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第32話 『ムカついた礼』

第32話


『ムカついた礼』



「さてと、舐めた事してくれた礼をしなくちゃな。」

俺はかなりというか相当ムカついていた。


「レン!大丈夫⁉」

「レン殿!」


ミスティが俺の心配をしてくれている。

リルルはどうしますか?と目で尋ねている。


二人が俺を見ていた。


俺は刀を鞘に納めてから、

「大丈夫だ、任せておいてくれ。」


『俺魔法発動』


『重力制御式魔法起動』


「ブラスト・コレクト!!」

俺は高々と声を上げた。


俺の左手に即座に重力球が生じる。


そこへすかさず再度4本の矢が飛来した。

狙いは先ほどと同じく俺たちだ。


唯一の違いは俺が既にそこにいる事だ。

俺は右手を迫りくる4つの矢の方向へとそれぞれ向けて

新たに生じた小さな黒い球を連続でそれぞれに撃ち放った。


狙いは違わず矢へと当たり飲み込んだが止まらない。

更にその先、矢が放たれた先へと進む。


直線状に飛んで行ったソレは何かに当たって止まった。

俺が『よし!』と心中で呟き、左手に生じていた球に魔力を込める。


すると四方に飛んで行った黒い玉と共に4人の男が飛んできた。


近くまで飛んできた時、俺はミスティたちから一歩前に出て、

左手の球を地面へと叩きつけた。


再度一歩下がり、

その地面へと4人の男たちは殺到し、

『ひやぁああ!』『た、助けてくれぇ‼』

などという声を発しながらぶつかり合った。


ドカ!バキッ!!グシャ!

