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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第一章 【異世界での旅立ち】
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第10話 『事後報告』

第10話


『事後報告』



結局、今回の魔物襲撃の詳しい目的は

分からなかった。


あれほどの魔物に襲撃されはしたが、

思ったよりも被害が少なかった点が

影響している。


一応蛇女の魔物がゴブリンもどき他を

操り、村を襲って神殿と花?を狙っていた

らしいが…。


神殿はともかく花か…


で…

事後処理としては、

まず今回殺された人は1名。

ゴブリンもどきに頭を潰された者がいたが、

アレは正確には村人ではない。

盗賊だ。より正確には元盗賊だが。

少なくとも俺の中ではアレは自業自得だ。

一応村人たちはお墓を作ってあげていたが

墓を見舞う者はいないだろう。


村人の中には重傷者数名、軽傷者はかなり出たが

他に命を落とした者はいなかった。


当初、蛇女が手当たり次第に村人を襲わせず、

ひらけた場所である広場に姿を現した事が幸いした。

何より、いち早くドランクとフリージアが

駆け付けた点が大きかっただろう。


物的被害もせいぜい広場の真ん中に大きな

クレータが出来た程度で村の家屋や畑には

ほとんど被害は出ていなかった。


因みに、もう一人の

自らの作った水溜りにダイブしていた男は、

あの後あの場に残っていた村人たちに拘束され、

今は自警団の詰め所の地下に入れられている。

後日近くの町の警護団へと引き渡される予定だ。


男曰く『元冒険者だったがうまくいかず、

盗賊としてデビューしたが、お頭がうざくて、

二人で盗賊団を抜けてこの村にやってきた。

楽して稼いで、あわよくば村の金目の

物を奪ってやろうと思っていた』との事。


以前ドランクともめていたのは

『俺たちが守ってやるから金をよこせ』

といった事らしい…

蹴り殺しても良かったのか…


自警団のガルシア、ミーシャは軽傷で、

ミーシャは『狙い撃ちまくってやったぜ』と

鼻高々に自慢しているらしい。


ガルシアは運び込まれた病室でミスティの母、

アリスティに看病されている。


そして俺は今、窮地に立たされていた…


蛇女を倒した後、

ドランクとフリージアの元へと行った俺は、

めっちゃ質問攻めにあった。


脇腹刺されて重傷だったはずのドランクは

開口一番、

『お前、何者だ!?』


ドランクの側で暫く呆然としていたフリージアは

『あなた一体何をしたの!?』

とクワッとした顔で詰め寄り、


少し遠くで見ていたのか

慌てて駆け寄って来たミスティが

『説明してレン!!』と…


ついでにどこからか現れた村人たちも

『あれっ?ここにいた魔物は?』

『レンが倒したんですって』

『マジかよスゲーじゃん』

『あいつがどうやって倒したんだよ』

などと口々に言っているのが聞こえた。


うん、まずはちょっと落ち着こう。

そして何故誰も俺に心配の言葉をかけて

こない…まぁ仕方がないか…


しかしこれやっぱどうやって説明すれば

いいんだろうか…


このあと一旦ドランクをフリージアの家まで運び、

周りに集まって来た村人たちにフリージアが指示を

出し、最後に村長が出てきて、話がまとまったら

あらためて来るようにと告げられた。


「で…どうゆう事なんだ?」


フリージアの家で治癒魔法をかけられ、

治療を終えて少し落ち着いたドランクが俺に尋ねてきた。


部屋には他にフリージアとミスティがいる。

村長にはフリージアから

後ほど説明に行くと伝えてある。


フリージアの家は診療所にもなっており、

他の部屋にはガルシアや数人の負傷者もいる。


「あなたが使った力は見た事も聞いた事も

ないものだったわ」

フリージアは

説明を促すように続けて聞いてきた。


俺は部屋の中央にある椅子に座り、

ドランクとフリージア、ミスティを視界に

入れてから、ため息と共に語り出した。


「まず、説明する上で約束してほしい。

一つは信じられないかもしれないが話を

一旦最後まで聞いてくれ。

途中での質問は受け付けない。

それと俺がこれから話す事は出来れば内密に

して欲しい。」


改めて3人の顔を見渡し同意を求めた。


ドランクは渋々ながらに『分かった』と一言。


フリージアは顎に手をあて思案しながらも

ここで渋ったら話が進まないと思ったのか

『分かったわ』と。


ミスティは神妙な顔をしつつ、コクリと頷いた。


