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第43話 『宿と言えば』

第43話


『宿と言えば』



『何か俺の質問おかしかったか?』


ガチで俺には何で3人がキョトンとしているのか分からない。

最初リルルに会った時にも機会があったら聞こうと思っていた事だ。

別に彼女が何歳であるかが重要なのでは無く、俺の見立てと合っているのか気になったのと、

単に俺より年上であるかという事を確認したかったからだ。


見るからに落ち着いた雰囲気で、少なくとも俺の見立てでは20歳前後だが、

俺には女性の年齢が良く分からない。

前の世界でも実際の年齢を聞いて驚く事がよくあった。

おまけに外国人の女性などは尚更だ。

この世界では成人年齢が低くなっている。

確かに日本も戦国時代などであれば更に成人年齢としては低かったのだが…

結局の所、この世界の基準となる目安が欲しかったのかもしれない。

だって、この世界の人達って髪の毛が緑だったり、ファンタジー色が強すぎて分からないんだもん。

魔族やエルフなんて見た目と実年齢全く合ってないだろうし…


という訳で、

何歳いくつなんだ?」

と俺は再度聞いてみた。


するとミスティが、

「ちょっとレン!いくら天然だからってダメじゃない‼」


『ぼ、僕じゃないよ!グレンが勝手に!!』

『グレンが変なこと言うから僕のせいにされちゃったじゃないか!』

レンが何やら喚いていたが、口に出せない様に俺は主導権を渡さない。


「あっ、すみません。いきなりだったものでお答えするのに戸惑ってしまい…」

両手を横にヒラヒラとさせながらリルルがミスティを制止する。


「すみませんグレン殿、わたくしは今年で『18』になります。

何か気になる事がありましたでしょうか?」


「そうか、やっぱり俺たちよりも年上なんだよな。

だったらそんなに畏まらなくてもいいと思うぞ。」

まぁ俺の見立てより若かったが、それにしてもこれで女子高生って事か…


「えっ⁉いや、そんな…わたくしは…」


「リルル、元々そういう喋り方なら直せとは言わないが、

無理に丁寧にしないで、もっと砕けた接し方で構わないぞ。」

まぁ実際は俺の方が年上だけどな…俺の半分以下とか…


「そ、それは出来ません!」


「何故だ?」


「それは、グレン殿はわたくしの命の恩人ですし、

ミスティ様はソリティア様のご息女で、ですから…」


「そうか…まぁ分かってはいたんだが、俺としては気軽に接してくれた方が色々と楽だったんでな。

流石に初対面で横柄な態度とかは困るが、これからも暫く一緒に旅をする訳だし、そろそろ砕けてくれてきてもいいかと思ったんだが…いらぬお世話だったか。」


「わたしもリルルさんともっと仲良くなりたいです!」

それまで黙って話を聞いていたミスティが、リルルの目を見てハッキリと言った。


「ですが…」

リルルは困った顔をしながら目線を逸らす。


「まぁ急に変えろと言っても無理だろうし、

リルルがその方がいいんなら強要する気はないが、

一応俺たちはそう思っているという事だけは覚えておいてくれ。」


「は、はい。分かりました。」

リルルは申し訳なさそうにしていた。


「なんか出掛けに悪かったな、このあと変にギクシャクするのもアレだし、

変えられそうなら徐々に変えていってくれれば構わないからな。」


「うん、そうだよ!わたしだってリルルさんともっと、その…

()()()みたいに話したいもん‼」


「お友達ですか?」


「あっ⁉ごめんなさい!」

ミスティはしまったと口に手をあてた。


「い、いえ!とんでもありません!!…そ、その…嬉しいです…」


「それじゃそろそろ行くか」

俺はこの話はコレで終わりだと話を終わらせたが、


「あっ、あの!…お二人とも、有難うございます‼」

リルルは俺たち二人の顔を見て、恥ずかしそうにしながらも笑顔でそう答えた。


因みにこの後、レンの知識で確認した所、

この世界の常識?では女性に直接年齢を聞くのはタブーというか暗黙の了解とされており、

