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第42話 『はじめての町』

第42話


『初めての町』



俺たちは馬車を走らせる事3日。

エーゲ村からエステルの町へと到着した。

その間あった事と言えば、村を出てから最も気を使った事ぐらいだ。

主にレンがだが…


問題はやはりジャネットとの事だろう。

あれは不意打ちではあったが、予測出来ない事でもなかった。

ただ唐突だったが故に、意表を突かれて動けなくなったのも事実だ。

俺はともかくレンにとっては衝撃の出来事だったらしく、あの直後から『キスされちゃったよどうしよう⁉』、『やっぱりアレって好きって事なの?』とか超舞い上がっていた。

のだが…

あの後レンとスイッチしてからが更に大変だった。


食事の時、

リルルから『グレン殿はオモテになられますね』とか、ミスティに関してはフンと言った感じで、口も聞いてもらえなかった有様だ。

用意された食事の量も心なしか少なかった気がするし…


2日目にはレンのしょぼんとした空気を流石に可哀そうだと感じたのか、

『まぁ、名騎士は色を好むとも言いますしね』

とリルルは幾分か機嫌を直してくれていたが…

ミスティは相変わらずツーンとしていた。


だが夕食の時に、

『ジャネットさん綺麗だもんね』と俯いてミスティがこぼした際に、

『ミスティだって可愛いよ』とレンが答えた事によって空気が変わった。


3日目にようやっとミスティから普通に話し掛けてもらえたレンは、

それはもう本当に嬉しそうだった。


そして俺たちは今、町の中へと入る為の手続きを行っている。


入国審査という程でもないが、町では村と違って中に入る際にそれなりに手続きが必要になる。


主に行う事は3つ。

・何故この町に来たのか目的を告げる。

・名前とどこから来たのかの身分確認。

・町に入る為のお金を払う。


3つ目に関しては町の住人ではない場合で、

滞在する期間に応じて支払う形になっている。


俺たちは一旦門の脇に馬車を止め、

その横にある詰所内で門番達と話をしている。


まず『なぜこの町に来たのか?』

これはリルルをエリス王国へと送る最中に立ち寄ったという事にしてある。


身分の確認については、

リルルが身分証らしきプレートの様なものを見せて説明していた。

俺とミスティは当然そういった身分証の様な物は持っていなかったので、エクシル村からやって来たことを口頭で伝えた。

本来は身分が怪しい者や指名手配を受けていないかの確認等をする為に面談じみた事をするそうだが、

俺たちはリルルの身元保証で問題無く許可がおりた。


最後に町に入る際のお金についてだが、

これはこの町では基本、1日1人100エンド、

つまり銅貨1枚となっている。

ただしお金が無い場合にはそれ相当の物を渡せばOKだそうだ。

全ての町が同じではないが、大体相場的にはその位の金額らしい。


長期滞在するのであれば1銀貨、つまり1000エンドを払えば、6ヶ月間(180日間)出入りする事が出来る様になるそうだ。

また、何事も問題等を起こさずに町を出られれば、支払った金額の内、9割は返金してくれるらしい。

しかし、長期滞在で支払った場合のお金は例え短期滞在になったとしても返金はされない、当然物品での支払いも返品はされない。

その場合、同額の金額を払えば返品可能な物は返すとの事。


短期の場合は1日延長する度に許可証の期間を書き換える必要があり、まとめての支払いが無理な場合には、期日毎に払いに来る必要がある。

期日は滞在超過から3日間で、もし期日を過ぎても支払われなかったり、無視したりすると罰金が発生して、場合によっては処罰されるとの事なので注意が必要だと教えられた。


俺たちはとりあえず3日間分の滞在費用として3人分の計900エンド、

銅貨9枚を払った。

スーや馬車の馬といった動物は免除だそうだ。


そうして俺たちは各自許可証を貰い、

『ようこそエステルへ』という門番の声を受けて、町の中へと入っていった。


「うわぁ、すごぉい!」

ミスティが御者台の上で声をあげる。


門を抜けるとそこには村とは一味違う光景が広がっていた。

1本の大きく広がる通りの周りには露店が並んでおり、

それを見回る人々。

それらの脇に見える建物も村とは違い、一回り大きな建物が見えている。

そして何より違うのは、村よりも活気がある。


そもそも門や城壁からして村の規模とは大分違っていたのだから、俺としてはこの程度はあるだろうとも思ったが…


思わずと言った感じでレンも辺りをキョロキョロと見回している。

今も『ねぇねぇ、アレ何かな』としきりに俺に聞いてきている。


通りの道の先に広場が見え、その中央に噴水がある。

『そうだな、多分アレは噴水だな』


レンとミスティは今までほとんど村から出たことがないらしいし、こうなるのも仕方が無い。


ミスティもリルルに『今日はお祭りなんですかね?』とか『人が多いですね』と目を輝かせて見ていた。


「それでグレン殿、これからいかがなさいますか?」

御者台からリルルが俺に声をかけた。


『どうするの?』とレンにも聞かれ、

「そうだな、()ずは宿を探して、少し腰を落ちつかせてから、町を見て回るとかでいいんじゃないか。」

と答えた。


