たちなのかとお聞きしたかったものですから…」


何故そんな事を聞くのかと俺は少し気になったが、

「幼馴染と…う~ん二人とも大事な人たちだから一緒にいて守ってあげたい人たちかな。」


「そうですか、大事な方々ですか!一緒に…それは失礼致しました。」

あらあらウフフといった感じで、丁寧に一礼してから、

「でしたら、どうぞこちらへ。」


俺たち3人は真ん中の扉に案内された。


扉には鍵がかかっていたらしく、鍵を開けてから、

「どうぞごゆっくりお楽しみ下さいませ。」

とそれはもうニヤニヤしながら告げて、そのまま去って行った。


俺たちは扉を開け、中へと入った。

扉の中は脱衣所になっており、思っていたよりも広かった。

適当な場所で服を脱ぎ、近くにあった籠へと投げ込み、壁にかかった布を片手に、

おそらく浴室へと続くであろう扉をガラリと開けた。


そこは空は大きく開けており、その空には星空が一面に浮かび、湯の湯気が立ち上る、そう、正に露天風呂だった。


『ほわぁ』といった感じでその綺麗な空を見上げながら、周りに立ち込める靄の中、

俺たちは湯船へと向かった。


そして湯船に浸かろうと目の前に視線を落とした。


『えっ⁉』


目の前には、茶髪のショートカットを耳元で掻き上げる幼い顔立ちだが可愛いと表現して余りある容姿と、スレンダーでありながら、その身に似合わぬ豊かな胸を持つ女性。

その隣には艶やかな黒髪に一筋の銀髪を持ち、その容姿もさることながら、肢体もしなやかでひきしまった身体、綺麗な肌とその曲線、まさに健康的な美を放つ女性がいた…


その二人と目が合い数秒後…


『『キャーーーーー!』』


露天風呂に美少女たちの叫び声が木霊した。



俺たちは風呂を出て今ミスティたちの部屋にいる。


あの後、レンは強制的に風呂を追い出され、慌てて脱衣所からパンツ一丁で扉を出た所、

悲鳴を聞いて駆け付けたであろう女将さんとバッタリ会って、

『何かありましたか⁉』と聞かれた後、

何やかんやで部屋へと戻り、風呂から上がったミスティに呼ばれ、今に至る。


「レンの馬鹿!」


「だって、ミスティたちもいるなんて思わなかったから…」


今の構図は、ベッドの上に腰を掛けている二人の女性と正座する俺たち、

籠の中で眠る鳥といった形だ。


プンスカと腕を組んで怒るミスティは『昔からレンってば…』と小言を言っている。

レンは『昔はよく一緒に入ったのに…』とか火に油を注いでいたが、

暫く繰り返した後、見かねたリルルが『まぁグレン殿も悪気があった訳ではないですし…』と宥めてくれていた。

リルルはミスティほど裸を見られた事に怒りを感じてはいなかった様に思える。

頬を赤く染め恥ずかしそうにはしていたが…

とゆうかリルルはレンじゃなくてグレンか…


確かに考えてみれば初っ端からおかしかったのを俺は理解していた。

レンがトイレから戻った時点でなんとなく気付いてはいたのだ。

でもレンに淡い期待を持ってしまっていた事もまた事実だった。

流石はレン!その天然っぷり、グッジョブ!と心の中で思っていたのもそう事実だ…

そこには噂のラッキースケベを味わい少し満足していた俺がいた。


因みにお風呂の件は女将さん曰く、

女性用のお風呂が清掃中で使えなかったので中央にある共有風呂、つまりは混浴を二人に案内し、

俺を一緒の風呂へと案内してしまったとの事。

なるほど、そういう事かと思ったが、

普通に考えて一緒にお風呂に入るくらいの間柄なら部屋も当然一緒じゃね?とも思ったのだが…まぁいいだろう。

あと、扉に書かれた記号は『矢』が男湯で『的』が女湯で中央はどちらかが使えない場合に解放する形らしい。また使用しない時には鍵を掛けているが、貸し切りの希望があればその時だけ解放するシステムだそうだ。

因みに効能については胸の辺りを見ながら話してた時点で言わずもがなだ。


ミスティからのお説教も終わり、レンと共に自室へと戻った俺はベッドへと横になり、

『なぁ、レン』


『なあに?』


『一応の確認だが、お前ミスティの事好きだよな』


『な!?、と、突然何言っちゃってんの!!』


『いいから聞け、お前はミスティと一緒になりたいんだよな』


『ぐ、グレン!きゅ、急に何言い出してるんだよ!!』


『答えろ、お前はミスティが大事なんだよな』


『……う、うん…それは…その…そうだけど…』


『分かった、ならいい』


『一体なんなんだよ!もう!!』


『それはさておき明日なんだが…』


俺たちはその後、明日の冒険者の事やそのギルド等について話をした。

何故ミスティの事を改めて聞いたかだって?

