第37話 『宴』
おまけはおまけです。
第37話
『宴』
辺りは暗くなり、村の各所には照明代わりの松明が掲げられていた。
村へと入った俺たちは村人たちに大いに歓迎された。
現在、盗賊たちはかつての村人同様捕らえられ、監視されている。
今は村の広場で歓迎の宴が催されている最中だ。
村長は死に、マーレンも死んだ。
捕らえられた村人たちも何人かは衰弱していた。
それでも皆は感謝し、解放された喜びを伝えていた。
「我らの英雄様に感謝の意を!我らの救世主様に祝福あれ‼乾杯!」
と村の代表者らしき男が音頭を取っていた。
あまり興味は無かったが、あいつが次の村長なのかと村人に聞いたら、
あいつは宴会部長ですと言っていた。
『宴会部長って…』今更だけどこの世界の言語ってどうなってるんだよ。
と思ってレンに聞いてみたが、『宴会部長』という言葉はないらしい。
実際には『盛り上げ役』と言っていたとレンは言っている。
どうゆう事だと俺は考え、レンにネットスラング用語とかチョベリバとか
言ってみたが通じなかった…
きょうびギャル語(死語)なんて俺の世界でも使わないが、念の為だ。
断じて俺がおっさんだからでは無い…
結局どうゆう原理かは分からないが、
俺にはどうやら相手の言葉の一部が変換されて解釈されているようだ。
村人にいくつか質問してみて分かった事は言葉に対して一部口の動きと
合っていない個所があった。
だがそれはそれで俺には好都合かと考えて一旦棚上げした。
分からない事をいつまでも考えていても仕方ないしな…
宴は夜遅くまで続いた。
酒が飲めないレンは村人たちに勧められるていたがしきりに断っていた。
俺も酒はあまり好きじゃなかったので助かる。
この世界では成人、つまり15歳を越えていれば酒はOKだ。
レンもドランクの酒を前に少しこっそりと飲んだことがあるが、
おいしさが分からなかったらしい。
ミスティもお酒はあまり得意ではなく、
女の人に勧められて仕方なしにチビチビと飲んでいたが、
直ぐに顔を真っ赤にして果実酒を口に含んでいた。
やっぱり可愛いよなぁ…
こんな子飲み会にいたら、即お持ち帰り…
ヤバい!俺最近ミスティに惚れてきてる‼
一番豪快だったのはリルルだ。
乾杯の後、一気に酒を飲みほしてから今の今まで途切れることなく
酒を飲んでいる。
既にリルルの周りには酒好きの男たちと飲み比べが始まっており、
数人の男たちが潰れている。
リルルはというと顔にもほとんど出る事なく今も酒を飲み続けている。
ほんのりと頬は染まっているが、まだまだいけそうだ…
リルルは酔い潰そうとして逆にのされるパターンだな。
レンは村人たちから感謝の言葉や褒められて恥ずかしそうにしている。
実際自分がやったとは思っていないので、
場違い的ないずらさを感じている様だ。
「楽しんでますかぁ?」
「おとなり失礼致します。」
と二人の女たちが俺の横へと座って来た。
あの時小屋にいた二人だ。
最初に話し掛けてきた女が『メルトリア』と言い、
少しのほほんとした雰囲気の女性だ。
小屋の隅で震えていた時と比べると大違いだ。
落ち着いた雰囲気の女性の名前は『ジャネット』、
凛とした佇まいを持ち、村娘の恰好だがどこか
気品を感じさせるような雰囲気だ。
「ねぇお名前を聞いてもいいかしら?」
メルトリアはレンの腕に胸を擦り付けながら聞いてくる。
かなりの柔らかさだ。
「はしたないわよメル!」
ジャネットが隣で注意する。
「えーいいじゃん!メルの救世主様だよ!」
随分子供っぽい口調だが頬を膨らませてちょっと可愛い。
まぁミスティほどでは無いがな!
