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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第二章 【エリス王国へ】
29/119

第28話 『疑問』

ようやく10万字突破しました。

相変わらず説明が多くてスミマセン。

第28話


『疑問』



暫くリルルは歯を噛みしめ苦い表情をしていたが、

キッと表情を引き締めてから、俺たちに話し始めた。


男の名は『ハンス』と言い、リルルたちと一緒に来た従者であった事。

もし自分たち騎士に何かあった場合は近くの村や町に助けを求める事。

それが不可能な場合には自分だけでも国へと戻り、

必ずその事を他の者に伝える様にする手はずだったらしい。


俺は単に逃げただけじゃないのか?と思ったが、

リルルの話では忠義に厚く、とてもいい人だったらしい。


俺は今は要らない自分の考えは一旦横に置き、

「この遺体はどうするんだ?」

とリルルに尋ねた。


「ちょっとグレン⁉」

『ちょっとグレン⁉』

ミスティとレンは空気読みなよ的な感じだが、

リルルは、


「あなたの魔法でどうにかする事はできませんか…」


リルルは縋りつくような目で俺に問い掛けた。


「燃やすという事か?」

本当はリルルが何を言いたいのかは分かっていたが、

俺もおいそれとソレを試す訳にはいかない。


するとリルルは両の手の平を地面につけ、土下座の恰好をとり、

「勝手な言い分だとは思いますが、わたしにかけて戴いたあの魔法を

この者にもどうかかけては頂けないでしょうか‼」

深々と頭を下げるリルルだったが、


「無理だな。」

俺は即答した。


俺の魔法には確かに時を戻す効果がある。

だが、命だけは巻き戻せない。

いや、不可能か可能かで言えばあくまで可能性的に言えば可能なのかもしれない…

が、俺は試す気は無い。


別に死を冒涜する気は無い、とかそういう事ではなく、

ただ漠然とソレだけはするなと俺の中で警鐘が鳴らされている気がするからだ。

より厳密に言えば、その行為は行ってはならないものだと

俺自身が強く自覚してしまっている。


俺の魔法にどれだけの時を操る事が出来るのは分からないが、

無暗に使う事は出来ない。

よくゲームで何度でも復活出来たり、簡単に蘇ったりする事が出来るが、

そんな事が可能になれば人にとって『生きる』意味が無くなると俺は考えている。

ファンタジーならお決まりなのかもしれないが、俺の概念上それは許されない。

と言うか許したくない。


何度も人生をやり直せるなど…

俺も人の事は言えないんだろうが…


恐らくこの魔法があれば多くの者を救う事が出来るだろう。

ただ、リスクが計り知れないのだ。

少なくとも…今はまだ使えない。


リルルはそのままの姿勢で、

「無理な願いである事は存じておりますが、何卒…どうか…」


必死だな、当然か目の前に希望があるのに縋りつかない訳は無い、か…

俺は今は何を言っても言い訳にしか聞こえないだろうが、

これだけは言っておかなければならなかった。


ミスティは何と声を掛ければいいのか分からず、唇を噛み締め見つめている。

レンは『やってみるだけやってみれば…』とか

『グレンでも出来ないの?』と。


「リルル、俺は別にお前が頼んだからやりたくないとかじゃなく、

今は出来ないんだ。」


「どういう事ですか?」

リルルはゆっくりと顔を上げ、恐る恐る聞いてきた。


「あまり言いたくはないが、あの魔法はある意味で俺の命を削る上に

俺が無理だと判断した時は撃てないんだよ。」


当たらずとも遠からず、実際に命を削られているとは思わないが、

何かが使われている気がする。勿論多くの魔力は必要とするが、

それ以外の何かも…


「だから悪いがアレ(・・)は俺が撃てると判断した時にしか撃たないし、

出来ればあの魔法は秘密にしてもらいたい。」


これはリルルだけでなく、レンやミスティに対しても言っている言葉だ。


「そ、そうだったのですか…わ、わたくし如きでは

あの様な神呪にも近き魔法の制限など知らず…

それをわたくしに使って戴いただけでなく、

も、申し訳ございませんでした‼」

再び頭を振って、ハハーみたいな形をされても…


「いや、アレは俺が好きで使っただけだから気にするな。

 それよりも、すまないな。」


「いえ、わたくしの方こそ誠に勝手なことを言ってしまい…」


多分頭では分かってはいるのだろうが、

自分の不甲斐なさに腹が立っているんだろうな。

お互いに…


とりあえず終わった形だが、実際はそうもいかなかった。

ミスティは「レン、そんな危ない魔法は使わないで!」とか

レンは『聞いてないよそんなの‼』とか返答するのが面倒だった。


その後ミスティから聞いたのだが、以前フリージアに蘇生魔法があるかと

聞いたが、フリージアは『たとえそんなものがあっても使わない方がいいわ』

『いい、ミスティ、死んだ者を甦らせる魔法なんて禁呪以外有り得ないのよ』

と言っていたらしい。


レンは

