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タイムネメシス~二度目の人生は二つの入れモノde~  作者: あすか良一
第一章 【異世界での旅立ち】
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第9話 『俺到着』

第9話

『俺到着』



俺は魔物を蹴散らし広場に走り出した直後、

どうやって後でミスティたちに説明すべきかを

考えるのを放棄した時、

広場の方から光が見えた。


「急ぐか」

それを見た瞬間、更に足に力を込め走り出した。


すぐさま広場に到着した俺は

目の前で剣を構えて立っているミーシャと

片腕で棍棒を振り回してるおっさん、

確かガルシアだったかに話しかけようとしたが、

周りにいる魔物たちがうざかったので

とりあえず剣を横なぎに魔物どもを蹴散らした。


ちょうど剣を振り回そうとしていたミーシャは

目の前にいたはずの魔物が吹っ飛ばされて、

アレッ?って顔をしていた。

ガルシアは棍棒で相手の棍棒を受けていたが

相手の魔物は他の魔物ごと横から吹っ飛ばされて

視界の端に消えていった。


『『レン⁉』』


俺を見て二人はそう言ったが俺はそれを無視し、

まだ残っている魔物の向こう側を見た。

そこには剣を握って立っている男がいた。。


ドランクだ!

なにやら脇腹を血に染めて、目の前にいる魔物と

対峙しているようだった。


それを見た瞬間、

俺の中でブチンと何かが切れた。


蛇の様な魔物の上には数十本の矢が現れた。


俺は残っていた魔物の内の一体を蹴り飛ばした。

頭部を撃ちぬくかの様に…


魔物の頭部は

まるでサッカーボールの様に飛んでいった。


近くで見ていたミーシャが相変わらず、

『えっ?』って感じで俺を見ていたが、

俺はそれにも構わずミーシャの手から剣を奪い、

蛇の恰好をした魔物に向けて走り出した。



ドランクは自身に向かってくる矢を剣で振り払ったが

全ての矢を迎え撃つ事は出来ず、

顔と急所に当たらない様にするのが精一杯だった。

受けきれなかった矢は足に腕にと刺さったが、

それでも相手の魔物に向かって切り込んだ。


次の魔法を繰り出される前に勝負をつけるべく。


相手の魔物はピクリと眉を動かしたがそれだけだった。

特に動揺する事も無く、腕を振り下ろそうとした…


ビタン!!


腕を振り上げたその顔面に何かが当った…

女の魔物にダメージは全くなかったが

ギロリとその目はドランクの向こう側へと向けられた。


ドランクも思わず後ろを振り返った。


「レン‼」


フリージアは向こうから走ってくる少年を目にし叫んだ。


俺は広場の残っていた魔物を二本の剣で蹴散らしながら

ドランクのいる場所まで突き進んだ。


二刀流など初めてだが問答無用で切り捨てていった。

ドランクの側まで切り進んだ頃にはあらかた魔物は

切り捨てたはずだ。


残っているのはこの蛇っぽい女?の魔物くらいだ。


「なんだいアンタは、次から次へとうっとおしいねぇ。

わたしのこの顔に泥をつけてくれたのはアンタかい。

今すぐぶっ殺してやるよ!」

蛇女は額に青筋を浮かばせながら俺に向かって言った。


「レン!?レンなのか、お前なんでこんな所に!」

ドランクは片膝をつきながら俺に目を向けてくる。


俺はドランクを見て、

片方の剣を地面に突き刺し、

ドランクを肩に担ぎ上げてフリージアの方に走り出す。


「おい!何するんだ!!」

ドランクは慌てて身体を動かすが

構わず俺は走り出した。


「逃がすわけ無いだろう!」

蛇女は俺に向けて腕を振り下ろしてきた。


風の刃にも似た何かが横を過ぎるが俺は足を止めず

フリージアの方に向かっている。


蛇女が何度も腕を振り下ろし、

その都度刃が通り過ぎるが、当らない。


「ちょこまかと!」

蛇女はイラつきながら刃を放つ。


だが当らない。


直接見えてはいないが

腕を振り下ろす軌道と感覚でわかる。

そして俺はフリージアのいた場所につき、

フランクを下ろす。


二人ともキョトンとして俺を見てくるが


「ドランクを頼む」

俺は一言そう言って、蛇女を睨みつけた。


「お前、何者だ?」

蛇女が憎らしげにこちらを見てくる。


「てめぇに名乗る名はねぇ」

そう言って俺は蛇女向けて駆け出した。


俺は駆け出して飛び上がり、攻撃を繰り出した。


蛇女は俺の迫りくるスピードに驚いたのか

本能的にマズいと感じたのか、

慌てて俺の攻撃に腕を顔の前でクロスさせた。


俺は攻撃した。

剣では無く素手で…

拳を握りしめ思いっきり振り抜いた。


ズドン!!!


という音と共に女の魔物の身体は

大きく後ろに吹き飛ばされた。


クロスさせてガードしたはずの腕は顔に

めり込みつつ地面を削りながら。


広場の地面を数メートルほど削りながら

ようやく止まった、土煙が晴れた先で

蛇女の顔は怒り狂っていた。

鼻と思われる部分から緑色の液体をたらしながら


「貴様、よくも…わたしの顔に傷を!!

