第22話 『贈り物』
1章の誤字脱字等、一通り修正しました。
内容そのものは変えてませんが、今後もおかしな個所を見つけたら随時修正していく予定です。
修正してみて思った事は、やはりかなり地名を間違えてる事に気付きました…(涙)
第22話
『贈り物』
結局、あの後、食事を済ませた後、
ドランクが早すぎるだろ!とか
フリージアが準備はどうするの?とか
ミスティが女の子の支度は時間がかかるんだよ‼とか
あらあらまぁまぁとアリスティが見守る中、
俺は一言、
「やると決めたら即実行しなきゃ時間は待ってくれないんだ‼」
とビシッと決めてやった。
あぁ決めてやった。
それはもう机をバンッと勢いよく叩いてそれはもう力強く。
まるで選挙の街頭演説の決め台詞の様に…
レンは『なんかとっても実感こもってたね』と言っていた。
そりゃまぁ、俺としては今まで散々思っても言えなかった事だしな。
一度誰かに言ってみたかった言葉ではある。
出発を明日に控えた俺たちは、その後各々の家に戻って行った。
フリージアはそのまま俺たちを見送り、
アリスティとミスティはスーを連れて、
ドランクはレンと一緒に。
ドランクはもう暫くフリージアの家にいるはずだったが、
今日は帰るの一点張りだった。
スーもしきりに『あちしもご主人と一緒に行く』とわめいていたが、
ミスティに頭を撫でられながら
『一緒にお風呂に入らないと嫌われちゃうぞ』
と言われて渋々?ついて行った。
俺は家に帰る途中、ドランクの背中を見ながらレンに
『あとは任せる』と告げて一足先に眠りについた。
この体になってから、ひょっとして眠らなくてもいいのかな。
と思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
眠気はちゃんと襲ってくるし、二人いっぺんに眠らなければ
身体は休まらないとは思うがやはり脳は別の様だ。
そして翌朝、
俺は目を覚ますとベットの中にいた。
レンの部屋の中だ。
レンはどうやらまだ眠っているらしい。
俺は体を起こし、大きな欠伸をした。
体は少しけだるかったが、昨日の傷もすっかり癒えているようだ。
この体のこの設定は有り難いな等と思ってしまう。
それから暫くしてレンも起きたようでドランクと共に
朝食を食べた。
ドランクは言葉少なに、
『準備は出来たのか』
『本当に今日出発するんだな』
と聞いてきたが、レンは『うん』とその都度頷いていた。
準備といっても大した事はしていない。
事前に向かう先をレンの知識から引っ張り出して、
分からない事は道すがら聞いていく事にしている。
装備というか荷物も昨日レンが最低限揃えてくれた。
意外とコイツも頼りになるとこあるなと俺は感心した。
朝食を食べ終えて食器を片付け終わった後、
扉を叩く音が聞こえた。
中に入って来たのはフリージアとアリスティとミスティと
その肩に乗ったスー。
5人と1匹は改めてテーブルへと集まり、
出発前の話をした。
「それでまず、どこへ行く予定なのかしら。」
フリージアが手元に置かれたお茶を飲んでから切り出す。
「まずは『エアサイド』に行こうと思ってるんだ。
それから最終的には首都『エスパス』に向かうつもりだよ。」
『エアサイド』
このエクシル村の北の道から出て、
街道沿いに東に向かって進むと一番近くにある街だそうだ。
いくつか途中に村もあるが、街道から一番近い町がこの町。
『エスパス』
エランドール国の首都。
ここからはかなり遠い場所にあり、この国の中央に位置する。
この村からは南東の位置にあるらしい。
ちなみにこれらは基本的にレンの知識なので合っているかは
定かでは無いのだが…それにしてもやけに『エ』から始まる地名が
多い気がするが…まぁ気にしてもしょうがないか。
とりあえず一番近くの町から首都を目指す方向で決まっていた。
道中の状況によっては変わる事もあるだろうが、
現時点では目的としては『俺とレンのこの状態を何とかすること』
になっている。
実際手掛かりがある訳でもないのだが、
俺としてはこの世界を見てみたい思いがあるので
一先ずはこれでいいだろう。
「エスパスね…まぁ、手掛かりがない今はそれが無難でしょうけど。
ここからだと結構時間がかかるわね。
それじゃあとりあえず、これを持っていきなさい。」
そう言ってフリージアは鞄の中から
『地図』と麻袋を出して説明した。
『地図』
この世界では地図は手書きのものでその町の周辺を表したものが
ほとんどであり、正確な寸法のものはあまりないらしい。
つまり世界地図やその国の全体図の様なものは無い。
国としてその国の地図を作ることが認められていない為、
各町で決められた場所でしか地図は作られず。
基本、その地図を他国などへ持ち出すことは禁止されているそうだ。
村では村の地図だけ、町ではその周辺[次の町もしくは村まで]の
