第14話 『これ、竜じゃないよな』
1日1投稿目指してますが、中々区切りが難しいです。
出来るだけ長く出来ればと思いますが遅れたらすみません。頑張ります。
第14話
『これ、竜じゃないよな』
ミスティと俺はロックベルに案内されて
書庫から別の部屋に来ていた。
先ほど書庫に来るまでに見た部屋の
これまた扉がついた部屋だ。
扉のプレートには『選別の間』と書かれていた。
部屋の中は整然としており、
部屋の奥に祭壇の様なものがあって、
その前にある机の上に水晶玉のようなモノが置いてあった。
『あれが宝玉か』とも思ったがどうやら違うらしい。
部屋を移動する時、ロックベルから説明されたのは、
『宝玉を見せることが出来るのはご神体に選ばれた者だけだ』
との事。
ご神体とはミスティ曰くあの祭壇に祭られているものの事で、
あの祭壇の前の水晶みたいなのがそれを判別するらしい。
以前ミスティが、
巫女として選ばれたのもアレによるものだそうだ。
部屋に入ってからロックベルは祭壇に一礼し、
祈りの様なものをささげた後で、
「さぁ、こちらへ」
ロックベルがそう促して、
「この水晶に手をかざし、汝の意を示しなさい。」
と俺に向かって言ってきた。
正直意を示せと言われてもなぁと思いながら、
俺は頭を掻きながら水晶の元へとやってきた。
「具体的にはどうすればいいんだ?」
俺は思わずロックベルにそう尋ねた。
どうなれば認められるのかとかはまぁいいとして
どうすればいいのかが分からなかったからだが、
「その水晶に手をかざし、魔力を注ぎ込みなさい。
ご神体に認められれば反応して頂ける。」
簡潔に述べられて、俺はひとまず考えるのは後にして
水晶に手を触れて魔力を注ぎ込んだ…
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
なにやら突然祭壇の方から地響きが聞こえたと感じた瞬間、
目の前の水晶が凄まじい光を放った。
驚いた俺は慌てて水晶から手を放した。
横ではロックベルが更に慌てた様様子で驚愕の表情をしていた。
『やべぇ、なんかやっちまったか』
俺は水晶を見ていたが、水晶は俺の手を離れてから
何か七色に点滅してらっしゃる。
『怒ってるのかこれ?』
イメージ的には動揺しているようにも見えるのだが…
「まさか、そんな…」
ロックベルはその水晶を見て相変わらず信じられないと
いった表情だ。
ミスティは驚いて俺の傍まで駆け寄ってきていた。
「これは何かまずいのか?」
俺はミスティに聞いてみた。
「分からない、私の時は水晶が光っただけだから…」
ミスティも良くわからないらしい。
「おい、これはダメって事なのか?」
仕方が無いので未だ呆然としているロックベルに
聞いてみた。
暫く水晶を見つめていたロックベルは
「いや、信じられないが…
おそらくこれは…いや、伝承の通りならば…」
考え込むような仕草で要領得ないな、
空気的に何かやっちまった感はあるが
とりあえず話を先に進めないとなと俺は思い、
「それで結局どうなったか説明してほしいんだが」
ふぅ、と一息入れるとロックベルは話し始めた。
「『秘め降りの儀』は知っているね。これは元来ご神体様に
封印の儀を執り行うにあたって巫女を選ぶために行われる儀式だ。
その際、この水晶に魔力を注ぎ、水晶が光る事によって選ばれる。
そしてその者が巫女となる訳だ。」
一息置いて、
「この水晶は本来封印せし者を選定する為のモノだが
その輝きによって意味合いが異なる。」
『ふーん』と思って聞いていた俺だが、
結局俺は選ばれたのか、宝玉は見せてもらえるのかが
気になったのだがどうやらそれどころではなかったらしい。
ロックベル曰く、
何の反応も示さない者は選定されず、
光をともす者は封印の力を持ち、その光の強さに