絶対にゆるさないぃ!!!」


ゴゴゴゴゴといった効果音が出そうな雰囲気で

蛇女の周りに影が現れてきた。


徐々に広がった影の中から

続々とゴブリンもどきたちが現れた。


「嘘だろ…」

ドランクはフリージアに治癒魔法を

かけられながら呟いた。


フリージアは今はなんとかドランクの傷を

治そうと治癒魔法をかけているが、

目の前に集中しきれずチラチラと女の魔物の

方を見ている。


だがドランクの脇腹は大分出血した上に

まだ塞ぎきってはいないため、気を抜く事は

出来なかった。


そして二人は見ることしか出来ない自分たちに

内心歯軋りをしながらレンを見つめていた。

実際ドランクの口からは噛みしめた唇から

血が流れていた。


俺は内心穏やかな気持ちでは無かったが

傷だらけにされたドランクを見てから

パンチを繰り出す時までに比べれば

落ち着いてきた気がする。


再び蛇女を見やると、

すでに50匹近い魔物が現れる中、

「まだまだぁ!!」

そう言って更に魔物を出そうとしていた。

最後に見るからに大きな魔物が出てきた。


ソレは一つ目で額に1本角が生えた、

手に大きな棍棒を持つ。

俺が知っている知識からすると

まさにサイクロプスだった。


唯一の違い、というか思ったのと違う部分は

肌の色が浅黒い点か。


周りから出てきた魔物を

面倒だなと思い…


『俺魔法発動』


『重力制御魔法起動』


脳内で意識した俺はイメージを構築する。

最初の時に比べ、イメージの構築が

格段に速くなった気がする。


丁度サイクロプスみたいな魔物が出た直後、


「我が前に立ちふさがりし全てなる愚かなる者に

…滅びの戒め与えん事を!」


『ブラストフレア!!』


俺は上に掲げた掌に円状に集まった力を、

周りに群がるゴブリンもどきを対象として

細分化するイメージで投げつけた。


いくつもの黒い球体に分かれたモノが

ゴブリンもどきたちの側で弾ける。

途端、弾けた場所に向かって

周りのゴブリンもどきたちは

吸い込まれるようにして集まった。


近くにいたサイクロプスや蛇女はそのままに、

周りにいたはずのゴブリンもどきは

一瞬にしてその黒い球体があった場所で消えた。


「き、貴様一体何をした!?」


蛇女は愕然とした表情で、

まるで理解出来ないモノを見た感じで

言ってきた。


「てめぇの顔も見飽きた…そろそろフィナーレだ!」

剣先を蛇女たちに向けて言った。


実際は、まだ広場に来てから

そんなに時間は経っていないのだが、

俺は後ろで倒れているドランクの為にも

早々に決めるつもりだった。


「そうか、お前がさっき向こうで

わたしの手駒を倒したヤツか!!」


蛇女は北での事に気付いたらしく、

俺の事を油断ならない者だと再度認識したらしい。


「えぇい!!お行き!!」


すかさずサイクロプスをけしかけてきた。


俺は剣を自分の頬の横に水平に構え、

腰を中腰に落とした。

足を前後に開き、剣先を前に両手を添えて…


目を閉じ、剣先に意識を集め、

一呼吸入れた所でカッと目を開け走り出した。


「「絶技・グラビティブラスト!!」」


叫びと共に、正面から来るサイクロプスに

俺は剣を突き出した。


サイクロプスは棍棒を大きく振り上げていたが

俺の速度についていけずに貫かれる。


腹に大きな穴を開けて…倒れた。


ズズン!