『僕だって目の前に死にそうな人がいたら使っちゃうんだろうけど、

せめて僕に教えてから使ってよね』と言っていたが、

『本当に命が削られている訳じゃないから安心しろ。

 今は俺の体でもあるんだからそんなことするはずないだろ』と、


『じゃあ嘘ついたの⁉』


『いや、この魔法だけは使いすぎると厄介な事がありそうな気がする』


『気がするってどういう事⁉』


『正直俺にもよくわからんがアレ以外の魔法なら問題は無い』


『本当に?』


『ああ』


嘘だ…俺はレンを落ち着かせるためにそう言った。

本当は格好良く?『勘だ!』とか言おうと思ってしまったが危なかった。

どんなリスクがあるのか分からないのは本当だが、あの魔法以外にも

リスクが無いのかは分からない。本当に俺の勘というか実感だ。

だがそれでも、

俺がここだと思った時は、きっと使う事を躊躇わないだろう。


レンもそれでもよく付き合ってくれている…本当にいいヤツだな。


それから遺体は一旦ここではなく別の場所に移してから処理するため、

ハンスの頭から矢を抜き、俺とリルルで馬車へと運んだ。


その間ミスティは馬の面倒を見てくれている。

どうやら馬もミスティを気に入ってくれたらしく、

『ヒヒーン』と鳴きながら顔をすりつけ草を食べていた。


「随分と荒らされたみたいだな」


「誰がハンスを…」

リルルは荷台を睨みながらそう呟いた。


ハンスの頭から矢を引き抜いた時、思っていたより出血は見られなかった。

既に時間が立っていた事を考えると、リルルがガーゴイルたちに襲われてから

そんなに時間がたたずに殺されたのかも知れない。


「そう言えば、この辺りに盗賊とかは出るのか?」

俺は特に深い疑問も持たずにそう聞いた。


リルルは、

「そうですね、わたしもそう思います。」

歯ぎしりの音が聞こえてきそうな感じだった。


考えてみれば当然の帰結だろう。

矢で頭を射られて荷台を荒らされているのだからその線が高い。

それと俺はそれまであまり疑問に思っていなかったが、

最近この辺りで盗賊がよく出るという噂があって、

人通りがえらく少なくなっているのだとリルルが言った。


そう言えば確かにほとんど人に会わなかったしな。


ほとんどというのは何人かの人間には会っていた。

冒険者風の男と女。

樵の様な斧を担いだ二人組。

両方ともすれ違っただけだが、特に変な感じはしなかった。

しいて挙げれば、女がマッチョすぎてちょっと引いたくらいだ。


俺が複合魔法で飛んだ時も周りに人は見られなかった。

遠くに人影はあったのかもしれないが、

あの時にはそれほど意識していなかった。


馬車に護衛も無しじゃ恰好の的か…

恐らく馬車がこの状態のままだったのも

人通りが少ないのが影響しているのかもな。


『ねぇグレン…』


『なんだ?』


『僕たちも襲われるとかあるのかなぁ…』


『安心しろ、その時は俺が返り討ちにしてやるよ』


『ねぇ、グレン、たまには逃げたりとかしようよ』


『やだ』


『なんでだよぉー!』


レンとそんなやり取りもしつつ、俺たちはとりあえず馬車を街道へと戻し、

暫く馬車に揺られてから少し開けた場所を見つけて、野宿をする事にした。


ちなみに馬車を運転していたのがリルルでその横にミスティ。

俺とレン、スーは荷台といった形だ。


ミスティは馬が好きなのかリルルの横でどうやって馬を操るのかとか

色々聞いていた。


スーは、

『ご主人と一緒♪』

『ご主人と一緒♪』

とやかましかったので、『静かにしろ!』と言ったらシュンとしてしまった。

それを御者台から聞きつけたミスティが

『グぅレぇンぅ、スーちゃんに意地悪しないの!』

と珍しく俺の名前を呼んで注意してきたので、

『わかったよ』と答えたら、

それを聞いたスーが『キュイー』(わーい)と言って

俺の頭の上に乗って来たので『調子に乗るな!』と言って手で掴んだのだが…

御者台からのミスティのジト目により、今は俺の肩の上に落ち着いている。


レンはというと、

『ねぇ、グレン…ぼくちょっと怖いんだけどグレンは怖くないの?』とか

『初めての馬車であんまり落ち着かないなぁ』などと

色んな意味でドキドキしていた。

まぁ確かにあんまり村を出たことがないレンにしてみれば

色々と新鮮なんだろう。


この馬車は意外とスペースがあり、見た目もそれほど悪くはない。

流石は一国の騎士が乗って来た馬車と言えるのかもしれない。

馬がいいのかリルルの御者技術が上手いのか分からんが揺れも少ない。

のだが…

レンが主に落ち着かない理由は、多分後ろに寝ているハンスの事だろう。

荷台に横たわるハンスには布が掛けられているが、

その布にはうっすらと赤い染みが滲んできている。

まぁレンは死体には慣れてないだろうし、

俺でもあまりいい気分はしないしな。


馬車で街道を走り、辺りが大分暗くなってきた所で、

御者台からリルルが

「あちらの場所で休みましょう」

と馬車を止めた。



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