よって封印の度合いは増すという事。
封印が弱まるとご神体に変化が現れるのでその都度、
封印の儀式を執り行うものであると。
そして今回はというと…
伝承によると、
『七色の光を発せし者は
その力によりその力を滅する事も可能である』と…
という事は…つまり、そういう事である。
「それで宝玉は見せてもらえるのか?」
それを聞いても俺は空気を読まず続けた。
ロックベルは何で驚かないんだよチクショウみたいな
感じで俺を見ていたが、
「分かった、こんな事は初めてで
本当に伝承が合っているのかは分からないが…
認めよう。」
ちょっと渋っているようにも思えたが何とか
認めてくれたようだ。
俺とミスティは神殿の最奥にある部屋へと案内された。
その部屋の扉はとても重厚で、装飾もやたら派手な感じだ。
明らかに他の部屋とは違う雰囲気で扉にプレートの様なものも
見当たらない。
両開きのその扉は取っ手の様なものも無く、
押してもそう簡単に開きそうな感じもしなかった。
その部屋の前で足を止めた俺たちは、
扉の前でロックベルにいくつか注意を受けた。
「いいか、これより先は普通ならば入れない。
この様な事は初めてであり、何かが起こらないとも限らない。
一応わたしの判断で立ち入らせるが何かがあったらすぐに
引き返すこと。そしてこの先の事は他の者に話してならない。
既にマリアにはこの神殿に結界を張ってもらったから他の者は
入って来られないだろうが、君たちはその覚悟を持って
入ってもらいたい。」
という事だが、俺的にミスティは外にいてもいい気がする。
なのでミスティに別について来なくていい旨伝えたが、
拒否られた。
理由はレンだけだと不安だし、
あなたの事も完全に信用している訳じゃないんだからね。
という事だ。
このしっかり屋さんめ。
まぁレンが心配なのは分かるけどな。
ロックベルは扉の前で詠唱にも似た言葉を発していたが
俺にはよく分からなかったのでスルーした。
すると…
『ゴゴゴゴゴゴゴ』という音と共に扉が開き始めた。
『流石ファンタジー』とまたもや感心しながら俺は
扉の奥に目を向けた。
部屋の中は広い空間になっているかと思いきや、
水晶のあった部屋と同じくらいだった。
そして薄暗い部屋に祭壇が
ポツンと置かれているだけだった。
俺たちは中に入ると、
ロックベルが「ライティング」を唱え部屋を明るくした。
やはり祭壇の様な物が置かれているだけで他は何も無い。
暗くて最初は分からなかったが祭壇も先ほどのものより
ショボく古びていた。
特に宝玉のようなモノも無く、
祭壇も何かがある訳ではなく石造りの儀式台の様な物が
目の前にあるだけだ。
よく見ると石造りの台は棺の様に見えなくもない。
ロックベルが自分の首に掛けられたネックレスを取り出し、
ペンダントの様な物から一つの石を取り出した。
それを石造りの台座部分にある窪みに嵌めていた。
するとまた、ゴゴゴゴと小さな音が部屋に響いた。
そして、ロックベルがこちらに来いと手招きしてきたので
俺とミスティは近づくと台座の後ろに階段があった。
3人と俺はその階段を降り、地下へと向かった。
階段は真っ暗で少し先に開けた空間があり、
そこに松明の様なものがいくつか見える。
足元が暗かったが下りている最中に、
ロックベル曰く、ここから先やこの先にある宝玉の部屋では
魔法が使えなくなるらしい。
正直そういった説明はもっと早くして欲しかったが…
階段を下りた先にはこれまた一つの扉があった。
『厳重だな』と俺は思ったが、
『この先に封印されし宝玉がある。心せよ。』
と改めてロックベルに言われたので気を引き締めた。
扉は鉄の様な物で出来ているみたいだが所々錆びており、
あまり神殿の中という感じではなかった。
