第3話 『もう一人の自分』
すみません、今回短いです。
説明長く一気に書くとアレなんで分けました。
第3話
『もう一人の自分』
俺は闇の中にいた…
不思議と不安は無く、とても落ち着いていた…
『やっぱ俺、死んだのかなぁ』
『それともこれも夢なのかなぁ』
などとぼんやり考えながら座っていた。
ふと、唐突に俺の人生の記憶が甦ってきた。
【比屋定 時也】
俺は比較的平凡な家庭に生まれた。
両親は幼い頃から一緒にいたらしく
共に親がいなかった点以外は
裕福ではなかったがそれなりに幸せだったと
以前母親から聞いた記憶がある。
そう、あの事件が起こるまでは…
3歳の頃、俺は誘拐された。
当時の事はほとんど覚えていないが、
鮮明に覚えているのは俺をかばって
父親が車に轢かれてしまった所と
俺を抱きしめながら泣いていた母親の姿…
当時両親は共働きで、託児所にいた俺は
抜け出して近くの公園で遊んでいた所を
誘拐された。
後で分かった事だが親父とお袋が働いていた
研究所で昔働いていた人が犯人だったらしい。
連れ去られた俺は暗い所に閉じ込められて
いたらしく真っ暗だった記憶しかない。
聞いた話だと親父が助けてくれたが、
犯人に轢かれた後、
その犯人も死んでしまったらしい。
事件は結局被疑者死亡で幕を閉じた。
因果関係など詳しい事は聞いていない…
以来、研究所を辞めたお袋は必死に働いて
俺を育ててくれた。
俺が18歳の時、大学に落ちて働こうとした時、
『あなたがそう自分で決めたんなら構わないけど、
妥協して決めたんならお母さん許さないからね。』
『あんたはあの子の分も頑張って
生きなきゃいけないんだから、
精一杯悔いの無い様に生きなさい。』
そう俺には一人弟がいた。
比屋定 ○○
親父が死んだ翌年に生まれるはずだった、
俺の弟…
当時お袋は泣き崩れて、
大変だったのを覚えている。
その頃の俺はまだ幼く、泣いている母親を
ただ見ている事しか出来なかった…
親父が死んだショックから自らに宿る新しい命を
知って喜んだはずのお袋が、俺の為に働き倒れた…
お袋は働き過ぎで流産してしまったのだ。
身重な体なのにパートやら何やら仕事のしすぎだった。
その後もしばらく入院していたが、
俺が預けられていた施設に迎えに来てくれた時は
嬉しかった。
今思えば俺がいなかったら
親父も弟も死ぬ事は無かったんじゃないか…
ふとそんな考えがよぎる事がある。
若い頃はお袋に喜んでもらおうと頑張ったり、
早く結婚して安心させてやらきゃ
とか思っていた記憶がある。
腕を組みながら目を瞑り、
ハァーとため息を吐いていると、
突然、目の前に光の玉が現れた。
その玉は暫く俺の周りを回ったあと、
点滅しだして急にまた消えた。
『何だったんだ』
と思ったが、あまり気にしてもしょうがないかと
何故かそんなに気にならなかった。
『どうしようかな』
と全く慌てることも無く思ったら、
再び目の前に光の玉が現れた。
俺は驚かず、それを見つめると、
今度はその玉から声が聞こえた。
聞こえたというよりまた頭の中に響いてきた。
『汝、何を願う』
意味がよくわからなかったが、
俺は頭に浮かんだ事を口にした。
「何にも縛られずにやり直せたら…」
その瞬間、光の玉が激しく明滅し、
その光に俺は飲み込まれた。
バン!
部屋の扉を勢いよく開けて女の子が入って来た。
「レン!」
茶色い髪の女の子の名前はミスティ。
髪型はショートカットで
見た目少しボーイッシュな感じもするが
中身はしっかりと女の子してる。
小さい頃から一緒にいてくれて
よく俺の世話を焼いてくれている。
体型はスレンダーでありながら胸は
思ったよりあって…
小さい頃はよくお風呂に入ったりとか…
してたのか!?
………
なぜその辺の記憶が曖昧なんだ!
思い出せ俺!!
諦めるな俺の海馬!
諦めたらそこで試合終了ですよと
俺の心の中の安○先生も仰っているぞ!!!
それにしても俺の幼馴染か。
そう幼馴染…
この子が…
『よっしゃーキタコレ』
俺は心の中でガッツポーズをしながら
その女の子の顔を見た。
『カワエエやないかぃ』
思わずうつ伏せになりながら
本当にガッツポーズが出てしまった。
ちょっと顔が痛かったが、
身体の方は大丈夫みたいだ。
ちょっと小首をかしげながら、
少し心配した表情で俺を見てきた。
「レン、大変なの!今、南の広場の方で
魔物たちが現れて!!みんな神殿の方に
逃げているから、レンもすぐ行きましょう」
わずかに息を切らせながらミスティは言うと
俺の方に近付いて来て顔を覗き込む。
「動ける?」
俺は身体を起こして身体の各所を確かめるように
肩を回したり腰を捻ったりしてみる。
若干腰を捻った時、違和感を感じたが
動きに支障はないみたいだ。
むしろ体の奥底から力が溢れてきている様な…
「ああ、大丈夫そうだ」
俺はミスティの目を見ながら答えた。
するとミスティはなぜだが頬を赤らめた。
「なんかレン、いつもと雰囲気が…」
『アレッ、俺なんか間違えたか?』
と思いつつも、
「俺の靴はどこだ?」
服はそのままでいいとしても
靴がないとマズイだろうと思って聞いたのだが、
「えっ!?、俺?」
ミスティは驚いた表情で聞き返してきた。
ベットの脇に靴を見つけたので、
俺はそれをスルーして靴を履いてから、
「とにかく急ぐぞ」
ミスティの手を取って走り出した。