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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第一章 【異世界での旅立ち】
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第19話 『鳥の一人称はあちし』

第19話


『鳥の一人称はあちし』



飛び去って行ったバーンとガーゴイル1匹を尻目に、

俺は内心でホッとしつつもどうすべきかを考えた。

しかし、敵は待ってくれない…


グワゥウォオオオオオォ!


と竜が咆哮をあげた。


ビリビリと大気が震えている。

竜の体長は数メートルはある、翼を広げたらその数倍にも

なりそうだ。

ガーゴイルの群れも100匹以上はいるだろう。


『ちょっと待て、これバーンより厄介って事は無いよな』

『つーか去るんなら竜ごと行ってくれれば良かったものを』

そう思ったのも束の間、

上空にいるガーゴイルたちもその咆哮を聞き動き出した。


ガーゴイルは当然俺目がけて一斉にやってくるかと思ったが

そうではなかった。

竜を起点に半々に分かれて、半分は俺に、

もう半分は少し離れたミスティたち目がけて飛んでいた。


『マズい!』俺は即座にミスティたちの方に行こうとしたが、

体が思うように動かない。

妙な倦怠感というか、虚脱感が俺を襲っている。


しいて挙げるなら、ボクサーとかがインッターバルに

気を抜くと立ち上がれなくなる状態という感じだろうか。


俺は前置き無く、魔法を繰り出した。

右手を人差し指だけ突きつけて、

「ブラスト・ショット!」


周りの石が即座に浮き上がり、

ガーゴイルたち目がけて飛んでいく。


だが、思いの外威力が出ず、ガーゴイルの群れの数匹の頭を

貫くだけだ。

『参ったな』、このままではガーゴイルを近づけさせないまでも

撃退するのには時間がかかる。


ミスティの援護にすぐにでも向かわなければマズい上に、

竜は未だに動いていない。


竜はその場に留まり、動く気配は無いが、

いつまでもそうしてくれているとは限らない。


襲い掛かられたミスティたちはマリアの障壁によって

一時的にくい止められたが、そう長くは持たないだろう。


「ミスティ、あなただけでも早く逃げなさい!」


マリアは障壁を張りながら、眼前に迫るガーゴイルたちに

視線を向けながら叫んだ。


「ここは私とマリアでなんとかするから君だけでも逃げるんだ!」

ロックベルも障壁を張れるのか、同じような姿勢をとっていた。


「でも、このままじゃ!」

ミスティにもこのままでは押し切られる事は分かっていた。

ルートとしては後ろの神殿に逃げるか、

障壁を抜けて、レンの方に逃げるか。

村に助けを呼びに行くにしても

ガーゴイルの群れを突破しなければならない…


ミスティは思わず抱いていた鳥をギュッと抱え込んだ。

すると…


『イタイ、痛い!あちしを殺す気?』


ミスティの頭の中に声が響いた。


『えっ⁉』

思わずハッとしてミスティは抱きしめすぎていた

鳥の拘束を緩めた。


改めて目の前の自分の胸に抱いている

キュイキュイ騒いでる鳥を見た。


『あちしにあんたの魔力を注ぎ込みなさい!

 そうすれば何とかしてあげるだわさ』

そう聞こえた…


『ええっ‼』

胸元からひょこっと顔を出した鳥は

続けてキュイキュイ鳴いている。


『今はご主人もピンチみたいだからあちしが

 何とかしてあげるって言ってるんだわさ!

 早く魔力をよこしなさい‼』

子供の様な声がミスティの頭の中に響いている。


「クギャア」

「ガァアァ」

辺りにはガーゴイルの発する奇声も響いている。


目の前では苦悶の表情をしたマリアとロックベルは

ガーゴイルによって障壁に亀裂を入れられていた。


ミスティは何が何だか良くわからなかったが、

今はこれしかないと思い、『えぃ!』といった感じで

自分の魔力を胸元の鳥へと注ぎ込んだ。


その瞬間、

これまた『ピカー!』といった感じで光輝いた。鳥が…


ミスティの胸元から飛び出したソレはそのまま障壁を抜けて

襲い掛かるガーゴイルの群れに突っ込み、

「キュイーーーーーーーーーー」

と叫んだ。


更に光が増し、現れた姿は数メートルにも及ぶ体躯。

見た目はまさに不死鳥の様な姿だった。


その鳥は突然現れて、

周りで動きを止めていたガーゴイルたちに向けて

口を開け、一斉に火を浴びせかけた。


それを受けたガーゴイルたちは抵抗する間も無く、

のたうちまわる事も無く、奇声を上げながら燃え尽きていった。


そしてあっという間にミスティたちに群がっていた

ガーゴイルたちは焼き尽くされた。


まさに瞬殺に近いそれをミスティたちは勿論、

俺もポカンとして見ていた。


そこへ、

「グルァアアアアアア‼」

竜が咆哮を上げた。


またも大気を震わせる様な声が響き、

それまで俺の方に群がっていたガーゴイルたちも

我を取り戻したのか、一斉に竜の方へと集まっていった。


ガーゴイルの数も残り数十匹程度で、今の俺だけでも充分

撃ち落とせる数だったが、あの竜はちょっと面倒だと思った。


今の俺は大きな魔法が使えない。

使おうと思えば使えるかもしれないが、

撃った後どうなるか分からない不安があった。

何より気分の高揚が見られない。

追い詰められたわけではないが、未だ片腕が使えず、

力も湧いて出てくる感じがしないのだ。


『レンとのリンクも回復してないのも気になるが…』

そう思いつつも俺は空中に浮かんでいる鳥を見やる。


『あれがあの鳥か…どうやら味方みたいだな』

正直助かった。

バーンには力を手に入れたみたいに言ったが実際は

その力が何なのかさっぱり分からなかったし、

あそこでああ言わなければ何度もこの村が襲われて

いただろうしな。


『とりあえずやるか…』

そう思い俺は、竜目がけて飛び込もうとするが、

やはり体が思うように動かない。

あと腕が痛い。

左腕が鉛の様に重く感じる。


それでも、

「ブラスト・フレア‼」


俺は右手を掲げ、再び魔法を繰り出した。

狙いは竜!あわよくば周りのガーゴイルも一掃する。


竜の頭上に一つの黒い球体が現れ、その周りにいた

ガーゴイルたちを牽きつける。


竜は踏ん張っているのか吸い込めそうな気がしない。

俺は魔法を出力を更に上げた。


だが、

その瞬間、目まいにも似た感覚が俺を襲った。

『ぐっ、マズい』

そう思った直後、竜は尻尾を大きく1回地面に叩き付けた。

ドシン‼という音が響くと、周りに残っていたガーゴイルが

一斉に黒い球に群がった。

自ら吸い込まれに行く様に玉へと覆いかぶさっていく…


周りのガーゴイルを吸い込んだ球はそのまま消えていった。


「くっ」

片膝をついた俺は再び竜を見ると、

竜はその大きな口を開き、中から何か吐き出そうとしていた。


次の瞬間、

その竜の口からは凄まじい炎が一直線に吐き出された。

そう、俺に向かって一直線に…


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