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第41話 『出発、そして到着』

今更ですが、26話と27話の話が前後でつじつまが合わない部分があり、修正させて頂きました。

携帯投稿とPC投稿が被った結果…見直すのに時間が掛かってしまい申し訳ありません。

第41話


『出発、そして到着』



俺たち3人と1匹は早速出発の為の身支度を済ませて、

朝食を取ろうとした所に、

コンコンと家の扉をノックする音が聞こえた。


『どうぞ』とミスティが答えると、

ジャネットとメルトリアが入って来た。

『一緒にお食事させて頂けませんか』との事だ。

若干ミスティの気配オーラが揺らいだ気がするが、気のせいだろう。


俺は昨日の湖での一件は特に村人たちへと話す事無く、

村を出る事にしていた。


だがまぁ折角なので一応、湖についてだけは聞いてみた。


あの湖の名前はエルメス湖というらしい。

昔からこの村に伝わる言い伝えで、精霊が宿る湖とされていた。

だが、ある時その湖に村の女性が身投げした事を境に、

それからは度々女性が身投げする事があったのだという。

そして精霊はその女性たちを浄化し、

幸せに導かれるよう転生させているとも言われていたとの事。

それら湖に関しての詳しい事は、

代々村長の家にだけ詳しく伝えられてきているものだと言っていた。


『アレが精霊ね…十中八九魔族だろうな、

あの問い掛けも、予想ではあるが多分どちらを選んでも

結果は一緒になる様になっていただろうしな』


今はジャネットやメルトリアたちと朝食を取っている。

テーブルを囲んで俺、その隣にミスティとリルル、

向かい側にジャネットとメルトリアが座っている。


「本当に今日、村を出て行っちゃうの?」

メルは悲しそうに俺の目を見つめて言った。


「ああ、これ以上長居も出来ないからな。」

俺はハムをフォークで刺しながら答えた。


「でもでも、まだお礼も充分に出来てないし、もう少しゆっくりしていっても…」

メルが食い下がる。


「いや、礼なら…マーレンのヤツに言ってやってくれ。

 俺はヤツの頼みを聞いてやっただけだからな。」

『まぁ、実際の所は俺があいつらにムカついてやった事だしな…』


「マーレンが…」

ジャネットは少し俯いて呟いた。


「確かにマーレンのおかげでレン様が来てくれたんだから感謝はしています。

でも、やっぱりメル()()を救ってくれたのはレン様ですよぉ。」

メルは両手を胸の前で組んで、目を輝かせている。


「それで、グレン様はいつ頃村を発たれるのでしょうか…」

どうやらジャネットはグレン、メルはレンと呼び方を変えてるんだな。


俺は口の中のものを飲み込んでから、

「そうだな、準備が整い次第出発しようと思ってる。」


「そ、そうですか…」

いかにも残念ですと顔に書いてあった。


そう言えば…

「ここから次の町か村まではどの位あるんだ?」

俺はリルルへと顔を向けて聞いた。


リルルはパンを千切って口にしようとする手を止めて、

「そうですね…ここからだと何事も無ければですが、

馬車をとばして3日程で次の町へと着けると思います。」


「そう言えば、レン様は何をしに行かれるのですか?」

メルが思わずと言った感じで聞いて来た。


俺は特に迷うことなく、

「リルルを国まで護衛している最中なんでな、急ぐんだ。」


俺はあらかじめ誰かに旅の目的を聞かれた際に、

答える為の準備はしていた。

俺の人格やミスティの事なんて言っても面倒だしな。


「えっ⁉」

リルルが意表を突かれたのか、動揺して手にしていたパンを落とす。


『そう言えばレンには言っておいたが、

リルルとミスティにはまだ言ってなかったな…』


「だから早くリルルを国に送り届けないといけないんだよ。

なっ!ミスティ」

俺は慣れないウィンクをして、ミスティに合図した。


「えっ⁉…う、うんそうだよ!早く行かないとね!」

辛うじて分かってくれた様だ。


「そうなんですか……」

メルは下を向いてシュンとして、一旦目を閉じてから、


一息置いて、再びカッと瞼を見開いて、

「じゃあ、あたしも連れて行ってください!」

意を決したよ様に俺を見た。


「それはダメだな。」

迫力はあったが所詮村の娘だ、ミスティたちの様なスタンド使いでもないし、

まだまだだな。

即答で俺はそう返した。

別にメルだから連れて行きたくないとか、

面倒だからという訳では無く、

単純に連れて行く()()が無いからだ。


「な、なんでですか⁉…わたし…レン様に付いて行きたいんです。

恩を返す為にも、いいえ!それ以外にも‼

何でもやりますからどうかお側に置いて下さい!」

目を潤ませながら必死に訴えてくる。


「…すまない…」

俺は一瞬あまりのメルの詰め寄りと、『()()()』という言葉に、

連れて行くかどうか迷ってしまったが、

連れて行けない理由がたった今出来たのだ。


ミスティがメッチャ見てる…さっきからチラチラと俺を見てたけど、

今は横目で俺の事メッチャ心配そうに見てる!