初対面でそれをしようものなら、たとえ引っ叩かれても文句は言えないとの事。

ある程度面識があっても、本人以外もしくは間接的に聞くのが一応の常識となっているらしく、

直接聞く場合、ある程度親密になってから二人っきりの時に聞くとの事だ。

補足として、女性に年齢の話をする男は嫌われるらしい。

尚、この知識はフリージアから聞かされたものであり、

以前レンもフリージアに直接年齢を聞いて大変な目にあったという体験談もあった。


とにもかくにもそうして俺たちは町へと繰り出す事にした。

そのまま部屋を出て階段を降り、カウンターの従業員に部屋の鍵を預けてから、

宿を出ようとしたら、後ろから凄いスピードで近付いてくるモノがあった。


「キュイイイイイイイイイ!」と…

『あちしを忘れないでほしいだわさぁあああ!』


あぁ忘れてた。


スーも連れて宿を出た俺たちは、


「さてと、とりあえず何処に行こうか。」

ミスティやリルルの方を振り返って尋ねた。


「わたしは特に行きたいところがある訳じゃないけど、町をいっぱぁい、見てみたいな。」

ミスティがわくわくした雰囲気を抑える事無く醸し出している。


「そうですね、わたしは出来れば武器を見ておきたいのですけど、まずは町を見て回るのがいいかもしれませんね。前回来た時はあまり見られませんでしたし。」

少しいつもより柔らかい口調でリルルが答える。


「んじゃ、今日はみんなで適当に見て回るか。」

『うん!』とレンが勢いよく返事をした。


それから俺たちは大通りで露店を回ったり、出店の屋台で買い食いしたり、

町の教会や図書館の様な場所も見て回った。

娯楽というほど目立ったものはないが、ミスティやレンはそれはもう楽しかったらしく、

見るもの全てが新鮮であり珍しいので、終始楽しんでいた。

リルルも最初はまだ硬さが目立っていたが、

ミスティと洋服店に入った辺りから急にテンションが上がって、二人でキャッキャウフフとはしゃいでいる様に見えた。

スーは出店で買った唐揚げが思いの外うまかったらしく、

『これは!うまいだわさぁ‼』とキュイキュイそれはもう貪るように食べていた。

思いっきり共食いじゃねえかと突っ込みたかったが我慢してやった。


途中から俺はレンと交代し、折角だからとミスティにアピらせてやろうともしたのだが、

相変わらずの天然っぷりでことごとく、スルーしていった。

結局一緒に楽しんだだけだったが、まぁレンがそれで良かったのなら良しとするか。


皆一様に満足したようで、辺りも大分陽が沈み、空が暗くなり始めた頃、

俺たちは宿へと戻った。


小麦亭に戻った俺たちはカウンターで鍵を受け取り、各自一旦部屋へと戻り、

その後夕食を1階の食堂で取ることにした。


この世界の食事は大まかに言うとシンプルなものが多い。

焼く、揚げる、炒めると言った調理法が多く、素材を生かすというか、それほど凝った料理は見られない。まぁ、俺がまだ知らないだけで他にも色んな料理があるのだろうが…

少なくとも今までいた村やこの町ではそんな感じだ。

屋台でも簡単な肉の丸焼きや揚げ物、ハムを挟んだサンドイッチ、焼鳥の様なものがあったくらいだ。

麺類などは無いらしく、レンの知識にもヒットしなかった。

だが味そのものは悪くなく、若干味付けに物足りなさを感じたが、肉や野菜のそれ自体はとても美味しく感じられた。

中でも一番俺が興味を惹かれたのは果物だ。

肉や野菜は見た目はともかく味の方は俺の世界とそれほど大差無かったが、果物は見た目だけでなく、味も様々なものがあった。

一粒一粒が色の違う葡萄(ぶどう)の様な果物で、その一粒一粒で味が違うものや見た目はまるっきりリンゴなのに味はオレンジの様だったりと千差万別だった。


今俺たちの前に並んでいる料理は肉と野菜が中心だが、リルル曰くこの店のお薦めはパンなのだそうだ。

流石は小麦亭と言ったところか。

それと『この宿にはもう一つお薦めがあるんですよ』と笑顔でリルルは言っていた。

リルルも大分打ち解けてきたらしく、俺たちへの接し方というか雰囲気がかなり変わった様に思えた。


「明日はどうされますか?」

一通り食事を進めて一段落した辺りでリルルが皆に聞いた。