と音が響いてから、

その地面に残ったのは4人が重なるようにしている姿だった。


『ブラスト・コレクト』

重力球を発生させ、狙った対象物に向けて放ち、

その対象物をその重力球へと引き寄せる。

イメージ的には『集める』というイメージだ。

今回は一方の重力球で対象物を引き寄せ、

更に引き寄せた対象物をもう一方の重力球へと引き寄せる複合の形だ。

狙った対象物以外のモノは基本削り取る。

ただし生物は除いて。


俺は正直この戦いで魔法を使う気は無かった。

俺が今まで使った魔法の多くは相手を殺してしまう可能性が

非常に高いと感じていたからだ。

防御魔法や時空魔法はともかく、俺の魔法は強力すぎるのだ。


魔物相手なら遠慮しないが、人間相手にはちょっと気が引けていた。

だが俺はムカついていた。

俺だけならともかく、ミスティまで狙った時点で使う事を決めていた。


ただ、即滅殺してもいいレベルではあったが一応助けてやった。

今回の俺の魔法は非常に制限を設けた形だ。

果たしてこれがうまくいくかどうかは賭けでもあった。

無論リルルやミスティは守るのが前提だ。

守れないのは相手の命という点だったのだが…

まぁ、結果的にうまくいったな。


4人の男たちは呻き声を上げながら倒れている。


俺はその傍へと近づくと、


「ひゃああああ!」


と比較的軽傷だったのか、一人の男が俺を見て悲鳴を上げた。

俺はその悲鳴を上げた男の胸倉を掴み、


「選べ、お前らの選択は二つだけだ。

俺に黙って従うか、両腕、両足失って湖に沈むかだ。」


「ひぃいいい‼し、従います!従わせて下さいぃ‼」

男は懇願しながら涙を流して許しを請う。


『完全に悪役だな俺』と内心で思いながらも、

その場は一旦それで納まった。


リルルは馬車から縄を持ってきてその男たちを縛った。

ミスティは一応腕を失った男たちに回復魔法を掛けてあげている。

レンも今しがた起きたらしく色々聞かれたが

適当に要点だけを伝えておいた。


マーレンは途中からずっと気にしていなかったが、

どうやら腰を抜かして動けなくなっていたらしい。

股間を濡らしたままだったので今は湖で一人洗濯をしている。


俺はというと今まであまり役に立たなかった鳥に

少しお説教でもしてやろうかと思ったのだが、

「キュイキュイキュー!!…キュキュキュ…」

と言い訳?をしていた。


スー曰く、

襲われてからずっとミスティの胸の中に抱かれながら、

『あちしに魔力を注いでくれれば一発だわさ』

としきりに言っていたのだが、ミスティがソレに応じなかったとの事。

実際、あんな攻撃なら魔力量が少なくても

防ぐのは楽勝だったそうだ。


何故ミスティがソレをしなかったのかは聞かなくても分かるが…

要はスーだと殺してしまうと思ったんだろうな。


そしてあいつらにも話を聞く事にした。


縛られた男たちは俺を見るや、

口々に『殺さないでくれ!』『助けてくれ‼』『お頭!一生ついて行きやす!』

とか声を上げていた。


俺が一言『黙れ』と言ったらすんなり大人しくなった。

とりあえず聞いておくか…


まず男たちに聞いた話をまとめると、

盗賊の頭領の名前は『ドラム』。

俺たちがマーレンから聞いていた前の頭の方の名前は『ボーン』。


ドラムはいきなり盗賊団に現れ、

ボーンを殺して新しい頭領になったという。


ボーンに従っていた盗賊たちは軒並み殺されるか、

逃げ出すかしていて、今残っているのはほとんどが

ドラムに変わってから来た者たちだそうだ。

この捕らえた男たちの中でもボーンの頃からいるのは

先程俺たちに弓を放ってきた男の中の一人だけだという。


とりあえず俺はその男に話を聞く事にした。

他の奴らは嘘や要らない事ばかり言いそうな気配がしていたからだ。

勿論、他の奴らに聞いて嘘だった場合は

分かってるなと念押しはしてあるが…


俺はそいつを他の盗賊たちと離してから、

「これから俺が聞く事に正直に答えろよ。」


「話せば俺を逃がしてくれるのか?」


「お前が話さなければ別の奴に話をさせるだけだが、

正直に話せば命は助けてやる。」


その男は一度ごくりと唾を飲み込み、

「わ、分かった。アンタの言う通り正直に話す。」


そこから聞いた男の話は多分本音だと分かる内容だった。


『今の頭は傍若無人で我儘で身勝手で、理不尽の塊の様な男だと。

 部下を使い捨て、自分が良い思いをする為に扱き使ってる。

 俺は本当は逃げ出すのをずっと我慢していたんだ』という様な内容だ。


一方、前の頭のボーンは義理に厚く、

殺しはしない事をモットーにしていたらしい。

襲うのも肥えて太った様な商人が多く、

必要以上に物を盗んだりもしなかったそうだ。

それなりに人望もあり、部下に対しても理不尽な事はせず、

休憩もくれたし、給料もしっかりと払っていたとの事…


『休憩って…盗賊団のクセにホワイト企業かよ…

