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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第一章 【異世界での旅立ち】
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第16話 『魔族の将』

第16話


『魔族の将』



俺は事態が動く前に仕掛けた。

『俺魔法発動』


『重力制御魔法起動』


「ディメイション・ダブル」


左手を掲げ、その手の上に二つの黒い球体を出現させた。

掌の直線状に二つの球体。


それをそのまま魔物の群れ目がけて投げつけた。


俺が今いる場所は神殿の入口部で竜にまたがっている男よりも

少し高い場所にいる。

魔物たちがいる場所は神殿よりも入口の門の辺りだ。

よく見ると入口の石柱の内の数本が倒されている。

さっきの衝撃はあれか…


投げた先、

1つは上空の魔物へ1つは眼下の竜目がけて。


『ディメイション・ダブル』

以前俺が使った魔法の『ブラスト・ディメイション』の複数版…

という訳でもない。

魔法はイメージだ。

魔法の名称自体にそれほど意味は無い…と俺は思っている。

ただ、全く意味がない訳でもない。

名称に意味を持たせるという事はそれだけ事象に効果を

付与させやすいのとその効果を発揮しやすくするためだ。


ならば今回の魔法は、

イメージ的には2つの重力球をそれぞれ別の場所で発生させ、

お互いが引き合うようにして潰し合うといった感じだ。

ちなみに今回は奇襲なので前部分の詠唱を省いた。

全くの無詠唱だと味気ないので

魔法名は唱えるのが『俺魔法』的には必須だ。


正確に言うと、『俺魔法』は魔力の高まりというより

俺自身のテンションの上がり下がりで威力が上下すると

俺は考えている。

事実、俺魔法を起動すると俺のテンションが否応なしに

上がってきている。


放たれた1つ目の球体はガーゴイルの群れの

ほぼ中央までいき、周りのガーゴイルたちを飲み込み始めた。


もう一方の球体は竜の頭上に行く前に、

「ふんっ」

という男の掛け声と共に押し止められてしまった。

しかし完全に止める事は出来ずに

バチチッという音を発しながらジリジリと押し込んでいる。


「ほう」

男は俺の方を見て口元を釣り上げた。


マリアも俺に気付き、こちらを見ているがその場を動かない。

ミスティは急いでマリアの傍まで近付いて行っている。


ガーゴイルの魔物たちはピギャと奇声を発しながら、

ただ飲み込まれる訳にはいかないと、

魔法を発した俺に向かっていこうとするが…


「待て!」

男からそう声が掛かり、その動きを止めた。


男は目の前に浮かぶ球体に向かって、

拳を握りしめ

『ふんっ』と突き上げて球体を破壊した。


『なにっ』

俺は思わず片眉を上げて驚いたが言葉には出さなかった。


そしてもう一つの球体も一方の球体が消され、

ガーゴイルを10匹ほど飲み込んだ所で消えた。


『ちっ』俺は舌打ちしながら即座に飛び上がり、

マリアと男の間に立ちはだかった。


マリアとミスティを背に、俺は男に対峙した。


「貴様が今の魔法を放ったのか。やるではないか。」

男は微塵も怯んだ様子を見せずに俺に言ってきた。


偉そうにしやがって、と内心思いながらも、

「そうだが、今のは大分手加減してやったからな。」

はい、嘘です。

手加減というか全力では無いにしても

あまり考えてませんでした。すみません。


「ほう、面白い。

 こんな村にお前のようなヤツがいるとはな。

 んっ、そうか。お前がベスパを倒したのか。」


ベスパ?誰だそれ?

いや、話の流れからしてあの蛇女の事か?