二人とも20歳前後と見た。
メルトリアは子供っぽい口調とその雰囲気で
少し幼いようにも見えるがぽっちゃり系の胸が豊かな女性。
ジャネットはその落ち着き具合から系統はリルルに近い気がする。
「ねぇねぇ、救世主様ぁ、メルの事嫌い?」
相変わらず胸を押し付けながらレンの耳元に顔を近づけて言った。
思わず顔を赤くするレンを見て、
それまで近くでそれを見守っていたミスティが、
ムーと言って頬を膨らませていた。
かなりのご立腹のご様子…
それに気付かず、
『いやぁ、僕はその…困っちゃうなぁ。でへへ』とか言ってたレンに
『おい、レン、ミスティの方を見ろ』と俺が告げると…
『えっ⁉』とミスティを見る。
ミスティと目があったが、プイッとされてしまった。
レンは『ど、どうしてミスティ怒ってるの⁉』と相変わらずの天然だ。
コイツほんとに女に耐性ないよなぁ…
しかも『でへへ』ってホントに言ってるやつ初めて見たわ。
仕方が無いから俺が交代してやった。
「俺の名前はグレンだ。レンと呼んでもらっても構わない。」
とメルトリアに言った。
「レン様!じゃあメルの事もメルって呼んでね。」
パチンとウィンクを入れて胸を押し付けながら言う。
「グレンさま…」
ジャネットは呟く様に言いながら俺の顔を見ていたので、
「どうした?大丈夫か」
と俺が顔を向けて聞くと、
「い、いえ、その…雰囲気が先ほどとどこか変わった様なので
ビックリしてしまって…」
頬を染めながらそう答えた。
『だよねぇ、絶対急に変わったらビックリするよね』
レンは頭の中でうんうんと納得している。
まぁそれはそうなんだろうけどな…
「マーレンの事はすまなかったな。」
俺は話題を変えようとマーレンの事を聞いた。
マーレンはメルの男でもジャネットの男でも無かった…
メルは幼馴染で昔からマーレンに付き纏われて迷惑していたらしい。
それをよく親友のジャネットに相談していたら、
ジャネットがマーレンに注意をしていたのだが、
何故かマーレン曰く『そんなに嫉妬するなよ』
『俺はジャネットの事も愛してるよ』とかふざけた勘違いをされていたらしい。
哀れ也マーレン…
マーレンの事は正直どうでもいいとは思わないが自業自得だ。
だが、何故か俺の中で引っかかっていた。
俺が助けてやるとは言ったが裏切らなければの前提もあったので
それほど気にしないはずではあったのだが、時間をおいて考えれば、
助けられるかもしれなかった。
あのマーレンが剣をドラムに突き刺す瞬間、俺は一旦動きを止めた…
あそこでもっと違った事をしていれば結果は変わったのではないかと。
俺はこの世界では後悔しない為にもやれる事はやろうと思っていた。
昔の俺ならそんな事は思わなかっただろう。
俺には今はそれが出来る力がある。
しかし、もしもそんな力が無い状態ならば違う。
そしてマーレンと逆の立場なら、
俺もマーレンと同じ結果になっていたのではないかと…
思考の迷路にはまりかけた俺に、
メルやジャネットが話しかけてくる。
適当に返しつつ、宴も終盤に差し掛かり、
「ねぇ、レン様!今夜あたしの家で寝ませんか?」
とメルが上目遣いに言ってきた。
こ、この女…誘って来てやがる!
