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第40話 『トリはやっぱり鳥だった』

ようやく40話&15万字を突破しましたが、

脱字誤字修正で思っていたよりあんまし進んでいません…

ホント自分以外の作者の皆さま方は凄いと思います(´;ω;`)

第40話


『トリはやっぱり鳥だった』



「それじゃ頼むぞスー。」


『任せるだわさぁ!!』

スーは勢い良く眼下の湖へと滑空して行く。


丁度湖の中に薄っらと見える黒い靄の辺りの上空に到達すると、

一斉に水柱が上がり、スーを狙ってくる。


『甘いだわさぁ!』

それを華麗にスーがかわしていく。


俺はスーが注意を反らしてくれている間に上空から湖の脇へと着地する。


『重力制御魔法起動』


俺は両手を目の前でパンと勢い良く合わせた。

「大地に湧きしその源、万全足るその力もて、十戒破りしモノのその姿、

軌跡を持って我が前に現したまえ!」


「ブラスト・リバウンド!!」


俺の両手の掌の中にバチバチと魔法が生じたのを感じ、

俺は徐々に合わせた掌を離していく。


すると…

ゴゴゴゴゴゴォオオオ!!

と凄い音ともに湖の水が少しずつ開いていく。


その間もスーは攻撃をかわし続けていたが、

魔物がその異変に気付いたのか攻撃が止む。


そこでスーはピカッと体から眩い光を放った。

光が晴れるとそこには巨大化したスーの姿があり、

すかさず黒い靄の周辺へと炎を放った。


炎は湖に着水しても消えることなく燃え続けている。

正確には燃えては消えてまた燃えてといった様でスーが炎を放ち続けているのだ。

水は蒸発してはまた押し寄せてを繰り返している。

辺りは少し霧がかかっている。


俺は再度掌に力を込めた。


ググググッと少しずつ掌の間を開いていくと

目の前の湖も俺の掌の隙間に合わせて離れていく。


二つに割れた先に黒い靄が見えた。


「今だスー!!」


俺は一気に掌を開いた!!


それと同時に湖はパカッと両脇に開き、すかさずその上からスーが、

『任せるだわさ!!』


と勢い良く炎を浴びせかけた!


すると、


ドッカーン!!