答えが分かっている問いを敢えてした理由は、レンをからかいたかったから…もあるが…何となくだ。

いや、違うな…俺が改めて認識しておきたかっただけかもしれない。

失ってから分かる苦しみと今ある幸せを噛み締める為にも…



気がつけば既に日の光が差し込み朝を迎えていた。

早朝の鳥の鳴き声が耳に響く中、俺とレンは目を覚ました。


『ご主人朝だわさあああ!!』

と言う鳴き声と共に…


『『うるさいわぁ!!』』


(スー)は昨日は俺たちが部屋へと戻った時には既に籠でおやすみタイムだったので早くに目が覚めてしまったらしい。

つーか鳥なんだから勝手にお外ででも遊んでこいよと思ったが、同時にコイツを野放しにしとくと録なコトにならなさそうな予感がした為言わなかった。


欠伸(あくび)をしながら寝ぼけ(まなこ)で頭をボリボリ掻く姿はまさにボーっとした表情丸出しだったので、目覚ましついでに顔でも洗うかと部屋に置かれた水桶に入れられた水を(たらい)(すくい)、両手で洗っていると、扉を叩く音がした。


「グレン殿、起きてらっしゃいますか?」


ノックの後にリルルの声も聞こえた。

俺は近くの布で顔を拭きながら、


「ああ、今起きた所だ。何か用か?」


「すみません、こんな早くに…少しお話をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


「…ああ、いいぞ」


俺は扉を開けてリルルを部屋へと向かい入れた。


「それで、話って?」

俺はリルルを促し、真ん中にある小さなテーブルに置かれた椅子へと座り、今は二人向かい合って座っている。


「じ、実はその…」


「気を使わなくていい、聞きたいことがあるなら聞いてくれ、言いづらい事なのかもしれないが、逆に気になるからな。」


「はい、その、グレン殿は冒険者になるおつもり何でしょうか。」


「ああ、その事か…」

俺はてっきり深刻そうな顔をしていたから、ミスティ絡みの事だと思ったんだが…


「確かに、グレン殿の力ならば冒険者になればそれは素晴らしいご活躍をされると思います。

 ()()()()の力があればすぐにでも上位ランクの冒険者になる事も可能であると…ですが…」


「危険だと言う事か?」


「い、いえ、そうではなく、い、いえ確かに危険もありますが、その…」


再び黙ってしまった。


「お前が何を言いたいか分からないが、俺が冒険者になることに反対なのか?」


「……」

これじゃ話がすすまないな。


「リルル、俺はお前の事を信用して話すが、この事について話す前に聞かせてくれ、なんで冒険者になるとマズイんだ?」


俺の意図を理解したのか、リルルはギュと一度唇を結んでから、

「それは、二つ理由があります。

…1つはミスティ様がご心配なさっていた事と、もう1つは…あなた様にミスティ様を守って戴きたいからです。」


『ふむ、なるほどな…』

『どうゆう事?』


『レン、俺たちの事も話すぞ』

『えっ!?、あ、うん、分かった』


「つまり、ミスティが心配してるから危ない目に合う冒険者なんかにならずとも、このままエリス王国まできっちりとミスティを守ってもらえればいい。とゆうコトか?」


「いえ、そうゆう訳では!!」

ガタッと椅子を膝で押し退け、思わずと言った仕草でリルルは立ち上がった。


しかし少し間を置いてから座り直し、

「いえ…その通りなのかもしれません…確かに、冒険者にならずともこのまま我が国に来ていただければ、グレン殿のお力をもっと()()()でご発揮頂けるとわたしは考えています。」


『違う形』ね…

「リルル、俺が冒険者になるのは別に名声や金を得たいからって理由じゃない、いや、勿論金は必要だし得られるのなら得たい。だが、それだけじゃないんだ。」


ゴクリと一度喉を鳴らしてから、

「では何故…」


「主な理由は3つある。

1つは情報が欲しい、1つは俺が興味があるから、そして最後の1つは、()()を広めておきたいんだ。」


「見識ですか?」


「そうだ、広く知識や経験を持つことで自分自身を高めたい。それに冒険者という稼業に俺が興味を持っている点もあるし、何より俺たちには情報が必要なんだ。」


「俺たち…ですか?」


「そうだ、俺たちだ。」


「それはミスティ様とグレン殿にとって何か重要な事なんですね…」


「ああ、正確には俺とレンにとって重要だ。」


「?…どうゆう意味ですか?」


「…実は俺の中にはグレンとレンという別人格が存在する。もう、気付いているかもしれないが、ただの二重人格と言うよりそれぞれ別の意識が入っていると考えてもらいたい。

俺たちはその原因というかその要因的なものを見つけたいんだ。

その為にはそういった情報やそれに近い情報を集める必要がある。その上でも色々と融通が聞きそうな冒険者になっておこうと決めたんだ。」


「なるほど……そうだったのですか…」

リルルは少し頭で意味を咀嚼して考え込むように口にした。

暫く考えてから、


「でしたら…わたしの方で、色々と情報を集めさせて戴きますし、グレン殿であれば我が国の騎士、ご希望であれば近衛騎士団への所属も…」


「いや、それはお断りさせて貰おう。魅力的な提案なんだろうが俺は、俺たちは自分の道は自分で決めさせてもらう。勿論騎士になりたいと俺たちが思えば騎士を目指すのも(やぶさ)かではないが。」


それを聞いたリルルはため息と共に肩を落とした。


「安心しろ、だからといって冒険者になったからって無理な依頼を受けるつもりも、無茶をするつもりもない。勿論ミスティを守ることに変わりはない。…少なくともお前もキッチリ守ってやるしな。」


「わ、わたしは自分で身を守れます!そ、それにミスティ様だって…」

頬を赤くしながら説得力無さげにモジモジとしながら答えたリルルは、


「ぐ、グレン殿のお考えは分かりました。正直、全てに納得はしておりませんが…その…お話して戴き有難うございました。」


『相変わらず俺は口がうまいな…』


『えっ!?どうしたの?』


『いや、何でもない』


『いやぁ、でも凄いなぁ、昨日グレンが言ってた通りだったね。

 僕も冒険者には興味があったから、なってみたいとは言ったけど大丈夫かなぁ』


『安心しろ、お前も俺が…』


『んっ?』


『…お前ならきっと大丈夫だよ』


























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