と大きな音が響き渡った。


サイクロプスは倒れた後、ピクリともせず、

一呼吸おいてから黒い闇と共に消え去った。


そして同時に

俺が持っていた剣も刀身の部分だけが

キレイに砕け散った。


「やっぱ持たないか…」

俺は柄だけになった剣を見ながら呟いた。


『グラビティ・ブラスト』…

『俺剣技』の一種で

重力魔法を剣先に展開して撃つ。

派生に

『グラビティスラッシュ』もある。はず…

『俺剣技』…今思い付いた…


使えなくなった剣の柄を見た後、蛇女を見た。


蛇女は悔しそうな顔をしながらも

ニヤリと笑って見せた。


「あはははは、やってくれるじゃないか。

だけど!こいつはどうかねっ」


みると蛇女の頭上には黒い巨大な玉があった。


良く見ると蛇女の顔は蒼白で頭の角は片方折れていた。


さっきぶっ飛ばした時は鼻が若干曲がっていたのと

腕が片方歪んでいた程度だったが…

多分、サイクロプスをけしかけた時に作ったのか。

相当消耗しているな…

俺は蛇女の頭上に浮かぶ玉を見ながら思った。


「消え去れ!!」

蛇女が振り上げた片腕を下に勢いよく下ろした。


「レン!!」

ドランクとフリージアが大きな声を上げた。


俺は避けるかどうか一瞬迷ったが、

受け止めることにした。

周りに被害が出ない様にする為もあったが、

相手の渾身の一撃を受けてこそだろうと

気分が高揚していて思ってしまったのも事実だ。


『ブラストウォール』


俺の目の前に瞬時に黒い壁が現れる。

蛇女から放たれた黒い巨大な玉が

その真っ黒な壁に触れた瞬間、


その玉は飲み込まれていった。


黒い玉は無くなり俺の前にあった壁も消えた。


『ブラストウォール』…

『俺魔法』第2弾。


イメージとしては攻撃される魔法を全て

飲み込むと言ったアバウトなモノ。

もっと維持出来るかと思ったが

1回の攻撃を受けただけで消えてしまった。

因みに魔法の固有名称は俺のイメージであり、

実際にその名前通りの効果があるかは分からない。


更に俺の魔法がかなり闇魔法寄りなのは

単に俺のイメージが厨二…いや、

重力魔法でいう所のブラックホール的な

イメージだからだ。

断じて黒歴史などが影響しているからでは…


壁が無くなり、目の前に見えた蛇女の顔は

あからさまに歪んでいた。


おそらく奥の手というか蛇女にとっての

切り札だったのだろう。


「う、嘘だ…こんな事ありえない…

わたしの魔法が効かないなんて…」


彼女はイヤイヤと首を左右に振りながら

後ずさっている。


「お前一体、何故この村に来た?」


俺は気になった事を聞いてみた。

相手が動揺している今なら

聞き出せる気がしたからだ。


蛇女は後ずさりながら、

「聞いてない、聞いてないんだよ!

ここにあんたみたいな化け物がいるだなんて

聞いてなかったんだよ!!せいぜい人族で腕の

立つ奴が数名いる程度だとしたか」


「答えになって無いな、何しに来たかを

聞いてるんだ」

俺は蛇女の怯えと共に出された答えに

イラッとしながらつっこんだ。

お前に化けもの扱いされたくないわ。


蛇女は蛇に睨まれた蛙の様にヒッと

顔をひきつらせた後、


「あたしはただこの村のヤツらをぶっ殺して

花と神殿を…」


そこまで言って我に返ったのか

「くっ、ちくしょう!おなめでないよ!!」


再び蛇女は影を出した。


ドランクとフリージアの側に…


『ちっ』

俺は瞬時に飛び出し、

フリージアたちの元に向かった。


ドランクは上半身を起こした状態で

フリージアを庇うように抱きかかえた。


レンに意識を集中していた為

とっさにフリージアだけでもと

かばった形だ。


影はかなり薄く、小さくはなっていたが

中から再びゴブリンもどきが現れて棍棒を振りかぶった。


俺は魔法を発動する間を惜しんで

さっき粉々に砕けた刀身の無い剣の柄を

ゴブリンもどき目がけて投げつけた。


スパコーンといった感じでゴブリンもどきの

頭にあたった。

勿論それで仕留められるとは思っていない。

一瞬でも動きが止められればそれで良かった。


俺は一瞬動きの止まったゴブリンもどきの

頭部に飛び蹴りをかまして葬った。


ドランクは目をパチパチとさせて俺を見て、

何事か話しかけようとしていたが…


「ドランク、離して」

思いっきり抱きしめられた形になっていた

フリージアに遮られた。


二人は思わずバッといった感じで離れたが、

顔は真っ赤だった。

うん、二人とも大丈夫そうだな。

ごちそうさまです。


俺はそんな二人を見てから、

再び蛇女の方を見た。


「アッハッハッハッ!甘いねぇ、大甘だよ!!」


蛇女の横に黒い影が現れてその中に蛇女は

入ろうとしていた。


「逃がすかよ」

俺はドランクの横に落ちていた剣を拾って

すかさず走りながら、


『俺魔法発動』


『重力制御魔法起動』


蛇女は既に半身が影の中に入っていた。


「残念だったね」


そう言ってまさにニヤリとした顔が影の中に

入りそうになった時、


「お前がな」

俺は走りながら剣を斜めに振り放った…



「ば…か…な…」


蛇女の顔が

俺の剣撃に沿って斜めに滑り落ちていった。


やはり無詠昌でもイケるな…


俺は魔法を起動させた直後、このままでは

間に合わないかもと思い無詠昌で魔法を放った。


蛇女が影に身を沈ませた時、

魔法名を叫ぶか一瞬迷ったが…

蛇女の言葉を聞いて即時に放ったのだ。


俺の中で魔法はイメージだ。

詠昌はイメージを構築するのに有用だ。

頭の中で唱えてもいいのだが、

口にすることでより明確な形となる気がする。

技名や魔法名に関しては俺の場合は副次的なものだが…

やっぱり決め技は叫びたくなるな、

俺的に技の威力が増す気がする。

いや多分増す。特にテンション的な意味では絶大だ。


蛇女は現れていた闇と共に崩れた。

やがて灰となって消えていった…

はぎ取りとかは出来ないのか、

調べてみたかったがこの蛇女だけが

こうなのか、この世界の魔物がこうなのかは

今の俺には分からなかった。



こうして広場での戦いは幕を閉じた。



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