まるで牢獄みたいだなと俺は思った。
さっきからミスティが俺の服の裾を握っている…
チクショウこれはレンに対してで、俺にではないのか。
と思っている自分がちょっと哀しい。
扉を開け、ようやく宝玉を拝めると期待した俺の前に
あったのは眩い光を放つ宝玉ではなく、
上下を木の幹の様なものに固定されたただの白い球体だった。
周りでロックベルが部屋の中にあった松明に入口に
あった松明で火を灯している。
「これが宝玉だ。」
『これが宝玉?』
少し明るくなった部屋で見た俺の第一印象は
宝玉というより卵だった。
若干球体ではあるが水晶の様な透明ではなく、
大理石の様な質感でもなく、
どちらかと言えば恐竜の卵の様なものに思えた。
「レン、どうするの?」
恐る恐るといった感じでミスティが聞いてきた。
相変わらず俺の袖を持ってクイクイ引っ張ってきた。
『まぁどうするって言ってもとりあえず触ってみるか』
そう思って近づいた俺をロックベルが制止する。
「待ちたまえ、いくらご神体に認められたからと言って
何があるか分からん。不用意に近づくでない。」
「でも見ているだけじゃ調べるにしてもよく分からんしな。」
正直言うと、どうやって調べればいいのか俺も良くわかってない。
魔法が使えないとなるとどうにかするにしても
面倒な事になった時は困るけど…
やっぱやれそうな事はやっておくか。
「とりあえず触れてみて何も無ければ今日の所は失礼するよ。
ちなみに封印するにしても、滅するにしてもどうやるとか
聞いておきたいんだが」
俺はロックベルにそう言うが、
「封印に関しては、儀式を行い、ご神体に巫女が魔力を注ぐのだ。
儀式の際にも宝玉そのものに行う訳ではなく、ご神体様を通して行う。
ただ…滅する事に関しては文献にもわずかしか残っておらず、
その具体的な方法は書かれていない。」
まぁ、そうだろうな。
滅せなかったから封印したんだろうし。
文献曰く、
『封じられし力の源に魔力を注ぎ、
力を抑え込み、その力を解放させずに滅す』
としか書かれていないそうだ。
よし、とりあえず触れてみて何もなかったら
改めて文献調べてもらうか、別の情報集めるために
動いてみるしかないか。
よし、今はそれでいいだろう。
俺は一つだけ気になった事を聞いてみた。
「ここって魔法を使えないってのはどういう原理なんだ?」
「ここは封印されし力の源が暴走しない様にするために
魔法の術式をうまく練られない様にされておる。」
『詳細は不明だが』との事だ。
一応魔力自体は練れるが魔法としての効果は
発揮できないといった所か。
「それで触れてもいいか?」
少し思案した後ロックベルは、
「ダメだ。と言ったらどうする。」
「魔物に襲われて奪われて終わりの可能性があるな。
それに試せる事があるなら試すべきだろうし、
このまま何もせずにいるよりは建設的だと俺は思っている。」
「何かがあって、力が解放されようものなら
取り返しがつかなくなるとは考えんのかね。」
「少なくともこのままがイイとは俺は思ってないんでね。」
ロックベルは暫く考え込んだ。
しかし今回魔物が現れた事で考えたのだが、
今までこの村にこの力を利用しようと考えたヤツとか
他にいなかったのか…
まぁこの力が利用できるかは分からないが…
沈黙の中、ミスティが俺に囁いてきた。
「ねぇ、レン、いえ、今はグレンなのよね。」
「あぁ、一応レンもいるが今は俺はグレンだ。」
言っていて分かりづらいがそういう事だ。
「グレンは宝玉をどうしようと思ってるの?」
「俺はあの宝玉があるから村が襲われたし、
このままにしておけば再び魔物たちが襲ってくると
思っているから。具体的には宝玉を別の場所に移すか、
宝玉を無くすかしたいな。」
『ただその方法は分からないが…』
と付け加えようとしたところで、
