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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第二章 【エリス王国へ】
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第23話 『新たなる力』

いよいよ第2章スタートです。

細かい点は徐々に修正していきます。

第2章

【エリス王国へ】


第23話


『新たなる力』



俺たちは今、北側にある村の入口にいた。


俺とミスティと籠に入った1匹の鳥。

スーは籠を気に入ったのか

あれからずっと籠に入っている。


ミスティは(スー)が眠っている籠を片手に

フリージアからもらった鞄をウエストポーチの様にして腰に巻いたものを身に着けている。


俺は腰の左にドランクから受け取った刀を下げ、

右肩からボクサーバック形状の袋を掛けている。


そこにドランクとフリージアの二人が見送りに来てくれていた。


アリスティとは、既に家を出る時に、

レンとミスティとを交互に抱きしめてお別れしていた。

『多分お母さんは笑って見送りしたかったからだと思う』

とはミスティ談だ。

俺たちが家を出る直前までは、

涙目だったアリスティだったが、突然パチンと自らの頬を1発叩いて『しゃぁ!』と可愛い?声を一声入れてから、

ニッコリととても柔らかな笑みを作って送り出してくれた。

『普段おっとりしているけどたまにビックリさせられるよ』

とはレン談だ。


フリージアは、

「本当なら『エアサイド』までは一緒に行こうかとも思ってたんだけど…

ドランクに止められてね。

でもあなたたちなら大丈夫だと思ってるわ。

ミスティ、レンの事よろしくね。

でも危険な時は逃げる事!特にグレン!

分かってるとは思うけど魔法をバンバン撃ったりしちゃダメよ。」


「うん、任せて!」

ミスティは笑顔でガッツポーズして答えた。


俺は『へい、へい』と曖昧な答えを返していたが、

最後にフリージアは笑顔で

俺たち二人の頭を両腕で自分の胸元に抱える様にして一言、

「行ってらっしゃい」

と言って離れた。


それから一歩後ろに控えていたドランクが

真面目な顔で俺の元へとやって来て、

「レン、出て行くからには必ず無事に戻ってくるんだぞ。

 たとえ何があっても俺より先に死ぬなんて事は許さねぇからな。」


「うん、ちゃんと戻ってくるよ。」

レンも真剣な表情でそれに答えた。


そこへ、

「もぅ、ドランクこれから旅立とうって時に辛気臭いわねぇ。

 そんなに心配だったら着いて行ってあげれば良かったじゃない。」

言った後で『ふふふっ』と

フリージアは口元に手をあてている。


「うるせぇ!」

ドランクは頬を少し赤らめながらそう返して、

「おい、グレン」


「なんだ。」


「レンを、頼む」


「分かった。」


そうして俺たちは二人に見送られながら、

エクシル村を後にした。


村の北口から出た俺たちは山を下り、

森を抜けて、街道沿いに東にある町

『エアサイド』を目指す事にした。


地図を見ながら山を下りている最中、

俺は改めてこの世界の事に思いを馳せていた。


地図もそうだが方角や月日、

言葉の成り立ちなんかも色々と気になるな。

結局全部ファンタジーって事にすれば成り立つのかもしれないが、

何でもアリってのもちょっとリアルさに欠けるというかなぁ。


この世界に来てからの俺は相当状況に流されている。

しかもいくら強い力に目覚めたからって以前の俺なら絶対にしない、

というか出来ない様な事も平然と出来てしまっている。

出来ないというのはしたくても出来ないというより、

『やらない』という事だ。


魔族に襲われたら村を守るか=守らない

神殿に力があるから確認するか=確認しない


勿論その時の状況もあるだろうし、

戦えるなら戦おうとも思ったかもしれないが、

昔の俺なら考えられない様な行動ばかりだ。

精々、面白そうな事があれば

夢中になってしまう程度で…

特に戦ってる時のあの高揚感はマジぱないよな。

それだけ異世界に来て

俺自身も変わってきているって事か…


『うん、うん』と俺が一人で思っていたら、


ドチャリ


と目の前に突然何かが上の方から落ちてきた。


なんかレンはそれを見て既にフリーズしていた。


俺の後ろを歩いていたミスティは立ち止まって

俺の肩口から恐る恐るとそれを覗き込む様にしている。


…うん、これ腕だな。

綺麗な白い肌をした片腕で手の指も細く、

爪も綺麗だ。多分女性の腕だろう。

勿論血が抜けて若干青白くはあるが、

まだ切られてそれほど時間は経っていないのか

今にも動き出しそうな感じがする。

などと冷静に分析している自分がいた。


『うわぁああああ‼‼‼』

「キャー‼」


森と俺の頭の中に響き渡るミスティとレンの悲鳴。


流石に村までは届かないがかなりの音量で出力されている。

多分ウチの家だったら間違いなく

壁をドンドン叩かれるレベル。


さてと、

何で俺がこんなに落ち着いているかだって?