地図しか作る事は許されていない。
うまく繋ぎ合わせていけばパズルみたいに作れそうな気もするが
そうやると実際にはうまく繋がらなかったりしそうだな。
『お金』
基本単位はエンド。
魔族の住むフォルケン大陸を除く大陸のほぼ共通通貨らしい。
白銀、金、銀、銅、鉄の5種があり、
白銀が100万エンド、
金が1万、銀が1000、銅が100、鉄が1エンドだそうだ。
白銀はほとんど出回っておらず、
庶民では滅多にお目にかかる事はないとの事。
大体の村は物々交換が主流だが、町や大きな村ではお金が
必要になるらしい。
相場としては普通の宿に泊まるのに1日銅貨1~2枚ほどらしい。
1日2枚でも1か月6000エンドあればいい計算か。
確かに白銀貨があれば相当な金額だな。
ちなみにこの世界の1か月は毎月30日で固定らしい。
1年間も12か月のままなので1年で360日になる。
しかしエンドという通貨もそうだが…
まぁ似てるに越したことはないな。
渡された地図はこの村からエアサイドまでの地図だった。
本当に手書きでざっくりといった感じだ。
まぁ次の町までの地図があるだけでも有り難いな。
確か村だとその村周辺までしか地図は作れないと言っていたが
フリージアも元冒険者だったみたいだし、
作れない事もないという事だろう。
お金は麻袋に入れられた状態で
何故かそのままミスティへと渡された。
信用されてないな、レン…
「あー、レン、そう言えばまだ言ってなかったな…」
ドランクが思い立ったかの様にして、
少し照れた感じで頬をポリポリとかきながら言った。
『おっさんの照れている姿とかあんま見たくねぇな』
と内心で思ってしまった俺だが、
空気を読んで言わなかった。
ドランクは意を決したように俺に向かって、
「誕生日おめでとうレン、コイツはプレゼントだ。」
そう言って腰にあった物をレンに差し出した。
ゴトリ、と置かれたそれは一本の刀だった。
「名は炎月刀、俺の仲間が使っていた剣だ。」
『仲間?』、どう見ても刀だな。
名前も俺の世界と同じセンスとは。
色々と気になった点はあるが、その刀を見た瞬間、
ビビビと来るものがあった。
より正確に言うと、俺の中のもう一人が目を覚ました的な、
『スゲー振ってみたい』『超俺好みの武器キタコレー』的な…
「ありがとう。おじさん。」
そう言ってレンは刀を受け取り、深々と頭を下げた。
俺もうきうきとしながら刀を見つめた。
「それじゃあ、これは私から。」
今度はフリージアがカバンの中から、カバンを取り出した。
そしてそれを、
「おめでとう、ミスティ。」
ミスティに渡した。
ミスティはパァーと顔を明るくして、
「ありがとう、フリージアさん!」
笑顔でそれを受け取った。
それぞれ受け取ったプレゼントはドランクと
フリージアから説明があった。
『炎月刀』
かつてドランクが一緒にパーティーを組んでいた仲間が
使っていたもので、魔力を流すことで一時的に炎を纏わせる事が
出来る『魔法剣』らしい。
『エアポケット』
特殊な素材で作られた鞄で、この鞄は見た目と違って
かなりの容量があるらしい。
しかも入れたものはある一定の時間はそのままの状態にすることが
出来る『魔法具』。
『流石はファンタジー、やるな』と改めて俺は思った。
「それじゃわたしからも、二人とも誕生日おめでとう!」
アリスティから満面の笑みで机の上に籠が置かれた。
綺麗に編まれた籠には藁の様なものが敷き詰められている。
『これも魔道具か何かなのか⁉』
俺は興味津々に説明を待った。
「スーちゃんの寝床として大事に使ってね。」
ただの籠だった。
それも鳥の寝床として…
ミスティの肩の上にいたスーは
キュイキュイ言いながら飛んでいき、その籠にスポッと納まった。
それはもう見事に。
「サイズはバッチリね。」
サムズアップと共に親指を立てたアリスティママ。
どうやら昨日寝ずに作ってくれたらしい。
こうして俺たちは素敵なプレゼントを贈られ、
暖かい言葉も贈られた後、村を出る事になった。
おまけ
スーの初お風呂
ミスティ『こらスーちゃん暴れないの!』
スー『キュイキュイキュイキュイイイイイ‼』
ミ『あっ!コラ、胸をつつかないの』
ミ『あっ‼そんなトコ叩いちゃダメ‼』
ス『キュキュキュキュキュー!』
ミ『そこはホントにダメだってば、やん』
ミ『先っぽはダメだってば‼』
ス『キュッキュキュイーーーーー』
5分後…
ミ『はぁはぁはぁ、もうらめぇ…』
グワシッ‼
ミ『やっと捕まえたわよ!』
ミ『そんなことしちゃう子はこうだ‼』
ス『キュ⁉キュキュキュ⁉』
ミ『えい!』
ス『キュウゥゥゥゥ』
10分後…
ミ『ふぅー』
ス『あちし…もうお嫁にいけないだわさぁああああ』
これでとりあえず1章は終了です。
続けて2章に突入します!
ラストのおまけはホントにおまけです。
いらなかったらスミマセン。