俺のトコなんてサービス残業当たり前のブラック企業だったのに…』

などと思いながら、

「でもお前は逃げなかったんだな」と告げると、


男は急に涙目になり、

「逃げたくても逃げられなかったんだよ!」と言った。


男の話によると、

前に冒険者だった二人が盗賊団に入った時に、ドラムが難癖をつけては

いたぶっていたらしく、二人がそれに嫌気が差して逃げ出した際に、

『次に逃げ出した奴がいた時は、その時見張りをしていた奴を殺す』

という掟が出来、以降は皆が警戒し、逃げ出せなくなった。


しかもその後から入団試験と称して、

必ず入団する際に人を殺させていたらしい。

『もし盗賊団から抜けても俺たちが犯人を知っているから一生逃げられないぞ』

という脅しと共に…

それまでこの男はドラムが来てからも人を殺した事は無かったらしいが、

つい先日、馬車に乗った男を撃って人殺しをさせられたそうだ。


最後に一つだけそいつに聞いてみた。

『だったら皆で今の頭領を倒せばいいじゃないのか』と、

だが、男は

『お頭にはとんでもねぇ力があるんだ、俺らじゃとてもじゃねえが敵わねぇんだよ!』

と泣きながら答えた。


俺はそいつを他の盗賊たちの元へと戻してから、

盗賊たち全員に向けて聞いてみた。


「そのドラムってヤツは村に戻ってどうすると思う?」


それを聞いた全員が下を向いて俯いている。


連れ戻って来た男が涙目だったのと、

質問の意図をそれぞれ図りかねていたからだろう。

下手に答えれば殺されるかもしれないと考えていたのかもしれない。


「聞き方が悪かったな、お前らと村をどうすると思う?」

俺には大体予想は出来ていた。


「お、お前たちを殺しに来るに決まってる!」

と一人の盗賊が震えながら声を上げると、

それにつられて周りの盗賊たちも、

『そ、そうだ!だから早く俺たちを逃がせ‼』

『お頭に敵うと思ってるのか!』等と喚きだしたので、


「違うな!お前らは殺されるか良くて使い捨てられるだろう。」


その言葉を聞いて男たちは反論することなく押し黙った。

そして、そのやりとりを聞いたマーレンも顔を青くしていた。


その後、2つ3つ気になる事を聞いて今に至る。


俺が最後に聞いた質問は正直に話させる事ともう一つ理由があった。

それは俺自身がどう動くかの最終確認みたいなものだった。


俺たちは男たちに話を聞き終えて、今、飯を食っている。

男たちの見張りはマーレンがやっている。


マーレンは、

『あの時は仕方が無かったんだ』と頭を地に擦り付け、

『許してくれ!あんたたちには絶対逆らわない‼』と

これでもかという感じで許しを懇願してきたのだ。


俺は正直未だ全く信用はしていないが、

リルルとミスティは『頭を上げて下さい』だとか

『仕方が無いですね』と許してしまっていた。


俺たち3人と一匹は飯を食いながら今後の事を話していた。

因みにスーは現在、俺の肩の上にいる。

一応俺の魔力を少し注いでやった。

『ご主人の魔力最高!』とか『超おいしーだわさ‼』などと煩かったので、

少し注いで終わりにしたが。


その瞬間、スーはまるでガーン!という効果音が付きそうな

ガッカリ具合だった。

『もっと欲しいだわさ!』とか『ご主人のイケズー‼』

などとほざいていたがスルーだ。


俺はパンを口に入れてから、

「俺は村に行ってくる。」


「えっ⁉何で⁉」

ミスティがパンを口に運ぼうとして驚く。


『そうだよ!何でだよ!』

レンも意味が分からない感じだ。


「俺とマーレンで行くから、リルルはミスティを頼む。」


「いえ、ちょっと待って下さい!

救援を呼びに行くのではないのですか?」

二人に比べればまだ幾分かは落ち着いた口調でリルルが俺に尋ねる。


「いや、それじゃ後々面倒だし、

何よりドラムとかいうあの大男が気に入らないからな。」


「そ、それならばわたくしも‼」


「俺は短い間しか知らないが、一応リルルを信用しているつもりだ。

 だからミスティを頼むと言っているんだ。お前なら分かるよな。」

俺はそう言ってスープを口に流し込んだ。


リルルはグッと唇を噛み締めたが、

「わ、分かりました…

 この命に代えましてもミスティ様は必ずお守り致します。

…ただあまり無茶はしないで下さい。」


「分かった、助かるよ。」

俺はそう告げてから腰を上げる。


それを見たミスティは、

「レン!、いえ、グレン‼」


「なんだ?」


「か、必ず無事に戻りなさいよね‼

 もし何かあったら…ただじゃおかないんだからね!」

少し潤んだような瞳で俺を真っ直ぐ見て言った。


「分かった。」


俺はそうしてマーレンと共に村へと向かったのだった。


なるべく早く投稿したいのですが…

2日に一度は必ず…やれる時は…頑張りたいです( ノД`)

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