「分かった、少々事を急いてる部分もあるが
君の言っていることも分からなくは無い。
ただ、何か変化があれば
すぐに封印の儀式を行わなければならん。
今マリアに連絡したのでもう少し待て。」
どうやらロックベルは念話でマリアと連絡をとって
いたらしい。
一応念話は使えるんだな。魔法とは違うものなのか…
その際、ミスティにも儀式を手伝うよう指示された。
意外と物わかりのいい爺さんで助かったぜと俺は
心の中で思いながらその時を待った。
待っている間ちょっと暇だったので本当に魔法が
使えないのか試してみようと思ったが、レンから
止められたのでヤメた。
仕方が無いからロックベルに儀式について聞いてみた。
『封印の儀』
さほど難しい取り決めではなく、さっき聞いた通り
ご神体なるモノに巫女であるミスティが
魔力を注ぎこむのだが、ご神体はこれまた水晶の様な
モノで本来は人目に触れさせず、満月の夜に魔力が高まり、
その状態を確認して封印の度合いを確かめるらしい。
巫女は選ばれた者のみであり、主に女性が選ばれる。
他には封印の儀の際にはその身を清める為の作法なども
色々とあるらしい。
ついでに『念話』についても軽く聞いてみたところ、
この神殿内でしか使えない事、
念話が使えるのは特定の者のみであり
他の者には通じないらしい。
今神殿内で念話を使えるのは
ロックベルとマリアの間だけである。
壁に背を預け、話を聞いていた俺たちは
ロックベルが突然目を閉じ、話を中断した為、
互いに顔を見合わせた。
「よし、とりあえず儀式の準備は出来た。
悪いがミスティも上で儀式の準備をしてもらおう。」
儀式には当然ミスティも必要になる為、
その準備がいるので上に一旦戻ることになった。
ミスティはグッと唇を噛みしめながら、
『レン、気をつけてね』
と言って階段を駆け上がって行った。
正直見届けようと駄々をこねるかと思っていたが、
俺としては助かった。
何かあったら絶対に守るつもりだったが、
今はここよりも上にいてくれた方が安心だ。
「一応改めて確認しておくが、本当に触るだけで
動かしたりそれ以外の事はするなよ。」
「あぁ、分かってる。」
俺も何も好き好んでしたいわけじゃないし。
ただ、このままスルーするのは得策じゃないんでな。
俺は立ち上がって宝玉に向かって歩いた。
ロックベルは宝玉から少し離れた場所で見守っている。
俺は宝玉に手を触れた。
恐る恐るというよりガッといった感じで掴んだ…
何も起こらなかった…
『えっ!』と思ったレンだが、
俺は内心で『やっぱりな』と舌打ちをしながら
こっそり魔力を注ぎ込んだ。
すると…
ピキキといった様相で宝玉にヒビが入ってしまった!
やべっ!と思い俺は慌てて手を引くが、
時すでに遅しといった感じで
徐々に宝玉はひび割れを増していった。
「なんと‼」
ロックベルは頭を両手で掴み驚いている。
さっきの水晶の時よりもリアクションがデカい。
ロックベルを手で制しつつ、俺は宝玉を見た。
宝玉がピカーといった感じで中から光が漏れ出した。
『これヤバいやつか』と思った俺だが、
次の瞬間、宝玉の中から現れたのは…
一匹の鳥だった…
その鳥は全身真っ赤で、雛のようなものではなく、
ましてや竜でもない。
俺の中のイメージで言うなら孔雀というか
ミニフェニックスみたいな鳥だった。
その鳥は俺を見るなり、
「キュイー」
と飛びかかってきた。
俺は反射的にその鳥をガシッと掴み取っていた。
見ると、『キュイキュイ』と叫びながら身をよじらせている。
ちなみにロックベルはそれを見て呆然としている。
なんかあんまり怖くもなかったので
とりあえず放してやると飛び立って
俺の頭の上に着地して『キュイー』(ふぃー)
といった感じで落ち着いている。
『なんぞこれ』