「俺の名は、グレン。レンの中に眠っていた

もう一人の俺だ。」


周りの唖然とした表情を無視して俺は続ける。


「まず俺は『グレン』だが『レン』でもある。

知識は共有しているし、みんなの事も覚えてる。

レンの中のもう一つの人格だと思ってくれ。」


ここまで話した時点での反応は予想通り、

『ハッ?』と言った感じだが、

いきなりこんな話をされて理解出来る奴は

まぁ、普通・・いないだろう。と俺は構わず続けた。


「俺の力については覚醒したとしか言えない。

俺自身にもうまく説明出来ないんだが、本来俺の

中にあった力が俺の人格と共に目覚めたと

思ってくれればいい。」


一通り話し終えた所で、

「嘘みたいに聞こえるかもしれないが

これが俺の事実だ。」


話を終えた途端、

「お前は本当にレンなのか?」


ドランクが真面目な顔で

俺を睨みつけるようにして言った。


「俺自身はレンであり、グレンでもある」

俺はドランクの目を見ながら言った。


ドランクはジッと俺の目を見つめ、

お互いがそらさずに見つめ合う…


「ドランクちょっと落ち着いて」

雰囲気的にマズイ事になりそうだと感じた

フリージアが

俺とドランクの間に入ってきた。


「大丈夫だ、俺は落ち着いてる」

ドランクは目を反らさなかった俺の方を

見つつ、目を閉じながら言った。


フリージアは

「それで結局あの力自体は何だったのかは

分からないという事なの?」


「正確には説明出来ないが、俺の中では

『重力』といった概念を元にイメージを構築した

結果と言う感じだな。」


説明としては不十分かもしれないが、

仕方がないと思いつつ俺は口にした。


フリージアは何か考え込むようにしている。


「あの出鱈目な技や身のこなしもその力の

おかげだってことか?」

ドランクが閉じた目を開き、鋭い目つきのまま

聞いてきた。


「身体能力については俺の体から湧き上がる力が

もたらしたと思う。技に関しては自然に出来たと

しか言えない。」

曖昧だがハッキリと答える俺に、


「…一つだけ聞かせろ。お前は本当に俺の知っている

レン・マクラーレンでその人格を乗っ取ってる訳じゃ

ないんだな」

ドランクは再度力強い眼差しと共に俺を睨みつけた。


「乗っ取ってるつもりは無いが、レンからしたら

どう思っているかは俺には分からない。

正直俺もレンと話をした訳じゃないからな。

気が付いたらこうなってたとしか言いようがない。」

ドランクの目をしかっりと見据えて答えた。


「最後にもう一つだけ。…俺はお前にとって何だ?」

ドランクは見つめながらそう言った。


「俺を拾ってくれた恩人で、

俺に色んな事を教えてくれた師匠で、

俺に愛情を注いでくれた親だと思ってる」


それを聞いたドランクは静かに目を閉じ、

「そうか…」

と一言呟いた。


ソレを見たフリージアは、

ふっと少しだけ口元を上げた後、


「あの力を内緒にするのは分かるけど、

アレだけ派手に見せてしまっては秘密に

出来ないんじゃないかしら。

それにみんなに説明するにしても全てを

隠したままには出来ないわ。」

真剣な表情で俺に尋ねた。


「出来れば俺の人格の方は伏せてもらいたい。

力に関してはもの凄い秘薬を使ったとか、

神の力を授かったとかにしてもらえると

助かるんだが…」


実際に秘密にしたいのは俺の人格についてであって、

力の方は知られたとしても俺的にはあまり問題ない。

本当は色々と知られたら

まずいのかもしれないが今の俺にとっては

それほど気にならない。

どうせあまり理解はされないだろうし…


「レン!レンはどこにいったの?

わたしの知ってるレンは今どこにいるの!?」


それまで黙っていたミスティが、

正面に来て、すがるような目つきをして言った。


俺は言葉に詰まった…

レンは確かにまだいると感じている。

なぜかは分からないがもう一人の俺がいると。

ただどうすればソレを証明できるかは

分からない。


ミスティは泣きそうになりながら、

「あなた私に言ったわよね!俺はレンだ、

レン・マクラーレンだって…」


確かに言った。

たとえ違う人格であってもこの身体は

レンであり、知識も今まで過ごしてきた日々の

記憶も持っている。

今の人格が違っても俺はある意味レンだ。

名前を偽ってもソレは消えない。


「あぁ、それは間違いない」


俺はそう言って席を立ち、部屋を出た。


部屋を出る時、呼び止める声は無く、

ただミスティの嗚咽にも似た泣き声が

聞こえていた…


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