と言う凄まじい音と共に湖の中央が大きく爆発した。


そして俺は魔法を解除した。


上空に上がる水飛沫と共に、湖は一気に元へと戻り始めていった。


霧が立ち込める中、少しずつ晴れてきたその先で

『キュイー!!(やっただわさぁ)』と言う声が響き渡った。


『成功だな』

俺は飛行して湖の中央へと向かった。


『ご主人見てくれただわさ!!』

『あちしの活躍サイコーっしょ!!』

『これでご主人もあちしのトリコ(・・・)だわさ』

と喚いていた。


まだ大きいままで喚いているのでちょっと(うるさ)い。

いや、大分…


下を見ると水の中から黒い靄の消えた巨体の背中がプカプカと浮いていた。


「おい、スー!そいつを岸まで運んでくれ!」


『えっ!?ご主人ご褒美は!?』


「後でちゃんとやる(・・)から、今はまずコイツを運べ!!」


『きゅー…ご主人トリ使いが荒いだわさ…

でもそんなご主人もあちしがいないとダメなんだからあ』

なんか大きい時はやけに流暢に聞こえるのが逆に腹立たしい。


スーが両足でソレを掴まえて岸まで運ぶ。

ドチャッと落とされたソレは身体のいたる所が黒ずんでいた。

靄では無く、明らかに火傷の(たぐい)だ。


落とした瞬間、『がっ!』と声を出したのでまだ生きてはいるみたいだ。


スーはソレを岸まで運び終わると元のサイズ?へと戻っていった。


この魔物…下半身は蛇の様な形をしている。

だが既に尻尾の先やその大半はボロボロで焼けただれていた。

上半身も髪は焼け焦げ、鱗の多くも剥がれて地肌というか肉が所々見えている。


『水蒸気爆発』

空気中の高温の水滴に更にスーの高温の炎を浴びせかけた結果…

爆発を引き起こした結果だ。

因みにスーは炎に対する耐性が凄まじくあるらしく、

『炎で焼かれるコトはないだわさ』との事。



「おい、まだ死んでないなら聞きたい事があるから起きろ!」

俺は軽く腰の辺りを蹴りながら尋ねた。


本当にコンコンと言った感じだが端から見たら死者に鞭打つ姿に見えるだろう。


『ーーーー』


「おい、お前、ドラムってヤツを知ってるか?」


『…………』

反応が無い。


「じゃあ…ベスパ(・・・)なら知っているか?」


その単語を聞いた瞬間、

ソレはビクン!と身体を動かした。


『…な…なぜ…しって…』

弱々しい声でソレは呻いた。


「そうか、分かった。」


俺はソイツをそのままにして踵を返した。


「おい、スー行くぞ」


『えっ!?ご主人このままでいいの?』

スーは俺の肩へと舞い戻り、首を傾げた。


「ああ…」

俺はそう口にしてその場を立ち去ろうとしたが…


俺の後ろで、

『な…何故ベスパをしっているぅうう!!』

と言う声と共に襲いかかろうとしてきたソレの攻撃をかわした。


ドゴオォオンと土を削る音が辺りに響き、土煙が上がった。


俺が振り替えるとソコには片腕をグチャグチャに潰した蛇女がいた。


「まだやるのか?」

俺はもはやコイツは終わっていると感じていた。


カッコつけているのかも知れないが、聞きたいことは一応聞けたし、

これ以上やっても無駄だと思ったからだ。


蛇女は既に満身創痍で、黒い靄もほとんど残っておらず、

今の攻撃も捨て身の一撃だったのだろう。

既に身体の部分部分が炭化して崩れていた。


『な…なぜきざまが……』

もはや放っておいても自滅しそうだったが、手負いの虎…いや蛇と言うところか。


「俺の村を襲ってきたから殺した。」


『…………』


理解が出来なかったのか、あまりの驚きに反応出来なかったのか

蛇女の動きが止まった。


次の瞬間、

目をギンと光らせて、

『おまえがぁああああああ!!!!』

と正に執念の一撃というべき雄叫びと共に残った腕を降り下ろしてきた。


俺はそれを見届ける事なく刀を抜き払っていた。

『炎絶斬』


刀を鞘へと納めた。


蛇女は燃え上がり跡形も無く消え去った。



戦いが終わった後、既に月は沈みかけていた。

村へと戻った頃には周辺は真っ暗な闇に覆われており、

門の場所には1本の松明の明かりだけが灯っていたが薄っすらとその周辺を照らしている。


門へと近付くと高台の上から、

「何者だ!」

という声が聞こえたので、


「レンだ‼」

と俺が返すと、


高台で弓を構えていた男が、

「ちょ、ちょっと待って下さい!!」

と若干慌てた様子で返事が聞こえた。


元村長の家へと戻ってきた俺はそのまま部屋へ戻ろうとしたが…


『おい、レン起きてるか?』


『うん、大変だったね…』


『ああ、流石に俺も疲れたから宜しくな』


