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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第二章 【エリス王国へ】
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第29話 『聞いておきたいコト』

連続投稿します。


またもやストック切れですが頑張ります!

第29話


『聞いておきたいコト』



街道脇の少し開けた場所で馬車を止め、

更にその脇の広場に火を灯し、

俺たちはその火を囲んで夕食を食べる事にした。


火はリルルが起こしてくれた。

一応リルルも魔法は使えるらしいが適性がほとんど無く、

火属性の弱いもの程度しか使えないとの事だ。


俺たちは馬車に残っていた食べられそうな食料や飲み物等で腹を満たした。

持ち去られていたり、荒らされたりはしていたが、

3人と1匹の腹を満たすのには充分な量と言えた。

ただ今回はリルルだけ食欲が無かったが…それも仕方が無いだろう。


スーはパンやスープや干し肉をつつきながら、

ほぼ俺たちと同じくらいの量を平らげた。

レンは高速でくちばしを動かすスーを見て、

スーよく食べるね』と言ったら、

『あちしはこんなものよりご主人のゴハンが食べたいだわさ』と言われた。


そこですかさず、俺ではなくミスティが

『どうゆう事?』と聞くと、スー曰く、

『あちしのゴハンは魔力だわさ』

『あんたの魔力でもいいけどご主人のが一番だわさ』との事だ。


『ならソレ食わなくてもいいんじゃねえのか』と俺が言ったら、

案の定ミスティからジト目を向けられた。

チクショウ!可愛いから何も言えない俺。


これもスー曰くだが、魔力は誰のものでもいいわけではないらしく、

魔力を取らなくても体内の魔力を使い切らなければ死ぬ事は無いが、

体を動かすと普通にお腹は減るので仕方が無いから食べているらしい。


ふむ、仕方が無いと言う割には結構ノリノリで

キュワキュワ言いながら食っていた気はするが…

まぁだからいつも寝てるのか…


ちなみに俺とミスティがスーと念話で話している最中、

レンとリルルにはキュイキュイとしか聞こえない為、

俺がレンに通訳し、ミスティはリルルにスーの事を説明した。

その話を聞いたリルルは少し信じがたいのか

難しい顔をしていたが、ミスティの説明に『なるほど』と一人納得していた。

勿論、魔族の事やその経緯については話していない。


食事が終わり、片付け終わった後、

俺たちは火を囲み、ミスティの入れたお茶を飲んでいた。


「それじゃ、そろそろ聞かせてもらえるかリルル。」

俺はリルルにそう告げた。


ミスティとレンは何の事?って感じだったが、

リルルはソレに思いついたらしく、とぼける様な真似はしなかった。


「ソリスティ様のお子様についてでございますか?」


「そうだ。」


「ここでわたくしが話せる事は限られておりますが、

それでも宜しいでしょうか。」


「ああ、構わない。ただし俺たちを欺く様な事はしてくれるなよ。」


「もちろんです。」

リルルは俺の目を見てそう答えた。

話が早くて助かる。


ようやく事態が飲み込めたのだろう。

ミスティもレンもそれを聞く体制に入った。


「ソリスティ様には現在二人のお子様がおられます。

 一人はミスティ様、もうお一人はエリカ皇女殿下です。」


ミスティは口に手をあて驚きと困惑の表情を浮かべてる。


「それだけか?」

俺は特に驚くことなく続きを促す。


リルルは一旦唾を飲み込んで、続けた。

「…ソリスティ様には他にお子様はいらっしゃいませんが、

先王様にはもう一人お子様がいらっしゃいます。」


「それで」

俺が更にその先を促す。


「『それで』とは?」


「とぼけないでくれ、どっちが先に生まれたんだ?」

俺はリルルに前に聞いた話で政争があると聞いた。

最初は戦争の事かとも思ってスルーしたが二人いるなら話は早い。


リルルは少し言葉に詰まったのか、一旦躊躇(ちゅうちょ)するも、

「レイブン皇子が先にお生まれになっております。」


「レイブン皇子か…それで?」


「それでとは」

先程と同じ展開だが、リルルは今度は本当に分からない様だった。


「ミスティとはどちらが先なんだ?」


「…申し訳ございません。

それより先のお話はわたくしからは申せません…」


「なるほどな。」

ほぼ答えを言っている様なものだな。


レンは『どうゆう事?』と頭の中で首をかしげている。


『つまり、俺の予想だが、皇子よりも先に生まれたミスティが

次の王女様という事だ』