俺にも分からん。

人の死体を見るのは初めてじゃないが、

マネキンではなく、

人の片腕が上から落ちてきたら普通はビックリするよな。

お化け屋敷じゃないんだから…

しかもメッチャ血も流れてきてるし…

魔物を潰すのには全く抵抗は無かったが、

流石に人のものは少しは堪えるだろうと

思っていたのだがこの分だと…

やはり俺は…


頭上を見上げると、ソコには一匹の魔物が飛んでいた。

口を血で滴らせ、腕の脇には人の体を持って浮かんでいる。

ガーゴイルだ。


俺は不快感よりも先に、

『あのガーゴイルあの時の生き残りか?』

村に行かせる訳にはいかないなと即座に判断した。


手に持つ地図とバックを離し、

俺は両足に魔力を込めて飛び上がった。


数メートルは上空にいたガーゴイルは、


『ピギャ⁉』(えっ⁉)


と言った感じで俺を見ていた。


ちょうど魔物の目線の高さまで飛んだ俺は、

すかさず腰の刀【炎月刀】を抜き放ち、

横凪に一閃した。

因みに今回魔力は込めていないので只の刀として使った。


ガーゴイルは再び『ピギャ⁉』と声を発し、

頭と体をさよならさせて、

俺と共に下へと落下していった。


『もう死んでいるだろうな』と思ったが、

一応落下する際にガーゴイルの腕から離れかけた人の体を掴み、

俺は着地する瞬間に重力制御魔法で自らにかかる重力を緩和した。


ドチャ!


ドカッ‼


スタッ


と魔物の頭、体、俺の順で着地した。


俺は腕の中に抱えた人の身体を確認した。

片腕はちぎられ肘の辺りから流血している。

顔を見ると青ざめて生気が失われている。

女性の顔は整っており、

髪は頭の後ろに結えられている。

いわゆるポニーテールってヤツか。


「うっ」

と、突然痛みを堪えるようにして

その整った顔を盛大に歪め始めた。

かろうじて生きていた様だ。


『マジか⁉』

俺は慌ててそれまでフリーズしていたミスティを呼び、

「コイツまだ生きてるぞ!ミスティこっちに来てくれ‼」


それまで口に手をあてて

ガーゴイルの死体を見ていたミスティも、

慌てて俺の傍に駆け寄ってくる。


「えっ⁉本当⁉」

ミスティは俺が横に寝かせた女に

慌てふためきながらも回復魔法をかけ始める。


「治せそうか?」


「ちょっと待って、今出血を止めるから!」

そう言って必死に魔法をかけている。

ミスティもフリージアやマリアに

魔法を習っていたみたいで回復魔法は使える。

ただ、今はまだフリージアほどの魔法の効果は

発揮出来ないとの事。


俺は周りに他の魔物がいないか警戒しつつ、

辺りを見回した。


俺がひとっ走り村に行って、

フリージアを呼んでくるか、

それともコイツを抱えて…

呼びに行ってから戻ってくるには時間がかかるし、

抱えて行くのも状態的には危険だな。

既に街道は50メートルほど先に見えており、

ここから村へ戻るとしてもこの女が果たしてもつだろうか。


俺がそう考えていると、

「うぅ…」

と呻きながらも女は薄っすらと僅かにだがゆっくりと瞼を開けていた。

しかし、依然として顔面は蒼白で予断を許さないといった感じだ。


ミスティは続けて必死に尚も回復魔法をかけている。


「ここは…どこ…」

まだ目は虚ろで朦朧としているが、

瞳を左右に動かす様にしている。


「喋らないで下さい!」

ミスティは額に大粒の汗を滴らせながら叫んだ。


「ソリ…スティ…様…」

そう言った後、彼女は何とか身を起こそうと

上半身を持ち上げようと試みたが、その体は起き上がらず、

腹に力を入れた反動から、ゴホゴホと咳き込み、

口から血を吐き出した。


「動かないで‼」

ミスティは手をその女性にかざしながら、叫んだ。


「あなたは…ひょっとして……ミスティ様…」

震える口調で女性はそう言った。


「えっ⁉」

ミスティは一瞬意表を突かれた顔をしてから、

「あなたわたしを知っているんですか?」

驚きで危うく回復魔法を弱めそうになってしまう程だったが

何とかそれを維持したままに、

これ以上喋らせるのも危険ではと思いつつも、

思わずミスティはその女性に尋ねた。


「良かった…お会いできたのですね…」

女性は残った方の腕を上げて

ミスティの方へと伸ばそうとした。

だが、震えるその手はミスティに届く前に

力なく下へと落ちた。


「しっかりして‼」

ミスティは更に強くと回復魔法をかけるが、

その表情は焦りにあせっている。


『ねぇ!どうしよう‼』

『何とか出来ないの⁉』

それを傍らで見ていた俺は、

何も出来ないのかという

レンの声を聞きながら考えた。


『殺したくはない、

だが、俺の魔法、重力魔法ではどうしようも無い』


勿論、見捨てる様な真似はしたくないし、

この女はどうやらミスティの事も

知っているみたいだし、助けられるならば助けたい。

しかし今の俺には…

そう考えながら念の為、

レンの知識で役に立つものは無いかと

意識の中の知識にアクセスしてみる。


イメージとしては書庫の中から知識を

引っ張り出すイメージだ。

すると、書庫の中に一際光を放つ本を見つけた。

正直今までに無かった感覚だ。

欲しかったモノが見つかった様な、

頭の中でコレだ!と…


瞬間、俺の中に新たな概念が浮かび上がってきた。


『時間』


俺はカッと目を見開き、

目の前でしきりに回復魔法をかけられている、

間もなくその灯を消すであろう女を見ながら…


『俺魔法発動』


『時空間制御魔法起動』


そして、右手を女へと向けて唱えた。


「タイムリザレクション‼」



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