滞在期間中、つまりはさしあたってこの3日間に行う予定としては、

リルルは自らの装備の補充、ミスティとレンは町を見て回りたい、そして俺にも確認しておきたい事があった。

リルルの件というかミスティの件で急いではいるが、そもそもの目的や俺としては他にも別の用件もあったからだ。


「そうですね、分かりました。

でしたら前にわたくし達が泊まった宿でも宜しいでしょうか?」

リルルは前に一度エクシル村まで行く際に立ち寄っていたので、

この町の宿屋にも一度泊まったそうだ。


「ああ、任せるよ」

俺がそう告げると、


次いで、ミスティ様も宜しいでしょうかとリルルが確認し、ミスティもそれに頷いていた。


それから俺たちは馬車を進め、宿屋へと向かった。

宿屋に行く最中、宿はお決まりですかと男が近寄って来たが、既に決めていると聞き離れて行ったり、

お食事はいかがですかとお店の呼び込みが数人来たりもしていた。


「村と違って皆さん随分と熱心なんですね」

とそれを見たミスティが感心する様に言った。


「そうですね、わたくしたちが前に来た時は

ここまでの事はなかったのですが…」

リルルがう~んと小首を傾げながら答えている。


『馬車で御者台に可愛い女の子が二人で乗ってたら、そりゃまあ声を掛けたくはなるよな』

先程から声を掛けて来ていたのは全員すべからく男達で、

笑顔というよりニヤニヤしている男が多かったのは多分そういう事だろう。

確かに村とは違って、町はそういった商売事も盛んなんだろうが。


広場を抜け、暫く大通りを行くと、様々な看板が立ち並ぶ建物が見えた。

看板の文字は辛うじて俺にも読むことが出来たが、たまにそこに一緒に描かれている模様というか、記号のようなモノは分からないものもあった。


「あそこです!」


リルルが指差した先には、『小麦亭』と書かれた

いかにもこの世界の宿っぽい名前の看板が掲げられていた。

名前以外にも家から麦が飛び出た様なマークが書かれていた。


『うん、まさに定番の名前だな…

 きっと上位互換で黄金の小麦亭とかありそうだな』

などと俺は看板を見ながら思った。


宿と思しき店の前で馬車を止めると、

すぐさま店の近くにいた少年から声を掛けられた。


「お泊りですか?」


「はい、部屋は空いていますか?」


「大丈夫です、そちらの馬車は裏手に回しますか?」


「ではお願い致します。」

リルルはそう言って、数枚の鉄貨を少年に渡していた。


「有難うございます。

それでは荷物等は後ほどお部屋にお運び致します。()()()()()で宜しいでしょうか?」


「ええ、結構です。覚えていてくれたのですね。」

微笑みながらリルルは少年に手綱を渡した。


俺たちは馬車を預けてから、宿屋へと入った。

馬車を下りる際にリルルに

『馬車を預けても大丈夫なのか?』と聞いたが、

『大丈夫ですよ、以前来た時にも同じ方でしたし』

と言っていた。


宿は1階がカウンターと食堂で、奥にいくつかの部屋も見える。

主に2階が客室になっているそうだ。

1泊1人銅貨3枚、朝食有。

馬車の管理費込みで考えると安いらしい。

食事も基本食堂でお金を払えば食べられるので問題ないとの事。

とりあえず二人部屋と一人部屋で銅貨9枚、馬車の管理費は1枚の計銀貨1枚だった。

3人で1部屋だと少し安くなるらしいが流石にマズいよな…


それと俺たちは今、若干金に余裕がある。

エーゲ村を出る際に、物資を調達したリルルは盗賊の討伐料として食料を分けてもらい、また本来は盗賊たちが集めたお宝も討伐者の物となるらしいのだが、それは町の復興に使ってくれと辞退したので、

代わりにその内の金銭を一部だけ貰ったのだ。

それと盗賊が使っていた武器も村に置いて来た。

流石に盗賊たちが使っていた武器を使うのは躊躇われるとの理由からだったが、村の自衛としても使えるだろうとの判断からだ。


それから俺たちは各自部屋に荷物を運んでもらい、

今は一旦ミスティたちの部屋に集まっている。


「それじゃこれからどうしますか?」

すっかりリルルは進行役として定着したみたいだ。


「俺はとりあえず町を見て回る予定だが…」

俺はチラリとミスティの方を見た。


「それじゃわたしも一緒に行く!」

ミスティはハイと手を挙げて答えた。


「分かりました。では早速行かれますか?」

リルルは一休みしてからでなくてもいいですかと

確認しているのだろう。


「俺は構わないが、二人は準備とかしなくていいのか?」

女性は準備に時間がかかると俺の世界ではよく言われたが、

この世界の女性はそんなに関係ないのだろうか。


「わ、わたしも大丈夫だよ。

…レンはほっとくと色々と不安だし…」


「お気遣い有難うございます。

わたくしも大丈夫です。戻って来てから身支度を整えますので。」


「じゃあ、出かける前に一つだけ言っておきたいんだが…」

俺はリルルに顔を向けて言った。


「はい、なんでしょうか?」


「お前、年はいくつだ?」


「えっ⁉」

「はっ⁉」

『なっ⁉』


3人が間の抜けた声を出した。







次話から少し文章長めに投稿しようかと思いますので少し間隔空くかもしれません。

作者比1.5倍くらいに出来れば…出来れば…(。>д<)

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