俺の予想と言ったが多分似たような事だろう。

他にいないとも限らないが、今になって呼び戻す理由としては…

なるほど、ミスティがあの村にいた理由も大体想像がつくな。


レンは『ええぇ‼嘘でしょ⁉』とショックを受けている。


ミスティも今の話を聞いてショックを受けている様だ。

いくらアリスティが自分の母親だと思っていても、

実質的には妹がいると分かった上に、母は違えど姉弟もいて、

自分もその場所にいたかもしれないんだからな。


しかし…厄介そうだなぁ…


「とりあえずこの話はまた今度にするが、

時期が来たら必ず聞かせてもらうからな。」

俺がそう念押しすると、


「分かりました。」

とリルルが一言そう答えた。


多分これ以上話してもリルルは話してくれなさそうだと

目を見れば分かったし、確かにここで話すような事でもないか。

出来ればもっと落ち着いた場所で、

俺的にはミスティのいない場所の方がよりベターだ。


話はこれで一旦終わったなと思ったが、


「ですが、その前にわたくしにも一つお聞きさせて頂いても

宜しいでしょうか?」

リルルは思い立った様に俺に聞いてきた。


腰を浮かせかけていた俺は再び座り直し、

「なんだ?」

リルルに顔を向けて先を促した。


「あなた様、いえレン殿とミスティ様はどういったご関係なのでしょうか?」


『そっちかぁ!』と俺は思い、

てっきりレンとグレンの事とか聞かれるのかと思ってたので

『へ⁉』みたいな顔になってしまった。

因みにレンとグレンの関係は『俺には二つの人格がある』としか告げていない。

素直に答える気もなかったし、人物としてはレンという事にしてある。

掘り下げられても困るので質問は受け付けなかった。


俺の答えを待っているリルルは真剣な顔だ。

ミスティは何故か顔を真っ赤にしている。


『おい、レン呼ばれてるぞ』

俺はレンに丸投げする事に決めた。


『ず、ずるいよぉ!いきなりそんな時だけ僕にふるなんて酷いよぉ』

『いっつも勝手に話すすめてるくせにこんな時だけ…』


『ミスティとはお前の方が付き合い長いし、

実際俺に任せたら凄い事言っちゃうかもしれないがいいのか?』


『す、凄い事って何⁉』

俺たちがそんな脳内会話を繰り広げていたが、


「幼馴染です!」

空気に耐えられなかったのか、

思わずと言った感じでミスティが答えていた。


「私とレンは幼馴染で昔から一緒にいただけです…」

ミスティがモジモジしながら続けた。


レンが頭の中で

『ガーン!』となんかショックを受けている様だったがほっといた。

いや、お前とミスティは実際幼馴染だしな。


「でも私にとってはとっても大事な幼馴染なんです!」

顔を上げてリルルに向かってそう言った。


「…分かりました。」

リルルはミスティの真剣な眼差しを見てからそう返した。


レンは『ミスティ…』と頭の中で何やら感激しているご様子。


とりあえず話はそこで終わりとなった。


「さてと、んじゃ、悪いがリルル手伝ってくれ。」

腰を上げながら俺はリルルに言った。


本当は食事の前にしようかとも思ったんだが、

俺が先に(めし)にしようと言っていたのだ。


「はい。」

リルルもそれに答え腰を上げた。


先程馬車を止めた後に、

二人でハンスを今いる場所と馬車を挟んで反対側へと下ろしていた。

その際にリルルにはどうするかは伝えてある。


その間、ミスティには馬車で寝床を作ってもらっている。


ハンスを再び少し開けたスペースへと移し、俺は腰の刀に手をかけた。


そして抜いた刀に魔力を込めた。

炎月刀は俺の魔力に反応し、その刀身を赤く染めていく。

魔力を徐々に薄く込め、ある一定を超えてその身は紅く燃えだした。


これ位か…と俺は思い、

その炎に包まれた刀身をハンスに向かって振り払った。


すると、ハンスの身体は徐々に燃え上がり、

わずか数分程で白い躯となった。


リルルはその(むくろ)の一部分、喉仏だけ回収し、残りは近くの場所へと埋めた。


初めスーにやってもらおうかとも考えたが、

あいつがやると一瞬で跡形も無く燃え尽きそうな気がした。

炎月刀ならば俺の魔力で調整が効くのではと思ったが、使えるな。


俺たちは明日の朝出発し、湖を抜けて近くの村まで行く事にした。


寝るのはミスティ、見張りは俺とリルルが交互にする形になった。

スーはミスティの傍で寝させている。

見張りは俺だけでいいと言ったのだがリルルが頑として譲らなかったのだ。


本当は試したい事がまだ結構あったんだがな…まぁ次でいいか…


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