少なくともコイツはあの蛇女よりも上で

あいつよりも話が出来そうだな。

そう思った俺は頭の中でさっきから

『ちょっと待ってよ!』

『なんで戦おうとしてるの?逃げようよ』

というレンの言葉はスルーして、


「お前たちの目的はこの神殿の力という事で

 いいんだな。」


「そうだ、分かっているなら話が早い。

 さっさと力を渡せ。

 まぁ渡さなくても奪えばいいだけだが…

 少し興が湧いた。ベスパの事もあるが、

 貴様をこのままにしておくわけにもいかんしなぁ。」


男は竜から降りて、両の拳をポキポキと鳴らし始めた。


定番だな…俺は視線は外さずに一歩後ろに下がり、

肩の鳥をミスティに預け、

「下がってろ」と告げた。


鳥はキュイキュイ言っていたがこの際スルーだ。

『ご主人あちしも』的なことが聞こえたがスルーだ。


ミスティはコクリと下唇を噛みしめながら頷いた。

マリアは未だ障壁を維持していたが、

ミスティと共に後ろに下がっていった。


物わかりが良くて助かるが…

さてと…


「一応聞いておくが、お前らは何なんだ?

 ここの力を手に入れてどうしようってんだ。」

デフォルトだが一応聞いてみた。


「いいだろう、貴様に教えたからとてどうしようも

 無い事だろうしな。冥府の駄賃として教えてやろう。

 我が名はバーン・ストレアネフ。誇り高き魔族の一員だ。

 我が王に仕えし配下が一人。

 これでも一軍の将を任されている。

 この地に眠るとされる力は我が王に献上させてもらう。

 先遣として出したベスパ如きを退けたからとていい気に

 なるなよ小僧。」


おうおう、綺麗に今までの疑問に答えてくれてありがとよ。

なるほどな。

やっぱりこいつら『魔族』でそういうお約束の展開かよ。

俺は最後にもう一つだけ気になっていた事を聞いた。


「そうか、分かった。最後に一つだけ聞いておきたいんだが、

 花は要らないのか?」


「花?何のことだ。お前のたむけの花という事か?」


うん、花の事は知らないのか。

それとも知らないふりをしているだけか?

まぁいい、後はコイツを倒してから考えるとしよう。


だが、参ったな。

俺はともかくミスティたちもいるのにヤツだけじゃなく

上の魔物と竜の魔物も同時にとなると…


「ところでその誇り高き魔族様ってのは一度に一人に

 襲い掛かってくるお決まりの質より量作戦なのか?」


俺は少し挑発してみた。


バーンはむっとした表情をして、

「下等な人間如きが我に向かってよくも…

 だが先ほどの魔法を見る限りでは

 増長してしまっても仕方がないのもかもしれんな。

 いいだろう、この我自らが貴様を殺してくれよう。

 安心するが良い、貴様を殺す(・・)までは他の者にも

 手は出さないでおいてやろう。」


バーンは腕を組み、

顎で上空のガーゴイルと隣の竜を後ろに下がらせた。


よし、乗った!お決まりだが助かった。

「流石は偉大なる魔族様だ。話が早くて助かるぜ!」


俺はすかさず地面を蹴り、バーンに向かって殴りかかった。


バーンは俺のスピードに一瞬驚いたがすぐさま腕を解き、

片腕を俺の拳に対して突き出した。


俺の拳は相手の掌に受け止められたが

構わず俺は突き出しだ拳を振りぬいた。


片腕で受け止められると判断したバーンは

片腕をはじかれ半身を開いた状態になった。


そこへすかさず俺は回し蹴りをかます。

以前の体なら絶対に不可能なはずだったが

今の俺は思い通りに身体が動く。


半身を開いた状態のバーンは『ぐっ』といった感じで

表情を曇らせたが、直後頭への俺の回し蹴りに

もう一方の片腕を合わせてきた。

反撃ではなくガードだが良く間に合わせるものだ

と俺は内心感心しつつ、

同じく合わせられた片腕もろとも回し蹴りも振り切った。


着地後、すばやく俺は距離をとった。

一応先制攻撃は防がれはしたが、

足に残る感触的にはかなりの手応えがあった。

距離をとったのは相手の出方も気になったからだ。


みるとバーンは回し蹴りを防いだ片腕をダランと

させながら、

「ふ、ふはははははっ、面白い、面白いぞぉ‼」

豪快に笑っていた。


こいつまさか戦闘狂バトルジャンキーか。

俺は面倒なという思いと相手の底知れなさを感じ…


気分が益々高揚していた。


俺もまぁ大概だな。



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