しかも何かリスみたいにパンかじりながら…上目遣いで…

これはもう無いわぁ、ドストライクすぎますわぁ。

流石にコレで俺が連れて行くとか言ったら…無いわぁ。


「コラ!もうメルったら、グレン様に迷惑掛けるんじゃないの!」

見かねたジャネットがメルを制止してくれていた。


その後、食事も終わり皆でお茶を飲んだ後、

リルルはメルに手伝って貰い、物資の調達。

ミスティは馬車の準備と馬の世話。

俺もミスティかリルルの手伝いをしようと思ったのだが、

ジャネットと共に村の話し合いに参加して欲しいと言われた。


正直あとは村で勝手にやって欲しかったのだが…

まぁ出発する前に少し位なら時間もあるし、仕方が無い。

ただし、俺はあくまでいるだけだぞと伝えておいた。


各自準備を整え、村での話し合いも無事終わった。

既に昼近くになっていたが、俺たちは村の入口へと向かっている。

馬車を引き連れて門へと到着した。


話し合いは結局、盗賊の町への引き渡しや、次の村の村長の選定。

次の村長は暫定的にジャネットがなる事に決まった。

元々村でも理知的で面倒見が良いジャネットは人望があったらしい。

俺も、そこに集まった村の者たちなどと比べても適任だと思った。


「それじゃ、世話になったな。」

俺は門に集まった村人を代表してそこに立つジャネットに、一言別れを告げた。


「いいえ、こちらこそお世話になりまして、感謝の言葉もございません。」

丁寧に深々と頭を下げながらジャネットが言った。


「今度村に来た時には絶対お礼をさせてもらいますから、

わたしの家に泊まって下さいね!」

とメルが声を張り上げながら言った。


ミスティがそれを耳にしてムッとしている。


リルルは御者台へと上り、ミスティもその横へと座った。

俺も荷台へと上ろうとした所でジャネットに引き留められた。


「必ずまたこの村にお越し下さい!」

俺の服の袖を掴みながら、


「ああ…」と振り向いた俺に、ジャネットは()()をした。


後ろから、「ずるーい!」とか「あー!」とか「ひゅーひゅー‼」とか

声が聞こえたが、俺は驚きのあまりフリーズしてしまっていた。


ゆっくりと俺の唇からジャネットの口が離れる。

その柔らかな感触が終わり、ジャネットへと目を向けると、


少し恍惚とした表情で、

「絶対にまた…お待ちしております。」

と言ってから小走りに村人たちの方へと戻って行った。


こうして俺たちは村を後にした。


確かに村を出る前、話し合いが終わり、俺とジャネットが二人になった時に、

ジャネットから『グレン様は今好きな人はいらっしゃいますか?』とか、

『お連れの方は恋人ですか?』とか色々と聞かれていたが…


村を出た後、馬車の空気はそれはもう微妙だった。

ミスティが俺を見る目が冷たかった…

隣にいたリルルも何故かムスッとしている様に手綱を握っていた。

スーは『あちしというモノがありながら』とか

『ご主人あちしにもチュー』とキュイキュイ喚いていた。


とりあえず居た堪れなくなった俺は、何か話題をと、

「リルル、次の町の名前は何て言うんだ?」


それに対してリルルは手綱を一回ピシャン!と意味ありげに叩いてから、

「エステルですが。」

と冷たく一言だけ答えた…


何か怖い、これ以上は何か耐えられないと感じた俺は、

『レン、任せた』


『ええぇえええ!』

とお決まりの展開を繰り返した。


『エステル』

街道沿いにある町でそれほど際立って大きな町では無いが、

リルル曰く、

冒険者ギルドなどもあり、村に比べればそれなりに多くの店も

出ているし、それなりにしっかりとした宿などもあるとの事。


村から出た俺たちはその後順調に馬車を進め、

予定通り、これまでにない程すんなりと、次の町、

『エステル』へと到着したのだった。


意外とすんなり次の町に到着しました。

たまには何事も無く進むのもアリかと…

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