「うーん、わたしは特に予定は無いんだけど、今日見た服とか身の回りの物とかもう少し揃えたいかな。」

ミスティは右手の人差し指を口に当てながら考えつつ意見を述べた。


「リルルは武器屋にでも行くのか?」

俺はパンに挟まれた肉を齧りながらリルルに聞いた。うん、確かにパンうまいなとも思いながら…


「はい、わたしも身の回りのものを揃えたいと思いますので。」


「そうか、なら明日はミスティと一緒に買い物に行ってくれないか?」

俺がそう言うと、

『えっ!?僕たちは違うの?』とすかさずレンが聞いてきた。


「えっ!?グレン殿は行かないのですか?」

とリルルも同様に聞いてきたので、


「ああ、俺は少し寄りたい所があるんでな。」

と二人に答えると、


『「どこ?」』

とミスティとレンが尋ねたので、


「冒険者ギルドだ。」


『「「えっ!?」」』

と三人から反応があった。


『冒険者ギルド』

この世界には冒険者と呼ばれる職業が存在する。

もはやお決まりの定番モノではあるが、魔物や未開の地などがある世界ではその需要も理解できる。

冒険者は成人していれば、基本は誰でもなれるらしい。

ただギルドに登録する場合は犯罪者であったり、登録料その他規則や決まりといった事もあるので、必ずしもギルドに登録する必要はなく、フリーの冒険者や傭兵などもいるらしい。

しかし一般的に見るとやはり冒険者稼業を行う上では、ギルドへの登録は行っておいた方が色々と都合がいい。


今回何故俺が冒険者ギルドに行くと言ったのかと言うと、主な理由は3つある。

全然全く関係ないが俺は理由を挙げる時、3つ挙げるのが好きだ。

好きというか(こだわ)りの様なもので日本人特有の気質なのかもしれないが…

それはさておき、

理由としては、まず第一に情報が集めやすいと判断した事。

何の情報か?

これは一応建前的にはレンとの現状を(かえり)みてだが、その他にも魔族の同行やこの世界の情勢、その他必要な情報を得るのに便利だろうという事。

ひょっとしたら俺みたいな状況のやつが他にもいるかもしれないしな…

次の理由としては金を稼ぐ手段としてだ。

当然冒険者になったから必ずしも依頼を受けなければいけないとなると話は別だが、稼ぐための手段としてはアリだと思ったからだ。

勿論レンが反対するのならば再考しない事はないが、現状では金を得るための手段の一つとして考えたからだ。

そして最後の理由は…

もうコレは単純に俺自身に興味があったからだ。

ある種建前を除けばコレが一番なのかもしれない。

『やっぱり異世界と言えばコレだろ!』という俺のかつての魂が震える衝動が抑えきれないのだ。


「とゆう訳で、明日は…」


その後皆でお茶をしながら明日の事を話し合い、

明日は俺が冒険者ギルドへ、ミスティとリルルは町で買い物、スーは念のためミスティたちと一緒に行く事になった。

レンもしきりに『僕らも一緒に行こうよ』と言っていたが、『男が稼がなくてどうするんだ、それに冒険者になった方が色々と情報を集めやすい』と言うと、『そっか、グレンも考えてるんだね…でも僕自信ないよ…』と消沈したので、

『冒険者になった方がミスティにいい所見せられるかもしれないぞ』と俺が言うと、

『分かった!』と急にテンションを上げていた。

相変わらず分かりやすいヤツだ。


俺たちは飯を食い終わり、話を終え、お茶を飲み終わり、あとは寝るだけかと席を立とうとした所で、


「それじゃあ、お風呂に入りましょうか」

リルルが言った。


「えっ!?お風呂があるの?入る入る!」

とミスティが嬉しそうに答えた。


この宿にはお風呂がある。

通常宿でも風呂がある所は珍しいらしい。

村でもミスティの家やフリージアの所にはあったのだが、エーゲ村の村長の家には無かった。

しかもこの宿には温泉があるらしい。

普通は魔法で火を起こして水を温めて入るらしいのだが、この宿の風呂は地下からお湯が沸き出しているとの事。


『ふむ、温泉か…』







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