『えっ!?宜しくって?』


後は部屋に戻って寝るだけだったのだが…


そうもいかなかった。

家の外から見ても既に光が漏れていたので俺は分かってはいたのだが、

案の定、家の中に入るとミスティとリルルがおかんむり状態だった。


「レン!!どこ行ってたの?」


「グレン殿どこに行ってらっしゃったのですか!」


『レン後は任せた』

俺は意識的に意識を閉ざしたのだった。


翌日、レンから聞いた話ではあの後は色々と大変だったらしい。


ミスティは、

どうやらメルトリアの所に俺が行っていたのではないかと勘違いしていた事。

リルルは、

また何かトラブルがあったのではないかと心配してくれていた事。


どちらもレンのキャパでは対応しきれず、正座で延々と言い訳をさせられたとの事だった…


ミスティの方は完全に勘違いだが、

リルルの方にも湖に化け物が出てきて退治したんだと言ってはみたが、

何で分かったんですか?とかどうしてこんな真夜中に!?とか色々聞かれたので、

答えるのに大変だったみたいだ。

頼り?のスーも疲れたのか村に帰る途中で、

俺の頭の上で既に寝てしまっていたので役に立たなかったのだ。


結局、ミスティにはジト目で見られ、リルルにもお説教をくらったと

それはもう意識を戻した時には凄まじい剣幕で、レンは愚痴ってきた。

因みに俺は意識を意識的に閉ざした後に寝てしまっていた…

寝込みを襲われなくて良かったな。


愚痴ってきたレンはまたもあまり寝られなかったという理由から、

愚痴り終えた後には眠りについてしまっていた。


さてと、それじゃ朝食でも…と思い、

起き上がった俺を歓迎したのは…鳥だった。


スーはベッドの脇に置かれた籠から勢い良く飛び出し、俺の周りを飛び回った。


『ご主人と約束♪』

『ご主人にお願い♪』と…


『ちっ、覚えてたか』


昨日蛇女と戦った時、スーが、

『ご主人のお役に立てたらあちしのお願い聞いて欲しいだわさ』

とモジモジしながら言ってきたので、

『俺の言う通り出来たら聞いてやるよ』

と約束していたのだ。


『仕方が無い…』


「スー、何をして欲しいんだ?」

俺は飛び回るスーをガシッとキャッチして()()聞いてみた。


『あちし…』

なんかモジモジし始めた。


『面倒くさい予感しかしないな』


「言いから言ってみろ!」


『あちし…あちし!ご主人と子供が作りたいだわさ!!』


「はっ!?」

俺の思考はフリーズした。


スーはなんか『言っちゃっただわさ』みたいな感じでキュイキュイ言ってる。


俺は改めてその手に掴んだスーの目を見つめてこう言った。

「うん、却下だ!!」

と…


『ガビーン!』

『ご主人酷いだわさ!約束だわさ!!』

としつこく言ってきたが俺は一言、


「聞いてやっただろ」と告げた。


『ご主人のいけずぅうううう!!!!』



その後、暫くスーは部屋の端っこでのの字を書いていたので、

仕方が無いから俺の魔力を注いでやった。


『あちしはこんなコトくらいで機嫌を直す軽いおんなじゃないだわさ!』

と言っていたが、

『まぁ、そう怒るなって』

と更に魔力をくれてやったら、

『そ、そんな甘い魔力であちしの機嫌が…』

と数分後、


『もうご主人たら仕方が無いだわさ!』

『あちしがいないと何にも出来ないんだからもぅ』

とツヤツヤピカーとした感じでエッヘンみたいな恰好で言っていた。


俺は少しイラッとしたが、

『ちょろいな』

と心の中で呆れつつ思った。


そして部屋から出て居間へと行くと、

既にミスティとリルルも起きていて、


「おはようございますレン殿、グレン殿。」

とリルルに声を掛けられ、


「ああ、おはようリルル。」

と俺も返し、ミスティの方を見ると、

ミスティは知らないもんプーンと言った感じで顔を逸らした。


まだ怒ってるのか…

昨日レンが言っていたが、

ミスティも一応は信じてくれていたが、

終始『レンたらもう!』『昔から流されやすいんだから』

とか愚痴?っていたそうだ。


俺は仕方が無いなと思い、


「ミスティおはよう。」

と努めて自然に声を掛けた。


ミスティは顔を逸らしながらも小さく、

「…おはよう。」

と答えた。


それから、

「これからどうしますか?」

とリルルに聞かれたので、


「今日村を、いや、これから村を出ようと思うんだが…」

と俺は告げた。



















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