た、確かに昔の俺ならイチコロ間違いなしのセリフだが…
落ち着け俺!勘違いという事も、いやだがここは…
「こ、こら、メル!あちらのグレン様のお連れ様が見ているわよ‼」
俺はそれを聞き、ソーっとミスティの方を見る。
そこには般若のスタ○ド使いと化したミスティ様がいた。
いやおられた…
「イエ、ボクハソロソロオイトマサセテイタダキマス」
とロボットの様な発音でギギギと俺は顔を逸らした。
だって怖いんだもん!今にもペル○ナとか言って、
攻撃してきそうな感じだし‼
そして宴も終わり、俺たちは元村長の家で寝る事になった。
村長の妻、ドレンの母親は既に無くなっており、
今は住む者がいない状態だそうだ。
因みに地下室も今は使われていないが、後日盗賊たちを収容し、
ここで監視するために使うと言っていた。
部屋は居間とその他に3つある。
リルルとミスティは寝室。
俺とスーは別の部屋で寝る事になった。
スーもミスティたちの所で寝ろと言ったのだが、
『あちしはご主人と一緒!』
『寝る時だけでも一緒がいいだわさぁあ』と譲らなかった。
まぁ若干ウザかったが今日は少しは役に立ったし、
許してやるか。
俺たちは家に着いてから直ぐに寝る準備をした。
リルルは流石に盗賊の見張りと酒を飲んで疲れたのか、
『ミスティしゃまは必ずわたしぃがお守りしゅるのでごあんしんくだしゃい!』
と意気込んではいたが…まぁあれだけ飲めばな…
宴が終わった時リルルの周りには男たちが大勢酔い潰れていた。
ただ一人何事も無く、飲み続けていたリルルだが流石に酔いが回った様だ。
ミスティは終始ジト目で俺を見ていたので俺は大層居心地が悪かった。
結局スーの『ご主人はあちしが守るから大丈夫だわさ』という一言で、
ミスティは『べ、別にレンの事なんて心配してないし!』と頬を染めて、
モジモジし始めたので俺は心の中でスーグッジョブと親指を立てた。
ミスティとリルルは部屋へと入り、俺もスーと部屋で寝ていた。
『ご主人、ご主人!大変だわさ‼』
おまけ
『スーのおしおき』
俺が村へと向かい、潜入した頃…
盗賊1「もう我慢できねぇ!用を足させてくれ‼」
盗賊その他「そうだ、そうだ!俺たちも限界だぁ!」
ミスティ「ねぇ、リルルさんどうしよう?」
リルル「わたしに任せて下さい!」
盗賊1「早く縄を解いてくれ!漏れちまう‼」
リルル「黙りなさい!させてあげますから大人しくしなさい」
そう言ってリルルは弓を取り出した。
リルル「さぁ、他に用を足したいものはいますか」
リルルは弓を構えて矢を番えながら言った。
盗賊たちはブルブルと首を振っている。
盗賊1「本当に漏れちまうんだ!逃げねぇからさせてくれよぉ‼」
リルル「仕方が無いですね、そこの隣のあなた一緒に来なさい。」
そう言ってリルルは二人の男を引き連れ湖へと向かった。
盗賊3「おい!これってチャンスじゃねぇのか」
盗賊4「あぁ、間違いねぇ!逃げるなら今だ!」
盗賊5「でも逃げてあのガキに捕まったら今度こそ…」
盗賊6「じゃぁお前はこのまま捕まってていいのか」
盗賊7「一斉に逃げればだれかは逃げられるんじゃねえか」
盗賊8「俺、漏れそう…」
小声で盗賊たちが話している。
ミスティは馬の世話をしている。
それを見ていた盗賊たちは一斉に逃げようと立ち上がった。
盗賊は二人一組で縛られており、逃げるにしても2人3脚状態だ。
それを見ていた鳥が一匹、
スー『逃がさないだわさ!』
光を放ち、巨大化したスーはその羽を大きく羽ばたかせた。
羽は一本ずつ男たちへと刺さっていった。
盗賊の頭にプスッ、プスッと羽は刺さり、
最後の一人は背を向けた状態でケツの部分にプスッと一発。
ミスティ「スーちゃん⁉」
驚いてミスティが盗賊たちを見ると…
盗賊たちはすくっと立ち上がり、
盗賊3『スーさま万歳!』
盗賊4『スーさま最高!』
盗賊5『スーさま最強!』
盗賊6『スーさま一番!』
盗賊7『スーさま綺麗!』
盗賊8「あっ!便意が消えた‼」
と口々に『ジークスー!ジークスー!』と声を上げている。
スー『またつまらぬものを従えてしまった』
と五○衛門風に呟いていたとかいないとか…




